TechCrunch Tokyo 2013:スタートアップバトル出場24社を紹介 – 優勝は指輪型デバイスのRing

3回目の開催となったTechCrunch Tokyo 2013は初の2日間を通してのイベントだった。今回は目玉企画のスタートアップバトルに予選から24社が登壇し、それぞれのプロダクトを紹介してくれた。

スマートフォンアプリ、Webサービスのみならず、ハードウェアや3Dプリンタを取り扱うサービスなどバラエティー豊かなスタートアップ達をイベントに来れなかった読者の皆さんにぜひご紹介したい。まずは決勝に進出した10社から。

Ring(株式会社ログバー):最優秀賞
スタートアップバトル最優秀賞に選ばれたRingは全く新しいウェアラブルデバイス(入力デバイス)だ。名前の通りリングの形状をしており、指にはめて利用する。Google Glassやスマートウォッチといったウェアラブルデバイスはディスプレイが付いていて、その上でアプリなどを動かすが、Ringは入力デバイスとして機能する。

例えば、テレビに向かって人差し指で「TV」と書くとテレビがONになったり、「$12」と書くと支払いが完了したり。会場では実際に電気をつけるデモを行ってくれた。

現在複数の企業とパートナーシップを結びプロダクト完成に向けて日々開発を続けている。2014年中の出荷を目指しており、1万円から2万円程度で販売する予定だそうだ。

planBCD(KAIZEN platform):審査員特別賞
planBCDはグロースハック系のサービスで、jsのコードを1行追加するだけで簡単にA/Bテストができる他、グロースハッカーのクラウドソーシングサービスとしても利用できる。

クラウドソーシングではKAIZEN platformが抱える200名以上のグロースハッカーが改善案を提出してくれる。それを実際にA/Bテストにかけて、効果があるか測定できる。βテストで20件ほど試したところplanBCDの提案は既存のデザインよりも71.4%の確率で改善したそうだ。スマートフォンに限ると今のところほぼ100%で改善できている。

年内にはグロースハッカーを500名にまで増やし、年明けには1,000人の確保を目指している。

flier(株式会社フライヤー):エボラブルアジア賞/kobo賞
flierは毎月20冊の本を選定し、要約文を送ってくれるサービスだ。毎年新たに出版される本の数は増えており、良書を見つけることは難しくなっている。flierから配信される要約文はA4サイズで5枚程度の分量で、ちょっとした時間で読み切れるようになっている。スマホやタブレットに最適化されており、雑誌感覚のインターフェイスとなっている。

すでに国内の大手出版社のうち17社と協業しており、コンテンツは全て利用許可を取っている。10月10日でのローンチ以降、IBMやJT、デトロイト・トーマツなどが採用しているという。書籍要約のニーズを持っているユーザーは世界で3,000万人以上と見込んでおり、平均単価1万円で3,000億円の市場規模があるそうだ。

Locarise Analytics(Locarise株式会社):アマゾンウェブサービス賞
先日のOpen Network LabデモデイFall 2013でも取り上げたLocariseは実店舗向けのGoogle Analyticsを提供する。来店客や店のウィンドウを見ている顧客の行動を取得/分析し、ウィンドウを見ていた人が店に入るコンバージョンレートや、店内の滞在時間、購入までの経路といった情報をダッシュボードにまとめて教えてくれる。

どのように情報を取得するのかというと、店舗側にセンサーを設置しておき、来店客が持っている端末のWiFi信号を定期的に受信している。この信号を処理することで彼らの行動をウォッチするそうだ。

WiFiをONにしているスマートフォン所有者だけの行動を分析するには偏りが出るのではないかという疑問もあるが、40%程度の顧客を分析できれば充分であるという。すでにサービスは稼働しており、数十店舗が利用している。

Ietty(株式会社ietty):KDDI賞
iettyは住みたい物件の条件をいくつか登録しておくと、ぴったりの部屋を教えてくれるサービスだ。賃貸市場の営業は店で来店者が来るまで待っている時間が長いため、人件費のうち1,200億円程度が無駄になっているという。iettyはこの1,200億円が投入されるようなプラットフォームを目指している。

ユーザーの条件を基に営業マンが最適な部屋を提案してくれるし、直接コミュニケーションを取れるため、わざわざ店に足を運ばずにすむ。6月から15社とβテストを開始しているが、他の賃貸情報サイトに比べると成約率は高いようだ。

xica adelie(株式会社サイカ):マイクロソフト賞
近年人間が扱うデータ量は増えてきた。Webサービスやアプリではもちろんだが、後ほど紹介するLocariseのようにオフラインでも様々なデータを取り扱うようになっている。しかしこれらのデータの統計を取り分析することは容易ではない。ツールの使い方を学習するにも時間がかかるし、専門家に外注するとかなりの費用がかかる。

