大企業が現場の労働者を見つけ維持するのを支援するWorkStepがシリーズAで約11.1億円の資金を調達

現場で働く作業員を見つけ、維持することは、この新型コロナウイルス流行の時代において、これまでになく重要な課題になっている。

そこでWorkStepの出番だ。このスタートアップは、大規模なサプライチェーンの雇用主を支援することを使命として4年前に設立された。この完全分散型企業は米国時間2月3日、1050万ドル(約11億1000万円)のシリーズAラウンドを完了したと発表した。これは株式と転換社債を含む未発表だった670万ドル(約7億700万円)のシードファンディングに次ぐものだ。

今回のシリーズAの資金調達は、FirstMark Capital(ファーストマーク・キャピタル)が主導し、前回の投資家で戦略的パートナーであるPrologis Ventures(プロロジス・ベンチャーズ)も参加した。

同社の従業員ライフサイクル管理(ELM)ソフトウェアプラットフォームは、大規模サプライチェーンの雇用主が新たな現場の労働者を獲得するのを支援するだけでなく、労働者がより長く働き続けられるように訓練し、より幸福でいられることを目的に設計された、とWorkStepの共同創業者兼CEOであるDan Johnston(ダン・ジョンストン)氏は述べている。ジョンストン氏は10年以上前にオレゴン州ポートランドで倉庫を管理していたときに、いくつかの課題を直に経験した。

新型コロナウイルスの感染拡大は、食品の提供から荷物の配達まで、現場の労働者が行う仕事の重要性を浮き彫りにした。しかし、サプライチェーンの労働力への依存度が高まるにともない、記録的な離職率となり、多くの企業が人員不足に陥り、残った労働力は手薄になっていると、ジョンストン氏は指摘している。

WorkStepは人事、採用、組織のリーダーに、従業員のライフサイクル全体にわたる「完全な透明性」を提供することで、企業が離職を最小限に抑られるように支援すると主張している。同社は以前、クラウドベースの「Hire」と呼ばれるサービスを構築し、2020年秋には「Retain」という製品を発表した。

「新型コロナウイルスの影響で、あらゆる規模の企業が、現場で働くチームの健康、安全、満足度を優先することを余儀なくされています」と、ジョンストン氏は述べている。

同社の顧客には、地域の3PL(サードパーティロジスティクス企業)や物流センターから、フォーチュン500に入る16社まで、北米全域にわたる数百社の産業、物流、輸送、倉庫業の企業が並んでおり、その中には食料品チェーンのKroger(クローガー)、Alpine Food Distributin(アルパイン・フード・ディストリビューション)、TransPak(トランスパック)などが含まれている。

これまでに同社は50万人のサプライチェーン労働者に「リーチした」という。

WorkStepの主張によると、事例研究を行ったフォーチュン100のある食品・飲料会社では、同社がRetainを提供したことにより、離職率が最大29%減少したという。これによって企業は、コストが膨らむ可能性のある人員の入れ替えや再教育にかかる費用を節約することができる。

ジョンストン氏によると、2020年秋にRetainを立ち上げたことで、WorkStepの事業は2020年下半期に2倍以上に増えたという。このことによって、同社はその年の最後の2カ月間に収益が経費を上回ったことを意味する「ボトムライン・プロフィット」として年末を迎えることになった。

WorkStepは必ずしも新たな資金を調達する必要はなかったものの、事業を倍増させる機会を得たことで、規模を拡大し続けることができると、ジョンストン氏は述べている。

「これは絶好の機会に乗じたラウンドでした」とジョンストン氏はTechCrunchに語った。「このセグメントの離職率は中核的な問題になっています」。

WorkStepは今回の新たな資金調達により、エンジニアリング、製品、販売、カスタマーサクセス部門にまたがる既存のチームで働く14人の従業員を、2021年中に2倍以上に増やし、さらに2022年度末までに3倍にする計画だ。

FirstMark CapitalのAdam Nelson(アダム・ネルソン)氏は、最初のホワイトボードセッションに同席し、WorkStepが「大規模な」好機に取り組んでいるところだと確信している。

「WorkStepと既存のソリューションとの間における真の差異は、WorkStepが派遣社員や一時雇用をソリューションとして捉えていないことだと我々は考えています」と、ネルソン氏はTechCrunchに語った。「彼らはそれを、雇用主が適切な人材を見つけ、訓練し、維持することができないために発生する、数千億ドル(数十兆円)規模の死重損失の症状として捉えています」。

WorkStepは、従業員のライフサイクル全体に対処し、データを活用して「現場の労働者に声を届けると同時に、雇用主をより賢く、より積極的にする」と、同氏は付け加えた。

カテゴリー:HRテック
タグ:WorkStep労働資金調達

画像クレジット:Kmatta / Getty Images

原文へ

(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。