山田進太郎氏が新たに立ち上げたのはフリマアプリのメルカリ

山田進太郎氏がウノウをZyngaに売却したのはもう3年近く前のことになる。この間、ご存知のとおり、Zyngaの失墜により日本からZynga Japanが撤退するなど、ゲームやソーシャル周辺のビジネスはめまぐるしく状況は変わっている。だから、彼が新しく始めるビジネスがC2Cのコマースサービスであってもまったく驚きはしなかった。むしろ、流行のビジネスに取り組むのは彼らしいとさえ思っている。

彼はZynga Japanを去ったのち、少しブランクを開けて今年に入って新たなスタートアップKouzohを立ち上げている。そして満を持してリリースしたサービスは、C2Cのコマース、いわゆるフリマ(フリーマーケット)のサービスを提供するスマートフォンアプリのメルカリだ。すでにこのアプリはGoogle Playからダウンロードできるようになっている。

フリマアプリといえば、FabricのFrilが先行しているし、フィーチャーフォン時代にはショッピーズがその市場を確立し、いまではサイバーエージェントの毎日フリマLISTORなどいくつかのサービスが参入している状況だ。Frilは少し前の数字になるが、2013年3月27日付の日経新聞朝刊の報道によれば3月下旬で1日3300の売買が成立し、1品あたり平均約3,000円で取引されているというから、1日でおおよそ1,000万円の取引があると想像できる(これがホントならFrilは1日100万円の収入があることになる)。現在はこれよりももっと成長しているだろうから、スタートアップにとっては魅力的な市場であることはわかる。

これらのサービスの多くは若い女性をターゲットにしたファッション中心のサービスのようにも思える。メルカリももちろんこの分野をなぞるが、山田氏によれば、この市場に参入を決めたのは先行するサービスの成功ぶりだけを見ていたわけではないようだ。

たとえば、ヤフーオークションはその取扱高はおおよそ年間6,800億円弱程度と、ここ数年は変化していない。成長が止まった状態だ。それは、入札による値決めや煩雑なやり取り、月額の会員費、C2Cならではのトラブルなど、スピードや手軽さを求めているスマートフォン世代には敷居が高く、敬遠されがちな状況だと山田氏は考えている。ケータイ世代の台頭を背景に成長したDeNAのモバオクも同じくスマートフォンの台頭によって利用が減少している。既存C2Cのサービスが停滞しているからこそ、この市場に参入の余地がある。だから、扱うアイテムはファッションだけでなくオールジャンルにしたいと言う。

それだけでなく行き過ぎた経済発展によって、リソースが逼迫する中で、個人間取引が伸びるだろうとも語っている。そもそも山田氏は楽天の内定時に学生インターンとして楽天フリマの立ち上げに関わっていた。そんな経験も今回のサービスに乗り出したきっかけになっているようだ。


メルカリでは売り手はスマートフォンで商品の写真を撮影して、値段を決めてその説明を加えて投稿するだけで出品が完了する。買い手もクレジットカードなどの手段で商品を買えるようになっている。ただ、そこにはエスクローのような仕組みが入っていて、買い手は実際はメルカリ側に商品代金を支払い、商品が売り手から買い手に届いた時点でお互いにユーザーを評価し終えた時点で始めて、メルカリから売り手に入金されるようになっている。

手数料は出品した商品価格の10パーセントを売買成立時に売り手が支払うことを考えているが、スタート時の1、2カ月の間は無料にしている。決済にかかる手数料(クレジットカード手数料やコンビニ決済手数料など)もメルカリ側が支払うとしているので、現在のところ売り手も買い手も、いまのところ余計な費用はかからない。

メルカリは現在はAndroidアプリしかないが、数週間以内にiPhoneアプリもリリースされるという。山田氏はこのビジネスを日本で立ち上げた後に、早い段階で米国で展開したいと考えている。渡米経験のある彼は北米で使われるようなサービスを作りたかったと常々考えていた。Zyngaではそれはなし得ることができなかったが、北米で類似のサービスが大成功を納めていないことを考えると、もしかしたらメルカリにはチャンスがあるのかもしれない。