新型コロナ感染拡大が中国における企業向けテックの持続的成長を後押し

こんにちは。TechCrunch中国まとめニュースにようこそ。本記事では中国のテクノロジー情勢を巡る最新情報とそれが世界に与える影響について、ダイジェストでお届けする。今週、新型コロナウイルスのビジネスへの影響について警鐘を鳴らすSequoia Capital(セコイアキャピタル)のメッセージが中国を含む世界中のテクノロジーコミュニティの隅々まで届いた。

Sequoiaの「最も順応性の高い企業が生き残る可能性が高い」という見解に共感する向きは多い。しかし「困難な状況を永続的な成功へのチャンスに変える」という希望を持つ人もいる。

筆者は2週間前、中国の民間企業と政府がいかに協力して感染拡大を封じ込めたか、それがテック業界を一時的に後押しする力になったことについて書いた。筆者は今週、多くの投資家や創業者に対して、これまでに起きた変化のうち持続するものはどれか、その理由は何かを取材した。

B2Bの台頭

ビジネスツービジネス(B2B)の分野は、最近になってオンライン消費者ビジネスが飽和に近づくまで、中国ではほとんど話題にならなかった。だが今COVID-19の感染拡大が、かつて退屈だった分野に予期せぬ活気を与えている。投資会社Yunqi Partnersの分析によると、その分野にはバーチャル会議、オンライン教育、デジタルヘルスケア、サイバーセキュリティ、電気通信、ロジスティクス、スマートシティなどが含まれている。

1つ挙げるとすれば、在宅勤務にリモートコラボレーションツールを使用する機会が明らかに増えた。Dingtalk(ディントーク)、WeChat Work(ウィーチャットワーク)、TikTok(ティクトク)の姉妹にあたるLark(ラーク)、米国のZoom(ズーム)など、この分野をリードする仕事用アプリのダウンロードが公衆衛生上の危機の中で指数関数的に増えている。企業活動が通常モードに戻り、ブームが吹き飛べばすぐに消え去ると主張する人もいるが、行動の変化が持続すると言う人もいる。

他の作業コラボレーションサービスと同様に、Zoomの利用は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い中国で急上昇し、アプリインストール全体で1月下旬の180番から2月下旬の28番へと急上昇した。データ:App Annie

「人はいったん身につけた新しい習慣を変えることに消極的だ」と、香港のMindworks Ventures(マインドワークスベンチャーズ)のパートナーであるJoe Chan(ジョー・チャン)氏は指摘する。ウイルスの発生は中国の大衆にリモートワークを教える効果があったと同氏は信じている。

「対面の会議とZoomを使った会議の両方にメリットがあるが、社会規範に依存する。関係構築にはフェイストゥフェイスで会う必要があると考える人もいるが、そのような見方をしない人は会議を持つ機会がより少なくなる。感染拡大はパラダイムシフトの機会となる」

だが変化はゆっくり

企業向けビジネスの成長は、SARS流行の際に中国で活性化したeコマースなどの消費者向けネットビジネスに比べれば目立たないかもしれない。サービスとしてのソフトウェア(SaaS)、クラウドコンピューティング、ヘルステック、物流などの企業向けサービスなどは消費者から見えづらいからだ。

「消費者行動の変化に比べると、企業による新技術採用はゆっくりと進むため、新型コロナウイルスがもたらす新世代のB2BイノベーションへのインパクトはSARSの時ほど迅速かつ広範ではない」とChina Growth Capitalの投資担当副社長であるJake Xie(ジェイク・シエ)氏は語った。

同氏はまた「感染拡大による新たな機会はこの分野に地道に投資してきた企業にのみ開かれている。企業向けサービスのライフサイクルは長く、資本集約的なインフラが必要とされるからだ。日和見主義者はチャンスをつかめない」と述べた。

消費者行動の変化に関しては、屋内に閉じ込められた高齢者への食料品配達の増加など、影響は短期的かもしれない。「感染拡大がアプリにもたらす唯一の利点は、より多くの人々にサービスを試してもらえることだ。だが、そのうちのどの程度が以降もアプリを使い続けるだろうか。オフラインで病気にかかる心配があるから人々はそうしたアプリを使い続けるはずだ、という主張は実証されていない。ビジネスの強みは、ユーザーが何かを安く手に入れたり便利になったりする機会を提供するなどして、長期にわたってユーザーの問題を解決することだ」と、NYSE(ニューヨーク証券取引所)に上場予定の中国のシェアハウススタートアップであるDanke Apartmentの会長のDerek Shen(デレク・シェン)氏は語った。

政府の要請

企業向けサービスの隣接分野である政府機能活性化のための大規模テクノロジーも、感染拡大の過程で牽引力を見せている。中国の民間企業は、地方当局と協力して、人々の動きの追跡、マスクを着用する人を対象とした顔認識能力の強化、非接触型の消費者体験の開発などに取り組んでいる。

政府にサービスを売り込むハイテク企業は、ユーザーデータの扱いに関して透明性を欠くという批判があることを認識している。しかし民間企業にとってとても魅力だ。国との契約が長期的に安定した収益を生むだけでなく、特定の公共向けプロジェクトへの関与が、企業の社会的責任として要求される可能性があるからだ。ウイルスの感染拡大に伴い、あらゆる規模の中国のハイテク企業が、金銭による寄付から一般の人々への情報提供ツールの開発に至る努力まで、さまざまな取り組みを急いで行っている。

