IoTに投資(あるいは起業)するのは今がチャンス?!

iotgraph

編集部注:本稿はTim Chouによる。元Oracle On Demandのプレジデントであり、スタンフォードでコンピューターサイエンスのレクチャーを行い、またIoT Track of the Alchemist Acceleratorの議長も務める。

2004年に、私は最初の著書となる『The End of Software』を上梓した。当時はOracle On Demandのプレジデントであった。当時生まれたこのビジネスは数年をかけて10億ドルを稼ぎだすクラウドビジネスに発展した。そのような時代にあった私は『The End of Software』の中で、ソフトウェアは「サービス」として提供されるべきである経済面から期待される必然的な動きについて論じたのだった。

例として私は、サービスとしてのソフトウェアを提供する4社を検討した。VMwareSalesforceNetSuite、そしてOpenHarborだ。この時代にあって、Salesforceは未だ売り上げが8600万ドルという状況だった。ただ、この4つをとりあげた私も、時代を正しく予見していたというわけではない。4つのうち3つは押しも押されぬ大企業となり、エンタープライズソフトウェアの新世代を担うこととなったのだった。

そしてそこからさらに12年が過ぎ、第二世代エンタープライズソフトウェアは最盛期を迎えた。CRMやERPは当然のものとなり、ソフトウェアを購入すればほとんどがクラウドサービスとして提供されるようになっている。第二世代で、エンタープライズソフトウェアはその「完成形」となったのだろうか。

そういうわけでもないと思う。第二世代ソフトウェアの登場により、コストは下がり効率はあがった企業も多い。しかし私たちの住む世界の様子を変えるにはいたっていないと思うのだ。エネルギー、水、農業、交通、建築業界や健康問題について、当時生まれた第二世代エンタープライズソフトウェアは大した成果を示さなかった。ようやくそれが変わりつつあるように思うのだ。

工業機械やその他さまざまなモノたちは、センサーを搭載されてそれぞれが繋がるようになってきている。前CiscoのCEOであるJohn Chambersは2025年までに5000億のデバイスがインターネットに繋がるようになると語っている。風力タービンについてみれば、10万台がすでに400個のセンサーを搭載して5秒毎にデータを取得するようになっている。この数は今後ますます増えていくことは間違いない。

人のためのモノではなく、モノのためのモノを作るつもりなら、すぐに取り掛かった方がいい。

これまでも、デバイスを繋いでデータを収集したり、それを分析したり何らかの知見を得たりするミドルウェアやアプリケーションは存在した。しかしこれまでは、そうしたすべてを活用するのが「人間である」という前提になっていたのだ。人のインターネット(Internet of People)の時代だったのだ。しかしようやくモノに注目が集まってきた。モノは人のいないところにも存在する。モノの方にこそよりたくさんの「伝えたいこと」があるはずで、しかも人間よりもはるかに雄弁に語ることができる。Joy Globalの振動センサーを搭載した採掘マシンは、1秒間に1万回もデータを取得するのだ。エンタープライズアプリケーションやミドルウェア、分析ツール、などがモノを繋ぐことにより、より正確な採掘ツールを構築することができるのだ。きっと交通、健康管理、建築、発電、水や農業を巡る問題についても新たなソリューションを産んでいってくれることだろう。

すでにこの分野で走り出している企業もある。GE Softwareは2011年に10億ドルの資金を集めて設立さた。CEOのJeff Immeltは、産業用の機械がより一般的なものになっていく中、GEはソフトウェアおよびアナリティクス企業として成長していくと語っていた。Immeltは2020年までにソフトウェア関連ビジネスで150億ドルを稼ぎだすと言っていた。GEはそのためにGE DigitalのCEOであるBill Ruhを中心的な担い手としてPredix という新しいソフトウェアプラットフォームを構築した。

またPTCに関していえば、4億ドル以上を投じてM&Aのみちを突き進んでいる。ThingWorxを1億1200万ドルを投じ、ColdLightを1億500万ドルで買収した。Axedaは1億7000万ドルで買収している。ベンチャーについてみれば、おそらくご存じないかもしれないが、シカゴに拠点をおくIoT系スタートアップのUptakeがSlackやUberを上回ってForbesにおける2015年のHottest Startupに選出されている。4500万ドルを集め、資金調達が後の評価額も10億ドルとなっている。

IoTに投資すべきタイミングというのは、それぞれがはかるものなのだろう。しかしアーリーステージの、あるいはレイトステージでも良いかもしれないが、いずれにしても投資家であるのなら、エンタープライズソフトウェアの第二世代に革命をもたらすこの分野に注目しておいて良いはずだ。また、自身がスタートアップを運営する起業家であり、かつモノのためのプロダクトを生み出そうとしているのなら、ただちにスタートするのが良いだろう。12年もすれば、誕生したスタートアップはVMwareやNetSuite、あるいはSalesforceのような成長を遂げる可能性があるだろう。

原文へ]

(翻訳:Maeda, H

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。