地名に関するキーワード、場所に依存するキーワードでの集客を行うための考え方


「サイトと地理的なクエリの結び付きを強化する際の考え方」についての質問をいただいたので今回はこれについて答えてみたい。

来店、あるいは訪問型のビジネスにおいては地名に関するキーワードからの集客が非常に重要である。
「品川 歯医者」「横浜 歯医者」といったキーワードだ。

そして、ベニスアップデートによって地域との関連性が高いと考えられるキーワードは、検索しているユーザーの位置によって検索順位が異なるようになったと言われている。
日本ではベニスアップデートが導入されたというGoogleからの公式なインフォメーションはないようだが、実際には順位は異なっている。

例えば「歯医者」というキーワードでは、品川で検索している場合と横浜では自然検索の順位が明らかに異なる。

実際に移動して確かめるのは難しいのだが、地域による検索順位の変化を確認できる(厳密にイコールとは限らないが)。
Googleの検索画面の右上の歯車マークのアイコンをクリックし、「検索設定」「場所」の順でクリックしてやると場所を指定することができる。

出来る限り近隣の歯医者を検索結果に出そうとしていることがよくわかるだろう。

このような地域性のあるキーワードだけではなく同名の法人が複数ある場合、法人の名称を検索すると検索しているユーザーの近隣の法人の検索順位が上になるといったような現象も見られる。
要はGoogleはできる限り検索意図に近い検索結果を返そうとしている結果がこれなのだ。

これらのことからわかるようにSEOにおいては、Webサイトと地域の関連付けをGoogleに対して正しく指し示してやることが重要だということが分かるだろう。
ではどうすればいいのか?というのが今日のお題だ。

基本は、渡辺隆弘氏の【ローカルSEO】[1] ローカルSEOの概要に詳しいのでこちらをご覧いただきたい。

なのでここに載っていないことについて種々私が体験したことについて書いてみよう。

よくある間違いがとにかく地名に関するキーワードを埋め込むという手法である。
建築会社などで「当社施工対象地域」などと称して、全ページに近隣地名を全て埋め込もうとするといったことをやっている会社もある。
それぞれのページにある様々なキーワードと、地域キーワードの掛け合わせで集客しようとする企みだ。
しかしこれはNGである。まずいい結果を生まない。安直にはうまくいかないのである。場合によっては全体の検索順位に対してネガティブな影響を及ぼす。

とは言っても、これはまるっきり無意味というわけでもない。

店舗概要といったページの中に施工対象地域を入れておくといったインフォメーションは悪くない。
これはユーザーにとっても、
「あ、この建築屋さんはうちのところまで来てくれるんだ」
ということが確認できるといった利便性を提供する。
この程度では地域キーワードの掛け合わせで来訪することはなかなか望めないが、やらないよりはマシであり可能性はゼロではない。
要はユーザーのためになる程度にやりましょうということである。

少しズルく考えれば、対象地域を明記した概要のページを充実させて作ればキーワードの掛け合わせパターンが増えるかも知れない。
概要ページといったなおざりにされやすいページについて頑張ってみるのは意味があるかも知れないのだ。

私が考える重要なことそれは

ページの中に地名を必然として入れる

ことだ。

建築会社の事例で言えば、自分の会社が立地する地名については当然のことながら上位に来ることが多いだろう。
しかし、周辺の地名についても上げたい場合は、その地域における施工事例、オープンハウスなどを詳しく書くのである。

もしそのようなコンテンツが作れないのであれば、深追いせず潔くあきらめるのが吉である。
なぜなのか?

自分のWebサイトは該当の地域キーワードで上がる意味が見出せないからだ。

上位に表示されるサイトには上位に表示するべき意味がなければならない。
なので、もし様々な地域キーワードで上位に表示したいと願うのであれば、実ビジネスにおいて何らかのアピールポイントが必要なのだ。
バーチャルオフィスを借りてそこを支店として記載するといった裏技もあるが、これがばれたらブランディングを損なうのでそんなことはすべきではない。

あくまでも該当地域に住んでいるユーザーにとって、Webサイトに訪問する意味がなければならないのである。

そのSEOの個々の施策にどこまでの工数・金額が許容されるのか


これはとてもとても難問である。

最初からサイトを作る場合であればSEOの考慮を行うならばそれほど困難ではないことが多い。
まったくゼロからつくるなら、無限の選択肢の中で「こうしたほうがSEOの観点からは正解」という作り方を選ぶことができる。
それらのどの選択肢を選んでもコスト的に変わらないことがほとんどである。

端的に分かりやすい例を挙げてみよう。

社長ブログをサブドメインにするか?サブディレクトリにするか?

サイトの制作段階においてはどっちを選んでも制作に要する工数は全くと言っていいほど変わらない。
ところがひとたび作った後で変更するとなると、結構大変である。
設定を変更するだけなら簡単であるが、サイトの運用歴が長くなっているとこんなことでも結構面倒くさいことになる。
現在運用中のページのGoogleの評価を新しいページに引き継がなければならなくなる。

こんな感じで一度作ったものの変更を行うのはとても大変だ。
建築物を考えてもらうと分かりやすいと思う。

建てた後で「ここは洋室ではなく和室にした方が良かった・・・」

となった場合に変更するのは非常に面倒だ。
しかし、最初から和室にしておけばなんてことない。
Webサイトの場合はここまで極端ではないかも知れないが、似たようなものである。

最初から考慮しておくことが重要なのである。

しかし、最初からSEOの考慮ができているサイトというものはとてもまれだし、最初考えていた最適解と実際の運営にかい離が生じることはごくごく普通の出来事だ。
といったわけで後からの修正は避けがたく発生する。

しかし、ここがとてもとても難しいところだ。

SEOにおいて絶対の正解はほとんどないからである。

変更を行うことによってどれだけ検索エンジン経由での集客が増えるか?最終的なコンバージョンに寄与するか?はやってみなくては全く分からない。
費用対効果を予め推定することはほぼ無理だ。

ではどこまでやるべきなのか?
私はこう思うのである。

ここまで予算をかけることを許容しよう

という一線を引くのがいいのではないか。
サイトの収益から考えて、ここまでならばまずは費用をかけてもいいという予算をまずは決め、その範囲において優先順位をつけて実施するしかないと私は考えている。
不確実なビジネスに対する投資と同じ考え方だ。

結局のところそのための予算をまったく投下できないのであればSEOを実施することはできない。

また、ごくわずかな予算しかなければ成功は恐らくおぼつかないだろう。
ではどれくらいかければ適正なのか?

まずは感覚的に自然検索経由のユーザー10%増程度を目標にしてみるのがいいのではないか?というのが私のざっくりとした意見である。
10%ユーザーが増えることによって得られるコンバージョンから、どれくらい利益が得られるのか?
そこから逆算して予算を決めてみたらどうだろうか?

これには様々な前提があって、それを無視しているのであくまでごく乱暴な目安にしか過ぎない。
しかし、今までSEO観点においてサイトの修正をほとんど行っていないのであれば、一つの目安になりうると考える。
ほとんどSEOの考慮ができていないのであれば、チョロチョロ直すだけで10%ぐらいは増やせるだろう。

多くのサイトにおいて10%の自然検索の増大は大した利益向上をもたらさないだろうが、その範囲内での予算であればさして痛くもないだろう。

でも、これも様々な状況に当てはまるわけでもない。
そもそも自然検索経由での集客が月間500にも満たないようなサイトであれば、10%増えたところでコンバージョンが増えることはさして期待できないので、そこから予算をねん出することもできまい。

このようなケースも私は難問だと思っているのだ。
サイトが全く収益化に寄与していないケースである。

ゼロの収益を1万倍してもゼロだ。
ましてや10%増えたところでどうなるものでもない。

全く収益化に寄与していないサイトについては、私はまずは売りたいサービスなり商品なりの宣伝ページをきっちり作りこみ、まずはリスティングで集客することを勧めたい。
リスティング及びリマーケティングで集めても、まったくコンバージョンが立たないのであればSEOをやったとしても多分無理だ。

もう一つ難問のケースだが、10%ユーザーが自然検索から増えたとしても微々たる予算しか出ない場合だ。
会社がSEOに対する投資を認めてくれればいいのだが、認めてくれなければどうするか?

サラリーマン的な処世術からすればSEOなんかやらないというのも正解だろう。
しかし、それでもSEOをやりたいというのであれば、担当者が自発的に労働強化で乗り切るしかないのではないか?
自分でやれるところをやって、それで結果でもって示すしかあるまい。

さて、最後になった。

SEOに正面から取り組んでいるサイトで、個々の施策にどれだけかけるべきか?

もう簡単にできるところはあらかたやりつくし、工数がかかるところをどうするか葛藤しているケースだ。
SEOの担当者の力量、経験が最も試されるところだ。

場合によっては数百万といった金額がかかることもあるかも知れない。
それをやるかやらないか?

他のサイトで効果があった施策であったとしても、自サイトでは効果があるかどうかは不明だし、そもそも他サイトでSEO施策をやった結果どんな効果があったか?なんてことはほとんど情報がない。

これほどの予算規模になってきたら、SEOのちゃんとしたコンサルタントを頼むしかないのではないか?と考えている。

ちゃんとしたコンサルタントと書いたが、これが分かるコンサルタントは恐らく日本の中全部合わせても何十人もいないだろう。
本を書いているコンサルタントでも、すごくいい加減で嘘八百言う有害なコンサルタントも多く知っている。

難しいのだが、ちゃんとしたコンサルタントにジャッジしてもらうしかないというのが結論になりそうだ。
というなんともつきなみで、かつつまらない話で締めくくるしかないのである。

SEO担当者を自社で採用すべきかしないべきかの指針について


今回のテーマであるが会社の方針として難しい問題について考えてみたい。

SEO担当者を自社で採用すべきか?

という問題である。
実はこのブログのネタというのは、社内外の人や掲示板などで受けた質問に答えてというところから取っているケースが多い。
自分が簡単に答えられる質問もあるのだが、ちょっと考えてしまったりするような質問もある。
そのような質問で「これはいい質問だわ」と思うとブログに書くといったわけだ。

今回の質問は「どうやったらいいSEO担当者を採用できるのでしょうか?」

という質問だったのだが、その質問には前提を疑う必要があった。
そもそもSEO担当者を採用すべきか?という観点から考えられなければならない。
こっちの質問がむしろ重要である。

「ほとんどの会社においてSEOの担当者は不要である」

からである。SEOの担当者が絶対的に必要な会社というのは非常に少ない。

業種から言うと絶対必要な会社というのはSEO業者、あるいはWebの集客のコンサルティング会社ぐらいのものである。
これまあ当然すぎるほど当然なので、ほとんどの会社はそもそもSEO担当者が必要かをよく吟味しなければならない。

SEOがビジネス上重要であったとしても何故SEO担当者が不要なのか?
前提としてはWebサイトが重要であり、SEOに取り組まねばならない会社であったとする。その中において担当者が不要だというケースについて列挙してみたほうが早そうな感じなので、不要なケースについて書いてみよう。

1.Webサイトを数多く所有しているわけではない

SEOの知識がサイト運営において必要な場面は非常に少ない。
担当者が主に活躍するのはサイトの開設時、リニューアル時である。
そんな局面においても、一つのサイトについて多大な時間が必要なわけでもない。

せいぜい数十時間、いや数十時間もかかることはごくごくまれだろう。

普段の仕事としてはウェブマスターツールで被リンクを定期的にダウンロードしてチェックしたり、クローリングできているか確認したり、といったような業務になる。
こんな仕事は1日平均20分ぐらいあればだいたい事足りる。
コンテンツの増強計画をアクセス解析などを元に作るといった業務もあるが、そんなしょっちゅうやるものでもない。

だから、2・3サイト持っているというぐらいならば、SEO専任の担当者は要らない(兼任だったらいたほうがいい)。

2.SEOについての社内のコンセンサスが得られていない

実はこれが重要だったりする。
SEOはビジネス的なメリットが出るかどうかが不確実なマーケティング手法である。
これをやったことによって、どれだけの利益が得られるのか?についてを常に問われる組織においてSEOは向いていない。
SEOは確実な正解はあるが、その施策を行ったとしても結果が出るかはやってみなければわからないからだ。
費用対効果が明確なのはリスティングといった広告である。
もし、費用対効果を明確にするのであればリスティングに取り組んだ方がよいだろう。

3.担当者に短期的な結果が求められる

短期的な結果が求められるSEO担当者は不幸である。
あまりにも性急に結果が求められるならば、被リンクを買う、あるいは自分で人工リンクするしか選択肢がなくなる。
そのような場合にはペナルティの危険を伴い、逆効果になるかもしれない。
短期的な結果を出すならばこれまたリスティングがよい。

4.社内に協力体制がない

SEOを行うためにはサイトの改修ができなければならない。
しかし、改修するにあたって様々な障壁があることが多い。
ある時は改修コストであり、またある時は改修するための担当者のスキルや手間、あと面倒なのが部門間の調整といった政治がらみだ。
コストや手間がかけられない、様々な部門間の調整があり変更ができない、あるいはとても困難というWebサイトにとってSEOは適用が困難である。

手足を縛った状態で「自由に泳いでみろ」と言われても困るだろう。

SEO担当者というものは単独では無力なものである。
コーダー、コンテンツ作成者といった諸担当者のサポートがあって初めて機能する。
協力体制がないSEO担当者程悲惨なものはない。
また、担当者は悲惨であるし、Webサイト自体に何の益ももたらさないであろう。

5.適任者がいない

SEO担当者は知識は当然前提として必要だ。
それにプラスして向学心と探求心が必要である。
サイトの繁栄を自らのこととして受け止める主体性が必要で、受け身ではとても成功はおぼつかない。
適任者がいないのであれば、無理に誰かを担当にしてもうまくいかない。


以上の状況であれば、SEO担当者を置くのではなく、状況を整える、あるいは外部コンサルタントにスポットで依頼するのが現実的には有効であろうと思うわけである。

上記の状況は多いというか、ほとんどが上記の状況に当てはまってしまう。
ほとんどのWebサイトにとって外部コンサルタントを依頼するのが吉ということになる、というのが結論ということになりそうだ。


SEO小説を電子書籍として再編集してみました。
SEOについてある程度詳しい人であれば、

「これってあるある。」

っていう感じで笑えたり、笑えなかったり、嫌なことを思い出して腹が立ったりする小説集であったりします。
このブログで書いた小説ではあるのですが、脚注など加筆したりしていますので気が向いた方は是非ご購入くださいませ。
あと、感想文などお寄せ下さると作者が喜びます。

Web制作者のためのSEOスキル・考慮事項など5つの質問


最近「ネタ切れです」という話をしたところ、Webutubutu!を運営している稲垣氏からネタを頂戴したのである。
稲垣氏には残念ながらお会いしたことはないのだがWebデザイナーの方である。

ブログを時々読んでいるが、SEOに対する判断・見識においてその辺のナンチャッテSEOコンサルタントなど及びもつかないと思っている。
(自分がナンチャッテであることを自覚していない、あるいはポジショントークをするコンサルタントは非常に有害である)

さて、稲垣氏の質問は色々な人の役に立ちそうな気がするので答えてみることにする。
いただいたネタは以下の通り。

  1. 制作はこれだけは抑えとけというSEOスキル
  2. 新規サイトではこれだけはやっとけというSEO的な設定
  3. 「サイトの順位が落ちたのはなぜ?」と制作が聞かれた際にどこを見てどう判断すればよいのかマニュアル
  4. サイトと地理的なクエリの結び付きを強化する際の考え方
  5. SEOを意識して内部に手を入れた際に効果を見るための期間と見方

これらはなかなか制作側からすると知りたいところだろう。

第1問目
制作はこれだけは抑えとけというSEOスキル

これは大昔に書いたことがあった。2011年10月の記事なのでもう誰も覚えていないだろう。
今読み返してみたが古くなっていなかったので、これを載せておくのだ。
ホームページ制作会社に必要な11項目のSEO知識

