YC 2017年夏学期デモデー1日目、50チーム一挙紹介

Y Combinatorの第25回のデモデーがスタートした。2017年夏のYCクラスには124社が参加している。YCでは毎年2回、夏と冬のクラスの卒業イベントが行われるが、今年の夏学期は12年6ヶ月の歴史の中でも参加チームの数が最大となった。内容はバイオテックからAIまで最近のテクノロジーのトレンドを反映したものとなっている。

YCのパートナー、Michael Seibelはイベントの冒頭の挨拶で「われわれはシリコンバレーにおけるダイバーシティーを前進させることに全力を挙げている と述べた。今回のクラスではファウンダーの12%が女性で9.5%がアフリカ系ないしラテン系(latinx *)だった。

こうしたパーセンテージはかなりの期間にわたって安定しているものの、YCは世界各地からスタートアップを受け入れている点で賞賛されるべきだろう。ひとつにYCのStartup Schoolがオンラインであるため国際的にスケール可能だという点がある。 今回は28%のスタートアップがアメリカ国外発だった。

Pykaは個人用自動飛行機をデモ。Y Combinatorのデモデーはカリフォルニア州マウンテンビューのコンピューター歴史博物館で開催された。

これまでのYC卒業生にはAirbnb、Dropbox、Stripeなどの著名企業に加えて、最近ではTwitch、Instacart、Coinbaseなどが含まれる。シリコンバレー内外からマウンテンビューに集まった投資家はどんなスタートアップが登場するか大きな期待を寄せている。

デモデーは2日にわたって開催されるが、以下は1日目に登場した50社だ。〔スタートアップのデモ内容についてはTechCrunchが注目するトップ7チームを訳出。他はチーム原文参照〕


Zendar – 悪天候下でも自動運転を可能にする高精細度レーダー

Zendarは自動運転車向けの高精細度レーダーを開発している。現在の自動運転車は車両が置かれた状況を認識するにあたってLidarと通常のレーダーに頼っている。レーザーを用いたLidarは精度が高いが悪天候下では能力が大きく低下する。レーダーは悪天候でも能力が落ちないが精度が悪い。Zendarは悪天候下でも高い精度で環境を認識できる機械視覚テクノロジーを開発している。これによりあらゆる天候下で実用可能な自動運転の実現が目的だ。Zendarによれば、向こう3年間で1000万台の自動運転車が製造されるという。Zenderは自社のテクノロジーができるだけ多くの市販車に採用されることを期待している。

Image via Sombre Lidar

Meetingbird – 企業チーム内におけるスケジュールの調整と最適化

TechCrunch記事.

Thematic – レビュー、調査記事のテキストを分析しテーマに対する評価を認識する

PullRequest – コード・レビューのマーケットプレイス

PullRequestは企業とコードレビューができるフリーのプログラマーを仲介するマーケットプレイスだ。プログラマーは企業で作成されたコードに問題点がないか調べ、副業とすることができる。PullRequestではAmazon、Facebook、Dropboxなどトップクラスのテクノロジー企業で働いた経験があるプログラマーをリクルートしている。優秀なプログラマーを揃えたことで、PullRequestには450社からの関心が集まっている。実際にサービスを利用するのはこのうちの一部ではあるが、
PullRequestはすでに通年換算で13万6000ドルの売上を得ている。同チームがターゲットしている市場ではスタートアップとFortune
500クラスの大企業を合計して400億ドル相当のコードレビューが行われている。PullRequestのビジネスの秘密はレビューを迅速、正確に実行するためのシステムの自動化にあるという。

Helium Healthcare – アフリカにおける医療記録の電子化

Darmiyan– アルツハイマー症を最大発病前15年で早期予測

Roofr – 衛星画像を利用した屋根の吹き替えの費用見積もり

CashFree – インドにおける支払い自動化

Skyways – 垂直離着陸できる大型輸送用ドローン

Mystro – Uber、Lyftなどのドライバーの業務を効率化し利益の増大を助ける

TechCrunch記事.

10 By 10 – 人材リクルートのためのマーケットプレイス

Honeydue – カップルのためのフィナンシャル・プランニング

TechCrunch記事

D-ID – 顔認識からプライバシーを守るテクノロジー

Life Bot – 誰でも簡単に使える音声対応アプリ

TechCrunch記事

Modular Science – ロボット農業

イーロン・マスクは人工知能に反対らしいが、Modular Scienceではロボットが野菜を栽培できるようにしたいようだ。このスタートアップではカリフォルニア州ペチュラで実際に野外テストを実施中だ。向こう半年以内に独自の農業ロボットを用いて野菜生育のプロセスの99%をロボット化するのが目標だという。
Modular Scienceでは1エーカー(4046平方メートル)あたり2000ドルの料金を考えている。同社によればこれは現在農家1「が労働者に支払っている賃金の半額だという。

