グーグルグラスの「エクスプローラ」版には7つの音声コマンドが搭載されている。6つのうちの2つは検索に関連している – [google]と[get directions to](~へのルートを調べる)。その他の音声コマンドは、[take a photo](写真を撮影する)、[record a video](動画を録画する)、[make a call to](~に電話する)、そして、[start a Hangout with](~とハングアウトのチャットを始める)である。
また、グーグルナウを経由した予測検索機能も搭載されており、グーグルグラスは、ユーザーが求めているとグーグルが考える情報を自動的に表示する。
そのため、グーグルグラスを使ったアクティビティの多くには、検索が関係する可能性は高いと言える。因みにグーグルはこの行為を「googling」(グーグルする、または、ググる)と呼んでいる。グーグルは、「検索」の代わりに「ググる」を利用することに反対し、商標を守る試みを継続しているものの、グーグルグラスで初めて提供されるコマンドは、「検索」ではなく「google」であった。しかも、その他の音声コマンドと同じように小文字で綴られている。グーグルの法務部がこの方針を認めたことは意外であった。
グーグルグラスでの検索は、今までの検索の体験とは大きく異なる。次のように、グーグルグラス自体が大きく異なるためだ
- グーグルグラスにウェブブラウザが用意されていないため、ナビゲートするものがない。
- グラスでの検索は、ウェブページを探すためではなく、情報を探すために内蔵されている。
この違いは、検索の仕組みに大きなインパクトを与える。
グーグルグラスを使って15分間検索をしただけで、ナレッジグラフ、グーグルナウ、そして、その他の検索ツールにおけるグーグルの取り組みの価値を大いに理解することが出来た。グーグルがここ数年の間に力を入れていた検索の取り組みの多くは、グラスで真価を発揮しており、ストリートビューやおみせフォトがグラスに統合されるようになれば、さらにパワーアップするはずだ。
現在、グーグルグラスで検索を行っても、伝統的な10本の“青いリンク”もなければ、スマートフォンでの閲覧時に表示される2-3本のリンクさえも表示されない。ユニバーサル検索の結果は提示されるものの、例えば、画像の結果とニュースの結果の違いは分からない。サイトリンクもない。リンクが1本も存在しないのだ。
それでは、グラスで検索を行うと何が表示されるのだろうか?
Cards(カード)である。
それぞれの検索結果は、その他のグラスの情報と同じように、「カード」として表示される。ディスプレイは基本的に白黒だが、スニペットと結果を区別するため、フォントには差がつけられている。また、大半の結果/カードにはソースのURLが掲載されている。
グーグルグラスでの検索の仕組み
グラス経由の検索において、第一に理解しなければならないのは、キーワードが存在しないため、検索が音声で起動する点である。「okay glass」、次に「google」と話しかけ、検索スクリーンを表示させる。
私の知る限り「google」は検索を稼働させる唯一の方法である。「okay glass、search」ではなく、「google」と述べ、次に検索クエリを伝える必要がある。
幸いにも、グーグルの音声認識の性能はとても高い – しかし、完璧ではない。先日、フィラデルフィアに出張した際にある問題に遭遇した: 「Estia」と言う名前のレストランを私は探していたものの、グラスは私がS、T、Aと言っていると勘違いし、- それが何であれ、あるいは、誰であれ – 「St. A」に対する結果を提示した。もう一度、今度はより細かくフレーズを指定して試したところ、求めている情報が表示された。
その次に知ってもらいのは、グーグルグラス日記の1通目でも指摘した通り、グラスは、長時間のコンテンツを見ることを目的として開発されたわけではない点だ。グーグルのI/Oカンファレンスで、グラスの製品ディレクターを務めるスティーブ・リー氏は、グーグルグラスに適するコンテンツのタイプについて次のように述べていた:
「グーグルグラスは、映画を最初から最後まで見る行為や本を読む行為のために作られたわけではなく、私達がマイクロインタラクションと呼ぶアクティビティを考慮して開発されている。早く、簡潔なユーザーエクスペリエンスを基調としている。」
早く、簡潔なアクティビティ。つまり、大量の検索結果ページを再現するのも – そして、読むのも苦労する。検索はグラスの重要な機能の一つではあるものの、これから紹介していくように、特定のタイプの検索を考慮してグラスは作られている。
