リンクを削除する作業は面倒この上ない。
特に、リンクを削除しなければならないサイトのオーナー側にとって、とりわけ面倒である。Googleが、内部でフラグを立てたリンクを無視してくれれば、それで済む話であった。しかし、質が悪いと思ったリンクを削除するよう、たちの悪い「提案」を行ったため、ウェブマスターはフラストレーションを抱えるようになった。
これも「愛のムチ」と言うなら、Googleに対するウェブマスターの愛情は冷める一方である。実は、これは偽装であり、Google自身は、どのリンクが悪いのか分からないため、ウェブマスターに申告させて、より包括的なデータベースを構築しようとしているのだろうか?「愛のムチ」と「偽装」を少しずつかじっているのかもしれない。また、SEOのコストを増やし、小さな会社がSEOに取り組めないようにする意図があるのかもしれない。もしくは、リンクが実際よりも重要だと信じさせるための、囮のような存在なのかもしれない。
残念ながら、何が正しいのか、知る術はない。
巻き添え
SEO業界は、検索エンジンが、口を閉ざし、懲罰を与え、そして、曖昧な表現をすることに慣れている。SEOに携わる者は、この難題を業界の一部として受け入れている。しかし、SEOとは関係のないウェブマスターが、巻き添えを食らうようになり、興味深い展開を迎えている:
先日、リンクを張った会社から、面白いEメールが送られてきた。簡単に言うと、サイトへのリンクの削除を要請するメールであった。 私達は自分達の意思でリンクを張った。頼まれたわけではない。サイトのビジターにとって有益だと感じたため、リンクを張った。通常、リンクを張る行為は、このような理由で行われるはずである。
Hacker Newsでの関連する議論も注目に値する。マット・カッツの最初の投稿は、誠実さに欠けていると言わざるを得ない:
シチュエーション #1は、最も一般的だ。リンクスパムを指摘されると、サイトは、リンクを一掃する試みを行る。その多くは、権利を振りかざし、大量のリンク削除要請メールを送信する。
Googleから通知を受けたウェブマスターは、被リンクの整理を促される。なぜなら、そのままにしておくと、ランキングに損害が出てしまうためだ。
しかし、ウェブサイトに向かう不自然なリンクに関しては、ウェブから実際に削除するために、十分な対策を講じた証拠を見たい、と言うのが本音だ。ただし、自分で削除することが出来ないリンクがある場合、もしくは、削除するためには料金を支払わなければならない場合、否認ファイルにリストアップしても問題はない。
(ボールド体を用いたのは、個人的な判断)
つまり、Googleから通知を受けたウェブマスターは、リンクを削除してもらうために、ウェブサイトに連絡を取る。Googleは、ウェブマスターに、単純に否認ツールを利用するのではなく、リンクを削除するために努力してもらいたいと望んでいる。
その結果、当然、質の低いリンクの通知が届いたウェブサイトにリンクを張っているウェブマスターの下には、最新のEメールスパムとも言える、「僕のリンクを削除して」メールが届く。ウェブマスターによっては、「誰かがナイジェリアの銀行であなたに大金を預けました」の類の詐欺メールよりも、リンク削除メールの方が多くなり、また、粘り強さ、そして、煩わしさに関しては、「ナイジェリア」詐欺に引けを取らない。
ウェブマスターの立場
ウェブマスターは、スパムフィルターにフレーズ「リンクを削除してください」とワード「否認」を加えることが出来る権利を持っている。
ウェブマスターAは、特に問題のある行為は取っていないものの、たまたま、リンクの削除を要請されたとする。リンク先のサイトのSEOの担当者は、誤って、リンクが悪質だと勘違いし、削除の要請を行ったのだろう。ウェブマスター Aは、リンクの削除要請に時間を費やさなければならない。リンクを1本削除するために、数分間を要する — しかし、ちょっと待ってもらいたい — 相手が、不誠実な競合者ではなく、実際のサイトのオーナーなのだろうか?所有者を確かめるには時間がかかる。そもそも、なぜ当該のリンクを削除したいのだろうか?サイトのオーディエンスにとって、有益だと思ったから、リンクを張ったのではないだろうか?あるいは、ボットが、ウェブマスターの希望とは異なり、フォーラムのリンクやブログのコメントのリンクとしてリンクを張った挙句、今度はそのリンクを削除して欲しいとでも言いたいのだろうか?
だとしても、リンクが1本だけなら、まだ許せる。しかし、大きなサイトを運営しているウェブマスターにとっては、面倒な作業になり得る。長期間をかけて、多数のリンクを構築してきたサイトの場合、削除の要請が積み重なっていく。すると、スパムフィルターの力を借りることになる。
すると、遠回しに脅されるようになる。「リンクを張ってくれてありがとう。君のせいではないけど、リンクを削除してくれないと、否認せざるを得ない。すると、君のサイトのイメージが悪くなってしまうかもしれない。出来れば避けたいんだけど…」
何てことだ。
また、SEO業者が実際に否認を行うかどうかは、ウェブマスター側には分からない。あるSEOのカンファレンスでは、リンクを削除するかどうかは別として、SEO業者にこの取り組みを薦めていたような気がする。
つまり、削除を要請されたウェブマスターにとっては、とりわけマット・カッツの提案を聞いている場合、リンクを削除する動機がないことになる:
元々の記事の中に、Googleが、実際にリンクが悪質だと指摘している部分は存在しない。これは、ランダムなサイトからのリクエストであり(詳細は記載されていないため、サイトを特定することは出来ない)、このリンク削除要請を無視しても構わない。
しかし、Googleがリンクを特定することもある:
サイトへのリンクを確認したところ、品質ガイドラインに違反しているリンクが幾つか見つかりました。
サンプルのURL:
ask.metafilter.com/194610/get-me-and-my-stuff-from-point-a-to-point-b-possibly-via-point-c上のサンプルのURLだけでなく、全ての不自然なリンクを是正、もしくは、削除してください。場合によっては、不自然なリンクを持つサイトのウェブサイトのウェブマスターに連絡する必要があるかもしれません。
また、リンクを特定する際に、Googleはミスすることもある。事実、DMOZ & 同様のリンクに警告を与えたことがあった: 「不自然なリンク」の主張を調べる度に、MetaFilterの昔からの評判の良いメンバーが、他のメンバーを助けようと試みるコメントが見つかる。通常は、Ask MetaFilterで何かを特定しようとしている。
行動の変化
すると、ウェブマスターは、このように考えるようになる。
「リンクを張ると、逆に損をするような気がする。Googleにペナルティーを科されるかもしれないし、「リンクを削除して下さい」メールが大量に送られてくるかもしれない。」
すると、どのような事態が起きるのだろうか?
