福岡県拠点のKOALA Tech(Kyushu OrgAnic LAser Technology)は6月29日、総額4億円の資金調達を発表した。引受先は、リード投資家のBeyond Next Ventures、既存投資家のSony Innovation Fund、QBキャピタル、田中藍ホールディングス、新規投資家のFFGベンチャービジネスパートナーズ、新生企業投資、テックアクセルベンチャーズ、SMBCベンチャーキャピタル。
調達した資金を基に、有機半導体レーザーダイオード(OSLD。electrically pumped Organic Semiconductor Laser Diode)のエンジニアリングサンプルの製造・販売、アライアンスの構築、人材採用を加速させる。
調達した資金の用途
- 有機半導体レーザーダイオード(OSLD)のエンジニアリングサンプル/モジュールの製造・販売:ビジネスチャンス拡大を目的に、完成品・デバイスメーカーやソリューションインテグレーターに対してOSLDの技術紹介を行うためのエンジニアリングサンプルの製造・販売を目指す。同サンプルを用いた検討により、実装へ向けた課題抽出と解決、製品モジュール供給のための実証を行う
- 戦略的ビジネスアライアンスの構築:OSLD技術の実装は、戦略的パートナーとの実装へ向けた検討が不可欠。2021年2月三井化学と有機半導体レーザー材料に関する共同研究開発契約を締結しており、今後も重要なパートナー企業との関係を構築する
- OSLD技術の対象市場の拡大:OSLD技術を展開する初期のターゲット市場は、近赤外レーザーを用いた生体認証市場。有機EL(OLED)ディスプレイに直接実装できることから、ディスプレイに新たなセンシング機能を付加可能。前述エンジニアリングサンプルの供給により、単一モジュールでの用途を拡大すべく、ヘルスケア市場などの新たな市場を開拓する
- 人材採用の強化:研究開発、知財、ビジネス開発、経営管理等をより円滑に進めるためのチーム強化を行う
2019年3月設立のKOALA Techは、九州大学最先端有機光エレクトロニクス研究センターが世界に先駆けて実現したOSLD技術の実用化を目指す、九州大学発スタートアップ。
同社によると、有機半導体レーザーは、無機半導体レーザーでは困難とされる「可視~近赤外域の任意の波長でレーザー発振」を可能とするものという。特に近赤外レーザーは、生体認証や光学センサーなどの分野で新たな応用展開が期待されるほか、柔らかい有機材料を使うことでフレキシブルデバイスへの利用にも適しているそうだ。
KOALA Techは、1日でも早い社会実装を目指し、これまでNEDO-STSをはじめ各種助成金制度を利用し近赤外有機半導体レーザーの原理実証(PoC)を進めてきており、可視・近赤外域のOSLD技術の開発に加え、有機レーザー素子の長寿命化に向けた新たな有機レーザー材料の開発にも取り組んでいるという。
また、近年高精細・フレキシブルディスプレイとして注目される有機EL素子(OLED)をはじめ、有機電子デバイスプラットフォームに高い互換性を備えるレーザー光源を実現するとしている。これによって、有機半導体デバイス分野における顧客へ新しいソリューションを提供するという。
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