インデックス率の改善、メタタグの最適化、CTR向上のための施策。SEOにおけるテクニカルな領域は非常に広範囲です。もちろん、全ての領域を最適な状態にすることが望ましいですが、そのためには領域ごとの優先度をつけることが効果的でしょう。
自身のサイトが今取り組むべき領域はどこか。現状把握に役に立つ記事を紹介します。
技術的な進歩と実装方法の理解を深めるために、テクニカルSEOに求められる内容に優先順位をつけよう。そして、あなたが次に取り組むべき内容を理解しよう。
何をもってして、「最高のWebサイト」と定義することができるだろうか?
健全で、SEOのポテンシャルを十分に発揮している機能的なサイトがベースとしているものはなんだろうか?
マーケットとキーワードの調査、E-A-T、検索意図に合致したコンテンツ、バックリンク、などなど。
しかし、こうしたサイトに共通していることは、テクニカルSEOの要件を十分に満たしているということである。
自身のサイトに求められるテクニカルSEOの領域に優先度をつけよう。優先度順にピラミッドを作成した場合、下部の要件を満たしていなければ、その上部の要件を満たすことは難しいだろう。それぞれの段階で検索エンジンへの対処内容は異なっている。
それは、
- クローラビリティ(Crawlability)
- インデキサビリティ(Indexability)
- アクセシビリティ(Accessibility)
- ランカビリティ(Rankability)
- クリッカビリティ(Clickability)
の5つに分けることができる。
ピラミッドの図の中のそれぞれの段階で求められる内容をしっかりと理解すれば、テクニカルSEOに対する恐怖心を払拭することができるし、優れたWebサイトを作る上でSEOが果たす役割が過小評価されることもないだろう。
※1 上部2領域が最適化(改善要素)の対象
※2 下部3領域が基本要件(阻害要素の排除)の対象
(当記事では、下から順に解説がされます)
①テクニカルSEOの基本:クローラビリティ(Crawlability)
上記のピラミッド画像の最下部に位置するテクニカルSEOの基本要件は、URLのクローラビリティである。
クローラビリティでは、URLが検索エンジンに発見される状態になっているか、という領域を扱う。検索エンジンがクロールできないURLであっても、ユーザーはサイトのナビゲーションを通じて、閲覧できることもあるかもしれない。
しかし、検索エンジンのボットには発見されていないため、検索結果にそのURLが表示されることはない。
それゆえ、クロール可能なURLとは、
- 検索エンジンに存在が知られている
検索エンジンはリンクを辿る、サイトマップを読み込むなどして、URLを発見する。 - ボットのアクセスを禁止していない
robots.txtのファイル内に特定のページやディレクトリへのクロールを禁じていた場合、多くの検索エンジンのボットはその指示に従ってしまう。 - クロールバジェットの上限以下になっている
多くのサイトでは当てはまらないが、Googleのアルゴリズムによって割り当てられたクロールの「予算(バジェット)」は、サイトのパーツによっても消費される。そのため、特定のURLへのクロールの遅延や問題を引き起こすこともある。
テクニカルSEOの監査を始める際、インデックスされていないページを特定し、その理由を調査しよう。もちろん、意図的にそうしている場合もあるが、エラーが原因の場合もあるだろう。エラーの場合は、修正することにより、すぐに改善結果が見られるだろう。
クロールバジェットは公開されておらず、定量化することは難しい。基本原則は、クロールにかかるコストを最適化し、重要なページの(検索エンジンに把握させる)優先度を高めることで、検索エンジンからの流入増加が期待できるというものだ。
テクニカルSEOとしては、ページがどのように発見され、どう優先度をつけるか、という部分を改善する。その結果、クロール率の改善が見られるだろう。
②インデキサビリティ(Indexability)
クローラビリティの次に優先度が高いものは、インデキサビリティである。
