電気自動車メーカーRivianが上場、2021年最大のIPOに

Rivian(リビアン)は米国時間11月10日、上場会社としてデビューした。106.75ドル(約1万2000円)の初値をつけ、同社を取り巻く高揚感は一気に高まった。

これが定着すれば、Rivianの評価額は900億ドル(約10兆2400億円)に達する。初値は、IPO価格の78ドル(約8870円)を37%近く上回った。この絶対的に目を見張る数字は、Rivianを米国史上最大のIPO企業の1つにし、同社の時価総額はGM(ゼネラル・モーターズ)や同社の出資者であるFord(フォード)を上回る。GMの時価総額は863億1000万ドル(約9兆8190億円)、Fordの時価総額は782億ドル(約8兆8990億円)だ。

Rivianの株価は10日午後1時の取引開始後も上昇を続け、119ドル(約1万3500円)の高値をつけた後、112ドル(約1万2700円)ほどまで下落した。

創業者兼CEOのRJ Scaringe(RJ・スカーリンジ)氏には、RivianのIPOが歴史的な規模であることの意味がわかる。しかし、予想されたことかもしれないが、スカーリンジ氏はEVの将来性について強気であり、最近のインタビューで、毎年販売されている9000万台から1億台の自動車は、今後10〜20年の間に電気自動車に移行するだろう、と話している。

「結局、投資家がこの分野に注目するのは、未来がどうなるかを評価するためです。とスカーリンジ氏は話す。「そう遠くない将来、100%が電気自動車になるでしょう」。

また、車両とその発売という点ではRivianは非常に初期段階にあるが、投資家は将来の可能性にも基づいて当社を評価している、と同氏は語る。

「彼らが純粋に今日のP&L(損益計算書)だけで当社を評価しているとしたら、会社のポイントを見逃していると思います。彼らはもちろん、Rivianが時間をかけて達成できると考えているものを見ているのです」と話した。

Rivianが何を達成できるのかは、まだ証明されていない。投資家、顧客、業界関係者はすぐにそれを知ることになる。しかし、同社の将来計画は確かに野心的であり、消費者向けの最初の2つのモデル(ピックアップトラック「R1T」とSUV「R1S」)や、2024年までに10万台の電動商用配送バンを生産するというAmazon(アマゾン)との提携をはるかに超えるものだ。特許文書やスカーリンジ氏のTechCrunchへのコメントによると、Rivianは消費者用および商業用のさまざまな製品を発売する計画だ。

また、Rivianが垂直統合を推進し、長期的には独自のバッテリーセルを開発する計画であることから、投資家は同社が技術的なリーダーとなることに賭けているのかもしれない。

スカーリンジ氏は「我々が中核技術スタックと考えているもの、つまり車両のすべての電子機器、完全なソフトウェアスタック、車両の推進部分を制御し、垂直統合することが本当に重要です。これらの中で最も重要なのは、ソフトウェアと電子機器でしょう」と話した。

ワイルドなIPOの旅

Rivianが2021年10月にIPO申請書を公開して以来、ワイルドな旅が続いていた(IPO申請は8月に内密に行われた)。この申請書は、Rivianの財務状況、リスク、およびチャンスに関する詳細な全体像で、電気自動車の設計、開発、生産、および販売という資本集約的なタスクに取り組むために現金をつぎ込んで状況を示している。

同社は1億3500万株を57~62ドル(約6480〜7050円)で発行することを計画していた。引受人はまた、2025万株まで追加購入できるオプションを持っていた。

投資家の需要が熱狂的だったというのは、2021年の控えめな表現かもしれない。11月9日夜遅くに公開された当局への書類によると、Rivianは目標株価を2回引き上げ、最終的に1株78ドルで新規株式を売りに出しただけでなく、さらに追加で普通株式1億5300万株を加えた。また、Rivianは引受人にさらに2295万株を購入するオプションを与え、この数字は以前の想定よりも多い。

今回のIPOの規模は、大口出資者にもメリットがある。Amazon(アマゾン)は20%、Fordは12%のRivianの株式を保有している。

Rivianの株価が上昇したのには、いくつかの理由がある。例えば、同社はいま、毎年何百万台もの自動車を生産・販売している既存の自動車メーカーよりも評価が高い。

一方、Rivianは収益が少なく、費用が多い。

同社は、イリノイ州ノーマルにある工場をはじめ、複数の施設で数千人の従業員を雇用している。スカーリンジ氏は11月9日夜、現在9000人超の従業員を抱えているとTechCrunchとのインタビューで答えた。

スカーリンジ氏の垂直統合へのこだわりは、研究開発費を押し上げることにもなった(同社は2020年にR&Dに7億6600万ドル=約871億円=を投じた。2021年上半期には、R&Dに6億8300万ドル=約777億円=を費やしている)。

その結果、ピックアップトラック「R1T」とSUV「R1S」の生産準備に伴い、純損失が拡大した。同社は2021年上半期だけで9億9400万ドル(約1130億円)の純損失を計上し、2020年同期に同社が計上した純損失3億7700万ドル(約428億円)の2倍をはるかに超える。

一方で、2021年10月から始まった顧客への「R1T」の納車が本格化するにつれ、売上は徐々に増加している。

画像クレジット:Kirsten Korosec

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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