経済産業省と総務省、民間企業で構成された「IoT推進コンソーシアム」。2015年10月に立ち上がったこのコンソーシアムだが、傘下のワーキンググループの1つである「IoT推進ラボ」の動きが活発だ。
IoT推進ラボのIoT支援委員会は、経営共創基盤 代表取締役CEOの冨山和彦氏を座長とし、外資系を中心としたIT企業の役員、大学教授など24人で構成。2016年1月から2月にかけて、選抜したIoT関連企業に対して、資金援助・メンター派遣・規制改革・標準化の支援を行う「IoT Lab Selection」、観光や製造といった特定テーマのもと、IoT関連企業と企業、自治体などのビジネスマッチングを行う「IoT Lab Connection」、企業から提供されたビッグデータを活用したアルゴリズムの開発競争「ビッグデータ分析コンテスト」の3つの取り組みを進めてきた。
中でもこのラボの取り組みとして特徴的なのはIoT Lab Selectionだろう。第1回のセレクションでは、252件の申請から書類、プレゼンの審査を経て16件のファイナリストを選出している。この16件に対しては、各社の要望にあわせて数千万円の補助金の提供やメンターの派遣などを行うとともに、規制の見直しの支援を行っているという。この規制の見直しの支援というのは、民間だけでは実現できない取り組みといえる。
例えばファイナリストの中でもグランプリに選ばれたLiquidは、指紋を使った生体認証システムを開発している。彼らはこのセレクションに臨むに当たって、訪日観光客を迎えるホテル向けのソリューションの実証実験を行っている。
旅館業法上、外国人観光客が宿泊する際はパスポートの提示と保存義務がある。だがLiquidのソリューションを使えば、外国人観光客がパスポートのICチップ内に保存された個人情報と指紋をあらかじめマッチさせておきさえすれば、ホテルに来た際、指紋認証を行うだけでパスポートの確認が完了するのだという。
だがパスポート情報の電子的な保存はこれまでの旅館業法で考えればグレーゾーン。これに対してIoT推進ラボがこのIoT推進ラボが厚生労働省と掛け合うことでグレーゾーンを解消。その上で実証実験を行うことが可能になったという。このほかにもタクシーメーターアプリを開発するアフロに対しても、計量法上のグレーゾーン解消に向けてラボが経産省内での調整を行ったという。
すでにこういった成果を出しているIoT推進ラボだが、第2回のIoT Lab Selectionも準備中だ。4月15日から5月31日にかけて、参加者を募集。7月にも最終審査を行う予定だ。申請は、IoT推進ラボのウェブサイトから専用の申請書をダウンロード。内容を記入した上で、専用のアドレスに送信する必要がある。
支援の対象は、IoT等を活用した先進的プロジェクト実施する法人等、もしくはIoT推進コンソーシアム IoT推進ラボの会員であり、IoT、ビッグデータ、人工知能を活用して事業化に取り組むプロジェクトであることとなっている。
なおIoT推進ラボでは今後、複数の企業、研究機関などを巻き込んだ中長期的な実証実験「Lab Demonstration」を進める予定。まずは4月28日より実証テーマの募集を開始している。