ザッカーバーグ、英国とカナダの両議会から共同召喚

英国とカナダのそれぞれの議会の委員会が、前例のない国境を超えた共同の召喚状をFacebookのCEOマーク・ザッカーバーグに送った。

両国の委員会は、民主プロセスにおけるオンライン偽情報の影響を調査していて、今年綿密な取り調べが行われてきたCambridge AnalyticaとFacebookによるユーザーデータ悪用スキャンダルに関連する質問について、ザッカーバーグに回答してほしいと考えている。

さらに広げていうと、両委員会はソーシャルメディアプラットフォームを通じたオンライン偽情報の拡散に関連する民主的な影響と経済的なインセンティブの調査を続けるにあたり、Facebookのデジタルポリシーと、情報ガバナンスの実践についてさらなる詳細を求めているーこれは少なからず最近のデータ流出に基づいている。

今日Facebook創業者に送られた手紙の中で、英国のデジタル・文化・メディア・スポーツ省(DCMS)委員会と、カナダの情報アクセス・プライバシー・倫理常任委員会(SCAIPE)の委員長、Damian CollinsBob Zimmerは、“偽情報とフェイクニュースについて国際的な委員会”を組織するため、11月27日に“ウェストミンスター国会議事堂で特別な共同の議会公聴会”を開催する意向だと記している。

そして「これは我々委員会が主導するが、他にも多くの議会が出席するだろう」と続けている。「このような共同の公聴会はこれまで開かれたことがない。Facebookを“修理”する、世界の事案や民主プロセスにおけるプラットフォームの悪用を防ぐ、という自己宣言した目標を考慮し、この公聴会に出席する機会を提供したい」としている。

両委員会とも、オンライン偽情報に関する最終的なレポートを12月末までに出す予定だ。

DCMS委員会は、Facebookの代表やデータ専門家など呼び出してかなりの公聴会を開いたのち、すでに予備レポートをこの夏に発表している。レポートの中で、オンライン偽情報と闘い、またデモクラシーを守るために政府に早急な対策を求めている。また、レポートにはデジタルリテラシーについての教育プログラムの費用を賄うためにソーシャルメディアプラットフォームに課税する、という提案も含まれている。

しかしながら英国政府はこれまでのところ、委員会の提案の多くを却下しているー明らかに‘待って証拠を集める(そして/または政治的に緊迫した問題を茂った草の中に蹴り込む)アプローチを好んでいる。

一方で、いわゆる‘フェイクニュース’が引き起こした民主主義へのダメージに対するカナダの関心は、Cambridge Analyticaに関係していたデータ会社AIQにより大きくなった。AIQはCambridge Analyticaのデータ取り扱いとシステムデベロッパーを担う企業の1社でーCA問題を暴露したChris Wylieは、彼の元雇用主にとって不可欠な部門だったと表現しているー汚れ仕事を引き受けていた。

SCAIPE委員会はすでに、AIQの代表者に尋問する複数回の激しいセッションを設けたーこれは少なくとも大西洋の向こうの議員からかなりの関心が寄せられた。

同時にDCMS委員会は、オンライン偽情報について数カ月にわたる調査の中で、FacebookのCEOを呼び出そうと繰り返し試みたが、失敗に終わった。その代わり、Facebookは何人ものそう高い地位でないスタッフを差し出し、ついにCTOのMike Schroepferの出番となった。Schroepferは見るからにイラついた委員会のメンバーに5時間にもわたって火あぶりにされた。だが、そこでSchroepferが答えた内容は満足するものではなかった。

選挙干渉に関する政治的な懸念が今年になって急に高まり、ザッカーバーグは4月、米国の上院と下院であったセッションに出席したー議員の質問に向き合うためだ(しかし必ずしも答える必要はない)。

彼はまた欧州議会の会議にも出席したーそこでは疑念をはらすために議員に質問ぜめにされた。

しかし英国議会はずっと冷たく扱われてきた。とうとう、DCMS委員会はザッカーバーグが次に英国の土を踏んだ時には正式な召喚状を発行するかもしれないとの発言に及んだ(当然ザッカーバーグは英国を訪れていない)。

そして委員会はいま、別の策を試みているー国際的な議員による大連立というものだ。最低2カ国、それ以上になる可能性もある。

英国とカナダの委員会の委員長が、ザッカーバーグが“すべての議会”に出席することができないのは理解しているとしながらも、他の国にいるFacebookユーザーはザッカーバーグの組織の一連の説明責任を、直接的にはザッカーバーグの説明責任を必要としているとし、加えて「我々は、この責任はあなたが負いたいものであると考えている。両委員会はこの件に関して2018年12月末までに最終レポートを出す計画だ。あなたの証言の聴聞はすでに遅れていて、急を要する」と述べている。

「我々は、この歴史的な機会を活用してあなたが大西洋両サイドの国々の議員に、プラットフォームでの偽情報の拡散を抑止するために、そしてユーザーデータを保護するために取っている方策について語ることを求める」とも書いている。

しかしながらこれまでのところ、米国外でザッカーバーグとの面会を確保できたのは、欧州連合の28加盟国の代表議員だけだ。

それを考えると、今回の召喚も冷たく扱われる可能性はかなりある。

「我々は委員会の手紙を受け取り、期日までにMr Collinsに返事をする」とFacebookの広報は、TechCrunchが今回はザッカーバーグが出席するのかと訪ねた時にこう答えた。

委員会は11月7日までに返事するよう求めている。

おそらくFacebookは新しいグローバルポリシー責任者のNick Cleggを送り込むだろうー彼は以前、英国の副首相を務めていて、少なくとも英国の議員にはかなり馴染みある人物だ。

たとえCollinsの最新の策がザッカーバーグを呼び出せなくても、どこかの国よりも大きなスケールのユーザーベースを抱えるFacebookのような世界的プラットフォームを監視する政府のチャレンジを考えた時、2つの委員会が現在とっている国際連合というアプローチは興味深い。

もし2つの委員会が共同公聴会に他国の議員を誘っていたらーたとえば、Facebookのプラットフォームが部族間抗争をエスカレートさせたとの非難があるミャンマーなどー召喚はザッカーバーグにとってかなり無視できないものになっていたかもしれない。

Facebookは主張している。「我々は説明する義務がある」。そしてザッカーバーグはCEOだ。(しかしながらFacebook/ザッカーバーグが誰に対して責任があると感じているのかは示されていない)。

国際的な共同の委員会を設けるというのは新たな戦略だが、英国とカナダの議員、そして当局はすでに何カ月にもわたって協働しているーそれぞれの質問や調査の一部のための動きで、彼らは複雑なデータ追跡の糸口を探し、超国家企業の構造を理解している。

(意図した結果となるような世論の操作で)政治とソーシャルメディアが衝突したもつれたウェブをみるとき、一つのことがますます明らかになる。インターネットの相互接続、クロスボーダーという性質だ。特に資金たっぷりのデジタル政治キャンペーンと噛み合った時に鮮明だ。実際、個人データが入ったバケツは、従来の法体系に国家レベルでかなりの負担をしいている。

英国の法律がそうであるように、国の選挙法は選挙運動費のようなものへの規制に頼っていて、共同の作業は実際に金を追跡し純粋に流れの地図をつくれなければ効果はないだろう。

英国のデータ番犬が警告したように、オンラインの政治ターゲット広告での個人データ使用が懸念される場合、倫理が真っ先に、そして中心にこなければならない。

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(翻訳:Mizoguchi)

投稿者:

TechCrunch Japan

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