ウェブマスターは、リンクを張る行為に非常にデリケートになる。デビッド・ネイラーは、「No リンク」ポリシーを採用するサイトが増加していると指摘している。予防措置として、全てnofollow化する可能性もある。ウェブに息吹を与える血管になるどころか、リンクは、有害な存在だと見られている。全てのアウトバウンドリンクが、nofollow化されたら、インデックスから追い出される確率、そして、「リンクを削除して下さい」メールが送られてくる確率は減る可能性がある。しかし、nofollowのリンクであっても、削除を要請されることもある。
リンクを問題視するウェブマスターが増えると、正当なサイトが得られるリンクは減少する。 一方、現在、痛い目に遭うことが多い悪徳サイトは、キュレートしたリンクネットワークによって、全てのリンクを獲得することになり、ランキングを上げていくだろう。
以下のコメントに注目してもらいたい:
Googleのウェブスパム対策チームは、とりわけ最近、問題の解決にテクノロジーよりも心理学を利用することに熱を上げているようだ。過去18ヶ月間のマット・カッツの発言は、ほぼ全て、脅しに近い。
個人的には、事業計画の中に、ペナルティーを科されるケースを想定しているブラックハットによって、「簡単に作れる」ウェブサイトが増加していく気がする。不完全で、熱心過ぎるアルゴリズムにスパムだと思われ、全ての努力が水の泡と化してしまうなら、わざわざ時間と労力を割いて、質の高いウェブサイトを構築する必要はあるのだろうか?インターン、または、Googleの職員ではない人物が、手動のレビューを行い、誤って、ウェブマスターガイドラインに違反していると判断されてしまうケースもある。
熱心なネガティブSEOキャンペーンにより、あるいは、Googleが診断を誤ったことにより、サイトが壊滅的なダメージを受けてしまう状況で、なぜ、わざわざ優れたコンテンツを提供しなければならないのだろうか?トラフィックの大半をGoogleに依存しているなら、ウェブパブリッシングモデルのリスクは、より高くなる。
MetaFilterも同様の問題を抱えている:
Googleは壊れてしまったのだのだろうか?それとも、自分のサイトが壊れてしまったのだろうか?Googleのクリックスルー率が急激に落下すると、誰もがこの疑問を持つ。伝説のインターネットフォーラムサイト、MetaFilterを設立したマット・ホーヒーは、過去1年半にわたって、この疑問を問い続けてきた。その一方で、広告収益の減少によって、数名のスタッフを解雇せざるを得なくなった。
あるいは、Googleは、MetaFilterの取り組みを嫌いになっただけなのかもしれない。
意図(した?)しなかった結末
これは、非競争的なアプローチに該当するのだろうか?ペナルティーを受けているサイトは、圧倒的に営利目的のサイトばかりなのだろうか?営利目的ではないサイトの割合を知りたい。自然な手法では、リンクの獲得が難しくなるため、営利目的のサイトにAdwordsを利用させようとしているのだろうか?SEOのコストを増やすことだけが目的なら、その目的は十分に達成されていると言えるだろう。
答えは分からないが、このような疑問を持つ理由は理解してもらえたのではないだろうか。
例えば、実は善意のある行動であり、Googleは、単純に検索結果を改善することを目指していると仮定しよう。しかし、ウェブマスター達は、リンクを張る行為に二の足を踏むようになる。これは意図とは異なる結果だ。実際にこのシチュエーションが発生したら、リンクを張る取り組みは、今以上に閉鎖的になる。リンクを獲得するのが難しくなり、リンク自体が問題になると、PPCとソーシャルメディアは、遥かに魅力的に映るようになる。
この記事は、SEO Bookに掲載された「Please Remove My Links or Else」を翻訳した内容です。
私もペナルティの経験は人並み以上にありますが 汗、リンク元を1つ1つチェックして問題ありそうな場合は削除依頼メールを送る作業、相当の時間と労力が必要なのは事実です。悪質な「ペナルティ解除請負業者」であれば、リンク元の精査もそこそこにとりあえず一斉解除依頼メールを送り付けそうな所もありそうですし。
人口リンク頼みのSEOは終焉に近づいているとはいえ、ここまで長年放置してしまったウェブマスターをやらなければいけない状況に追い込んでしまった責任がGoogleに全くないとも思いませんし、この辺りの状況が余り悪い方向に進まないことを望みたいですね。
また、記事の途中にあった「ペナルティーを科されるケースを想定しているブラックハットによって、「簡単に作れる」ウェブサイトが増加」、確かに日本でもこういうケースが増えているような気がしなくもない点は別の意味で怖いです。
現状効果があるリンクへの取り組みを完全に0にすることはすぐには難しい場合もあると思いますが、少しずつコンテンツマーケティングへの取り組みを本格化していきたいと思う今日この頃でした。 — SEO Japan