第2問目
新規サイトではこれだけはやっとけというSEO的な設定

これは結構難しい質問である。
サイトの規模にもよるし、サイトの性質によっても変わってくる。

Web担当者Forumの2011年12月の記事「サイトを新設する際のSEOチェックリスト #1 アクセス性・キーワード・コンテンツ」これが近いだろう。内容的には悪くないと思うのだが、今一つピンと来ない感じがするし、不必要な場合が多い項目もある。
他にもサイト開設時のSEOのチェックリスト的な記事はたくさんあったが、内容が古かったり間違いと思える項目があったりして今一つお勧めできる記事が見つからなかった。
そういったわけで、再度記事にしてみたい。ってなわけでもう一回ブログが書けるのである。稲垣氏に感謝である。

第3問目
「サイトの順位が落ちたのはなぜ?」と制作が聞かれた際にどこを見てどう判断すればよいのかマニュアル

1.ペナルティで下がっている場合と、そうでない場合がある。
2.特定のキーワードが下がっている場合と、全体的に下がっている場合もある。
3.一時的な場合と、長期間にわたって下がっている場合もある。

といった感じで場合分けして考える必要があるだろう。

1.ペナルティで下がっているのであれば、ペナルティの要因を取り除くことで回復が可能だ。

ペナルティかどうかは以前に、

Googleペナルティ判定フローチャート

という記事を書いた。
これで全て判定できるとは限らないのだが、かなりこれで判定できるだろう。
ペナルティになってしまった場合は、ユーザー視点で考えてみて無意味あるいは有害であり、検索エンジンからの集客のためにやったことを解消すればよい。
ほとんどのケースであれば、この手のことは自分自身が何をやったかわかっているはずなのでそこを直せばよい。

2.特定のキーワードだけが下がっているケースはアンカー過剰といったケースが多い。

しかし、アンカーテキストは検索順位に大きな意味を持つということを知ると、ついやりがちなのでそのあたりを改善する。
また、品質の低い外部リンクにによってこの問題が起こることがよくある。
その場合リンクを外すといった対応が必要になる。

但し、特定のキーワードで下がってしまっても、自然検索経由全体で見たときの来訪者数はほとんど変化がない時もある。
この場合は、特に対応はする必要はないケースが多い。
何もなくても順位は大きく上下するものなのである。

全体的に下がっている場合は対応が非常に難しい。

何か大きなネガティブな要因があって下がっている場合は、canonicalタグといった検索エンジンに対する指示のタグが間違ってしまっているといった人為的ミス、全体的にコンテンツが薄いといった要因などが考えられる。
コンテンツが薄いと検索エンジンから判断されたような場合は、実際には薄くない場合もあり判断が難しい。

要因がたくさんあり、正直私も分からないケースもある。理由がないとしか言いようのない場合もある。
このケースについてはとてもとても難しいのだが、これまでの知見について後日まとめてみたい。

第4問目
サイトと地理的なクエリの結び付きを強化する際の考え方

これは所在地を会社概要などに入れるのはもちろんのことなのだが、その近隣地域での様々な活動をコンテンツとして残すのがよいというのが私の経験則である。

原理的に言ってもそれが正しそうだが、実際にこれをやってみると地名系のキーワードで上がるだけではないようだ。

検索クエリによっては地域によって検索順位が変わることもある。
このような施策により該当する特定の地域で検索した場合の検索順位が上昇するケースを見たこともある。

第5問目
SEOを意識して内部に手を入れた際に効果を見るための期間と見方

これはなかなかに難問だ。
手を入れる度合いによりけりである。
確実によいと思えることでも全く効果が出ない(わからない)場合もある。
例えば、今までh1が設定されていなかったページについて表題をh1にして、h1にキーワードが含まれていたとしても順位が上がるかどうかはやってみなければわからない。
このようなケースであれば、正解であったとしても効果がわからない可能性が高い。

また、色々な施策を行った場合にどれが効果を生み出したのか?
複合的な要因によって効果が上がったかもしれない。

逆に良いはずのことをしても順位が下がる場合もある。
何もしなくても順位が下がる場合もよくあるが、何かの変更を行ったタイミングでたまたま自然的に順位の下落が発生すると、その施策が悪かったと思ってしまうかもしれない。

といったように難しいのだ。

とは言え、SEOの観点から望ましいことをすれば基本的には順位は上昇する可能性が高い。
評価は最低1週間、通常は1ヶ月程度は様子を見る必要があるだろう。

それ以上待っても順位が上がらなければ、その修正は順位上昇に寄与しない可能性が高いと考えてよさそうだ。


さて、今回は5問の質問について書いてみたわけだが、難問だったという印象である。

とは言え、私としても考えるきっかけができたし、また記事のネタができたのでとてもよかったと思っている。
また、続報として個別の問いについて答える記事を書きたいと考えているので、これからもお付き合いの程お願いいたします。

SEOの観点から危険性のあるサービスの見分け方


私はSEO的な観点からダメになってしまうサービスを予言するのが結構得意である。
(残念ながらうまくいくサービスを予言するのは外れることが多いのが残念である)

うまくいくサービスを見抜くのは非常に難しい。
しかし、将来的にダメになるサービス、特に検索エンジンからの集客が大きなウエイトを占めているサービスについては結構当たる自信がある。

その見抜き方について今まで誰にも語ったことはないのだが非常に簡単だ。
秘密にしていたのではなく単に語る機会がなかっただけなので書いてみようと思う。

それは、

検索エンジンから嫌われるようなことをしているか否か

私が理解しているのは、細かな原則というよりももっと大くくりである。
大くくりの考え方を理解しておけば、SEOを非常に容易くとらえることができるようになるだろう。
その意味で今回の記事は役立つかもしれない。

大くくりの考え方としてよく言われることは、

有用なページを作ればよい

と言われる。
しかし、これだけではまだ全然Googleの本質を捉えているとはいえない。
Googleの考える有用なページと、世の中の一人ひとりが考える有用なページには当然のことながら差異がある。

Googleが考える有用なページとは何ぞや?

なのである。
以前も書いたことがあるのだが、優秀なSEO担当者はシステムエンジニア出身といった人は少なくて、営業担当者といった対人スキルが求められる職業の人が多い印象がある。
これが正しいのであれば、一つ有力な仮説が導かれると私は考えている。

営業担当者といった職業についている人は、相手の思考を先回りして先手を打って対応することが求められる。

こんなことを言ったら、彼はこんなことを思うだろうなとか、
こんな時だったら、彼女はこんなことを言いそうだな、

といったことを予測したり、想定したりすることがスキルとして必須だ。
SEOはこれに似ている。

Googleを人格として理解すると非常に腑に落ちるというか、とても納得が行くと私は常々感じている。
Googleとはこんな人というイメージを完全に伝えることができれば、少なくとも私がたどり着いたレベルまでは誰でも来れるはずだ。

イメージを言葉にして伝えるのは難しいが、そこを頑張って言葉にしてみたい。

一言で表現するならば、精神の貴族という言葉がふさわしいように思う。
ノブレス・オブリージュという言葉がある。高貴な人は地位に応じた高い義務を負うという意味だ。

Googleは私利私欲で動いていると解釈すると、SEOは理解できないだろう。
私利私欲から離れた責任感がある高貴な人物と考えると非常に分かりやすい。
ではもっと具体的に掘り下げてみよう。

第一にGoogleは公平である。
誰に対しても基本的にはえこひいきをしない。
基本的にという留保がつくのは、余りにも反社会的であるといった場合はごくたまに罰を下すことがある。といったケースだ。

第二にGoogleは無私である。
自らが権力であることを自覚しているが、その権力を自分のために使うことは絶対にない。

第三にGoogleは自らを騙そうとするものを嫌う。
公平ではあるのだが、自らを騙して便宜を図らせようとするようなものに対しては、毅然として罰を与えるべきといつも考えている。
しかしこのような罰を与えるのは、自らの力が強大であることを知っているゆえに、慎重であるべきでルールに従って厳格に運用されねばならないと常に自重している。

第四にGoogleは人間の労苦を出来る限り尊重しようとする。
人間が苦労して作り出した一次情報を尊重する。
コピーしたり、ちょっと加工したり寄せ集めただけの二次情報なんかにはさしたる価値はないと思っている。

こんな人柄である。
そこからどんな結論が帰結されるか。


第四が人々の解釈と大きく違うところだろう。
情報を加工したり、寄せ集めて見やすくしたりするだけではGoogleは評価しない。
この種のサービスはあるが、いずれは評価されなくなるはずである。

まとめるのではなく創造しなければならない。
現時点においてはまとめただけのページでも上がっているものも多数ある。
しかし、いずれはただまとめただけのページなのか?創造されたページなのか?を見極める厳格なルールを自分で見出してそれに従うはずだ。
ルールがなければ、恣意的に扱ったりしない。
一律に全員に適用でき、罰することが可能になるルールを見出した時に初めて実施する。

今は良くても、そのうち駄目になるまとめが多数発生するだろう。

もう一度書くのだ。

このような罰を与えるのは、自らの力が強大であることを知っているゆえに、慎重であるべきでルールに従って厳格に運用されねばならないと常に自重している。

ここが重要であると思うのだ。
ルールを自らに課して厳格に運用する。
つまり目についたからといって場当たり的に罰したりすることは基本的にはやらない。
何か新たな不正が発生した場合などには、それを手あたり次第に罰していくのではなく、その種の不正をルールとして定めて統一的に扱えるようにして初めて罰を下す。

こう考えると今はわかった上で泳がされていると思えるサービスもいっぱいあると解釈される。

今の状況はGoogleにとって是なのか?単に泳がされているだけなのかの判断は比較的容易なのではないか?と思うのである。


ちなみにブログのネタ募集中である。最近は特にネタ切れでしんどいのである。
もし、こんなことについて見解を教えて欲しいといったことがあれば、是非問い合わせフォームやtwitter、Google+などでお伝えくださいませ。

SEOにおいて金で解決できることとできないこと


世の中金が全てだという人はさほど多くはないだろう。
少なくとも私の周辺には存在しない。
しかし、そういう意見を持っている人はある一定数は存在しているはずである。

私はどうかというとお金には執着しない質だ。
しょせん、お金では値札がついているものしか買えないのである。
(まあ、大富豪といったレベルになれば、話も変わってくるだろうがまあ一般的な話としてだ)

自分が欲しいと思っている物事はそれなりにあるが、自分自身あるいはその周辺の人々の努力でしか手に入らないものばかりである。

SEOの知識や技術とか、プロジェクトを円滑に回すことができる能力とか、上手に文章を書けるようになることとか・・・、

色々たくさんある。これらのうちのたった一つでもお金では買えない。

SEOについて考えてみよう。

基本的には同じである。
日常の運用の全ては人の手を通じて実現される。

誰かの努力によってのみ達成される

と言い換えてもいいだろう。
金で解決できることとはでは何だろう。

これは実は簡単である。

ほとんどの場合個人が実現したいことは、自分自身の力によって達成したいという前提がつく。
しかし、サイトの運営で達成すべき目標というものは誰が行ったとしても何ら問題ない。

もし、金にモノを言わせて外部から優秀な人物を招聘すれば全て解決することができるはずだ。

しかし、これは考えないこととする。
金だけで解決できる問題は何か?
と問題を限定したい。

現実問題としてある程度潤沢に金は使えるプロジェクトはあっても、人を自由にできるプロジェクトはほとんど存在しないだろう。
人に関しては原則的に現有メンバーでプロジェクトを遂行するしかないのが通常は前提である。

さて、やっと本題に入ることができるのだ。

SEOで行うべきことを分解して金で何とかなるのかならないのかを一つ一つ考えてみたいのだ。

  1. 検索エンジンにやさしいサイト作り
    唯一SEOのテクニカルな側面であり、狭義のSEOとはこれを指すといってよい。

    強調したいキーワードを検索エンジンに伝える。
    クローラビリティを高める。
    論理的な構成を検索エンジンに分かりやすくする。

    といった実装をそのサイトに即してどのようにするのが最善かを考える仕事である。
    これを行わないと元々は100伝えるべき内容が、検索エンジンには20とか40ぐらいしか伝わらないといった状況になる。

    SEOに詳しい担当者がいない場合は、この部分だけは外部コンサルタントの助力をあおぐことが正解であることが多い。
    サイトの規模が大きく検索エンジンからの集客がビジネス上重要であれば、金を払って依頼するべきだ。
    このようなコンサルタントの報酬は安くはないが、費用対効果は悪くないのでお金で何とかすべき問題であると言える。

  2. コンテンツの作成
    コンテンツの作成がSEOなのか?というと難しい問題である。
    良いコンテンツこそが検索エンジンから評価されるというのが原則なので、検索エンジンからの集客には良いコンテンツが欠かせない。
    コンテンツはSEOと不可分なのだが、そのものはSEOではないと言えよう。

    テストでいい点を取ることを目的としていなくても、普段から勉強をしている人はテストでいい点が取れるのと一緒だ。
    コンテンツ作成は勉強であり、テストの点数は検索順位に譬えればよかろう。
    勉強をせずにいい点数だけ取ろうというのはズルをしなければ不可能であり本来のあり方ではない。

    コンテンツとSEOが不可分であるというのはこういうことである。

    コンテンツを作るのは外注が可能だ。
    ただし、企画といった部分のコントロールはある程度自分たちで行わねばならないだろう。

  3. 被リンクを得ること
    なんだかんだと言いながらも現在もまだリンクである。
    リンクが全くないサイトの順位が上がることは少ない。

    これは「はい」でもあり「いいえ」でもある。
    リンクと言うものは一種の人気投票のようなものだが、金を払ってサクラを動員するって方法、つまり人工リンクは金で買えるからである。

    しかし、あくまでサクラはサクラなので、サクラであることがバレてしまったら逆に人気が失墜するという現象が起きる。
    これがペナルティと呼ばれる現象だ。

    本当の人気は金では買えない。これが答えである。

  4. 検索エンジンからの集客戦略の立案
    そもそも論の話である。

    どのようなユーザーを集客するべきなのか?
    どうすればそのようなユーザーを検索エンジンから集客できるのか?
    集客しただけでは成功とは言えない。どうやってコンバージョンにつなげるかといった道筋はどうするか?

    といった諸々を考える必要がある。
    外部のコンサルタントに依頼することもできるだろうが、アドバイスの域を出ない。
    自社の商品、サービス、顧客を知っているのはあくまで自社の担当者だけである。

    これは金で部分的にしか買えない部分である。

さて、ここまで書いてきたが結局のところ、多くの部分は金で買えるが買えない部分もあり、買えない部分が重要なポイントでもある。

という非常に月並みな結論に落ち着いた。

とは言え、SEOサービスを購入するのはその会社なり担当者なりの力量を見抜く力が必要である。
品質の悪いSEOサービスをとんでもない金額で販売している会社もあり、高ければいいというものでもない。
ここが難しいところで、見極めがとても難しく自信がなければ、金を払うという選択肢は除外したほうがいいと思うのである。

SEOは全ての悩みを解決する魔法の杖ではない


「金槌をうまく使える人は、すべてのものを釘と見てしまう。」

という譬えがある。
リスティング広告のコンサルタントとして有名な阿部氏はこれから、リスティングが得意な人は何でもリスティングで解決しようと考えてしまう傾向がある、ということを述べている。

これはリスティングだけではなく、他の販促手法にも言えることだ。

アフィリエイト広告も運用を細かく丁寧にやれば大きな成果を生み出すし、SEOもピントがずれていない限り継続していけばそのうち確実に成果が出る。


ちょっと横道にそれるがSEOにおけるピントのずれとは、集客するユーザーがずれているケースを指す。
コンテンツマーケティングで、「検索ニーズがあるから流入を大きく増やせるし、スパムにならないという」という理屈で、自社商材と全く関係のない妖怪ウォッチのコンテンツを大量に作ってしまったという例があるそうだ。詳しくは「SEOのロングテール戦略とコンテンツマーケティングの話」をご覧いただきたい。とても示唆に富んだ記事である。

さて、SEOであるが、私は特に近年においてはSEOだけで完結することは難しくなってきていると思うのだ。

近年はコンテンツ作成による検索エンジンからの集客がSEOの根幹と言われているが、コンテンツだけでは集客は完結しない。

集客とはサイトにユーザを連れてくることによって終了するのではなく、コンバージョンが得られて初めて目的を達成する。
コンテンツというものを商品の売り込みを目的としないユーザーのためになる情報だと定義するならば、コンテンツだけではコンバージョンに至らない。

コンバージョンを取るためにはコンテンツではなく売り込みのページ、セリングが重要なのだ。
これはSEOにさほど寄与しないかも知れない。
しかし、充分な情報量や、競合と比較した場合の優位なポイントを明示しない限りコンバージョンにはなかなかつながらない。

コンテンツそのものはサイトにユーザーを集めることはできるが、その先の購入という行動を起こさせることは難しい。
セリングのページの充実があって、初めてコンテンツに存在意味が生まれると私は考えている。

セリングはSEOという観点で考えるというのではなく、

競合と比べてどこがいいのか?
買うにあたっての阻害要因は何か?