インデックス可能なURLとは、検索エンジンが持つWebページのカタログ(一覧)に含まれ、検索結果のページに表示される可能性があるURLとなる。URLがクロールされたとしても、様々な要素により、インデックスの対象とならない場合がある。
もっともわかりやすい例を挙げると、メタロボットの記述やロボットテキストの指示となる。
同様のコンテンツでより権威のあるバージョンが他にある場合も、インデックスの阻害となる。インデックスが阻害される要素として、具体的には下記の状態が該当する。
- 重複コンテンツ
- Canonical(正規化)の宣言
印刷用ページやモバイル版ページなど、代替バージョンがある場合(Mobile First Indexに該当している場合は、デスクトップ版ではなく、モバイル版のページがインデックスされる)。 - リダイレクト
適切なページがキチンとインデックスされているかを確認するために、インデックスに関わる要素が適切にセットアップされ、適切なページに設定されているかを確認することがテクニカルSEOの範囲となる。
③アクセシビリティ(Accessibility)とWebサイトのパフォーマンス
アクセシブルなURLとは、表示と描画が容易であるURLのことだ。
クロールとインデックスが可能なURLといえど、検索エンジンのボットがクロールを試みる際、アクセシブルではないという場合もある。ランク付けはされている、
しかし、アクセシビリティの問題が依然として残っている場合、検索結果において、マイナスの評価を受ける可能性がある。
ボット、そしてユーザーへ向けたアクセシビリティとは、下記のような広い範囲が対象となる。
- サーバーのパフォーマンス
- HTTPステータス
- ロードタイム、ページサイズ
- JavaScriptのレンダリング
- サイト構造内のページの深さ
- 孤立したページ
- スパムやハッキングへの対応
ここでの目標は、アクセシビリティとパフォーマンスの指標がSEOに悪い影響を与えてしまう”しきい値”を発見することだ。そして、全てのページが、少なくとも、最低限の水準を満たしている状態にすることだ。
この目標を達成するために様々なツールを使用することになるだろう。サーバーのダウンタイム、ボットとユーザーに提供されるHTTPステータス、ページがリクエストされたときのリソース(CSS、JS、画像など)のサイズ、TTFB、FCP、TTLBなどのロードタイムの指標。このような数値を取得できるツールが必要となるだろう。
孤立したページや深すぎる階層のページへのリンクの設置を行うことになるかもしれない。また、優れたコンテンツであり、キーワードの最適化もしっかり行っているページでも、スクリーンリーダーに対応しておらず、多くのユーザーの目に触れられていないといった場合は、アクセシビリティを考慮する必要もある。
アクセシビリティの問題も解決されているのであれば、テクニカルSEOの基本要件は満たしていると言えるだろう。これらが最適化されていないサイトのSEOは非常に困難なものになる。優先度に従って施策を進めていくが、悪影響のある要素の排除から改善要素へと、対象は変化していく。
④ランカビリティ(Rankability):順位を改善するためのテクニカルSEOにおける役割
ランカビリティは最適化の領域に含まれる施策だ。SEOの土台を固めるための施策ではないため、テクニカルSEOのアドバンスレベル(次のレベル)と考えられる場合もある。
クローラビリティ、インデキサビリティ、アクセシビリティが十分に満たされたURLが順位づけされることは明らかだ。この時点で非常に良い順位を与えられている場合もあるだろう。
しかし、多くの場合、少しの工夫によって順位の状況はさらに良くなるはずである。
リンク獲得による順位上昇
それが内部リンクであるか外部リンクであるかに関わらず、リンクは人気のあるページから人気のないページへと、ページの重要性とトラフィックを渡すという性質がある。
それゆえ、バックリンクを精査し最も有益なリンクプロフィールを決定すること、また、ページの評価を促進するために内部リンクを構築することがテクニカルSEOの領域となる。
