Bitcoinの発明者、Satoshi Nakamotoは結局のところオーストラリア人起業家ではなかったようだ。Craig Wrightは「自分こそSatoshiだ」と3種類のメディアに対して主張したものの、わずか数日後に「Satoshi Nakamotoである証拠を公表するつもりはない」という 記事をブログに掲載した。
Wrightの戦術はかなり巧妙だった。自分がBitcoinを発明したという主張はGQ、 BBC、Economistのジャーナリストに対してなされた。これを額面どおりに受け取らないメディアもあったが、いずれも伝統的な記事発表の解禁日を守らねばならない立場にあった。Wrightの主張の真偽を判断できる暗号専門家はこの件に関して蚊帳の外だった。そこで記事の大見出しはWrightにたいへん都合のよいものとなった。
しかし Wrightの主張に対する疑問は即座に積み上がっていった。WrightがSatoshiであることを証明する証拠は皆無だった。
多くの関係者がWrightに対して「決定的な証拠を提出せよ」と迫った。幸いなことにそういう証拠は簡単に提出できるはずだった。たとえば、Satoshiのアドレスは誰でも知っている。そのアドレスからbitcoinによる送金があれば、送金者はSatoshi以外にない。SatoshiのメーリングリストからBitcoinコミュニティーに対してメールが送信されればそれは本物のSatoshiだ。
しかしWrightはそういった証拠を提出するつもりがないという。「しかしながら、今週の状況の進展により、〔Bitcoinの作者であることを証明する〕私が発明した最初期のアクセス・キーを公開する準備を進めていたが、私には〔公表する〕勇気が欠けている。私にはできない」とWrightは書いている。
ご覧のとおり、WrightはSatoshiであるという主張を文字通り取り下げたわけではない。しかしSatoshiであることを証明したくはないという。現実を直視するなら、これはWrightがSatoshiではないと言っているのに等しい。
WrightはBitcoinコミュニティーの著名人でBitcoin FoundationのトップであるGavin AndresenとJon
Matonisに密かに会って主張を伝えている。これによってWrightがSatoshiだという主張を2人が公に支持するという非常に困った状況がもたらされた。
この点ではおそらくWrightを賞賛すべきなのだろう。たとえ数時間であれ、世界中にSatoshi Nakamotoであると信じこませたというのは大したものだ。
2014年のDorin Nakamotoのときのようにロサンゼルスを横断するカーチェイスが見られなかったのは残念だ。これまでにこの人物こそSatoshiであるという数多くの理論が唱えられてきたが、長くもちこたえたものは一つもない。次に現れるSatoshiの場合もおそらく同様だろう。
グッドバイ。
画像: Russell Werges
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)