を考えて、必要充分な情報を提示することが重要である。

この発想は何かというとマーケティングに他ならない。

そもそもコンテンツSEOもユーザー視点での必要な情報を提供する行為であり、これもまたマーケティングである。
SEOはSEOで完結するのではなく、マーケティングに包含される概念である。

さて、コンバージョンを取るためには、最低限コンテンツとセリングのページが必要であることを述べたが、これではまだ十分ではない。

これで確かにコンバージョンは取れるだろう。
しかし、これだけでは十分な成果を得ることは難しい。

コンテンツとセリングの間には隔たりがある。

コンテンツを見て役に立ったと感じたとしても、それがコンバージョンにつながる可能性は高いとは言えない。
コンテンツからセリングへの橋渡しが必要となる。

様々なコンテンツやセリングを作りこむことで、検索結果への露出を増やすことで、再訪を促すのももちろん有効なのだが、これは決定打とはいいがたい。
再訪させるためには、様々なニーズを満たすキーワードで検索結果に露出をはからなければならないが、狙ってもうまくいかないことも多い。

様々な手法を駆使して再訪を促し、セリングページを見せなければならない。

そのための手法とは、リマーケティングであったり、検索広告向けリマーケティングであったり、ディスプレイネットワーク、Facebook広告、メールマガジン、アフィリエイト広告といったあらゆるオプションが考えられる。
これらを選択、組み合わせ、最終的にコンバージョンを高める絶え間ない努力が必要だと私は考えている。

SEOの担当者がこれらの全ての手法を熟知することは不可能だと思うのだが、そのメリット・概要を押さえておくことは必須だと思う。

一人の担当者で押さえることができる領域は多くはないのだが、結局のところ細かいテクノロジーを知らなくても、それらの集客ソリューションが消費者にとって、どのような意味をもたらすか?を理解すれば、ある程度の見通しを立てることは可能だと思うのだ。

コンテンツSEOの意味と戦略・そして達成目標


コンテンツSEO

この言葉がめちゃくちゃ流行っている。
でもこれほど不明瞭な言葉も珍しい。

Web2.0という言葉がその昔流行したが、その解釈は人それぞれ違っており、本来の意味から離れて単に

「新しいインターネットのあり方」

といったような意味で用いられていたように思う。

「コンテンツSEO」という言葉もこれに似ている。

これまで被リンク一辺倒だったSEO業者がこの言葉を盛んに使っているのを見聞きするたび、これってどうなんだよ?
って思うのである。
まあ、リンクでは思うように順位が上がらなくなってきたから、

「しょうがない、コンテンツでも売るかぁ」

というのが流行の理由だと私は思っているのである。

そもそも論で言うなればコンテンツSEOというものは当たり前なのである。

コンテンツなくしてWebサイトは存在しない。
コンテンツとはWebサイトそのものだ。
Webサイトの価値を機械的に計測して順位計算するのが検索エンジンである。
言い換えれば、コンテンツの価値を計算するのが順位計算と言える。

そうなので、コンテンツSEOというのは余りにも当然すぎるほど当然だ。
SEO業者が、

「当社はコンテンツSEOを提供します。」

というのは、飲食店が、

「うちの店では食べるものを提供します。」

というのとほぼ同義である。
しかしながら、今までのSEO業者はこれを提供してこなかった。

コンテンツを良くすることなく、順位だけを上げるといった手法は本来のあるべき対応ではない。

空腹を満たすことを目的として飲食店に入って、

「このサプリメントを飲むとたちどころに空腹を忘れます。食事に比べたらずっと安いですよ。」

って言われるようなものだ。
まあ、確かに空腹であるという状態を解消するのであるから、目的は達成しているものの根本が違う。
本来のお客が求めているものとかい離があるのだ。

人工リンクによるSEOのサービスはこれに似ている。

確かに検索経由での集客を増やすことができるので、目標は達成できているのだが、手段が根本的にずれているのである。

お客もこれが常識になってしまっていて、食事をするのではなくサプリメントを飲むのが当たり前だと思っているのが現状であろう。
普通に食事を提供しようとすると、「時間かかりすぎだし、高えよ」って文句を言われるというのが今の状況かと。


本来SEOというものはコンテンツの価値を高める、あるいはコンテンツを正しく認識させることで、検索経由での集客力を増やすことを指す。
人工リンクはSEOではない。

コンテンツSEOというのは、ごくごく普通のSEOに過ぎないのだ。

それをことさらに強調するというのは、

「うちの食堂ではサプリメントじゃなくって食べ物を提供しますよ。」

ということを強調されているぐらいの違和感がある。
まあ、今までのSEO業者は飲食店で言えば食べ物を提供してこなかったし、提供する技術もなかったのだから「まし」になったとは言えよう。
あくまで「ましになった」あるいは普通になったということである。

では、そのコンテンツSEOとは何か?

である。

コンテンツとはWebサイトそのものだ。
コンテンツを作ってSEOするというのは、それだけでは何も語っていないに等しい。

「Webサイトを良くする取り組みをしますよ。」

というあまりにも曖昧模糊とした言葉である。
Web2.0という言葉が、人によって解釈が様々に分かれたように、コンテンツSEOという言葉も人によって解釈が異なる。

「コンテンツを作ることでSEOすることでしょ?解釈ずれないよ。」

と言われるかもしれない。
でも大違いなのだ。

コンテンツを作るのは

誰に対して何を作るのか?

という根本が問われなければならない。
多くの人はまだコンテンツを被リンクの代わりだとして捉えている。

無理な外部施策で上がらなくなったから、コンテンツを作ろうというのであればそれは人工リンクと変わらない。
これはスパムであり、いわゆるコンテンツミルってやつだ。

人間のためにコンテンツを作るのが前提だ。

その上で、どんな人に対して読ませたいものを作るのか?

  • その商品なりサービスなりを今、欲している人に対して訴求する。
    これはコンテンツではなくセリングと言うべきなのかも知れない。
  • 潜在的ニーズを掘り起こす。
    このような商品を買おうという気がなかった人に対して、気付きを与えるようなページを作ること。これもコンテンツではなくセリングに分類されるだろう。
    これらはSEOを考慮しなくても、コンバージョンを取るためにやるべきである。
  • 知りたいというニーズに応えるページを作る。
    これがいわゆるコンテンツによるSEOというものだ。
    今すぐ客ではなくても、いずれ顧客となりうる可能性がある人を集めるという考え方だ。
    結果としてコンバージョンとして刈り取るのは、リマーケティング広告、ブックマークなどによる再訪問といった経路である可能性が高い。
    直接はコンバージョンを生むことは少ないだろう。
    直接的な成果のみを追うのであれば、コンテンツSEOに取り組むと失望することになろう。
  • リンクを得ること。
    これもコンテンツSEOと言える。
    ソーシャルメディアを一緒に運用することがほぼ必須である。継続すれば大きくバズを取れる言うなればホームラン的記事をたまに書けることもある。

    ソーシャルメディアで交流を続けることで、単なる文字情報を超えた人と人とのつながりを作ることができ、その心のつながりはコンテンツを介してリンクとして結実する。
    コンテンツの中身もさることながら、この人が書いているからといった状況に意味があるといった状況だ。

    私が書いたら別にどうってことのないことでも、辻氏が書いたら、

    「うーん、すごいわ」

    て思われるかも知れない。
    まあ、そういったことも含めてコンテンツを作っていくことだ。

    このレベルは通常はSEO業者には無理である。

    たかぽん氏の記事「3年後に生き残るアフィリサイトを考えてみた①」が詳しくとても良記事だったので、是非ご覧いただきたい。

何を狙っていくのか?
それが曖昧模糊とした状態でコンテンツSEOという言葉でわかったような気になるからうまくいかないのだ。

それは、何の戦略もないWebサイトを作るとうまくいかないということとほぼ同義である。

SEOから先に考えると全て失敗する


企業担当者も制作業者もSEOについて誤解していると感じることがある。
SEOをそれ単体が特別なものとして捉えられているという誤解だ。

SEOはWebサイトにおける集客活動のごく一部を担うに過ぎない。

それ自体が独立して存在するわけではなく、SEOのみでできることなど高々知れている。
期待しすぎると失望する。

よくあることであるが、キーワードプランナーといったツールを使って、キーワードを洗い出してコーポレートサイトを作ろうという企てなどは間違いである。

コーポレートサイトに求められるページとは何であるか?

ユーザーに対して、製品・サービス・会社の情報を余すところなく伝えること、信頼を持ってもらうことだ。
集客しなくては目的は達成できないが、SEOに偏って内容をおろそかにすると、そもそもの目的を達成することができない。

SEOによって内容をおろそかになるケースというのが、キーワードありきでWebサイトを作ってしまう場合だ。
何故、キーワードありきで作ると内容がおろそかになるか?

それにはいくつかの理由がある。

  1. 本来、ページは書くべき内容が先にある。しかし、書くべき内容が明確なイメージがないままにページを作ることによって、価値のないページができる。
    読んでも印象に残らない、あるいはあまりにもありきたりでつまらないページになる、もしくは、ユーザーニーズとかい離した内容のページになる。
  2. 類義語を使ってそれぞれ別のページを作ってしまう。
    例えばお風呂のリフォームのページを作る場合を想定しよう。
    「風呂」「ユニットバス」「浴室」といったように主語に相当するキーワードが複数ある。
    「リフォーム」「改築」といったように述語に相当するキーワードも複数ある。
    このように主語、述語ともに複数ある場合、全部の掛け合わせのパターンを作るということが間違いのもとなのだ。
    サイト内での統一感が失われるし、単体の記事は良かったとしても類似のコンテンツが多数できてしまう。
  3. ユーザーが自社のサイトに求めている内容とかい離したページができる。

その結果として、ブランドイメージを損ない本来の目的を達成することができなくなる。

この会社はこの程度のことしか考えていないのか?

と思われてしまうのである。
最近は、コンテンツSEOという言葉が流行しているが、この手のページを量産しているのであれば結局のところ目的を達成できないだろう。

そうして、検索エンジン経由の集客そのものもうまくいかない可能性が高い。

書くべき内容のイメージがなければ、検索キーワードをとりあえずタイトルと、本文に含んではいるもののぼんやりとした記事になるだろう。
そうすると、検索キーワードに対する記事の内容の掘り下げが浅くなって、検索エンジンからは評価されない。

テクニカルな話をすると、「共起語」が少なくなるといったページになる。そのことがきちんと理解できていない人が書くため、どうしてもそうなるのである。

では共起語を文章中に入れ込んでやればいいではないか?

というようにズルく考えればなるのだが、これにはあまり意味がない。

Googleが認識している共起語を正しく知るツールなんてそもそも存在しないのだ。

また、文章の内容の良否は共起語だけに依っているわけではない。
良い記事は、良い記事を生み出す努力と、知識によってのみ作られる。
上辺だけ真似しても、うまくいかない。

歴史的に有名な画家の絵は数億円の価値があり、それを模した画学生の絵は価値が全くないか、数万円といったところだろう。
見る人が見ればわかる。
それと同じだ。

また、類似コンテンツができてしまうことによっても、サイト全体の情報量が薄くって検索エンジンから評価が下がることも十分に考えられる。

結局、SEOに偏したサイトというのは、ブランディングを損なうのみならず、検索経由の集客もうまくいかないのだ。

最後に一言書いておこうと思う。

私は検索キーワードを見つけるツールそのものは意味がないとは思っていない。
使い方によっては有用である。

「Google先生」という言い方がある。
「何でも知っているGoogle」という意味だ。
検索のほとんどは自分が知りたいことの答えを、Googleから教えてもらうという行為である。

「ユーザーはどういうことを疑問に感じるのか?」
「ユーザーはどういう言葉を使って検索しようとしているのか?」

ということを知るためにツールを使うことは非常に有用である。
検索キーワードの裏側には検索するユーザーが存在する。

そのユーザーのことを知るために、検索キーワードを知ることはとても有用だ。

そのキーワードの検索ニーズはこれだ。

と考えることは的が外れていることがままある。
そうではなくて、検索ニーズを満たすための内容とは何か?を良く考えてページを作ることは実際に検索ユーザーにとっても有用な試みである。

検索キーワードは単なる文字として存在するのではなく、人間のニーズとして存在していることを考えて作るのであれば有意義であることを最後に付け加えておくのである。

こんなSEO業者に勤めているなら退職することをお勧めしたい


役に立つというわけではないのだが好きなSEOのブログにSEO日記 一喜一憂 (仮題)というブログがある。

SEO業者に勤めるってことがどんなことか?

ということがよくわかるブログである。

SEO会社を辞めました。

という記事があるが、なかなか本当に実感がこもったいい記事である。

最後にクライアントとそのような会社に勤務している社員に対するアドバイスが載っているが、

契約をする時は契約書と規約をしっかり読んで、分からない事は全部営業に確認して、出来るなら全て録音して下さい。
中で頑張ってる人は、その頑張りが会社の外からどう評価されるのか?を考えて行動する事をお勧めします。
これを読んだ同じ境遇の人が少しでも救われるといいな。

結局はこのブロガーの方はSEO会社を辞めて転職したというわけなのだが、私もこれは正解だと思う。

といったわけで、こんな会社なら辞めた方がいいと思うSEO業者の条件について書いてみたい。

石の上にも三年という言葉があるが、大体の職業にこれは当てはまる。
しかし、とっとと離脱すべきという仕事がこの世の中には存在する。

学校を卒業して最初に入った会社が振り込め詐欺をやっていたとする。

でも、

「世間ではあれこれ言われているけど、私たちのやっていることは社会の正義なんですよ。
金をため込んでいる老人たちからお金を回して、経済を活性化しているんです。だから頑張ってくださいね。」

といったことを連日言われていると、だんだんそれに慣らされていく。
良し悪しの判断ができなくなるはずなのだ。

私はこの種の犯罪組織に所属している人達の全てが、悪しき動機に基づいてやっているのではないと考えている。
最初は生活のためといった理由で良心の呵責を感じながらやっているうちに、徐々に慣れてしまっていく過程があると思うのだ。

悪徳SEO業者もこれに似ている。

生活のためにその仕事をやっているうちに、良心を忘れる、あるいは慣れるのだろう。

ちょっと前の話であるが、私の知り合いの会社がSEOのテレアポの営業を受けたのだ。
その知り合いの会社はSEOのこととかよくわからないので、私に話を回してきたのである。

私はテレアポの担当者と話をしたのだが、よくよく話をしてみると結局はリースでSEOを売りつけるといった内容だった。
いまだにそれをやっている業者があるのか?
とたまげたのだが、そのテレアポの営業をしている担当者と話をしていたら、非常にSEOに詳しく正しい知識を持っていることに驚いたのだ。

多分まだ20代の女性だと思われるのだが、大したものだと思ったのである。

「すごいお詳しいですね。なのに何でSEOをリースで売りつけるような会社に勤めているんですか?」

と率直に聞いてみたのだ。
それに対しては返答しないで、テレアポを打ち切るモードに入ってしまった。
とても残念である。

まあ、そんなこともあったのでこんな記事を書きたくもなったのだ。

さて、やっと本題に入るのだ。

「こんなSEO業者に勤めているなら退職するべき」という私の考える条件だ。

1.顧客のことを考えて営業しているか?