Audm – オーディオコンテンツのサブスクリプション

TechCrunch記事

GameLynx – 次世代のモバイルeSport

Gopher – An app platform atop email

メールが好きな人間はいないが、われわれの多くは毎朝メールを開いている。Gopherではメールをベースにした自動化が簡単に実行できるプラットフォームを提供する。たとえば着信したメールの内容をSalesforceや会議の日程調整アプリに転送したりできるようになる。着信メールに対してフォローアップを返信する同チームの最初のメール拡張機能は1万3000の月間ユーザーを獲得している。また300人のデベロッパーがこのプラットフォームを利用するために登録している。いちいちメールを開き、別のアプリに送って処理するというわずらわしいことをする代わりにGopherでは必要な作業すべてをメールの着信トレイ内で済ませることができるようにする。


70 Million Jobs – 犯罪記録保持者の就職を助けるサービス

May Mobility – 都市部における自動運転交通機関

TechCrunch記事

Flock – Wi近隣の安全を守るワイヤレス・セキュリティー・システム

Indivio – ビデオ広告のA/Bテスト・システム

Relationship Hero – 人間関係の悩みを専門家が解決

ShiftDoc – ヘルスケア専門家向けマーケットプレイス

Dropleaf – インディー・ビデオゲームのためのNetflix的サービス

Sunu – 視覚障がい者のためのソナー式ブレスレット

Wildfire – 大学当局の承認を受けたキャンパス掲示板

OncoBox – 後期がん患者のための抗がん剤治療の決定を助ける

VergeSense – 建物、施設の管理をAIで効率化

Pyka – 個人用自動飛行機

Pykaは「一人乗り自動操縦飛行機」で空飛ぶ自動車の夢を実現しようとしている。同社はすでに重量180kgで30m以下で離着陸できる自動飛行機を製作している。規制当局により有人飛行が許可されるまでには膨大なテストが必要なのでPykaではニュージーランドに空中播種ビジネスのための会社を設立している。この会社では毎時600ドルの料金を得つつ有人飛行が許可されるために必要な飛行時間を蓄積中だ。ただし空中播種自体もアメリカで15億ドルの規模であり決して小さいビジネスではない。ZeeやGoogle Waymoなどに先駆け、Pykaは個人向け自動飛行のパイオニアとしての地位確立を狙っている。

Fastpad – インドにおける求人プラットフォーム

Gustav – 小人数の企業のための人材サービス

Forever Labs – 個人の幹細胞を利用した老化防止テクノロジー

Forever Labsでは老化に基づく疾患が生じた際、治療のために利用できるようユーザーの幹細胞を冷凍保存して将来に備えるシステムを開発している。幹細胞はネズミにおける実験では寿命を平均16%延ばす効果が認められている。しかし老化に伴って幹細胞の有効性は減少する。Forever
Labsでは現在20人の医師がこの治療を提供しているが、来年までにアメリカ全土の主要都市にサービスを拡大したい意向だ。同社によれば、幹細胞銀行は560億ドルの市場があるという。

TechCrunch記事

Ubiq – エンタープライズの遠隔会議のための画面共有システム

Airthium – 水素圧縮によるエネルギー蓄積システム

UpCodes – ビル建設におけるコンプライアンスを助けるサービス

TechCrunch記事

Cambridge Cancer Genomics – l血液検査による抗がん剤治療のモニター

HelpWear – 医療器具認定レベルのウェアラブル心臓モニター

Net30 – 建設作業員への支払いの迅速化

TechCrunch記事

Guggy – テキストメッセージをユーモラスなGIFに変換

Escher Reality – 拡張現実のデータ処理バックエンド

現実世界をARテクノロジーによって拡張するためには、正確なデータが必要だ。Escher Realityはユーザーのスマートフォン・カメラのビデオ・データを処理し、現実世界の中に位置づけることによりデベロッパーがARを作成することを助ける。Facebook、Appleも独自のARプラットフォームを開発しているが、EscherチームではiOSとAndroidを通じてデベロッパーがARアプリを開発できるようにする。すでに600人デベロッパーが待機リストに登録しており、ゲームスタジオその他の企業10社からも問い合わせを受けているという。また大ヒットしたロボットが登場する映画、『パシフィック・リム』のARアプリに利用する契約も結ばれている。Escher RealityがデバイスやOS独立にARを提供できるプラットフォームとなるなら多くのデベロッパー、ユーザーにとってAR世界への好都合な入口となるだろう。

TechCrunch記事

Carrot Fertility – 企業保険加入者の不妊治療を助ける

Feather – ミレニアル世代向けスタイリッシュ家具のレンタル

TechCrunch記事

Prism IO – 消費者のサービス離脱を防ぐ

PayFazz – インドネシアにおける銀行を経由しな支払いサービス

TechCrunch記事

Sixty– オンデマンドのウェブアプリ・サポート・プラットフォーム

Totemic Labs – 高齢者向け安全サポートシステム

Peergrade – 教師に生徒のフィードバックを伝え評価作業を助ける

Kestrel Materials – 温度に反応して特性を変える繊維

SMB Rate – スモールビジネスの信用格付けによりローンを得やすくするサービス

〔日本版〕* latinx スペイン語では名詞に性があるためは男性、女性双方に用いられるlatinxという新語が作られている(まだ利用者はさほど多くない)。なお、 1日目にデモした50社のうち、内容紹介を訳出した7社は次の記事と同じ。Check out TechCrunch’s picks for the top 7 startups from YC Demo Day 1

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

投稿者:

TechCrunch Japan

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