(エクスプローラはグーグルグラスの1作目であり、今後、様々な変更が加えられていくはずである。事実、グラスを手にした時、グーグルのスタッフは、エクスプローラは、一般向けの販売を行う前にテストを行い、デバイスを改善するための試作品だと説明していた。そのため、これから紹介する内容が、今後のグラスの仕組みとは異なる可能性がある点を理解してもらいたい。間違いなく改善されるはずだ。)
ナビゲーショナルクエリ
米国では「Facebook」が、4年間連続で最も多く検索されている。
グラスに「google facebook」とコマンドを送ると、合計で14枚のカードが表示される(1つの結果につき1枚のカード)。以下にFacebookに対して表示されたカードのうち最初の3枚を掲載する。
同じクエリをグラスベースの検索とデスクトップの検索と比べてみたところ、1-8位までは順位は変わらなかった。9位以降の6つの結果は、色々なアイテムが混ざっており、デスクトップとはかけ離れていた。グラスは、デスクトップでは30以内にランクインしていない結果/カードを幾つか表示している。また、デスクトップで関連するキーワードとして提示されるMySpaceのカード、そして、ツイッターのカード(デスクトップでは関連するクエリに含まれていない)も提供している。
このような結果は役に立たず、ナビゲーショナルクエリに関しては高い評価を与えることは出来ない。繰り返すが、これはグーグルグラスが、ウェブを閲覧することを考慮していないためである。
インフォメーショナルクエリ
グーグルグラスは情報を見ることを意図して作られており、インフォメーショナルクエリに対しては、役に立つ結果を提供すると思われる。事実、役に立つ結果を得ることに成功した。
Albert Einstein
「Albert Einstein」で検索を行うと、7つの検索結果/カードが表示された – 全てのカードには、グーグルのナレッジグラフのエントリと全く同じ情報が掲載されていた。
1枚目のカードを見ていると、グラスはコンテンツを読み/話し始める。別のカードを見ていても、1枚目のカードを読み続ける。声はロボット調だが、Albert Einsteinに関する情報を求めるユーザーにとっては適切な対応だと言えるだろう。その他の6つのカードを一つの画像にまとめておく:
デスクトップのナレッジグラフとは異なり、グーグルグラス版の結果は、詳細を得るためのクリックすることが可能/話かけることが可能なリンクが用意されておらず、「People also search for」の結果は含まれていない。しかし、違いはこの2点だけである。
U2
アインシュタインは難易度の低い結果である。アインシュタインのナレッジグラフはテキストおよび情報で構成されているためだ。それでは、デスクトップのナレッジグラフではスクロール可能な楽曲のリスト等、テキスト以外のアイテムが用意されている結果に対して、グラスはどのように対応するのだろうか? 以下に「U2」の検索結果を掲載する:
「U2」と言ったつもりが、グラスは「you too」と勘違いしてしまった。全く同じ音に聞えるのは当然であり、グラスを責めるべきではない(U2は昔のバンド名を変えるべきではなかったのかもしれない – FeedbackやHype等)。事実、求めるクエリの検索結果を表示させるため、私は複数のアプローチを試みなければならなかった。
一時、グラスは、私がYouTubeを求めていると考えていた。
私は「capital U number 2」(大文字のU、数字の2)や「letter U number 2」(文字のU、数字の2)等も試したが、どれも失敗に終わった。また「u2 rock band」も試してみたが、駄目だった。グラスは、音楽ゲームのRock Bandを私が検索していると勘違いした。
このように様々なアプローチを試してみたものの、求めている結果は得られていない。
ウィズでもウィズアウトでも、グラスでは検索は不可能だと思うようになった。
まさにRunning to standstill(行き詰ってしまい)、Stuck in a moment You can’t get out of(抜け出せない)状況であった。
Vertigo(めまい)がしてきた。
その後、Beautiful day(状況が好転)した: 「band U2」が功を奏したのだ。
再びグラスはデスクトップのナレッジグラフと全く同じ情報を提示するカードを提供した。しかし、幾つか例外が見られた。最後のカード、Awardsは、グラスではスペースが限られているために割愛され、また、デスクトップでは提供されているリスト全体を見ることは出来なかった。さらに、思った通り、グラスの結果には、デスクトップでは表示される「Songs」や「Albums」のセクションは存在しなかった。