最も重要なことはこれに尽きる。
もちろん全ての会社は営利企業であって、自社では利益を取らねばならない。
しかし、顧客の利益にならないことをやってはならないということは自明である。

悪徳SEO業者というものは顧客の利益を無視しているから悪徳なのである。

もし、

「今こんな仕事をしていていいのだろうか?」

と疑問を持ちながら日々を過ごしているのであれば、この点を問うべきである。

2.自分のスキル向上につながるか

現在は食えている商売であっても10年後は食えないであろう仕事はたくさんあるはずだ。
その中で、SEOは食えなくなる仕事になる可能性が非常に高い。

SEOのテクニカルな面だけを担当する仕事ではつぶしが効かなくなる。
ビジネスに深く入り込んで一緒に作り上げるといった仕事をしていかないと、いずれ通用しなくなるだろう。

または、休日、休暇がきちんと取れ、勉強する・見聞を広げるといったことができる環境が必要だ。

言い換えれば、SEOだけではいずれ食えなくなるから、そのために備えることができるかできないか?なのである。


条件に付いて2つ書いてみた。
普通に休日出勤で、夜も徹夜、顧客のことは無視といった、両方を満たすSEO業者もあるようだ。

だからと言って今すぐ辞めると生活が成り立たなくなるだろう。
ならどうすればいいか?

ソーシャルネットワークなどで人脈を作っておくのが私はいいと思う。

SEO関係者は同業者同士ソーシャルネットワークで盛んに交流しているので、転職先を見つけることもできるかも知れない。
また、日々のやり取りのなかで自然にスキルアップできる。
そして重要なこと、

自分の会社の常識が世間の常識ではない

ということを常に意識することができる。
この視点は忘れてはならないと思うのである。

インハウスSEO担当者にとって知識より重要な能力・資質とは


インハウスSEOをやっていると、SEOの知識がそれ程必要ではないことに気がついたりする。
それはなぜかと言うと、

SEOの知識が必要になるのは新規サイトの構築時・リニューアル時といった非常に限られた場合しかなかったりするからである。

年がら年中、リニューアルをやっているわけはないし、実際にリニューアルがあったとしても、普通はそれほどSEOに関する考慮点はない。

数百ページ程度のWebサイトであればSEOの技術そのものの巧拙によってそれ程差は出ない。

極端な話、WordPressやMTといったCMSで作ってやれば、Google検索エンジン最適化スターターガイドに書いてある程度のことを理解していればまず問題ない。

※とは言え、SEO担当者に知識が要らないわけではない。
デザインやユーザービリティとのSEOがバッティングした場合にどっちを優先させるか?
あるいは、両方とも損なうことがないうまい落としどころを見つけるといったあたりは、知識あるいは経験がモノをいう。

さて横道にそれた。

SEOの高い技術がインハウスSEO担当者に求められるわけではない。
では何が必要なのだろうか?

私が考えるSEO担当者に必要な能力・資質とはこういうものだと思う。
必ずしも正解とは限らないのだが、参考になれば幸いである。

1.SEOに関する見識

SEO担当者の担当者たるゆえんはここにあると私は思う。
これが最重要だと考えるのだ。

もし、SEOに関する知識が足りなかったらば、外部のコンサルタントや業者を雇ってもいい。
会社の内部で足りないリソースを外部から調達するのはごく普通のことだ。

しかし、SEOのサービスは経営コンサルティングなどと一緒で、コンサルタントの言うことをうのみにすると非常に有害な時がある。
知識・経験の低い経営コンサルタントは時にクライアントの会社を傾けたり、時にはつぶしてしまったりする。

SEOのコンサルタントはこれと同じだ。
知識・経験の低いコンサルタント、業者に従うと、サイトの存続基盤が破壊されるという事態が起こる。

良否を見極めるのは、

見識

である。
自分自身の中に「あるべきSEOとはこういうものである」というぶれることがないしっかりとした軸を持つことだ。
あるべきSEOを実現してくれると確信できるコンサルタントや業者と契約するのである。

これが最も大切である。

2.実行力・実現力

コンサルタントであれば、

「こうすればいいんじゃないですか」
「こうするべきでしょう」

という助言をすればとりあえず責任は果たしたことになる。
しかし、インハウス担当者はそこからが仕事である。

それに必要な予算、人員、時間といった所要の資源を確保しなくてはならない。
非常に難しいが、障害を突破し、達成するまであきらめない強い精神、実現力がなくては成功はおぼつかない。

このあたりは社内の信頼がインハウスSEOの成否のカギを握るに書いたので、ご覧いただければと思う。

3.企画力

これを1番目にもってきても良かったかもしれない。
卓越した企画力を持つインハウスSEO担当者は、技術・知識が全くなかったとしても優秀な担当者たりうる。
技術、知識のないSEO担当者をSEO担当者と呼べるかは別だが、SEOがもたらすであろうビジネスの成果を

「競合に勝つためにはもっとリンクが必要ですね。」

コンサルタントならそう言うだろうし、

「内部だけでは無理です。やっぱりリンクを張りましょう。」

SEO業者はそう言うかもしれない。
外部施策の重要性は今もほとんど変わっていないので、リンク獲得は今でも非常に重要だ。

コンサルタントならば「外部リンクが必要です」というだけで普通仕事は終了だが、インハウス担当者であれば、

「どうやってリンクを得るか?」

を考え、実現しなくてはならない。

Webサイトの置かれている状況や、会社で使えるリソース、できること・できないこと、協力してくれる外部のパートナー・・・

といった状況は全てにおいて異なる。
あるサイトをやった時はリンクをもらえた方法でも、今やろうとしているサイトには適用できないことが普通だ。

知恵を絞り、柔らかい発想で考え、素早く実行に移すことが必要である。
これを持ち、リンクを外部から獲得することができれば、多少施策がまずかろうと技術がなかろうとSEO担当者としてつとまる。


最後になるが、なにゆえにこんな記事を書こうと思ったか?を記しておこうと思う。

私はインハウスの担当者であったりもするのだが(実際はそれ以外にも種々、諸々、様々な仕事を色々やっている)、インハウスSEO担当者にはビジネススキルが求められると感じるのだ。

「〇〇がないからできません。」

という言葉は外部コンサルタントであれば許されるが、インハウス担当者には、

「では、〇〇がないならどうやって目的を達成すればいいの?」

そこまで考えるのがインハウス担当者の仕事である。
〇〇には、予算、サイトのオーソリティ、人員、スキルといった様々な言葉が入る。
ないからと言って逃げることはできない。それを何とかするのが仕事である。

これがない状況、というか何かがないという状況はビジネスにおいてごくごく当たり前で、それがないならないなりにどうすればいいか?
を考え、実行するといった仕事だ。

元々業者やコンサルタントであったとしてもインハウスSEOが簡単にできるというのは大間違いであり、求められるものは全く違うと考えた方がいいと私は思っている。

SEOの考慮が正しくできたショッピングカートのシステムはあるか


結論から言うと、

「ない」

のである。
ひょっとして私が無知なだけですでにあるのであれば教えて欲しい。
ブログで宣伝させてもらうので、連絡いただけたら幸いである。
このサイトからリンクするので、少しは被リンクの効果があるかも知れないし、また多少なりとも宣伝の効果もあるかも知れない。

私としては中小零細企業の販促のお手伝いをさせていただいているのだが、その中で前からとても困った課題に直面している。
それは、

「SEOの考慮が正しくできたショッピングカートのシステムがないことである」

中小零細小売店は大手のECモールに参加していることがほとんどなのだが、これはいわば鵜飼のようなシステムだ。
ひとたび参加すると離脱できない。
条件を決められて不満であっても、店舗側からはどうする術もない。

大手のECモールは徐々に条件を悪くしているが、それでも離脱することができないので泣く泣くそのままやるしかないのだ。

私は大手のECモールがあることを否定しているわけではない。
消費者から見た時には大きな利便性がある。
また店舗側からも全く自前のインフラやノウハウがなくてもECを始めることができるのはメリットだ。

最初はいいかも知れない。

しかし、

料率が高く粗利益を圧迫する。
顧客の名簿が自店の財産にならない。
購入した人に自店の存在を覚えさせることが難しい。

といったデメリットが長期にわたって継続するにつれて顕在化する。

なので、完全に離脱できないとしても、独自サイトへ徐々にシフトしたいと考えるのはごく自然な流れである。
しかし、これが難しい。

大企業はではどうしているのか?
自社で独自のシステムを開発して営業しているのが普通だ。

この手の決済や在庫管理を伴うシステムは開発規模が大きくなるのが普通で、少なく見積もっても1千万円に近いほうの数百万はかかってしまう。
大手の場合であれば、数千万円、数億円といった投資になることもある。

こんな規模の投資ができない中小零細企業は、永遠に依存し続けなければならないのか?

選択肢は二つある。

1.EC-Cubeといったシステムを使って自社で運用する。

これは金銭的な負担は少ないものの技術的に非常に難しい。
中小零細企業がおいそれとできるようなものではない。
まったくインフラ知識がないような商店主ができるようなものでは全くない。

PHPをちょろちょろ触って何とかなるWordPressなんかと違う。
商品数が増えてきたときに実用に耐えるだけのパフォーマンスを出すためには、データベースやサーバの知識が必要になってくる。

システムのアップデートも非常に難しく、プラグインが動かなくなるといったことも発生する。
そんな時にもサポートしてくれるベンダーがほとんどない。
技術力がないとどうにもならないと言ってもいい。

2.ショッピングカートを使って移行する

一般的に取りうる選択肢はこちらしかない。
この選択肢においてはECモールと違い、集客は自ら行わねばならない。

SEOへの十分な考慮が死活的に重要なのだ。

私が調べた限りにおいてこれができているショッピングカートはない。
現在サービスを提供しているほぼすべてのショッピングカートが、

SEO対応

をうたっているが充分とは全く言えない。ここで言うSEO対応というのは、titleタグやmetaタグが編集できるといった程度のものである。
こんなことはできて当たり前で、ECサイトに求められるSEOはもっと様々な考慮が求められる。
SEOのコンサルタントとして高名な某氏とゆっくり話をする機会があったので、そのあたりを聞いてみたのだがやはり彼も、

「ちゃんとSEOの考慮ができてるショッピングカートはないね。」

という見解だった。

私の考えるショッピングカートで最小限必要と考える機能を上げておこう。
これはあくまで十分なものではなく、必要最小限として思いつく限りだ。
だが、この程度を満たしているものがないのが残念である。

  1. ECモールとの在庫連動
    これがないと集客以前に話にならない。
  2. ブログ機能
    WordPressやMTといった充実した機能を持つCMSを同一ドメインで動かすことができる。
    これがSEOのキモとなる部分なのだが、これが非常に難しい。
  3. noindex・nofollow対応
    商品画像のポップアップといった検索エンジンから見て意味のないページへのリンクをnofollowにしたり、ページそのものをnoindexにできる。
  4. 類似ページ正規化
    単に色違いであるだけといったページについてcanonicalで正規化する、あるいは代表的なページ以外をnoindexにすることができる。
  5. 同一コンテンツ別URLの生成への考慮
    商品一覧を見たときに1ページ目は、
    /item/
    で、2ページ目を見た時には、
    /item/page2/
    それで1ページ目に戻ってきたときに、
    /item/page1/
    となってしまうようであれば駄目である。完全に同一の内容であるにもかかわらず2つのURLが生成されるのはNGだ。
  6. sitemapの生成
    これは人間が見るsitemap.htmlと検索エンジンが見るsitemap.xmlの2つだ。

特に1.2.が死活的に重要、他も重要である。

私はかつてこのようは要件を満たすショッピングカートがないかECのソリューションの展示会を見に行って、ブースの担当者に聞いてみたことがある。
でもやはりできないという見解。

ある担当者は、

「できるんですよ。でもどこもやらないのはコストがかかるからですよ。」

といったSEOおたくは全くやだねえみたいな態度であった。
おたくどころの話ではない。
この程度ができず何がSEO対応なのだかちっともわからない。
SEOのイロハのイであって、これができていないというのは不勉強だからであり怠慢であると私は思う。

多くの中小零細企業は困っているのだ。

この記事を読んだら是非取り組んでいただきたいと思う次第なのである。

コンテンツSEOで上位表示をうたうサービスの真実


インハウスSEOをやっているとSEO業者からテレアポがかかってきて、ブログを書くねたに事欠かない。
SEOとは関係のなさそうな業種なのでかかってくるのである。

これは以前「人工リンクだけではないスパムSEO業者の手法」に書いたとおり。

最近のテレアポは実に巧妙で、SEOの営業という意図を秘匿してかけてくる。
あたかも新手法であるかのようなテレアポである。

同じようなネタばかりで恐縮なのだが、注意を喚起しておきたいと思った次第なのだ。

「完全にナチュラルな手法ですので安心です」
「Googleのガイドラインには一切触れません」
「コンテンツSEOという手法なので大丈夫です」

こんなうたい文句がどうやら流行っているっぽい。

実際にその通りであれば問題ないのだが、嘘、まやかしかもしれない。
今回私にテレアポをしてきたのは、業界では有名な悪徳SEO業者。

それに付き合う私も私だが、評判だけで判断するのではなく実際に有用であれば採用してもいいかもしれないと思っているのである。

クライアントが検索順位の1位を占めているキーワードでググらせてみて、検索結果を表示させる。
確かにそこそこなキーワードで1位に表示されていた。
(でもこれって、クライアントの了解はとっているんですかね・・・)

「我々はコンテンツを作り込むことで、このキーワードで1位を獲得しました。」

とテレアポの担当者は言っていた。

このトークには気をつけたほうがいい。

「コンテンツだけでビッグキーワードは獲れない」

と思っておいたほうがいい。
コンテンツで確実にとれるのはスモールキーワードからのアクセスである。

ファインダビリティという用語がある。
SEOにおいてファインダビリティとは、検索結果にどれだけ露出をしているか?
を指している。

ビッグキーワードで上位表示すれば、検索数が多いので当然ファインダビリティは大きく上昇する。
コンテンツSEOによる効果はここにはなくて、様々なスモールキーワードで少しずつファインダビリティを高めることにある。

コンテンツでビッグキーワードを狙ってとることはできない。
コンテンツの増加によって、結果的にサイト全体の評価が上がってビッグキーワードが上位表示することはあるが、それはあくまで「ラッキー」だったということだ。
(面白いコンテンツを作ることによって、口コミを巻き起こしてリンクを集める方法もあるが、これも一種の博打のようなもので確実性はない)

私はその場でOpen Site Explorerを開いてみて、バックリンクを見てみた。

被リンクがバンバンに当たっている。

「これ人工的なリンクではないですか?」
「え?ナチュラルリンクですよ。」
「どう考えても人工ですよね?」
「いえ、一記事一記事手作りで書いてますので人工リンクではありません。」

手作りで書いていれば人工リンクではないという見解にはなかなかしびれるものがあった。
確かに発リンクするページは、アンカーテキストに応じてそれに関連する記事が書かれている。

ワードサラダや、無関係なテキストにアンカーテキストがただ埋め込まれているといった、いかにもバレバレな人工リンクではない。
確かにこれならGoogleを騙しおおせるかもしれないってレベルである。

人工リンクの定義とは何だろう?
それは、

「検索キーワードの順位上昇を狙って作られたリンクのこと」

である。
まさしくそれだ。
文章は確かに手作りであるものの、当たり障りのないことしか書かれておらず、これを読む価値はほぼゼロだ。
被リンクのチェックに慣れてくると、見た目だけで人工リンクかどうかはかなりの確率で瞬間的に見分けられるようになるが、慣れれば瞬時に見分けられるレベルである。
また、ドメイン名も明らかに内容と合致していない。
Wayback Machineで見てみると案の定オールドドメインである。

