フランスの航空宇宙企業Gamaが太陽帆宇宙船開発のために約2.4億円を調達

地球の洋上で海風がヨットを推進するように、太陽放射が宇宙船を星から星まで推進する日が来るかもしれない。少なくとも、フランスのスタートアップ企業であるGama(ガマ)はそう期待している。

2020年にLouis de Gouyon Matignon(ルイ・ド・グヨン・マティニョン)氏、Thibaud Elziere(ティボー・エルジエール)氏、Andrew Nutter(アンドリュー・ナッター)氏が設立したこの航空宇宙企業は、宇宙船の推進手段として光を利用した低コストのソーラーセイル(太陽帆)を開発することを目標としている。同社はフランス公共投資銀行(BPI)、フランス宇宙庁(CNES)、エンジェル投資家から200万ドル(約2億4000万円)の資金を集め、10月にその技術を宇宙で実証することになっている。このミッションでは、SpaceX(スペースX)のFalcon 9(ファルコン9)ロケットでキューブサット(小型人工衛星)を打ち上げ、高度550キロメートルで73.3平方メートルのソーラーセイルを展開する予定だ。

「地上でも多くのことをテストできますが、このような大きさの展開テストは、宇宙の無重力の中でしかできません」と、ナッター氏はTechCrunchに語った(このソーラーセイルは1辺が10メートル近い大きさになるはずだ)。

ソーラーセイルは決して新しい発明ではない。1608年に天文学者Johannes Kepler(ヨハネス・ケプラー)が、天文学者仲間のGalileo Galilei(ガリレオ・ガリレイ)に宛てた手紙の中で、初めて理論化した。しかし、ソーラーセイルの展開に初めて成功したのは、2010年になってからのこと。日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した宇宙ヨット「IKAROS(イカロス)」がそれだ。同年、NASAが「NanoSail-D(ナノセイルD)」を打ち上げ、2019年には非営利宇宙支援団体のPlanetary Society(惑星協会)が「LightSail 2(ライトセイル2号)」の試験を成功させた。

現在はGama以外にも複数の組織が、新たなソーラーセイルミッションを開発している。NASAのAdvanced Composite Solar Sail System(ACS3、先進複合材料ソーラーセイルシステム)は、イリノイ州のNanoAvionics(ナノアビオニクス)が設計した宇宙機に800平方フィート(約74.3平方メートル)のソーラーセイルとして搭載される予定だ。

Breakthrough Initiatives(ブレイクスルー・イニシアチブ)のBreakthrough Starshot(ブレイクスルー・スターショット)プロジェクトでは、1億ドル(約120億円)の資金提供を受け、4.7光年の距離にあるケンタウルス座α星系に、小さなソーラーセイルを取り付けた超小型宇宙機群を送り込むことを計画している。

Gamaは、これら過去や現在のミッションと2つの点で異なっている。「第一に、Gamaのチームは反復と極めて迅速な展開に努め、多くのソーラーセイルを記録的な速さで打ち上げていく」と、ナッター氏はいう。「第二に、我々は衛星を静かに回転させ、その結果生じる遠心力を利用してセイルを花びら状に展開させます。これによって構造的な重量を軽減し、より大きな面積を展開することができます」。

最初の打ち上げに先立ち、同社はすでに2回目のミッションを構想している。それはより高い高度で展開し「セイルを操舵できることを実証して、従来の推進技術に代わる信頼性の高い低コストの技術を提供できることを示します」と、ナッター氏は語っている。

ソーラーセイルは、風を構成する空気分子ではなく、光子を推進力として利用することを除けば、従来の帆とほとんど同じように動作する。光子は質量を持たないが、宇宙空間を移動する時の勢いを、マイラーやポリアミドでできたソーラーセイルという反射面に伝えることで、宇宙船を推進させることができるという仕組みだ。その力はわずかなものだが、真空の宇宙空間ではすぐに累積する。時間はかかるものの、ソーラーセイルで宇宙船を光速の20%まで推進させることができる可能性がある。

そうすれば、宇宙船に積まなければならない推進剤が不要になり(あるいは、少なくとも量を減らすことができ)、その分の重量を他の用途に使えるようになる。また、ソーラーセイルを使えば、理論的には宇宙船を無限に推進させることができるので、宇宙船の飛行期間を延ばすこともできる。これは、長期の深宇宙ミッションに不可欠な技術であり、それがこの技術のさらなる開発に注目が集まる理由でもある。

画像クレジット:Gama

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(文:Stefanie Waldek、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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