寄稿記事4発目。最近も少し界隈で話題になっておりました、リスティング広告の「品質スコア」に関わる問題。今回は仕組みとしての話ではなく、実際には現場で起こっている”駆け引き”に関わるお話で、共感できる方も多いのでは。スタビライザー小松氏の執筆です。
品質スコアの捉え方
最近、リスティングの品質スコアの話題をしばしば目にします。寡聞にして存知上げませんが、インハウス・代理店側双方ともに品質スコアがKPIになっていることはほとんどないと思います。
それなのに、度々話題に上る「品質スコア」って何なんでしょうか?
代理店側からは「品質スコアはこういう仕組みなんです」とか「目標達成してるから低いままで問題ない」とかの代理店側の見解を多くみかける一方、品質スコアが低くてどうすれば上がるのか、上げ方が分からず悩んでいる担当者が多くいるということもまた事実なのです。
弊社は、代理店として広告運用の代行をすることもありますが、広告主側のWebマスターとして代理店と打ち合わせすることも多々あります。この記事では、インハウス担当者、代理店の双方の視点から、品質スコアをどう捉えれば良いかについてご説明します。
※前職ではこちらに取り上げて頂きました。
実践 インハウス・リスティング広告 「丸投げ体質」から脱却するSEM成功の新条件
SEOでいう検索順位とちょっと似てる?かも
オーガニック検索で問い合わせを増やしたい、アクセス数を増やしたい場合、ほとんどの場合でSEOを実施することになりますが、この場合もSEOの順位より、自然検索経由のアクセス数、CV数を主なKPIとしている会社が多いのではないでしょうか。「順位だけ上がってもさ、全然売り上げに繋がらないじゃない」ではどの会社も困るわけですね。
SEOを外注し圏外から1ページ目下部くらいに表示され、問い合わせ(売上)もアクセス数も仮に対目標150%目標達成!となっても、目標達成して良かった。となるのは一瞬のこと。更に目標数値が高くなって、SEOに対する要求も強くなる。
そして、経営層から『目標達成したのは良かった。SEOで1ページ目下部にいてこの数値だからもっと上位に来ればもっと売り上げ上がるよね?』と言われます。担当者としてはそこで
『いや、SEOってのは特定のキーワードの順位だけじゃなく、様々なキーワードで…。』
『アクセスして来た人をCVしてもらう為、アクセス解析をして…。』
などと言ってみるものの、
『それは分かった…。それなら1位にしてから、それをすれば更にいいよね!』
と気軽に言われます。上司なのでここで無駄に争っても仕方ない訳です。
※編集者注:
もしホワイトハットなSEOを行う場合ですと、実際には、「○○とか○○のような施策を行うとまずはこういう結果が見えまして、そういうのを積み重ねることが、このキーワードでの上位表示にも繋がるんですよね」というような順序になることが多いです。ヘッドキーワードで上位にしてから周辺を強化するのではなく、外堀から強化していって最終的に中核が伸びてくるようなイメージでしょうか。
弊社のサイトも「アプリ」とかで上位表示されたのは月間1000万PV超えたくらいからでした。まあこの辺はジャンルに大きく左右されうるものですが、順番としてはそういう感じになります。サイトをどう強化していくのかイメージ出来る方であればこの辺りはすんなりかと。
品質スコアを巡る社内の会話は…
品質スコアの話題ってこれと非常によく似ています。
リスティングの運用を代理店に依頼して目標数値達成しました!という場合も喜びはつかの間、経営層からは
『それは良かった。それなら来月から同じ予算でもっとCV増やして』
『予算減らして同じ数字達成して』
のようなことを言われるようになり、更にハードルが上がるなんてことがよくあります。
しかも、どこからか品質スコアってやつを上げるとクリック単価下がるらしいという噂を聞きつけた上司から
『CV同じのまま品質スコア上げて予算下げて』
『予算同じでいいから品質スコア上げてCVもっと増やして』
などとインハウスの担当者は言われることもしばしば。
そこで、インハウス担当者としては
『品質スコアよりもユーザーのニーズに叶った広告文を…』
『デバイスやマッチタイプを工夫して…』
などと、ごくマットウなことを言ってみるものの、先ほどのSEOの例と同じく
『品質スコアを10にした上で、さらにそれやったら?』
と気軽に言われます。上司なのでここで無駄に争っても仕方ない訳です。
また、外注しないで自社で行っている場合でも、何でこのキーワードで上に出せないの?と突っ込まれることも多々あります。
『品質スコアが高いほど、広告の掲載順位を決めるオークションで有利になり、より安い費用で上位に広告を掲載することができます。』
ってはっきりとAdWordsヘルプに書いてくれちゃっているので、なおさら『品質スコアを上げないと…』などという話になる訳です。Googleも公式サイトに品質スコア上げれば安くなるって書いてあるだろ!って言われてしまったらインハウス担当者としては品質スコアなんとか改善しなきゃ、と悩むことになるのです。
そして、こういう時に代理店側に品質スコアの話が行くことが多いのです。なので、「この時点で目標達成してるので気にしないで下さい。品質スコア上がってもCV取れるとは限りませんし。」という当たり前すぎる回答が来ると、担当者としては(目標は達成しているわけですし)代理店に強く言えないのですよね…。
完全に板挟みになります。本質ではないことなのかもしれませんが、担当者が仕事をしやすい環境で仕事を出来るということも成果を出す上では大切なことだったりします。
※編集者注:
ちょっとズレるかもしれませんがSEOでも似たようなことがありまして、例えば企業向けに広告掲載の営業をしているWeb媒体さんに、「いや送客数もPV数も順調に伸びてますし、ビッグキーワードの順位にこだわっても仕方ないですよ」とか安易にいうと多くの場合、普通に怒られます。「広告の営業コストが上がったり、掲載企業からクレーム来るんだよ」と。
つまり「このキーワードで○位のサイトです」というのがビジネスにおいて(Webの本質かどうかの話ではなくて)重要なファクターだったりすることもあるわけです。あまり無責任なことは言ってはいけません。
品質スコアはクリック率と密に連動していると言われています。が、クリック率を上げる施策が必ずしもCVを取る施策につながらないこともある。ちょっと刺激的な広告文でクリック率は高いものの実態を反映せずCVRが悪化するなんてこともあります。
ユーザーの為に広告文を変えたり、マッチタイプを工夫してCV数を増やす。そういう施策を続けることで結果品質スコアに反映されてくるので、品質スコアから入っても必ずしも成果が出るとは限りません。
リスティング広告やSEOに限らず、このWebサイトは誰に見て欲しいのか?見た人にどういうアクション取って欲しいのか?を考え続けて運用しないと枝葉末節にこだわることになり、結果的に上手く行かないことが多いのではないでしょうか?
結論
リスティング広告代理店の方
目標達成しているから品質なんて全く関係ないよね!と言わず、少しだけ耳を傾けてください。。現場では色々な事情があり、インハウス担当者はちょっと困っている場合があります。
インハウス担当者の方
品質スコアが悪くても、昇給しなかったりボーナス少なかったなんてことは自身の経験ではありません。もし言われてもあまり過度に気にしないようにしましょう!