これを人工リンクと言わずして何という。

「中古ドメインも使われてますし、手作りとは言えコンテンツの内容はないに等しいですよね。」
「そうかもしれませんが、でもやはり被リンクがある程度はないと上がらないですから。」

被リンクがないと上がりにくいということはこれまた事実である。
今でも被リンク重要性は全くと言っていいほど変わっていない。
ナチュラルリンクが付けばいいのだが、今でもGoogleはナチュラルリンクと人工リンクを完全に見分けられないので、上がることは事実である。

まるっきり新規のサイトなどではSEO業者がちょろっとリンクを張ると瞬く間に上がったりとかするし、長年放置されていたような企業サイトでも検索エンジンからのトラフィックが見違えて増えたりする。

結局のところ、このテレアポ業者はコンテンツも作っているものの、人工リンクによる外部施策で上げているのだ。
まあ、今までの見るからに怪しい外部リンクだけで上げる手法よりはましとは言えるが、高いリスクがあり私としてはお勧めはしない。

もし、コンテンツSEOをうたい文句にしているのであればリンクは使うのか?
そこをよく確認する必要がある。
特に順位上昇をうたい文句にするコンテンツSEOは、実際はコンテンツSEOでない可能性が非常に高いので注意せねばなるまい。

社内の信頼がインハウスSEOの成否のカギを握る


最近のトレンドはインハウスSEO(外部業者に頼まず自社でSEOを行うこと)だ。

アフィリエイトサイトの場合は全く無から始まるので被リンクはゼロなのだが、企業サイトの場合は企業活動に伴い必ず何らかの被リンクが付く。
私は被リンクがゼロであることと、少数でもちゃんとしたリンクがあるのは天と地ほども違うと私は思っている。

何かサイトができました。

ということをGoogleが検出した時に、そのサイトの正当性みたいなものを把握しようとする。
その際に全く外部からのリンクがなければ、評価の下しようがない。
リンクがなければ評価が著しく低いままに放置される可能性がある。

ところが企業サイトであれば企業活動が存在する。
人材募集をすれば求人サイトやハローワークといったオーソリティの高いサイトからのリンクが付く。
業界団体といったページもオーソリティが高いだろう。
電話帳に掲載すれば電話帳データベース系のサイトからリンクが付く。

これらのリンクはいわば企業の実在証明みたいなもので、サイトに存在意義があることをGoogleに対して証明するものだ。
ということで無理やり人工リンクをつけなくても、原則的には内部だけで勝負になる。

コンテンツの充実やといった内部の施策だけで検索結果への露出を高めることができる。
今までと原則論としては変わってはいないものの、よりその傾向は強まっている。

この原則に従うならば被リンク業者の出番はないのだ。

では誰でもインハウスSEOはできるのか?
なのだが、

「YesでもありNoでもある」

といったもったいぶった答えになるように思える。
確かに誰にでもSEOはできることは間違いない。

数百ページまでといった小規模なサイトであれば、コツコツコンテンツを作っていけばいいのだし、比較的大規模なサイトであってもやるべきことは大体決まっている。
前までは少なかったが、現在はユーザ参加型の大規模サイトについてのSEOの情報も比較的手に入るようになった。

SEOはこれをやれば順位やファインダビリティが確実に上がる正解はないのだが、

「これはやるべき。やって損はない。」

といった正解は数多くある。
自社サイトの中にある確実な不正解をつぶしていけば、検索結果経由での集客力を確実に高めることは可能だ。
なので、確実にやりさえすればSEOはできる。

しかし、インハウスのSEOにはインハウスならではの難しさがある。

SEO担当者に力が必要なのだ。

外部のコンサルタントなどと異なり、担当者には担当者としての権限と権威しかない。

SEO担当者はWebの制作部門であったり、広報であったり、あるいはシステム部門の所属であったりとか何らかの部門に属している。
そして、たいていはその部門の長ではなく、一担当者に過ぎないことが多い。

インハウスSEOというものは部門横断的な取り組みが必要である。
システム部門や広報、営業部門といった様々な部門の協力がなければ成功はおぼつかない。

しかも、それを行うことによる成果について定量的な説明ができない。
これをやったからどれだけの成果が得られるか説明することは不可能だ。
やらないよりもやったほうがいいということを積み重ねて、そのどれかあるいはいくつか、あるいは全部が成果を生み出す。

これはシステム部門からすれば、

「それやるのに工数は大体10人日かかります。それに対しての効果はどれだけ見込めるんですか?わからない?わからないなんて言わないで下さいよ。そんなコスト感覚のない発言は無責任ですよね。」

営業部門からすれば、

「Webサイトからの引き合いを取ることには大賛成ですよ。でも、コンテンツを作っていつ成果が出るか?わからない?わからないってそんなものに協力はできませんね。こっちはあなたと違って目の前にお客さんがいるんですよ。」

といったように反対されるのが普通である。
これらの反対を押し切ることが出来なければインハウスSEOは絶対に失敗する。
障害は競合サイトではなく社内にあるのだ。

そしてこれらの反対発言には根拠があり合理性がある。
それに対してSEO担当者の意見には合理性がないことが多くSEO担当者に分が悪い。
SEO担当者に社長の後ろ盾といった政治力があればいいのだが、普通はそんなものはない。

社内の反対を押し切る力とは何か?

それは「信念」だ

もし成果が出るという信念が持てなければ、打ち負かされるしかない。
信念を持つためにはどうするか?

インハウスSEOに必要なものは成功体験だ。
こうすればうまくいったという過去の事例が、自信をもたらし、言葉に説得力を与え、人を動かす。

サイト内の小さな改善による成功事例がよいが、実験サイトでもよいだろう。
成功するかしないか自信がないということは、自分自身すら説得することができないということだ。
自分自信すら説得できなくて、どうして他人を説得することができようか?

自分自身のやったことが成果を生み出したことを実感できれば人を動かせる。

そして、最初はちょっとした成功でもよいので、成果を出すことで社内に少しずつSEOは役に立つといった評価を植え付ける。
これによって社内における力、信頼を得てSEOを円滑に進めることができるようになる。

これがインハウスSEOの力の源泉で、皆に信頼されることが成し遂げるために必須なのだ。

SEOはテクニックだけを真似しても成果は出ない


SEOで多くの集客を行い成功しているサイトは数多くある。
その真似をしてもSEOはなぜかうまくいかないことが多い。

nanapiのSEO施策を辻氏がセミナーで紹介して以来、nanapiはSEOのベストプラクティスとして有名になったように思う。
(この意味で有名になったのだが、これはユーザーを増やすことにつながったと思っている。現に私はあのセミナー以来nanapiを見るようになった。SEO的な観点ではなく、一般ユーザーとしても使うようになったし)。

このセミナー以降、nanapiのSEOは様々なWebサイトのオーナーから真似られるようになったようだが、これによって集客力が大きく増大したといった話を聞いたことがない。
まあ、私が単に知らないだけという可能性もあるので、実例があったら教えていただければ幸いである。

これは単に一つの例に過ぎないのだが、SEOでうまくいっている成功事例は数多くあるが、それをテクニックだけ真似てもうまくいかない。
それは何故か?なのだ。

私が実感することがある。

コンテンツには質量が存在していると思う。
読んだときに感じる質量がコンテンツの価値だ。
そうしてコンテンツの質量の総和がサイトの価値である。

逆SEOというモノがある。

企業名などで検索した際にイメージが悪い内容のページが検索結果上位に表示されている場合に、イメージが悪いページの検索順位を下げてイメージの悪化を防ぐというサービスである。
この手法は、検索下位にあるページにリンクをつけたり、新しくページを作ってリンクをつけた上で更新していき上位表示を狙っていく方法だ。
検索順位5位にあるページを下げようとする場合には、そのページよりも強いページを6つ作るといった必要がある。

逆SEOは実際は非常に難しい時が多く、ことの善悪はともかく都合が悪いページがずっと居座る時が多い。

いくら業者が頑張ってページを更新しようが、サイトのボリュームを増やそうが、被リンクを当てようがどうにもならないことがある。
そんな場合とはどんな場合だろう?

都合の悪いページの質量がズシッととても重たい場合だ。

たった1ページしかなくても、その中に込められた怨念がとても重たい場合。
あるいは、そのページを書かせるに至った背景が重たいといった場合。

こんな場合は、ただの個人のブログとかであっても順位を落とすのがとてもとても難しくなったりする。
SEO業者がいかにテクニックを駆使して、手間をかけても凌駕するのが難しいのである。

恨みといった負の感情だけではなく、そのコンテンツにどれだけ情熱を注ぎこむことができたか?
これがコンテンツの質量を決定し、SEOの成否を分ける。

SEOで成功しているサイトは、単に上辺のテクニックが優れているのではなく、いかにコンテンツの質量を増やしたか?において優れている。
コンテンツの質量を増やすためには、良いコンテンツを集めることを成功させるための周到な準備や仕掛けが重要になる。

もちろんSEOの設計がよくできていることも要因なのだが、コンテンツの質量を高めることができた故にnanapiは成功している。

読むに値するコンテンツがあることがSEOの前提であって、これなくしてSEOをいくら頑張っても無理なのだ。

私は一見非常に当たり前のことを述べているように思われるかもしれない。
しかし、当たり前だが難しく、そして知恵を絞らねばならないポイントだ。

コンテンツを作成するためにはコストがかかる。
コストには外部にコンテンツ作成を依頼する外注費であったり、社内で作成する場合の人件費、あるいはディレクションの手間といったものが存在する。

様々なWebサイトにおいてかけられるコストは決まっている。
そこから得られると想定される利益を超えてコストはかけられない。
コンテンツを第三者に書いてもらうようなCGMといったサイトの場合でも、集めるための様々な仕掛けのためのコストが必要で、膨大にかけたとしても費用対効果に見合うほど集まらないという可能性も大いにある。というよりこれに失敗して消え去るサイトが多い。

コンテンツの集め方については多数の戦略の中から自社の状況に応じた方法を適切に選択し、そして常に努力し続けることこそが成功をもたらす。

これがなく、サイトの構造や、コーディングといった上辺だけを真似してもSEOはうまくいかないのだ。

有名サイトを真似してもうまくいかない。

と嘆いているのであれば、サイトのコンテンツの質をそのレベルに高めるという取り組みを行ってみることをお勧めする。
最初は予算が潤沢になければないなりに、限られた予算、人的資源の中でできる限りよいコンテンツを用意してみよう。

これは遠回りに見えるかもしれないが、結局はこちらの方が成功には近道である。

多数の薄いコンテンツを用意して(薄いコンテンツというものは単に文字数を指すわけではないことに注意。また、単に共起語が入っていればいいって単純なものでもない)、サイトボリュームの増大や、ロングテールを狙うよりも、比較的少数のよいコンテンツを用意したほうがいい結果につながることを強調しておきたいのだ。

良いSEOと悪いSEOの見分けるための考え方


最近スパムSEOづいている感じである。

当ブログであるが、

「悪徳SEO業者」なんてしょーもないキーワードで上位表示されたり、
はたまた、
「SEO業者」なんてそこそこビッグキーワードで10位以内に2URLも表示されたり、

当ブログはSEO業者でもなければ、ましてや「悪徳SEO業者」などでも全くないので、まあ、面白いやら、面白いやらって感じである。

「SEO業者」って記事で上位表示している記事であるが、もし広告枠を提供したら買ってくれる業者っているだろうか?D社とか?
まあ、多分売らない気がするが、まあ金額によっては考えますのでよろしくお願いします(って結局金目かよ)。

何でまたスパムSEOの記事を書こうと思い立ったかというと、Web担で鈴木さんに紹介してもらったからブログ記事を書き始めるにあたってちょっと過去記事を眺めたりしていると、そこから着想を得て記事のネタを考えついたりするのである。
それで、最近はスパムSEOのことをばかりを書いているので、そこからまた着想を得てしまうという悪循環なのだ。

さて、どうでもいい前置きが長くなってしまった。

プラス、もしくはマイナスに作用するSEOの考え方だ。

さてなぜSEOスパムはだめなのか?

当たり前のことなのだが、検索エンジンは常に利用者にとって最も最適な検索結果を表示させるように努力し続けている。
それに逆らう行為だからだ。
言うまでもなく当たり前なのだが、この理をよく考えて体得すれば、

  • マイナスになる可能性のあるSEOとは何かを理解することができる
  • 検索エンジンを介してもっと集客することができるようになる

というメリットがある。

マイナスな可能性のあるSEOとは検索エンジンの意向に反すること、言い換えれば検索エンジンを通じてその先にいる人達にとって不利益をもたらすことである。

サイトのリニューアルのためのページ遷移図やワイヤーフレームを主にSEO的な観点からチェックしていると、高い確率でユーザーの利便性と一致していることに気がつく。
ユーザーの利便性とSEOが相反することはあるのだが、そんなケースではSEOについては無視してしまってもさほど問題ないことが多い。

でも大きな例外はある。
この例外の見分け方は、人間が見ているものと同じものを検索エンジンが見ることができるかどうか?で考えればだいたい間違いありませぬ。
AjaxとかFlashとかは検索エンジンが見られないので駄目である。
人間が見られるものと同じものを検索エンジンが見られるようにしておけば、あとは人間が判断するのとおなじように検索エンジンはそれなりによきに計らってくれる(だろう)。

さて、マイナスになるSEOの考え方であるが、どのユーザーにとっても得にならない施策のことだ。
これは前回の記事でもも書いたとおり。

では逆によいSEOとは何であろうか?

SEOとは最近コンテンツを作ることっていうような風潮はあるがこれは誤りである。
良いコンテンツを作るのはSEO以前の前提であって当たり前のことだ。

SEOというのは検索エンジン最適化と言われるように、検索エンジンに対して働きかける技術を指す。
SEOとコンテンツ作成は相互に関連しつつも概念としては別のレイヤーに存在するものだ。

  1. 誰かに見せるべきコンテンツを作る。
  2. コンテンツが見せるべき誰かの検索結果に露出するように配慮する。

このような順番があり、2の配慮を行うことをSEOという。
見せるべきコンテンツが存在していたとしても、検索結果に全く表示されなければ意味がない。
コンテンツ作成とSEOは両輪である。

現在の「コンテンツを作ることイコールSEO」であるという誤解はではなぜ生じたのだろうか?

Googleはいいコンテンツさえ作っていればそれに応じてしかるべき順位まで上げてくれるはず、だから取り立ててSEOなんかしなくてもいいコンテンツさえ作ればいいのだ。
という考え方を持つ人が増えているわけだ。

まあ、これは正しいといえば正しいのだが、あくまでそれは原則に過ぎない。

Googleはそうでありたいとつとめているのだが、未だにそのアルゴリズムには到達できてない。
だから、重要な価値のあるコンテンツであっても、それに応じた価値があると認識できないケースが往々にしてある。

コンテンツの価値が相応に評価されないことが多いのである。

コンテンツの価値を相応に評価させるための技術それがSEOだ。
当面SEOはなくなることない。

あなたの伝えたいことを充分に伝えられるコンテンツを作り、SEOを行うことではじめてあなたの伝えるべきことは世の中に伝わる。

両方必要なのだ。SEOが要らないは誤解である。

これでお分かりいただけただろうか?