内部リンクは、クロールの頻度(新規作成や更新したコンテンツからのリンクを構築することで古い記事の新鮮さを強化する)やコンバージョン(高いコンバージョン率を誇るページへユーザーを遷移させる)を改善するだけでなく、ページの重要性を渡し、コンテンツサイロ(*1)の構築の手助けとなる。
*1 コンテンツを関連性に基づいて配置・整理する構造
関連性の最適化による順位上昇
関連し合うコンテンツ同士を内部リンクでつなげることにより作成されたコンテンツサイロは、単体のページで成し遂げる以上の順位上昇を、コンテンツのグループ化によって達成する。
コンテンツサイロは、ロングテールのキーワードと関連し合うコンセプトに注力したページによって、流入が発生するキーワードを拡大させながら、深く専門性の高いグループとなる。
他のページと比べ、キーワードの使用率、使用される単語数、テキストとコードの比率など、特定のキーワードグループにおける品質の指標となるものや、危険視号となる指標を見てみるのもいいだろう。
⑤クリッカビリティ(Clickability):SEOとユーザー行動の架け橋
テクニカルSEOが扱う最後の領域は、ユーザーがあなたのサイトをよりクリックしてくれる状況を作ることだ。
通常の検索結果以外の場所や、よりリッチな(見栄えの良い)表現方法なども対象となる。
リスト、テーブル、見出しなどは検索エンジンがコンテンツを理解するのに役立ち、強調スニペット、カルーセルなどに採用されることもある。
同様に、Schema.orgを始めとした構造化データの実装は、検索結果における表示方法をリッチにしてくれる。
- パンくずリスト
- レビュー
- 商品情報(値段や在庫数など)
- イベント情報(開催日、場所など)
- レシピ情報(サムネイル、評価、調理時間、カロリーなど)
- 同サイトの重要ページへのサイトリンク
- 検索結果画面上での検索機能
同様に、画像や動画に適切なマークアップを施すことで、画像検索や動画検索での優位性を得られる。
検索意図の関連性とコンテンツのユニーク性はユーザーを惹きつける要素だ。これらは抽象的な概念であるが、ツールを駆使するなどして分析し、改善することは可能だ。機械学習などの技術は、検索意図やクリック行動に適用され、AIを用いたコンテンツ作成も考えられている。
OnCrawlではCTRのリッチデータの影響を明らかにできる。
その一方で、類似性の分析による重複コンテンツや検索意図との不一致を把握するためにテクニカルSEOが果たす役割もあるだろう。
最後に、テクニカルSEOは相関性を発見する目的で、Webサイトの特性とユーザー行動のデータの分析を行うこともできる。あなたのWebサイトがユーザーを惹きつける状況を一つでも多く作ることが目的だ。
この戦略は、ページやWebサイトの構造と、ユーザー行動の指標(直帰率、滞在時間、CTRなど)との驚くべき相関関係をあきらかにすることもある。
技術的な改善を実施する
テクニカルSEOを実施するにあたり、基礎的な内容の理解であれば、技術職で働いた経験が求められているとは限らない。
クロール、インデックス、ランキング、クリックに問題がある場合、SEOの他の領域(コンテンツ・外部評価)は、これらの問題の解決に適していない。こうした問題を特定し、解決することが、テクニカルSEOが果たす役割である
OnCrawlのようなソリューションを使用することで、コンテンツ、ログファイル、検索データなどのデータをダッシュボードで管理し、どこから改善すべきか理解しやすくなるだろう。
クロールされたページ、ランクインしたページ、アクティブなページの分布。Source:OnCrawl
あなたのサイトは、SEOの優先度のピラミッド内のどの段階に位置するだろうか?
複雑で広範囲なテクニカルSEOの領域をうまくまとめてくれた記事でした。
基本的な最適化に加え、Googleが新規でサポートする領域についても、積極的に改善を進めていきたいです。実装や修正にはエンジニアのサポートが必要となるケースも多いと思いますが、今回の記事のようなロードマップを用意しておけば、スケジューリングの把握にも役立ちそうです。
改めて、自身のサイトにおけるテクニカルSEOの現状を振り返ってみてはいかがでしょうか?