Matt Zeilerはカナダの農村で育った。それから数十年後の今、彼はPinterestやGoogleが保有しているようなビジュアル検索ツールを、他の企業やディベロッパーへ提供するためにスタートアップを運営している。
そのスタートアップの名はClarifai。ニューヨークを拠点とする同社は、どんなものが写真の中に含まれているかというのをアルゴリズムが学習できるように、ディベロッパーに対してメタデータを写真にタグ付けできるサービスを提供している。この機能を利用すれば、Clarifaiのディベロッパーは、対象物の含まれる写真を検索したり、アップロードされた写真と似たものが含まれる画像を検索したりできるようにアルゴリズムを訓練することができる。本日Clarifaiは、リードインベスターのMenlo VenturesやUnion Square Ventures、Lux Capitalなどが参加したラウンドで3000万ドルを調達したと発表した。同社のこれまでの調達額は合計4125万ドルにのぼる。
GoogleやPinterestといった企業がビジュアル検索テクノロジーの開発を進める中、Clarifaiも同じことをしようとしているが、彼らはサードパーティのアプリやディベロッパーにビジュアル検索機能を提供することに注力している。複数枚の画像に相当するデータがあれば、どんなものが画像内に含まれているかというのを判断するモデルをClarifaiで構築することができるとZeilerは話す。そしてディベロッパーは自分たちが識別しやすいタグを使うことで、画像や動画の中に含まれる”オブジェクト”のクラス(雛形もしくは定型)を新規にアルゴリズムに教え込むことができる。
「私たちにとって、顧客に通じる1番大事な扉となるのがディベロッパーの方々です」とZeilerは話す。「Twilioのサービスを考えてみて下さい。彼らはディベロッパーファーストで通信機能に特化したAPIプラットフォームを運営しています。私たちは似たような形でAIサービスを提供していて、積極的にミートアップやハッカソンに参加したり、オフィスでイベントを開催したりしています。今後は、全てのディベロッパーの間でClarifaiが話題となり、彼らが実際に私たちのサービスを使って次世代のアプリを作るようになってくれればと願っています。将来的には次のSnapchatとなるようなサービスをガレージで開発している人たちと、一緒に成長していきたいです」
Clarifaiは、経験の浅いディベロッパーやプログラマーに向けて、Twilioのように数行のコードで実装可能なAPIの形でツールを提供しているほか、カスタマイズ性の高い玄人向けのツールも用意している。もしもClarifaiが、Twilioのように上手くディベロッパーのトレンドを利用することができれば、Twilioと似たような形で強力な事業に発展していくかもしれない。
しばらくのあいだClarifaiは、画像・動画検索の機能向上に集中し続ける予定だが、データ構造を理解できるような技術があれば、理論上ほかのメディアにもサービスを展開することができる。ZeilerはClarifaiがほかにどのようなツールの開発を行っているかについて口を閉ざしているが、音声やテキストなど、サービスが展開されるであろう方向性は簡単に予想がつく。
Clarifaiの本質的なゴールは、GoogleやPinterestが保有しているようなツールを開発し、それを下流にいるディベロッパーやほかの企業に提供していくことだ。例えば、WalmartやMacy’sなどの小売企業はこのようなサービスを利用したいと思うかもしれないが、Googleのような会社と協業すると、小売店の情報を競合企業に渡してしまうことに繋がる可能性がある。そして最終的には、彼らが競合サービスを構築するための手助けをしてしまうことになりかねないのだ。
「私たちは何社かの大手企業を競合と見ていますが、この分野のスタートアップの話はあまり聞きません」とZeilerは言う。「たくさんのスタートアップが引き続き買収されていますが、私たちにとっては喜ばしいことだと社内ではその状況を祝っています。というのも、私たちは独立系のAI企業を作り上げたいと考えていますし、この市場には独立した企業が必要だとも考えているんです。顧客となる企業にはデータの扱いに関して私たちを信用してほしいと思っている一方、多くの企業はGoogleやMicrosoftなどの大手IT企業が、そのうち集めたデータを使って競合製品を作ろうとしていることを知っており、彼らのことを信用していません」
[原文へ]
(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)