最後に一言。

こう考えると、しょーもないペラページを無理やり上位表示させるっていうのはSEO以前に間違いである。
コンテンツの価値がそもそもないし、価値がないコンテンツを価値があると誤認させるのは、SEOではない。それは最適化とは言わない。

この手のペラページをGoogleとしてはわざわざデータベースに蓄積し、膨大な順位計算をCPUパワーを使ってロジックを回して、挙句の果てにはユーザーの利便性を損なわせたりする。
Googleからすると踏んだり蹴ったりである。

最近、大量にペラページを作って収益を上げていたサイトが軒並み落とされている。

まあ、当たり前である。
いずれそうなるのは運命だ。

スパムSEOで生きているのであれば今から別の商売を探すか、ちゃんとしたサイトを作った方がいいだろう。

人工リンクだけではないスパムSEO業者の手法


最近はSEO業者の話題を続けて書いているのだが、また今回もそれ系の話題である。
マンネリのようなのだがスパムSEO業者からのテレアポを受けて色々思うことがあったので、また書いてみたいと思った次第なのだ。

私がSEO施策を担当しているサイトがあり、電話番号を会社案内に明示している。
そのサイトはSEOとは全く無関係の業種であるため、Webの販促に関する営業電話は実によくかかってくる。

基本的にはよほど忙しくない限り営業電話は話を聞くことにしている。
営業電話は会社に居ながらにして向こうから情報を持ってきてくれるという面があるため、

「なるほどね」
「お、そんな手法があるもんか」
「こんなビジネスモデルがあるのか」

といった発見があることも時々ある。
私が担当しているプロジェクトは比較的予算があるので、テレアポから契約したようなケースも時々ある。

テレアポは迷惑なのだが、販促手法としては今後もなくならないはずだ。
テレアポにはテレアポにしかない有用性が二つある。

  1. テレアポでしか掘り起こせない潜在的顧客層は非常に大きい。
    会社のオーナーは誰しも売上アップを願っているが、売上をアップさせるための情報を能動的に探すことはまずない。
    売上を上げるためのソリューションを提案するためには、テレアポはいい方法と言える(あくまで売る側の立場として)。余りにも誰もが願っているにも関わらず、当たり前になっているようなことはテレアポといったプッシュ型でアプローチするのがよいのだ。
    Webの販促手法の中ではディスプレイネットワークやソーシャルメディアといった方法もあるが、まあテレアポほど説明はできないという欠点はある。
    SEOの営業がテレアポ頼みという会社が多いのはこれが理由であったりする。SEOなんて超ビッグキーワードだけど、運よくこんなキーワードで上位表示されたとしても検索数はたいしたことないし。
    ・・・でも個人的にはでもこの手のテレアポは不要なのでご遠慮願いたい。
  2. 今現在世の中で認知されていないサービスを売るため。
    テレアポみたいにゴリゴリっとアプローチしないと難しいだろう。
    この種のテレアポは時間を取って聴くことにしている。ビジネスのヒントになることもあるし、あるいは実際に契約してサービスの提供を受けることもある。
    「自分の話をきいてくれないとあなたは損をするから絶対聞いてほしい」って心の底から思っているのであれば、テレアポで売るのもそれほど悪くないと思う。

さて、横道にそれたので戻ろう。

スパムSEOの営業である。

「うちのSEOはスパムじゃありません。」

と電話の担当者は言っていた。

「うちは社内でSEOしているんで・・・」

と答えたら、腹の立つことに、

「御社のサイトを見ているんですけど、うちの方がレベル高いと思いますよ。」

って何をぬかすかスパムSEO業者!
余りにも腹が立ったので、アポを取らせて事務所に呼ぶことにした。
待ち構えていたのだが、結局アポをすっぽかして来なかったというオチである。

提案内容はこの業者の設置したブログシステムで記事を書くと、ブログのタイトルの中に地域名が設定した地名がランダムに自動的に入り、地域名との掛け合わせで集客できるという手法だそうな。

これがなぜスパムなのか理解できないならばSEOをやめた方がいいと私は思う。

地名と記事中のキーワードの掛け合わせでそのページに来訪したユーザーに対して、検索意図に合致したコンテンツを見せようとしていないからである。
地名との掛け合わせで来訪したユーザーに対して、必要な情報を何も提供していない。
こんなSEO(もどき)は単なるだましであって、こんな子供だましがレベルが高いって勘違いしているのは、笑えすぎてはらわたがよじれるようだ。

まあ、それだけではなくてほかの業者も、色々・・・

「うちは被リンクは使わずに内部で上げるんです。」

って言ってもスパムではないと思ってはいけない。
トップページの上部にiframeっぽい領域をCSSで作って、

「この中に検索キーワードを含む文章を毎日入れていくことで、更新頻度を上げ、キーワード比率を高めることでビッグキーワードで上位表示されるようにします。」

ってトークも聞いた。
この業者は月額料金は安いモノの

「12か月分料金前払い」

ってどんな嫌がらせですか?という感じである。
iframeみたいなつくりだから大量の文章を埋め込んでもユーザーは見えないから問題なかろうって発想が隠しテキストと一緒である。
スクロールすればユーザーは読めるから隠しテキストではないのだが、

「検索エンジンにだけ見せよう」

というよこしまな発想方法が隠しテキストと一緒である。
これは確かに即座にペナルティになることはないだろうが、いずれペナルティを食らう可能性がある。
HTMLのソースが上部から徐々に肥大化するので、領域の下部にあるリンクへクローラーが巡回しにくくなったり、本来ヒットすべきトップページの下部に含まれているテキストでの検索順位が下がったりといったように、全体的なファインダビリティが減少する可能性も出てくる。

これらは一例であるが、スパムSEO業者はたいていこう言うのである。

「私達の施策はスパムではありません」

このスパムではないという根拠は、

「人工被リンクではないから」

という一点に尽きる。
人工被リンク以外でもGoogleのガイドラインに明確に書かれていないスパムは無数に存在する。

では、これをどうやって見分ければいいのか?

その施策をやったら得をするユーザーがいるのか?

を考えてみればいい。
誰も得をする人がいないが、検索エンジンからの集客を増やすことを狙うといった施策はスパムを疑わなければならない。

※クローラーに対してやさしいサイトを作るといった検索エンジンに対する配慮は、直接人間には関係ないが検索エンジンもユーザーである。
検索エンジンがよりページやサイトの内容を理解できるようするのはSEOの基本であり、まったくもって正しい。

内部施策とはユーザーの役に立つコンテンツを作ること、もしくは検索エンジンに理解させやすくすることしかない。
それ以外はスパムを疑わなければならない。

こう考えれば有用な施策と無用、あるいは有害な施策を見分けることができるだろう。

悪徳SEO業者をどう避けるべきか? SEO小説のまとめ


地味なSEOブログでありつつも3年も継続することができた。
これもひとえにこのブログを読んで下さる皆様のおかげである。

これは社交辞令でも何でもなくって、本音で暖かいコメントに励まされてやってこられたのだ。
実は毎週ブログを書きながら、こんなありきたりの内容を書いて何の役に立つのだろう・・・。と内心冷や汗をかきながらアップしているのである。

でも続けてきてよかったと思う。
ブログを始めるまではSEOというWebの業界の中のさらに狭い一業界の片隅でひっそり生きていたのだが、今は自分自身が主人公であると感じている。
これはうぬぼれではなく、ブログといったメディアは一人一人を主人公にする、極めて能動的なコミュニケーションツールなのだろう。

ブログを書かれたことがない方は書かれてみることをお勧めする次第である。
まあ、続けていくのはとっても辛いですけど・・・

さて、前置きが長くなったが本題である。

今までのSEOをテーマにした小説を4本アップしてきた。

全て悪徳SEO業者が行うSEOスパムによって被害を受ける小説である。

実際のところここまで悪いSEO業者は今はさほど多くはない。
クレームをつければそれなりに対応してくれるケースが多い。

しかし、今でも悪徳業者は存在するし、またユーザー側においてSEO業者を使う知恵がなければ、結果として悪徳SEO業者に依頼したのと同じことになるかも知れない。

なので悪徳SEO業者を避けるためにどうするか?
SEO業者の施策によって被害を受けないためにはどうすればよいか?について私なりの考えをSEO小説の総括として述べておこうと思う。

  1. その施策に価値があるかどうかを検証する
    そもそもそのキーワードで上位表示したとしてもほとんど儲からないキーワードがある。
    上位表示された場合のキーワードの有用性は、検索数とニーズの二つの観点から検証されなければならない。
    検索数が多く、自サイトの顧客になりうるキーワードは有用なキーワードだ。その観点からキーワードを提案してくれる業者でなければならない。
  2. 小説に出てくるクライアントはこのあたりの確認を全く行っていない。

  3. SEO業者の施策の内容を理解する
  4. 内部施策・外部施策ともに内容を理解できるためのスキルが必要である。それがなければ施策の良否を判断できない。
    担当者は最低限HTMLやCSSは多少は読める必要がある。

  5. ペナルティになった場合の契約書上の対応を確認する
    これが最重要事項である。
    契約中にペナルティになった場合は回復する支援を無償で行う、あるいはリンクを撤去した上で無条件で契約を解除することができる。といった条文が必要である。
  6. ペナルティになった場合は、有料で回復作業を行うのであればわざとペナルティにして、それをネタにしてまたお金を取る(盗る?)といったやり方で食い物にされる可能性がある。小説中の会社はこのような被害を受けている。どこの業者とは書けないのだが、このような悪徳業者も存在しているので要注意だ。

  7. Googleのウェブマスターツールの導入は必須
    ウェブマスターツールを導入しないと、手動ペナルティの有無が確認できない。
    ペナルティになったかどうかがわからないし、SEO業者が行っている被リンクの質の確認もできない。

    ウェブマスターツールの導入を嫌がる業者は警戒しなくてはならない。施策でペナルティになったことをクライアントに隠そうとする意図がある可能性が高い。

  8. 被リンクの確認を行う
    まずはSEO業者が施策を開始する前に被リンクをダウンロードしておく。
    その後、増えたリンクを見ればそのSEO業者のリンクの質がどのようなレベルかわかる。
    リンクの質は、SEOについて素人であったとしてもかなり分かる。明らかに不自然であったり、読む価値のないページからのリンクは質が悪いのである。

    最初にリンクをダウンロードしておくことには、もう一つの意味がある。
    もし、ペナルティを受けた場合に、SEO業者が張ったリンクを把握できるようにしておくためでもある。
    ペナルティを受けて業者がリンクをはがす場合に、ちゃんとはがしたかどうかを確認するためにも必要だ。

    ちなみにリンク施策の開始前と開始後のリンクの差分を調べるために誰でも簡単にチェックできる方法は、EXCELのvlookup関数を使うのが簡便でお勧めだ。

  9. そもそもそのSEOが必要なのかを吟味する
    SEOの巧拙はサイトの集客力を大きく左右する。失敗すると逆に大きくアクセス数を失う事態を招く。

    これが最も避けなければならない事態である。何もしない業者の方がまだはるかにましだといえる。
    やる必要がなければSEOを業者に外注しない方がいい。もし、業者の提案が魅力的だった場合であっても、リスクとの兼ね合いで判断しなければならない。

    業者がノーリスクだと言っている場合は特に要注意。実際にノーリスクなSEO施策も確かに存在はする。
    見分け方として、自動的に集客力がアップなんてSEO施策は100%スパムだと断言して差し支えない。それ以外の提案であれば納得のいくまで説明を受けるのが重要だ。

悪徳SEO業者はこうしてつぶれた


SEO業者はこうして会社をつぶしたの続編なのである。
SEO業者をテーマとした小説がちょっとばかり好評なので、調子に乗って3回目なのだ。
前作を読まなくても分かるようにはなっているが、読んでいないのであれば読むことを推奨である。

ちなみに今回は最長、8900文字もあるので、こちらのPDFファイルで読んでもらった方が楽かもしれない。
半沢直樹シリーズみたいって言われるかもしれないが、まさしくその通りである。実際に最新作の銀翼のイカロスを読んで熱くなってしまったので影響があることは間違いない。
筆力の違いはいかんともしがたいが、私なりにあれを書こうとしたらこうなったってことである。


私の勤めていた榎戸商会という会社は2年ほど前に倒産した。

SEO業者に施策を依頼したECサイトがペナルティになってしまい、検索経由での売上がほぼなくなってしまった。
それだけではなく同じ業者からFacebookのいいね!を購入していたことが、ソーシャルメディア上で拡散してしまいこれまでのファンからの信頼も失ってしまったのだ。

私はSEO業者に施策を依頼することも、いいね!を人為的に集めることにも反対だった。
しかし、社長であった榎本氏がSEO業者のセールストークを完全に信用してしまい業者にいいようにやられてしまった。

私がもしあの時もっと強く反対していればと悔やまれてならない。業者の言うことに対して反論する程SEOについての知識がなかったのだ。

事務所兼、靴下を作る工場兼、社長の自宅には社長の家族も住んでいた。
まだ小学生の娘は私にもよくなついていて、学校から帰ってくるとビーズ細工などをして遊んだり一緒に一泊旅行に行ったりもした。

家族はECサイトを畳んだ時に自宅を引き払い、山梨で社長の兄がやっている蕎麦屋を手伝うことにしたらしい。
社長の兄というのは非常にケチな人物らしく、社長は昔から嫌っていたらしいのだが食っていけないのだから是非もない。

そんな兄のところに身を寄せている家族のことを思うと、もう少し自分がしっかりしていればと悔やまれてならない。

1年が経った。
私は年商20億円ぐらいのECショップを運営している飯倉株式会社という会社に転職した。
自分では零細ショップでの経験などとるに足らないものだと思っていたのだが、経験を評価してもらって採用してもらえたのだ。

「ゼロから立ち上げて黒字化したのは大したものですよ。」

そう言われたのだが、やることをやっただけのつもりだったので褒められているのか、お世辞なのか、皮肉なのかよくわからなかったぐらいである。

今回も新しい商材のECサイトを任された。

スポーツ自転車に乗る人向けの自転車用品の専門の販売サイトだ。

最初は自転車に全く興味がなかったので自信がなかった。

まずはユーザの気持ちを知るところから始めなければと考え、この金額でも初心者向けということに驚いたものの20万円程のスポーツ自転車を買った。

最初は30kmぐらいしか乗れなかったが、徐々に距離を伸ばしていき週末の度に150kmぐらい乗れるようになった。
1ユーザとして自転車に向き合っているうちに、一つ一つの商材を買うユーザの心情をつかむことができるようになるのを感じた。

最初は運営のコツがわからず苦戦したがものの、始めて2か月程で手ごたえをつかみ半年後には月商900万を超え、1000万をうかがうまでに成長した。
リスティングやアフィリエイト広告に使うための広告予算も比較的潤沢にあったため、軌道に乗せるのは割と簡単だったように思う。

毎日ブログを書いたし、週明けはツーリング日誌と称して走ったコースなどをレポートし、
ソーシャルメディアを運用して固定客のつながりを強めたり、いちゃもんとも思えるようなクレームに対しても真摯に対応し、
アフィリエイターの提携申請に対しては休みの日であったとしても必ずその日のうちに処理を行ったし、全てのサイトを実際に見た上でお礼のメールを出し、
SEOについても会社で売っている商品を販売するアフィリエイトサイトを自分で運営して、毎日実践したりしながら知見をつかんでいったりした。

やるべきことをやっているだけなのだが、これらをこなしているだけですごいと言ってもらえたのは意外に思えた。

そんな頃、SEO業者から営業電話がかかってきたのである。
SEOについては特別に取り組む必要は感じていなかった。
Webマスターツールでは着実にクエリ数も増えており、約5000程度まで増加していた。
今のやりかたで間違っていない。そういう確信はあった。

フリーダイヤルしか公開していないにも関わらず、そこにかけてくるような失礼極まりない営業電話はいつもは話途中で切ってしまうのだが、この日の電話は違った。

忘れもしない、私が勤めていた会社をつぶしたあの会社、サウザンドリーフ社である。
営業してきたのは横芝と名乗っており、私のことを知らない社員のようだった。

私は彼からのアポイント提案を受け入れ事務所に呼ぶことにした。
但し一人で来ることという条件をつけた。
私を知っている社員が同行すると全てはおじゃんになる。

横芝は事務所にやってきて、

「自転車用品っていうキーワードで上位表示させましょう。そうすれば売上は激増しますよ。」

またこれか。
既視感に激しいめまいを感じた。進歩しない人達・・・。

「本当に自転車用品ってキーワードで上位表示されると売上が上がるのですか?」
「そりゃあ、そうですよ。」

自転車用品なんてキーワードで一体誰が何を求めて検索するっていうのでしょう?と突っ込みたくなる気持ちを抑えて、

「そういうものですか。」
「そうですよ!」
「わかりました。」

とりあえずいったん話を打ち切って、

「ではこちらのサイトの対策をお願いしようと思います。」

リスティングのために前に作ったLPでありドメインは別だ。このページには自然検索経由でのアクセスはほぼないことはわかっている。
このページであればペナルティを食らってもさほど問題はない。
LPと言いつつも会社案内といったページはいくつかあるが、本サイトと同様の内容でありnoindexになっておりインデックスさせない設定になっている。
最初からSEOは捨てているページである。

上げられるものなら上げてみろって感じだ。

「かしこまりました。ではメールで見積と発注書をお送りします。」
「お待ちしております。」
「最後に1点お願いなのですが、Webマスターツールは削除が必要です。」
「何でですか?」
「GoogleはSEOを嫌いますので、SEOをやっていることをGoogleに知らせない方がいいためです」

全くあの時と同じだ。馬鹿なの?

