東芝、タンデム型太陽電池向けの透過型Cu2O太陽電池で世界最高レベルの発電効率8.4%を達成

東芝、タンデム型太陽電池向けの透過型Cu2O太陽電池で世界最高レベルの発電効率8.4%を達成

東芝は12月22日、透過型亜酸化銅(Cu2O)太陽電池の発電層の不純物を抑制して、世界最高の発電効率8.4%を達成したことを発表した。これは、2つの太陽電池を積層するタンデム型で、光を透過する上層(トップセル)に使われるもの。発電効率25%の高効率シリコン(Si)太陽電池を下層(ボトムセル)にして組み合わせたCu2O/Siタンデム型太陽電池では、発電効率は合計で27.4%となり、Si太陽電池の世界最高効率26.7%を超える。電気自動車(EV)に搭載すれば、充電なしの航続距離は1日あたり約35kmになると試算されている。

現在、高効率なタンデム型太陽電池にはガリウムヒ素半導体を使ったものがあり、30%台の発電効率が報告されているが、製造コストはSi太陽電池の数百倍から数千倍にものぼる。これに対してCu2O太陽電池は、どこにでもある銅と酸素が主原料であるため、製造コストは非常に低くできる。

透過型Cu2O太陽電池は、短波長光を吸収して発電し、長波長光は透過する。その下に置かれたボトムセルのSi太陽電池は、その長波長光を吸収して発電する。そのため短波長から長波長までの光を発電に使うことができ、限られた設置面積でも低コストで効率よく発電できる太陽電池となる。

もともと透過型Cu2O太陽電池は、2019年に東芝が世界で初めて開発したもの。透過型Cu2O太陽電池単独(トップセル)では10%の発電効率を目指している。しかし、Cu2Oは半導体結晶としての性質により、結晶中に酸化銅や銅といった不純物が生成されやすく、それが発電効率と透過率の双方の低下原因になっていた。そこで東芝は、X線回折法を用いて、Cu2O発電層に含まれる微量の酸化銅や銅を検出し、不純物の量を精密に数値化した。そして、この2つの不純物が最小化する成膜プロセス条件を特定し、光透過性と発電特性の双方に優れた透過型Cu2O太陽電池の開発を成功させた。

今回開発された透過型Cu2O太陽電池と、発電効率25%のSi太陽電池を組み合わせてCu2O/Siタンデム型太陽電池を作り、例えばEVに搭載した場合(車載設置面積を3.33m2と仮定)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の試算方法に従えば、充電なしの航続距離は1日あたり35kmとなる。もし、発電効率が30%に達すれば40kmに達する。また、蓄電池に電力を補充し続ければ、充電なしでの長距離走行も夢ではない。

電気自動車(EV)へのCu2O/Siタンデム型太陽電池搭載イメージ

電気自動車(EV)へのCu2O/Siタンデム型太陽電池搭載イメージ

発電効率10%を目指す透過型Cu2O太陽電池の開発はNEDOの委託事業だが、これとは別に、東芝は東芝エネルギーシステムズと共同で、量産タイプのSi太陽電池と同じサイズの大型Cu2O太陽電池の開発を開始したという。2023年度を目標に外部評価用サンプルの供給を開始し、2025年度を目標に実用サイズのCu2O/Siタンデム型太陽電池の製造技術の完成を目指すとしている。

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TechCrunch Japan

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