そこでXICAはプロ向けではなく、素人向けの統計分析ツールを提供する。データを入力すると、重要なKPIに対してどのアクションがどのくらい影響を与えているのかを可視化してくれる。10日前に正式ローンチしてから5社が利用を開始し、さらに8社が利用することに決まっているそうだ。値段は1アカウント月額5万円となっている。

Money Forward クラウド会計ソフト(株式会社マネーフォワード):PR TIMES賞
マネーフォーワードは本誌でも何度か取り上げているし、クラウド家計簿サービスとして知名度は高い。昨年12月のローンチから月次平均43%で成長を続けており、数十万人のユーザー居るそうだ。

サービスを続けていく中でユーザーから多かった要望の1つが事業向けも使いたいとのことだったので、新しく事業向けのクラウド会計サービスを開発したという。基本的な会計機能の他に、レシートをアップロードすると自動で入力される機能や、これまでの収入/支出から将来のキャッシュフローを計算してくれる機能なんかもある。

マネーフォーワードとしては会計サービスとしてだけでなく、経営サポートツールとしても提供していきたいそうだ。

Rinkak(株式会社カブク):NTTドコモ・ベンチャーズ賞
Rinkakはもの作りを簡単にするためのプラットフォームだ。3Dプリンタが徐々に安くなってきたとはいえ、現状ではモノを作るためにはまだ大変な面も多い。商品の試作を作るのに高額な費用と時間がかかったり、製造時に最低ロット数を頼まなけらばならなかったりする。

Rinkakでは製造と販売と発送をサービス側が担当し、クリエイターはプロダクトをデザインすることだけに集中できる。3Dデータをアップロードすると、製造コストが自動で計算される。後はクリエイターは値段を設定するだけで商品を販売できるのだ。試作品は5,000円から1万円程度で作成できる。

すでにサービスは稼働しており、フィギュアやiPhoneケース、アクセサリーなどが集まっており、3Dプリンタでしか作れないデザインのものが多く販売されているようだ。

Virtual Cycling(株式会社キーバリュー)
Virtual Cyclingはエアロバイクを楽しくするサービスだ。フィットネスクラブに通ってもそのうち70%以上が退会してしまうそうだが、それは運動が単調でつまらなく、仲間が居ないからだという。

Virtual Cyclingはエアロバイクにデバイスを取り付けて、専用のゴーグルを使う。Google Mapsのストリートビューを使っており、自転車を漕ぐと世界中どこへでもいけるし、空を飛ぶことなんかもできる。デバイスの値段は2,000円から3,000円程度を予定している。

PlugAir(Beatrobo)
BeatroboはCDを新しいデバイス「PlugAir」に置き換えようとしている。CDは購入したらCDプレイヤーで再生できるように、PlugAirはスマートフォンのイヤホンジャックに挿して再生できるデバイスだ。

一昔前はCDプレイヤーやMDプレイヤー、そしてiPodなどのデバイスが音楽を再生するためのデバイスとして定着していたが、現在はスマートフォンが主流となっている。そこでスマートフォンに最適な楽曲供給源を目指そうとしている。

スマートフォンではiTunesなどから楽曲をダウンロードすれば音楽を聞くことはできるが、PlugAirではCDのように友達に貸しても聞けたり、CDジャケットのようにPlugAirをアーティストに合わせてカスタマイズしたりできる。友達にシェアした回数に応じて特典を設けるなど、独自の楽しみ方を模索中だ。第一弾としてはUniversal Musicと提携し、12月中に販売を開始する予定だ。

以下は予選に出場した14社。

ビザスク・フォー・ビジネス(株式会社walkntalk)
様々なビジネスの場で経験者のアドバイスが欲しいことは多々ある。そんな時にスポットで適切な人にスポットコンサルティングを頼めるサービス「ビザスク」のエンタープライズ版が「ビザスク・フォー・ビジネス」だ。こちらは秘匿性の高い案件なども発注できる。ビザスクは経済産業省から”多様な「人活」支援サービス創出事業」の委託先”として採択されている。

YAMAP(株式会社セフリ) 
このアプリは名前からも想像できるように、山(YAMA)のマップ(MAP)を提供する。単に山のマップを扱うだけではなく、登山では電波がないことも多いため、電波無しでも現在地を取得できる仕様になっている。登山人口は1,000万人ほど居るそうで、アウトドア市場全体を見れば3,300万人も居るこの市場に便利なツールを提供する。すでに1万ユーザーを獲得。

