WWDCで発表されたApple(アップル)のアクセシビリティに関するニュースの核心部分はすでに報道されているが、それ以外にもアクセシビリティに関連するアイテムは発表されている。ということで、ここでは、あまりニュースとして取り上げられないアップルの発表に関して、私が障害者としての観点から最も興味深いと思っている点について、考察を述べてみたい。
アクセシビリティが主要な関心事に
私がWWDCの週に報告したことの1つは、アップルが(iOS 13とiPadOS上で)アクセシビリティメニューを設定階層の最上位に移動したことだ。「設定」→「一般」→「アクセシビリティ」とドリルダウンするのではなく、いまやアクセシビリティ設定は「通知」や[「スクリーンタイム」などと同じリストビュー内にあるトップレベル項目になった。アップルはまた私に対して、この動きはwatchOS 6にも適用されると説明している。
アップルは私に対して、「アクセシビリティ」メニューが「設定」のトップページに移動されたことを追認しました。また、アクセシビリティ機能の選択は、最初に実行される「セットアップ」プロセスの一部になりました。この2つの動きの目的は、アクセシビリティ機能セットを、全体として目立たせることだったと聞いています。
同様に、アップルは最初の「セットアップ」プロセスにアクセシビリティ機能選択を追加したと語った。新しいiPhoneまたは他のデバイスを初めて設定するときには、システムはユーザーに対して、例えばVoiceOver(「設定」→「一般」→「アクセシビリティ」→「VoiceOver」)のような、望ましいアクセシビリティ機能を設定することを促す。
どちらの変更も、長い間待ち望まれていたもので、特に象徴的な重要度が大きい。平均的なユーザーにはあまり影響はないかもしれないが、アップルがこの動きを行った事実は、彼らが如何にアクセシビリティコミュニティを気にかけているかを饒舌に物語っている。「設定」の中で「アクセシビリティ」をフロントページに移動することで、障害を抱えた(そしてさまざまなな意味でアクセシビリティに課題を抱えた)ユーザーたちに、もう少しだけ配慮することになるのだ。
身体障害者としての私自身にとっては、これは取るに足らないことではない。この変更は、アクセシビリティを第一級の市民にするという点に関して、アップルが業界のリーダーとしての地位を強化することになる。アクセシビリティをトップレベルに引き上げることで、アップルはそれがオペレーティングシステムの重要な側面であり、私を含む多くの人びとのユーザー体験の重要な一部である、というメッセージを発信するのだ。
HomePodへのハンドオフ(切り替え)
私はHomePodを使って音楽やPodcastを聞いたり、HomeKitデバイスを制御したりすることを楽しんでいる。しかしながら、これまでのHomePodで最も煩わしかった点は、中断したところからの再開ができないということだった。音楽やPodcastを聞きながら、スーパーマーケットから家に帰ってきて、そのまま聞き続けたいと思っても、私はまず再生を止めて、出力先をオフィスのHomePodに切り替えなければならない。それは別に難しいことではないが、アクセシビリティの観点からすると、たくさんの余計なタップを繰り返さなければならない。私はもちろんちょっとした面倒を感じていて、その面倒な手続きを強いられるたびに悪態をついている。
iOS 13では、その面倒はなくなる。私のiPhone XRをHomePodに(設定時と同様に)近付けるだけで、iPhoneは再生中の音声を全て、スピーカーに対してハンドオフ(切り替え)するのだ。繰り返すが、入出力の切り替えは全体からすれば大した話ではない。しかし障害者の1人として、私はほんのわずかな不便さにさえ敏感なのだ。受信したiMessageを自分のAirPodではっきりと読み上げてくれる機能などと同様に、こうしたちょっとした洗練は、長い目でみたときにより楽しくシームレスな体験につながっているだけでなく、体験そのものへのアクセシビリティを高めてくれるのだ。こうした意味で、この技術は様々な意味で魔法のようなものなのだ。
ボイスコントロール(Voice Control)の素晴らしさ
ボイスコントロール(Voice Control)の追加そのものは間違いなくメインテーマの1つだが、その舞台裏が大きく語られることはない。
WWDCの開催週の中で、私が話をしたすべての人たち(同僚のレポーターだろうが、開発者だろうが、あるいはアップルの従業員だろうが)が、同じ意見を持っていた。ボイスコントロールはとても素晴らしいと絶賛していたのだ。実際に、 ジョン・グルーバー(John Gruber)氏のポッドキャスト「The Talk Show」の中で、彼と特別ゲストのクレイグ・フェデリギ(Craig Federighi)氏とグレッグ・ジョシュウィキ(Greg Joswiak)氏が議論している部分はその良い一例だ。それは私が会議で耳にしたことと、完全にかみ合う内容だ。フェデリギ氏は、Appleのアクセシビリティチームのメンバーによる内部デモを見たときに、涙があふれることを抑えることができなかったと語っていた。
後でもっと深く考えてみるつもりですが、ボイスコントロールに対する果てしない喜びと熱気は、私がこれまでアップルを扱ってきた日々に目にした、いかなるものとも比べることができません。アップルコミュニティだけではなく、私が話を聞いた関係者たちも絶賛を惜しまないのです。
同様に、会議の中でのアクセシビリティ集会でもそれは熱い話題の1つだった。多くのエンジニアたちや、アップルのアクセシビリティグループのメンバーたちが、ボイスコントロールを送り出せたことをどんなに誇らしく思っているかを、私に伝えてくれた。私はその開発が、大変な仕事だったことを聞かされており、そこに関わった全ての人びとにとって、それが世界に対してリリースされるところを見ることは、ここまでたどり着くために必要だった困難な道のりを振り返らせ、興奮させるものなのだ。
高いレベルから眺めた時に、ボイスコントロールは、私にとってアップルのアクセシビリティに対する取り組みを象徴するものとして目に映った。では動画を見てみよう。
これはとても信じられない、まるで魔法のように感じられるものだ。だがこれはすべて本物である。そして何より素晴らしいのは、これは非常に多くの人の経験をとても深く素晴らしいものへと変えてくれる、革新的機能だということなのだ。フェデリギ氏が泣いたのも無理はない。これは本当に素晴らしいものなのだ。
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(翻訳:sako)