ドイツの電動エアモビリティ企業であるLilium(リリウム)は、同社初のeVTOL(電動垂直離着陸機)である7人乗り「Lilium Jet(リリウム・ジェット)」の電子回路および機械システムの開発において、航空宇宙メーカーのHoneywell(ハネウェル)と提携すると発表した。
ハネウェルは、飛行におけるすべての可動部を制御するコンパクトなフライ・バイ・ワイヤ・システムと、航空電子機器のアビオニクスを、Lilium Jetに供給することになる。同じeVTOL企業であるVertical Aerospace(バーティカル・エアロスペース)の航空機にも、ハネウェルのコンパクト・フライ・バイ・ワイヤ・システムが採用されているが、Liliumが使用するアビオニクス・システムは、Lilium Jet特有の技術的要件に合わせて設計された専用バージョンになるという。
ハネウェルは航空宇宙製造業界の巨人であり、アーバン・エア・モビリティの専門チームをいち早く創設した企業の1つだ。また同社は、Liliumが特別買収目的会社のQell Acquisiton Corp.(ケル・アクイジション)と合併した際に発表された私募増資(PIPE)の募集に参加し、Liliumの投資家にもなっている。
両社は2019年2月から話し合いと協力を続けてきたと、Liliumのチーフプログラムオフィサーを務めるYves Yemsi(イヴ・イェムシ)氏はTechCrunchに語った。同氏によると、Liliumは内製に留めておきたいコアコンピタンス(例えば、推進システムやバッテリーシステムの設計と組み立て、航空機の最終組み立てなど)を特定し、航空機の他の部分に関しては経験豊富な社外のサプライヤーと提携するつもりだという。
「専門家や航空宇宙分野のパートナーと提携することは、当社にとって熟考した上での選択です」と、同氏はいう。「安全性を確保しながら、市場投入までの時間を短縮できます」。
このパートナーシップの大きな利点は、認証プロセスで大いに役立つことだと、イェムシ氏は説明する。ハネウェル製の部品の中には、FAA(米国連邦航空局)が認める最低性能基準であるTSO(Technical Standard Order)をすでに達成しているものがある。TSOに認定された部品を使用することで、認証プロセスの時間を短縮することができるというわけだ。
すでにLiliumでは、Design Production Approval(設計生産承認)とProduction Organization Approval(生産組織承認)の取得に向けてチームを編成している。これらは欧州連合航空安全局(EASA)が発行する2種類の承認で、基本的にその会社が製品を市場に投入できることを証明するものだ。これらの承認は、Liliumの航空機(と他のすべてのeVTOL)が商業運航を開始する前に、FAAとEASAの両方で取得しなければならない型式認証を補完する。
航空宇宙メーカーとして実績のあるハネウェルとの提携は、Liliumの計画を大きく前進させることになるだろう。イェムシ氏によれば、ハネウェルから部品の納入が始まると、次のステップはシステム構築研究施設を使って地上でアビオニクスや電子システムのテストを行い、航空機の開発とテストを進めていくことになるという。
「これから大変な仕事が始まるのです」と、イェムシ氏は語っている。
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カテゴリー:モビリティ
タグ:eVTOL、Lilium、ドイツ、Honeywell
画像クレジット:Lilium
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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)