Relux(株式会社Loco Partners) 
100項目におよぶ独自の審査基準で宿泊施設を審査し、高品質な旅行体験を保証する宿泊予約サービス。チェックイン日と宿泊人数を入力すると最適な宿泊先を提案してくれる。現在のユーザーの予約単価は9万円ほどで、これは競合サービスよりも格段に高い。これまでの累計流通総額は1,500万円、年末までには4,000万円ほどを見込んでいる。

Dr.Wallet(株式会社Bear Tail)
このサービスに関しては本誌ではローンチ時KDDI∞Labo第5期採択時などにも取り上げたのでご存知の方も多いだろう。Dr.Walletはレシートをアップロードすると人力でデータ化してくれるクラウド家計簿サービスだ。8月19日のローンチ以降、10万ダウンロードを達成している。

StepUp.io(Benkyo Player LTD)
動画で何かを学ぼうとする人向けのツールを提供する。例えばダンスを学びたい時にパートごとに動画を簡単に切り分けてリピート再生することができる。料理や楽器といったカテゴリーの動画とも相性が良さそうだ。ビジネスモデルとしてはグループ機能や現在はYouTubeの動画に対応しているがユーザー独自のビデオをアップロード可能にする際に有料化を考えているという。

Cosmection(株式会社シンセレンス)
最も自分に合うコスメ商品を見つけてくれるサービス。化粧品は高評価のレビューの商品でも、自分の肌に合うとは限らない。Cosmectionではすでに使っている製品や同じ傾向にあるユーザーのデータを基に最適な品を提案してくれる。

PlayLife(株式会社プレイライフ)
遊びの体験を皆で共有し、より一層遊びを楽しくしようというのがPlayLifeだ。お気に入りの女子会スポットや、楽しかったプチ旅行の体験なんかを投稿して共有することはもちろん、サービス内で友達を遊びに誘うこともできる。

FunPicty(SODA株式会社)
FunPictyはドコモ・イノベーションビレッジ第1期デモデイに登壇した笑いがコンセプトのプラットフォームだ。面白写真アプリをいくつか保有しているSODAは短命で終わってしまうそれらの写真アプリからの画像を1つのプラットフォームにまとめることで新しい価値を生み出そうとしている。

・ゲームシスト(デジママジデ株式会社)
インディーズゲームの開発者向けのサービスで、一緒にゲームを作る仲間を集めて開発したり、ゲームをリリースできる。リリース後のマーケティングやアドバタイジングまでも面倒を見てくれる。

infogra.me Visualize Engine(インフォグラミー株式会社)
infogra.meは誰でも無料で簡単にインフォグラフィックを作るためのツールでデータを入力するとキレイなインフォグラフィックをすぐに作成してくる。インフォグラフィック作成サービスとしてはinfogr.amやvisual.lyなどが存在する。

Cumiki(Cumiki)
他人が書いたコードを読むのは大変である。途中からジョインしたり跡継ぎの人のためにノートを書くにしても面倒で更新に時間がかかってしまう。cumikiではコードをドラッグするとポストイットのようなポップアップが表示されそこへ簡単にメモできる。また、コードとメモが紐づいているので、元のコードがアップデートされた場合でも自動的に最新版を追跡して対応関係を保つことができる。

Revolver(株式会社リボルバー):レディー・ガガやオバマ大統領などは自らのための専用のSNSを構築している。最近では自分たち専用のSNSを作成する事例も増えてきているそうで、この需要に応えるべくRevolverは開発された。ユーザーは簡単に特定の人やテーマ、会社についての専用SNSを作成できる。

TSUKULINK(株式会社ハンズシェア) :東京オリンピックが決まり膨大な予算が投下される業界の1つである建築だが、現状はあまり明るくないようだ。賃金の低下や人手不足といった問題を抱えている。しかし、雪国では冬の間に雪の影響で仕事ができなく手が余っているなど地域や時期によって差があることも確かだ。そのような非効率な点をTSUKULINKではマッチングしてくれる。

cutty(株式会社アクトキャット)
美容師は約3年かけて技術を習得している。その技術を習得するためには練習が必要であり、そのためにカットモデルを探している。原宿や渋谷なんかで美容師がカットモデルを探しているのを見かけることは多いだろう。Cuttyではそんな悩みを解決すべくカットモデルと美容師をマッチングさせるサービスだ。全て無料で利用でき、美容室のクーポンなどでマネタイズする。


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。