保険セールス向けのSaaSサービス「hokan」を開発するhokanは3月13日、500 Startups japan、BEENEXT、MIDベンチャーキャピタルを引受先とした第三者割当増資を実施した。調達金額は6000万円だ。
「保険証券ってどこにある?」と聞かれたとき、すぐに答えられる人はどれくらいいるのだろうか。保険証券とは、保険契約の内容や給付金の支払い条件などが明記された契約書だ。ただ、これは大切な書類ではあるが頻繁にチェックする類いのものではないので、どこに保管してあるか分からないという人も多いだろう。
hokanのメイン機能は、この保険証券の見える化だ。保険営業員が顧客の保険証券の画像をアップロードすることで、書面をオンラインで確認できるようになるほか、保証内容や解約払戻金の額をグラフで表示する。
保険証券を見える化し、グラフやデータをもとにした営業活動を行えるようにするのがhokanの役割だ。hokanによれば、同社が200人を対象に行ったオンラインアンケート調査で、保険を契約する人の90%は自分の保証内容を正確に把握できておらず、全体の40%は保険証券がどこに保管されているか把握していないことが分かったという。
また、hokan代表取締役の小坂直之氏は、「オンライン化することで、(保険証券を)すべてデータとして扱えるようになる。営業員に対して、同じ補償内容でもより安くなる保険をレコメンドしたり、契約日から1年などの節目で訪問すべき顧客をレコメンドするなどを行う」と今後の目標について語る。将来的には、hokanにCRMなどの営業支援機能を追加することで営業員向けSaaSサービスとしての利便性を強化していくようだ。
また、hokanは年内にも一般消費者向けに「家計簿アプリの保険版」をリリースする予定だ。これは、ユーザー自身が保険の補償内容や、解約払戻金の金額などをスマホで確認するためのアプリだという。ただ、正直このアプリのマネタイズは難しいのかもしれない。
給料は毎月支払われるし、それに合わせて貯金額は増えていく。だから、例えば家計簿アプリの「マネーフォワード」を頻繁に開くというユーザー行動は理解できる。僕も自己満足のために3日に1度くらいはアプリを開いている。でも、その一方で、保険の保障内容や解約払戻金の金額を確認したいと思うのは1年に1度あるかないか。それだけC向けの保険管理アプリを普及させるのは苦労しそうだ。
それに対し小坂氏は、「C向けの保険管理アプリとしてのマネタイズは考えていない」としたうえで、将来的にはこのC向けアプリに保険募集人とメッセージのやり取りができる機能を追加し、保険内容をいつでも確認できるだけでなく、保険に関する相談ができる窓口として同アプリを位置づけていくと話す。
hokanは4月1日に営業員向けサービスのベータ版を公開し、その後7月1日に正式版をリリースする予定だ。価格はまだ未定だが、月額5000円に加えて、保険証券のアップロード数に応じた従量課金方式を採用する予定だという。
代表取締役の小坂氏は元々保険の営業マンだった。その後、複数の保険会社の商品を取り扱う保険代理店を開業した。その経験から、「未だに保険は保険営業員から加入する人も多い。そのため、営業員が活用できるインフラを作っていくことこそが、日本における金融流通の革新に寄与できる」と考え、2017年にhokanを創業した。