「あのう、ちょっと聞いていいですか?御社のSEO対策ではペナルティになることはないって聞きましたが、Webマスターツールが入っていなければペナルティになったかどうかなんてわからないんじゃないですか?」
「・・・」
「どのみち今現在Webマスターツールを導入しているので、今更削除したとしてもGoogleにはサイトの存在は知られているでしょうし、Google Analyticsも消さないと意味ないんじゃないですか?」
「Google Analyticsは問題ないんです。GoogleはAnalyticsのデータを用いてペナルティにするしないの判断はしないと明言してますし。」

それはWebマスターツールも一緒ですよね。Webマスターツールが入っているとペナルティの通知が来るからあなたたちは困るからですよね。とここまで出かかったが、我慢した。

「そういうものですか。わかりました。」

とあの時のような反応をしてやり過ごした。まあ実際のところはどうでもいい。
Webマスターツールを当社側が見ているかなんてことは、SEO業者には絶対にわかりえない。

その日のうちに契約書と見積書が送られてきた。
成功報酬は24750円だそうだ。高い。もし、万が一成果が1ヶ月完全に達成した場合は76万円を超えることになる。
こんなキーワードで上がったからと言って、こんな金額を回収できるわけがない。全く馬鹿としかいいようがない。
私は売上金額の1.5%までなら自由に販促費を使ってもいいことになっているがとても足りない。

今度は、FTPのアカウントは開示しなかった。

「内部施策のために必要なのでFTPのアカウントを教えてください。」

と言われたものの、

「それは規則で社外の人には教えられないことになっています。」
「NDAを締結させていただきますがいかがでしょうか?」
「内部施策が必要であれば作業指示書をいただけば、その通りHTMLを社内のデザイナーが実装しますので御社にやっていただかなくて結構です。」
「はい、わかりました。」

これで引き下がっていたので、よくあるケースなのだろう。
FTPを開示しないので、.htaccessをどう編集したのかSEO業者側にはわからない。
.htaccessでGoogleのクローリングを拒否してしまえばGoogle検索にはヒットしなくなるので、検索順位を監視しておいて上位表示されてしまいそうになったら手を打つことができる。
実質的には1ページしかないペラサイトなので、いくら外部施策をやったとしても上位表示はほぼ100%あり得ないことだが、回避策は用意しておいた方がいい。

一番重要なこと、それはペナルティである。
契約書にはペナルティになっても一切の責任を負わない旨が記載されていたので、そこは「絶対ペナルティにならないのだからこの条文はいらないですよね」と言って削除を要求し、ペナルティになった場合には速やかに回復する義務を負う旨を明記させた。

かなり渋っていたのだが、やはり契約が欲しいのだろう。最終的には折れたのである。

契約を開始して当初は300位圏外だった順位は1ヶ月ほどで上がってきて75位まで上昇してきた。
この程度なら全く課金は程遠い。30位ぐらいまで上がってきたら考えればいいだろう。

Webマスターツールから被リンクをダウンロードしてみる。
なかなかひどいものだ。
1ページから無関係な文章が大量に羅列されていて20サイトぐらいにリンクされている。

こんな感じである。

家電量販店よりも家電通販が便利です。
世田谷で痛くない医療痩身を受けてきました。
宇都宮餃子は美味しいですね。
ランドセルは新入学の必需品。

こんな文章が延々と続く。
100人が100人見てSEOスパムだと判断できる代物だ。

このページのドメイン名は日本で使われていたとは思えないものであった。
Wayback Machineで見てみると、3年前には全然違うサイトだった。
ロシア文字が並んでいて何が書いてあるかさっぱりわからない。
ページランクは「なし」である。
危険物そのもの。

帰宅してから一つ一つの被リンクのサイトやブログを開いてみて、リンク先をまとめてみる。
リンク先はこのSEO業者の基本的に取引先であるはずだ。
Whoisでまずは全ての独自ドメインの所有者を調べてみたのだが、バリュードメインなどのドメイン販売業者の名義になっており、どの業者が実際に管理しているのかはわからなかった。

ここから尻尾をつかむことはできないか・・・。
まあ、いい。

1ヶ月かけてリストをまとめて、約650のSEO対象サイトをピックアップしてみた。

中には私のいた会社、榎戸商会のECサイトもあった。
このせいで私の会社はつぶれたのだ。
こんな雑なリンクで金を取ろうってひどいわ。ほんの少しだけではあるが薄らいでいた憤怒と自責の苦い感情が広がった。

SEO対象となっているページはページランクが「なし」になっていたサイトも30ほどあり、1位で表示されるであろうサイト名ですら10位以内に入っていないケースが多々あった。これらはペナルティを受けたサイトであることはほぼ間違いない。

私はそれらのサイトのサイト管理者に全てメールを書いた。

「自サイトをペナルティにしてしまったSEO業者に対して仕返しをすべきだ。」

という趣旨である。
多くのサイト管理者から返信が届いた。
私が以前榎戸商会の社員だったときは、契約したのはSEOの代理店で施策を行っている業者は分からなかった。

返信には株式会社エイトタウン社への恨みが多く綴られていた。
まさしく、私の会社がやられたことそのものである。

大体手口は同じだった。

  1. 日額成功報酬で契約をとる
  2. ペナルティになる
  3. 高額なペナルティ回復サービスの契約を迫る
  4. ペナルティ回復サービスを契約するとリンクをはがしてくれる

といった一連の流れらしい。
順位が10位以内まで上昇して成果報酬が発生することは最近ではほぼないらしい。
最初から順位が上がることを期待してないのかもしれない。
複数サイトをエイトタウン社に施策させていた会社では、ペナルティを受けたサイトの中で重要なサイトのみペナルティ回復サービスを契約したそうな。
すると、契約しないサイトはそのままだったものの、契約したサイトの被リンクはきれいに抹消されたらしい。

自分で泥棒をしておいて「金を払えば犯人から取り返してあげますよ」と言うような詐欺である。

非常に多くの証言がある。これだけでもエイトタウン社の犯罪の証拠としてはほぼ確実だ。
しかし、状況証拠でしかない。

ソーシャルネットワークで親しくなって、現在は時々情報交換をしているレンタルサーバ業者の社長さんがいる。
社長といっても従業員3人のこじんまりとした会社らしい。

この社長さんに前職の会社で起こった出来事と、現在エイトタウン社の施策によって困っている人のことを話して頼み込んだら快諾してくれた。

「そういう悪い奴を懲らしめるのには賛成ですね。協力しますよ。」

10IP分散のサーバについて当初半年間無料。
その後は10サーバー合わせて月額千円で使えるという破格の条件でサーバを貸してもらえることになった。
最初は私はそれに相応する金額は払うと言ったのだが、本当にその金額でいいと言ってくれたのだ。

この金額を餌にして営業メールと電話を使ってエイトタウン社にアタックしまくった。

何度も電話はガチャ切りされたが、技術担当者らしき人が出たら条件の良さに即決してくれた。

サーバ設定が終わって数日後にはサイトが徐々に立ち上がり、約1か月後にはレンタルサーバには例のゴミのような被リンクのページが山のように出来ていた。
そのページからは私がリストとしてまとめた約650サイト中に含まれるサイトも多くあった。

動かぬ証拠はつかんだ。

エイトタウン社のSEOの代理店、サウザンドリーフ社の担当横芝を電話で呼び出しエイトタウン社の社長を同行して連れてくるようにと話した。

「エイトタウン社の社長って何でですか?」
「あなたの会社はエイトタウンのただの一代理店だからエイトタウンが来なければ話になりません。」
「何でうちがエイトタウンの代理店だってわかったんですか?」
「調べれば簡単に分かることです。」
「でも何で社長なんですか。」
「社長じゃないとだめなんです。社長が来ないならばこちらにも考えがありますよ。例えば、某巨大掲示板に御社とエイトタウン社がこれまでしてきたことを書くとか・・・。」
「それって脅迫ですか。」
「さあ、どうでしょう?」

結局後ほど折り返し電話がかかってきて、エイトタウン社の社長も来社することになった。

当日の打ち合わせはセミナーでも使っている大会議室で行われた。

エイトタウン社の市川社長と、サウザンドリーフ社担当の横芝がやってきた。
こちら側はエイトタウン社のSEO施策によってペナルティを受けた会社の担当者や社長など総勢25名という陣容である。
既に倒産した私の前職の榎本元社長もいた。

市川社長も横芝も肝をつぶして、

「何でみなさんここにお集まりなのですか・・・」
「あなたから謝罪と対応をしてもらおうと思いましてね。」

「何のことですか?」

「言われないと分かりませんか?というかとぼけるのはいい加減にしてください。」
「・・・」
「ペナルティになるのが分かっていてリンクを張り、そのリンクをはがすのにお金を要求するってどれだけあなたは腐っているんですか?」
「私たちのせいでペナルティになったという証拠でもあるんですか。」
「ペナルティ回復サービスを申し込むとリンクが数日間でほとんど残らず消えますよね。あんなことは自社の管理下のリンクでなければ不可能です。」

別のエイトタウン社の被害を受けた別の会社に協力してもらい、ペナルティ回復サービス前と後のリンクをすべて印刷して残しておいたのだ。

「わざとじゃないですよ。私達だって上位表示されるように精一杯やったんです。」
「上位表示されたことなんてありましたか?私はあなたの会社がSEOを請け負っていたと考えられる650サイトを全て詳細に見てみました。」
「アンカーテキストに含まれる重要キーワードでは全く上位表示していませんね。」
「そんなのは言いがかりだ。上がっているクライアントだってちゃんとある。」

「あんなくそみたいなリンクで上がるわけないないやろボケェ!」

私に代わって発言をしたのは業界の草分けで、数多くの著作で知られるSEOコンサルタントの小岩氏だった。
被害を受けたうちの一社が彼からコンサルティングを受けているため本日同行したらしい。

市川社長は小岩の存在に気が付いて驚愕の表情を浮かべていたが、

「小岩先生お会いできて光栄です。私もあなたの書籍でSEOを勉強したんです。」

そう言って場の雰囲気を変えようとした。

「おべんちゃらなんかいらんわい。わいの本をちゃんと読んどったらあんなSEOなんかせんやろ。読んどらん証拠、ムカつく奴や。」
「・・・」
「SEO業界が胡散臭いって思われるのはお前みたいな奴がおるからや。お前みたいなカスは死んでしまえ!」

「榎戸と申します。私の会社はあなたのせいで倒産したのです。どうしてくれるんですか?」

「私の会社には責任はありません。」

「いつもそうやって言い逃れをしてきたのでしょうが今回は通らないですね。」

松岸が口を開いた。
彼はITの関連の案件を専門に行うことで知られた弁護士である。

「倉橋さんが証拠を固めてくれました。貴社がやったSEO対策はGoogle社の定めるガイドライン違反であることは明白です。それを隠してペナルティの可能性はないと強弁するのは無理でしょう。」
「被リンクがうちの会社であるなんて証拠なんかない。よそのSEO会社の被リンクなんじゃないですか?」

「証拠はあります。」

6か月無料契約を餌にして契約を取った、レンタルサーバの契約者情報のプリントアウトを松岸は差し出した。

「これが証拠です。ここに集まっている方々が原告団となり民事訴訟、刑事訴訟の両面で現在裁判の準備を行っています。これだけの証拠と証人があれば負けない。」

「お前は俺をはめたんだな!」

市川社長は顔を真っ赤にして吐き捨てるように言った。

「それはこっちの台詞ですよ。ここにいる人々を騙したのは誰ですか。」

「俺は騙してない。俺は当然の経済行為をしたまでだ。」
「この期に及んでそんなことを言うんですか。面の皮がどれだけ厚いんですかね。まあいいです。裁判の結果を待つまでもなく、もうすぐあなたは報いを受けるのですから」

翌週の週刊水曜日にはエイトタウン社とサウザンドリーフ社の行った詐欺行為の特集が組まれていた。
榎戸社長を始め他の被害者にもインタビューがなされており、また専門家の見解としてSEOコンサルタントの小岩氏、松岸弁護士のコメントも書かれていた。

この週は他に大きなニュースもなかったためか、テレビ局や新聞の取材もエイトタウン社に押し寄せた。
市川社長は相変わらずノーコメントだったが、このタイミングで退職を決意したというある従業員は、

「クライアントを騙し続けることが苦しくて辛かったんです。」

と電子音のように加工された音声で語っていた。
この従業員は裁判で証言台に立つことも約束しており、市川社長の逃げ場は完全にふさがれた格好である。

既存客だけではなく、報道を見て過去の顧客までもが続々と損害賠償請求を求める原告団に加わって来た。
市川社長の所有のフェラーリや三軒茶屋のマンションも仮差押え処分を受け、会社の現預金も凍結された。

従業員の給与を払うこともできない状況に追い込まれたのである。

エイトタウン社はついに倒産した。
ついでに言うと、エイトタウン社の代理店業務を行っていたサウザンドリーフ社も、責任から逃れることができず同様に倒産した。

会社の人々をはじめ様々な人々から応援され悪徳業者を倒すことができたが、榎戸商会を倒産させたことによる気持ちのささくれはなくなることがなかった。

そんな矢先のこと榎戸元社長から連絡があった。
靴下の製造機械は倉庫にとっておいたので、エイトタウン社からの回収よって靴下の製造販売をとりあえず再開することができたそうだ。

自転車用品の販売は軌道に乗り、部下の社員も採用してもらった。
彼女は専門学校でHTMLを勉強した経験があり熱心だった。愚直に私が実施しているのに近いレベルでこなしてくれている。
要所を押さえておけば任せても大丈夫だと思う。それに彼女はとても美人だしw

自然派靴下という商材もうちの会社で一手に扱ってECショップで販売してもいいことになった。
もともと売っていた商材なので今の知識ならすぐに軌道に乗せられるだろう。

「もう一頑張りしますか。」

夜の10時を回ったオフィスで呟いたのである。


もしこの他にもSEOの小説にご興味があれば、

SEO業者はこうして倒産した
SEO業者はこうして会社をつぶした
SEO小説 カニのオマージュ

このような小説も書いておりますので是非ご覧くださいなのだ。
カニのオマージュはあり得ない設定の小説ですが、個人的にはちょっと気に入っている。

もし、カニのオマージュが面白いと思われたならば、

掌編小説「カニのオマージュ」という同じタイトルで、設定の似たSEOとは関係のない小説も書いているので合わせてご覧くださいませ。

SEO業者はこうして会社をつぶした


前回のエントリーSEO業者はこうして倒産したが珍しくバズったので、性懲りもなくまたSEO業者をテーマとした小説を書いてみるのだ。
まあ、今回はバズらず懲りることになるのだろう。と予め予防線を張っておくのである。

今回は結構長くて読みにくいのでPDF版を準備した。
こちらからダウンロードできるのでお使いくださいませ


「私は全然ITのことは素人なので、御社を信じてお任せしますのでよろしくお願いします。」

私の年齢の倍はあるだろう榎戸社長は私に向かって深々と頭を下げた。

「私も経験不足なのでいろいろ教えてください。」

倉橋さんという若い女性がこれまでは店舗運営兼任であったがWebの選任になることになったそうだ。

「はい、ご期待に必ずお応えできるように致します。」
「SEOコンサルタントってすごいですね。SEOって全然わからないんです。色々教えてください」
「はい。」

実はほんの半年前まで投資用マンションの電話営業をしていたので、SEOのことなんかよくわからないのである。すいませんという感じだ。

3人コンサルタントと名乗る担当者がいるのだが主業務は営業である。

Aがテレアポをする。
アポが取れると、AとBが同行してお客様の会社に行く。
Aは営業部、BはSEOコンサルタントの名刺を出す。

Bがテレアポをした場合はこの逆に
Bは営業部、AはSEOコンサルタントの名刺を出す。

といったあんばいだ。
コンサルタントの役目の人がテレアポをしているとなると説得力がないので、わざとテレアポした担当者と別の担当者を連れていくという仕組みにしているわけだ。

