みんな電力がブロックチェーン電力取引とトレーサビリティで特許取得、現在はIBMのStellarを採用

みんな電力

電気生産者や空気の「顔の見える化」プラットフォームを提供するみんな電力は7月2日、ブロックチェーン電力取引およびトレーサビリティシステムに関する特許に関する発表を行った。3件の申請のうち2件の特許権を取得。残る1件については特許審査を終了し、設定登録待ちとしている。

取得した特許は、「特許第6630425号 電力取引履歴生成システム」「特許第6675717号 電力取引履歴生成システム」。出願中のもの(特許審査終了・設定登録待ち)は「特願 2020-1771 電力取引支援システム」。

保有知的財産は、現在以下のとおり。需要家とは、電気供給サービスを受け使用している者を指す。またPPAは、Power Purchase Agreementの略称。発電事業者と、電気を利用者に売る小売電気事業者との間で結ぶ電力販売契約(電力購入契約とも訳される)のこと。

  • 電源・需要家間の電力取引をブロックチェーントークンのウォレット間移動にて記録する方法
  • 複数の電源からの電力を複数の需要家に分配する方法
  • 需要家が特定の発電所から購入した電力に応じてプレミアムを支払う方法
  • 電源と需要家との直接電力売買を可能とするPPAの実現方法

みんな電力は2018年、ブロックチェーンを活用した電力取引・トレーサビリティシステムを業界に先駆け商用化。インターネット上で広く公開されているパブリックチェーン(型のブロックチェーン)を重視するとともに、同社事業内容に合わせ、適宜利用するブロックチェーンの変更なども行っているそうだ。当初日本でも知名度の高いNEM(ネム)を利用していたものの、IBMが2018年に国際送金プロジェクトIBM Blockchain World Wireでの利用を発表したStellar(ステラ)を現在採用。今後も適切なブロックチェーンを選択・採用する方針という。

みんな電力は、今後も知的財産ポートフォリオを強化することで、再生可能エネルギーを直接取引するオープンプラットフォームの構築を推進。事業に利用する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目指す「RE100」企業などに、再生可能エネルギー電力を直接発電所から購入できる「ENECT RE100」プランなどを提供してきた。

今後も低コスト化、高速化、高機能化に向けた開発を継続することで、需要家、発電事業者、小売電気事業者など幅広いユーザーに利用されることを目指し、分散型電源主体の新たなレネルギー利用拡大に貢献するとしている。

関連記事:野菜のように、顔の見える生産者から電気を買う「みんな電力」が11.8億円調達

野菜のように、顔の見える生産者から電気を買う「みんな電力」が11.8億円調達

「顔の見える電力プラットフォーム」を提供するみんな電力は1月21日、シリーズBラウンドにおいてTBSイノベーション・パートナーズ、SBIインベストメント、TOKAIホールディングス、セガサミーホールディングス、丸井グループ、電通から11億8000万円を調達したと発表した。

みんな電力は電力小売業を営むスタートアップ。でも、普通の電力小売とはちょっと違う方法で電気を販売している。最近、道の駅や一部のスーパーなどでは野菜を作った人の顔が見えるように、農家の人々のプロフィールが入ったポップアップが売り場に用意されていることがある。みんな電力は、それと同じように、電気を発電した人の顔が見ることができ、その発電所を「応援」することが可能なプラットフォームだ。

みんな電力のWebページにいくと、電気の生産者の一覧ページがある。そこに掲載された発電所のプロフィールページでは、どんなひとが、どこで、どれくらいの電気を発電しているのかが分かる。みんな電力と契約して電気を買うユーザーがその中から応援したい発電所を選ぶと、電気料金の一部がその発電所に寄付される仕組みだ。みんな電力に供給される電気の約75%以上は、太陽光発電などの再生可能エネルギー電源で発電され、固定価格買取制度(FIT)を通して事業者に販売された「FIT電気」だ。だから、ユーザーはみんな電力を通して再生可能エネルギーの普及にも協力することにもなるというわけだ。

みんな電力は今回調達した資金を利用して、ブロックチェーン技術を用いたP2P電力流通プラットフォーム「ENECTION2.0」の商用化を進める。

固定価格買取制度は、個人などが再生可能エネルギー電源で発電した電気を一定期間のあいだは電力会社が固定価格で買い取ることを国が保証するという制度だ。しかし、みんな電力によれば、しかし前身となる「余剰電力買取制度」ができてから10年が経過した今年、2019年11月にはその買い取り期間が終了する電源が50万件以上発生する見通しだ。そうなれば、個人が電気の生産者にもなり、自由契約で電気を売ることが可能な時代になる。みんな電力はその時代に併せてENECTION2.0を拡大することで「誰でも再生可能エネルギーを作り、シェアできる社会」を目指すという。