Appleが中国で4年放置されていたApp Storeの抜け穴をやっと封鎖

こんにちは。TechCrunch中国まとめニュースにようこそ。これは中国の技術情勢を伝える最新情報と、それが世界中の人々にとって何を意味するのかをお伝えするダイジェストだ。今週、Appleは競争の激化に直面する中国国内における、コンプライアンスの強化を告げる大きな動きをみせた。しかし投資家たちは、この際どい問題に対する同社の中国内におけるアプローチに不満を示している。

ウイルスゲームが削除された

致命的なウイルスを、世界全体に感染させることを目標としたシミュレーションゲームの「Plague Inc.」は、先週中国のiOS App Storeから削除された。1月下旬にCOVID-19新型コロナウイルスが流行して以来、中国のユーザーたちは、この8年前から存在していたゲームを数多くダウンロードしていた。おそらくは流行を理解するための代替手段を模索していたのだろう。

市場調査会社App Annieのデータによれば、このタイトルは、年初の28位から上昇して、1月下旬から2月のほぼ全期間を通して中国で最もダウンロードされたアプリだ。

ゲームを制作した英国のNdemic Creationsは、声明の中で「状況(AppleのApp StoreからのPlague Inc.の削除)は、完全に私たちの手の届かないところにある」と述べている。中国政府が発表した削除に対する不透明な理由は、このゲームには「中国のサイバースペース管理局(同国のインターネット監視組織)によって違法だとされているコンテンツが含まれている」というものだ。

この出来事は中国内外で多くの注目を集めている。Plague Inc.のプレイが厄介なものになる可能性があると考えた北京政府の圧力に、Appleが屈したのだと推測する者もいる。1つの問題点は、そのチュートリアルの中で中国がデフォルトの感染開始国として扱われているということだ(実際のゲームでは世界中のどんな場所からでも感染を開始させることができる)。2018年に出された報告によれば、Plague Inc.は中国での配布の公式許可を実際に申請したものの、その「社会的に不適切な」コンテンツのため に却下されている。

またNiko PartnersのゲームアナリストであるDaniel Ahmad(ダニエル・アーマド)氏のように、プレイヤーが「フェイクニュース」を生成できるようになった12月のアップデートが、健康危機の中でアドバイスを求める人たちをミスリードする可能性があると、中国政府が判断したのかもしれないと指摘する声もある。

アーマド氏はまた、今回の禁止は、現在中国で進行している無許可のモバイルゲームの取り締まりにリンクされているかもしれないと示唆している。特にPlague Inc.の禁止は、Appleが先週行った中国のアプリストア内のすべてのゲームは、7月からはISBN番号の形式で 政府の承認を得る必要があるという発表と同時に行われた。この新しい規制プロセスが何を伴うのかについての詳細は、ほとんど明らかにされていない。また開発者たちには、現在公開されている公式には承認されていないゲームが削除されるのかどうかも知らされていない。

Appleの投資家たちは、同社が中国内でアプリを取り下げたことに満足していない。株主の40%はAppleが人権へのコミットメントを維持し、北京政府のアプリ検閲要求にどのように対応するかをより透明化すべきだとする提案を支持している

Appleの対応の遅れ

とはいえ、ゲームの許諾要求は新しい話ではない。実際、Appleは長年存在していた規制の抜け穴を、やっと塞ごうとしているのだ。中国政府は2016年の段階で、PCとモバイルの両方のビデオゲームに対して、中国内での流通の前にISBN番号を申請しなければならないと規定していた。数カ月のうちに、中国内の技術大手企業が運営している各社のAndroidストアたちは、違法ゲームを排除するために迅速な対応を行った。なお公式のGoogle Playストアは中国では利用できない。

しかし、Appleはコンテンツが厳しく監視されている世界最大のゲーム市場の中で、許諾されていないタイトルたちをなんとか維持し続けてきた。Appleには、そうするための多くのインセンティブがあるのだ。中国でのiPhoneのシェアの低下にもかかわらず(公平を期すなら、Huawei以外のすべての中国の携帯電話メーカーが、最近は市場シェアの低下に苦しんでいる)、中国におけるiOSアプリ、特にゲームはAppleにとって重要な収益源のままだ。

そのため、Appleにとって中国で公開するアプリのハードルをクリアすることは、最大の関心事なのだ。意志あるところに道あり。2016年以前は、中国でのゲーム公開の手間は比較的少ないものだった。同年に行われた規制変更に従って、Appleは各ゲームに対して政府からの許諾証明を要求し始めたが、そのポリシーを強制的には適用しなかった。地元メディアは、デベロッパーが適当に作成したISBN番号を使うか、最初に海外のiOS App Storeで公開しその後中国に切り替えることでルールを回避できると報道していた。

この疑わしいやり口は看過されなかった。2018年8月には、中国の国営メディアが、App Store承認に対するAppleのお粗末な見過ごしを激しく非難した。

ゲームに対する審査を強化したとしても、必要とされる許可を得るための資金と運営資源が豊富な中国の大手ゲーム会社には、ほとんど影響がないだろう。むしろ、彼らの挑戦は、北京政府のイデオロギーガイドラインに沿ったコンテンツを工夫することであり、その例はTencentによるPUBGの愛国的修正に見ることができる。

だが最悪の打撃は、App Storeの抜け穴を利用して、名前やロゴ、キャラクターを変えて偽装しながら大量にリリースされるいわゆる「ソックパペット(马甲包、靴下人形)ゲーム」を制作しているような、小規模の独立したスタジオや会社が受けることになるだろう。彼らはそうした工夫をすることで、より多くの流通を実現し収益を得ることができていたのだが、そうしたソックパペットたちが当局の厳しい審査を通過できる可能性はほとんどない。ある中国のゲームブログが予想しているように、この動きは不正行為を終わらせる可能性がある。

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(翻訳:sako)