実際はうちの会社にコンサルタントと言えるほどのスキルのあるコンサルタントはいない。

私は半年前まで投資用不動産の営業、
飯岡は1年前まで俳優を目指していて、
佐倉はこれまた1年ほど前までキャバクラの店員、

といったあんばいである。
半年ほど前まではSEO事業を立ち上げたコンサルタントの日向という奴がいたのだが、現在退職してユーザー側の会社でSEO担当者として働いているらしい。いわゆるインハウスSEO担当者というやつだ。

その彼が抜けた穴を埋めることはいまだにできていない。
SEOを教える人がそもそもいない。
我々3人で勉強会などもやったこともあったが、たった2回やっただけでその後は立ち消えになった。

ひたすらテレアポをし、受注が取れたらもともとリンクを調達していたSEO業者に丸投げして、代理店マージンだけで食っているのである。

日向が退職したときにSEO事業をやめるという話もあった。
社長はじめ全員が上野を慰留したのだが、彼が退職の意思を曲げないので全員で「無責任だ!」と言って吊し上げた結果、その翌日から会社に来なくなってしまったのだ。

彼がいなくなってできることはテレアポしかなかったから、S社のコピー機でも売るかそれともN社の光回線あるいはS社の携帯電話のセールスでもやるか?と議論をしてみたが、まあそこそこ収益も上がっていたのでSEOで行くことになったのである。

上野はそんないきさつで退職したため、まったく引継ぎをしていなかった。
我々3人ではリンクを張ることすらできないので、前から付き合いのあったSEO業者、株式会社エイトタウン社と代理店契約を結んで営業を継続することになった。

飯岡がテレアポをして取った案件がこの榎戸社長の会社、榎戸商会である。
飯岡が営業役、私がコンサルタント役で客先に出向いたのだ。

アポが取れるのもまれだし、契約に至ることはことさらまれなので、とてもうれしかった。
固定給は月額16万5千円と低く、業績給がないととてもじゃないがやってられない。
1契約取れると、アポイントを取った営業担当者は15%、クロージングしたコンサルタント役の担当者は7.5%のマージンがすべての支払いについてもらえるのである。これがなければとうの昔に辞めている。

ぶっちゃけ言うと、エイトタウン社と直接契約したほうがよっぽどマシである。
このSEO業者は2ちゃんねるではむちゃくちゃ叩かれているように施策はひどいものだ。
そして、うちの会社が入ることで、値段もすごく高くなる。

SEO業者への月額支払に72.5%マージンを載せた金額が見積額だ。
もともとの価格自体は安かろう悪かろうという金額なのだが、当社が間に入ることで高く悪くwになってしまうのである。
72.5%という数字は半端に見えるが、当社が50%マージンを取り、担当社員の2名で合わせて22.5%のマージンがあるので、これを足すとこんなきりの悪い数字になるわけだ。

今回エイトタウン社からの見積は、日額成功報酬20,000円だった。
そんなわけで34,500円が当社からの見積額だ。ぼったくりである。

さて、話は元に戻る。
榎戸商会は自然素材の靴下を製造販売している会社である。
もともと自社で運営するショップで販売しており、乾燥肌やアトピーで困っている人を中心に根強いファンがいた。
2年ほど前からECショップを始めて、現在は月商300万円まで成長し黒字化したそうだ。

そんな矢先、ショップの入っていたビルが耐震性に問題があるということで、取り壊さなれればならないことになったらしい。
新しい店舗をオープンするのは多大な投資が必要なのでこの際店舗は作らずに、ECショップを主力にすることにしたそうだ。
そんな矢先我々の会社がSEOのテレアポをしたというナイスなタイミング。いわゆるラッキーってやつである。

倉橋さんは店舗の運営の合間にECサイトを軌道に乗せただけあって、清楚な中にも意思の強さを感じさせる女性だった。
ブログの更新は店舗が閉店してから行い、ソーシャルの運用は日中のお客さんが一人もいない時間にせっせとやったそうだ。ショップのFacebookページは「いいね!」が4000以上もついている。
これは彼女のアイコンのおかげもあったかもしれないが・・・。
自分もこの会社を担当できることがとても嬉しかった。

何としても成果を出さねば。

「靴下」

という超ビッグキーワードで上位表示すれば売れるはずだ。

「靴下という超ビッグキーワードを狙います」

彼女は一瞬口ごもって、

「それでいいのでしょうか?」

やっぱり靴下を売るECの店舗であれば「靴下」というキーワードを狙うべきだろう。

「これでいいんです。素人じゃ、こんなビッグキーワードを上位表示させることなんかできませんが、我々だったらできます。だから正解なんです。期待してください。」
「そういうものなんでしょうか・・・。わかりました。」
「まずは一点お願いがあります。」
「なんでしょうか。」
「Googleのウェブマスターツールは使ってますか?」
「はい。」
「であれば、ウェブマスターツールは削除してください。」
「いいんですか?」
「はい、GoogleはSEOを嫌います。ウェブマスターツールを入れていると、SEOしていることがGoogleに知られてしまいますので、まずは施策に入る前に消す必要があるんです。」
「そういうものですか。」

実はエイトタウン社から指示されているからそう言っているだけで、それが正しいのかどうかなど正直わからない。

「期待してますよ」

榎戸社長は最後にそう言って打ち合わせは終わった。

FTPのログイン情報をもらって会社に帰り、エイトタウン社にこれをメールで送った。
これでもうやることは基本的にない。

あとは月次の報告のタイミングで順位報告を送るだけだ。
でもしかし・・・。

意外に榎戸商会を再訪するタイミングは早く訪れた。

3週間後のことである。
エイトタウン社が、

「Facebookのいいね!の販売を開始したんですよ。
榎戸商会さんに順位の報告がてら、営業に行ってみませんか?」

という提案をしてきたのだった。
私はこれに一も二もなく賛成し、倉橋さんにアポを取った。

まずは、順位の報告だ。

「我々の施策の開始前は靴下というキーワードでの検索順位は89位でしたが、現在47位まで順調に上がってきました。」

「そうですか、さすがプロは違いますね。」
榎戸社長は上機嫌だった。
倉橋さんの表情を窺ってみたが、残念ながら何の表情もなかった。

「今回は一つ提案があります。Facebookページの「いいね!」を集める対策です。現在「いいね!」ですが約4000です。これを簡単に10倍にすることができます。」
「そうなんですか。それはすごいですね。今まで苦労してやっと4000集まったのですがそれが簡単に10倍になるってことですね。さすが専門業者ですね。」
「まあ、プロですから。」

倉橋さんは言いにくそうな表情をしていたが、

「すいません、今の4000のいいね!ですが、いいねして下さった方は私の会社のファンの方で、多くの方が買ってくださっています。増やしていただくのはいいのですが実際に購入につながるのでしょうか?」

そんなこと分からんわ。
どうなんだろう?

「もちろんです。ファンが増えるわけなので購入数も増えますよ。」

あーあ、言っちゃった・・・。
わからないし仕方がない。
エイトタウン社の営業を連れてきた方がよかったなぁ。

「そうですか。」

何となく彼女は釈然としない表情をしていたが、この日は40000いいね!を200万円で販売するという話が榎戸社長とまとまった。
200万円の7.5%が、15万円がマージンとして入るので来月の給料はだいぶ太いはずなのだが、浮かない気分だった。

まあ、契約を取った時に浮かない気分なのはいつものことなのだが、今回は特にそうだった。

それから約3週間後のある日、電話が鳴った。倉橋さんからだった。

「すいません。靴下ってキーワードだけではなくて、そのほかのキーワードも検索に表示されなくなってしまったのですが。」

まずい・・・。

「調査を行いますので、またご連絡します。」

エイトタウン社に急いで連絡する。

「そうですか。おそらくは一時的な下落だと思います。」
「御社の施策のためということはありませんか?」
「当社のリンクは品質が高いのでその可能性はまずありません。もし、リンクペナルティだとすれば他のSEO業者のリンクが影響しているのではないですか?」

そんなことはない。榎戸商会がSEO業者に依頼をしたのは今回が初めてのはずだ。

「それはないはずですが・・・」
「確かめてみましたか?」
「確かめてはいませんけど・・・」
「確かめなければ何とも言えないんじゃないですか?」
「ではどうやって確かめるんですか?」

エイトタウン社の担当者は少しの間沈黙して、

「しばらくして順位が回復しなかったらよその業者がやっていたということになるってことですね。」
「????」
「あとは契約していなかった場合でも、ネガティブSEOっていって同業者が競合サイトの順位を下げるために、品質の悪いリンクを付ける場合があるんです。その可能性が高いですね。」
「同業者から妨害を受けている可能性があるってことですか?」
「うちのリンクが原因ってことはありえないですから、それしかないでしょう。」

他の案件でも下落した例はいくつもあった。
それは全てエイトタウン社の責任ではないのか?

「過去にもいくつか下落した例ありましたよね。それも御社の施策が原因ではないっていうことですか?」
「そうです!そんなことを言われるのは心外です。リンクは正しくつければ絶対にペナルティにはならないんですよ。」

毎回この手の説明を受けてもなんだか納得がいかない。

「ネガティブSEOだったとしたらどうするんですか?」
「当社のペナルティ回復サービスというサービスがあります。圏外に飛んでしまったキーワードが圏内に戻ってきたらその時点で課金発生です。」

通常ならばこの手の問い合わせは電話でのらりくらり何とかかわすのだが、この説明をしに榎戸商会に行った。
この日は社長は他の用事で不在だったので倉橋さんに聞いたままの説明をした。

彼女はあからさまに不快そうな表情をした。

「うちの会社で今までSEO業者を使ったことはありません。またネガティブSEOなんてうちみたいな小さい会社に対してそんなことをする同業者がいるとも思えませんが。」
「まあ、これはあくまでも可能性であって、自然に順位が戻ることが普通なのでいったん様子を見てみましょう。」
「順位戻るのが普通ですか?」
「はい。」

実際は順位が戻ったことはほとんどない。
今まで順位が圏外に飛んだケースは15件ほどあったが、回復したケースは4件しかない。
回復したケースでも元の順位までは戻っていない。

こう言いながら実に苦しいのである。

「検索経由での売上げがほとんどなくなってしまいました。日額7万円ぐらいはあったのですが1万円を切ってしまいました。すぐに戻ってくれないと本当にまずいです。」
「わかりました。」

そう言いながら重い鉛を飲み下したような陰鬱な気分になったのである。
帰社してからエイトタウン社に何とかして回復してほしい旨を話してみたもののの、彼らもなんだかしみじみしなくて暖簾に腕押しという感じであった。

彼らは個々の案件が課金できなかったとしても、トータルでは3割ぐらいの案件で課金できているから儲かっているはずである。
上がらなければ「ハイ、次!」って感じでいいのだろうが一人一人の顧客としてはそれが全てなのだからたまったもんじゃない。

そして悪い時には悪いことが重なるものである。

数日後、今度は榎戸社長から電話があった。

「あのFacebookのいいね!なんだが御社にお願いしたことが原因だと思うのですが、まずいことになっているので相談させてくれませんか?」
「どうしたんですか?」
「いいね!を金で買っただろという書き込みがFacebookにたくさん書き込まれてしまっているんです。」
「・・・」
「Facebookからつながっていたお客さんが買ってくれなくなってしまいました。」
「・・・」
「検索経由の売上も激減してしまってますね。」
「・・・」
「うちの会社ほとんど売上なくなってしまいました。どうすればいいのでしょう?」
「・・・何とか早急に考えてみます。」

エイトタウン社にペナルティ回復サービスを無料でやってくれと電話をしたのだが、それは無理だと言われてしまった。
当社でこの金額を負担できないか?という話をしたのだが、社長にはやはり却下されてしまった。

「榎戸商会って君の取引先だよね。自分で何とかしなよ。」

ペナルティ回復サービスの成功報酬は75万円であった。
こんな金額個人で払えるわけもない。
なんとかならないか・・・。

エイトタウン社を訪問した。
当社の担当者は特に決まっていないらしく、平井主任という営業担当が応対することになった。
平井主任は年齢は30歳ぐらいに見えるが、入社して間もないらしくあまり詳しいことはわからないらしい。
しかし、

「ペナルティ回復サービスは無料では提供はできません。」

しかしきっぱりと言い切った。

「ペナルティ回復する場合は、我々のリンクも含めていったんすべて外さないといけないです。そうしたら我々課金できなくなってしまうじゃないですか?我々はタダ働きですか?」
「でも榎戸商会さんに多大な迷惑が掛かっているんですよ。どうするんですか?」
「それは別に我々の責任ではありません。」
「本当に御社の責任はないのですか?」
「ないですね。我々の施策のせいでペナルティになったという証拠でもあるのですか?」
「せめて、Facebookのいいね!の返金だけでもできませんかね。」
「なぜ返金しなきゃいけないんですか?我々は契約通り40000いいね!を集めました。なのに文句を言われる筋合いはありませんよ。契約書をちゃんと読んで下さい。」

遠慮も何もあったものではない。
結局交渉にも何もならなかった。

榎戸商会からの電話がそれから何度かあったが居留守を使い、メールは全て無視した。
電話口では相当なやり取りが毎回あったようなのだが、のらりくらりとかわしているようだった。

1ヶ月程やり過ごしたある日、被った損害について賠償して欲しいという旨の内容証明郵便が届いた。

社長にこれを見せたところ、

「そんなもん、法的効力なんてないから放置でいいわ。それよりも営業して。」

内容証明郵便の内容は読んでいると胸が苦しくなる内容だった。
売上がほとんどなくなり、ソーシャルネットワークで築いてきた信用も失い、このままでは近いうちに廃業せねばならなくなることが切々と綴られていた。

内容証明も無視して、数日後榎戸社長と倉橋さんがアポなしで事務所にやってきた。

私は居留守を決め込もうと思ったのだが、社長から、

「お前のクライアントだろ。何とかしろ。」

と言われてしまい、逃げ道はなかった。

「どうしてくれるんですか?」

榎戸社長の口調は穏やかだったが、もう逃がさないという覚悟があった。

「すいません。」
「謝らなくてもいいです。どうしてくれるんですかときいているのです。」
「どうにもできません。」
「どうにもできないって御社がやっていることですよね。自分で何とかできないんですか?」
「実はうちは何もやってないんです。うちは代理店でSEOを売っているだけなんです。」
「じゃあ、販売元に何とかしてもらってください。」
「販売元には掛け合ってみました。でもどうにもなりませんでした。本当にすいません。」

「・・・私たちを騙したんですね。」

倉橋さんの言葉は私の心臓を鋭く貫いた。

「私たちが愚かだったのが悪かったのでしょうか。」
「いや、君はもともとSEO業者に依頼することに反対だった。私のミスだ。私が不勉強だったせいだ・・・。しかし、私は君たちを許さない。」
「どうするのでしょうか?」
「君たちにできることは我々の被った損害を賠償することだけだ。賠償しないなら訴訟に訴える。」

ミーティングから解放されて顛末を社長に報告した。

「訴訟になっても別に問題ない、契約書は完璧だから。うちには一切支払いの義務はない。まあ、あんなちっぽけな会社だから訴訟なんてできるわけがない。」

しかし・・・。

「私たちを騙したんですね。」

この言葉が頭の中をグルグルまわっている。
本当は騙したくなんかなかった。

私は会社を退職した。

その3か月後、榎本商会のECショップのページは消滅し、それからほどなくしてどっかのSEO業者のバックリンクのサイトに変わっていた。