Space Needle
さらに別のインフォメーショナルクエリの結果を試してみた – このクエリでは全く予想していなかった結果が表示された。「Space Needle」(シアトルにあるタワー)で検索を行うと、グラスは情報ではなく場所に焦点を絞ったカードを表示した。
カードをクリックしてルートを引き出すことも、Space Needleに電話をかけることも出来るが、情報を得ることは出来なかった。同じクエリのデスクトップのナレッジグラフは、情報と場所の双方を掲載しているものの、情報に若干力を入れているように思える。
グーグルグラスはモバイルデバイスであり、通常の検索よりもルート/場所を利用するケースが多いと考えられるため、グラスは、このタイプのクエリに対して、場所を優先するように設定しているのではないだろうか。私自身がSpace Needleがあるワシントン州にいる事実が、表示される結果に影響を与えているようには思えない。実際に「Mount Rushmore」(サウスダコタ州)をグラスで検索したところ、情報ではなく、地図がデフォルトで表示されていた。
トランザクショナルクエリ
グラスが「buy seatle mariners tickets」(シアトルマリナーズの試合のチケットを購入)等のトランザクショナルクエリに向かない点は、明白である。グーグルグラスは、ナビゲーショナルクエリと同じように、トランザクショナルクエリを処理するために開発されたわけではない。
グラスは10枚のカードを提示してくれたが、話す、または、クリックすることが可能な結果は一つもなかった。上の画像は1枚目のカードであり、公式のマリナーズのチケット販売ページが反映されている。
グーグルグラスでグーグルナウ
グーグルナウは、グーグルグラスでもその他のモバイルデバイスと同じように動作する。メインの「ok glass」ホームスクリーンの左側には、グーグルナウ経由の情報を提供する複数のカードが用意されている。本日の太平洋時間午前11時の時点で、グラスは2枚のグーグルナウのカードを表示していた:
天気のカードの右上の白い三角形は、クリックして「サブカード」にアクセスすることが可能である点を示しており、実際にクリックすると、グーグルナウはとてもベーシックな3日間の天気予報を提供してくれる。
グーグルナウは、基本的には速やかに情報を提供するものの、今朝、マリナーズのカードは、試合が始まってから40分間経過してからようやく動作し始めた。2イニングまでは、昨夜の試合の結果が表示されていた
先日フィラデルフィアとサンフラシスコで車を運転している時、グーグルナウは、私が向かっているとグーグルが考えた場所の名前のカードを表示した(タップしてルートを知ることが出来る)。しかし、どちらの場合もグーグルの推測は誤っていた。
それでも、グーグルナウが提供するスポーツ関連のカードは気に入っている。先週、東海岸に滞在し、グーグル I/Oカンファレンスに参加している際に、タップ & スワイプしてマリナーズの試合結果を楽に把握することが出来た。
結論
検索を実行すると、グーグルグラスの現時点での弱点が浮き彫りになるものの、手っ取り早く、情報を得ることが出来ると言う長所もまた際立っている。検索を行うことで、グーグルグラスとは何か、そして、何を意図しているのかを再認識することが出来る。
グーグルグラスは、(写真や動画等の視覚機能を持つ)モバイル情報デバイスである。ナビゲーショナルクエリやトランザクショナルクエリを考慮して作られたわけではない。そもそもウェブブラウザ自体が存在しない。ウェブページではなく、情報を探すことを念頭に置いて開発されているのだ。また、グラスは、情報がグーグルのナレッジグラフに含まれている場合、巧みに情報を探し出す傾向が見られる(先程挙げたSpace Needleの問題は、複数のカードを提示することで容易に解決することが出来る – 場所のカードと情報のカードを提示し、ユーザーに欲しいアイテムを選ばせればよい)。また、- グーグルナウを介して求めている情報 – 推測検索の質も高い。
グーグルグラスは、ローカル検索とナビゲーションを主に意図して開発されている。次回のグーグルグラス日記でこの点を詳しく説明していく。乞うご期待。
この記事は、Search Engine Landに掲載された「Google Glass Diary, Part 3: How Search Works On Google Glass」を翻訳した内容です。