一方、政府も緊急事態管理において民間部門の助けを必要としている。中国の著名な歴史家Luo Xin(ルオ・シン)氏がポッドキャスト「SurplusValue」の最近エピソードで痛烈に指摘したように、公衆衛生危機に最も効率的かつ効果的に対応した例のいくつかは、政府ではなく民間のオンライン小売業者によるものだった。JD.comや物流会社SF Expressは、感染拡大の中心地に救援物資を届けている。

とはいえルオ氏は、一部の地方自治体による中央集権化傾向が民間の取り組みを妨げている兆候にあると主張している。たとえば一部の政府機関は、国の大手ハイテク企業が開発した、容易に入手可能な実証済みの技術インフラを使わず、危機管理システムをゼロから開発しようと試みて失敗している。

画像クレジット:Tencent Conferences

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(翻訳:Mizoguchi

Appleが中国で4年放置されていたApp Storeの抜け穴をやっと封鎖

こんにちは。TechCrunch中国まとめニュースにようこそ。これは中国の技術情勢を伝える最新情報と、それが世界中の人々にとって何を意味するのかをお伝えするダイジェストだ。今週、Appleは競争の激化に直面する中国国内における、コンプライアンスの強化を告げる大きな動きをみせた。しかし投資家たちは、この際どい問題に対する同社の中国内におけるアプローチに不満を示している。

ウイルスゲームが削除された

致命的なウイルスを、世界全体に感染させることを目標としたシミュレーションゲームの「Plague Inc.」は、先週中国のiOS App Storeから削除された。1月下旬にCOVID-19新型コロナウイルスが流行して以来、中国のユーザーたちは、この8年前から存在していたゲームを数多くダウンロードしていた。おそらくは流行を理解するための代替手段を模索していたのだろう。

市場調査会社App Annieのデータによれば、このタイトルは、年初の28位から上昇して、1月下旬から2月のほぼ全期間を通して中国で最もダウンロードされたアプリだ。

ゲームを制作した英国のNdemic Creationsは、声明の中で「状況(AppleのApp StoreからのPlague Inc.の削除)は、完全に私たちの手の届かないところにある」と述べている。中国政府が発表した削除に対する不透明な理由は、このゲームには「中国のサイバースペース管理局(同国のインターネット監視組織)によって違法だとされているコンテンツが含まれている」というものだ。

この出来事は中国内外で多くの注目を集めている。Plague Inc.のプレイが厄介なものになる可能性があると考えた北京政府の圧力に、Appleが屈したのだと推測する者もいる。1つの問題点は、そのチュートリアルの中で中国がデフォルトの感染開始国として扱われているということだ(実際のゲームでは世界中のどんな場所からでも感染を開始させることができる)。2018年に出された報告によれば、Plague Inc.は中国での配布の公式許可を実際に申請したものの、その「社会的に不適切な」コンテンツのため に却下されている。

またNiko PartnersのゲームアナリストであるDaniel Ahmad(ダニエル・アーマド)氏のように、プレイヤーが「フェイクニュース」を生成できるようになった12月のアップデートが、健康危機の中でアドバイスを求める人たちをミスリードする可能性があると、中国政府が判断したのかもしれないと指摘する声もある。

アーマド氏はまた、今回の禁止は、現在中国で進行している無許可のモバイルゲームの取り締まりにリンクされているかもしれないと示唆している。特にPlague Inc.の禁止は、Appleが先週行った中国のアプリストア内のすべてのゲームは、7月からはISBN番号の形式で 政府の承認を得る必要があるという発表と同時に行われた。この新しい規制プロセスが何を伴うのかについての詳細は、ほとんど明らかにされていない。また開発者たちには、現在公開されている公式には承認されていないゲームが削除されるのかどうかも知らされていない。

Appleの投資家たちは、同社が中国内でアプリを取り下げたことに満足していない。株主の40%はAppleが人権へのコミットメントを維持し、北京政府のアプリ検閲要求にどのように対応するかをより透明化すべきだとする提案を支持している

Appleの対応の遅れ

とはいえ、ゲームの許諾要求は新しい話ではない。実際、Appleは長年存在していた規制の抜け穴を、やっと塞ごうとしているのだ。中国政府は2016年の段階で、PCとモバイルの両方のビデオゲームに対して、中国内での流通の前にISBN番号を申請しなければならないと規定していた。数カ月のうちに、中国内の技術大手企業が運営している各社のAndroidストアたちは、違法ゲームを排除するために迅速な対応を行った。なお公式のGoogle Playストアは中国では利用できない。

しかし、Appleはコンテンツが厳しく監視されている世界最大のゲーム市場の中で、許諾されていないタイトルたちをなんとか維持し続けてきた。Appleには、そうするための多くのインセンティブがあるのだ。中国でのiPhoneのシェアの低下にもかかわらず(公平を期すなら、Huawei以外のすべての中国の携帯電話メーカーが、最近は市場シェアの低下に苦しんでいる)、中国におけるiOSアプリ、特にゲームはAppleにとって重要な収益源のままだ。

そのため、Appleにとって中国で公開するアプリのハードルをクリアすることは、最大の関心事なのだ。意志あるところに道あり。2016年以前は、中国でのゲーム公開の手間は比較的少ないものだった。同年に行われた規制変更に従って、Appleは各ゲームに対して政府からの許諾証明を要求し始めたが、そのポリシーを強制的には適用しなかった。地元メディアは、デベロッパーが適当に作成したISBN番号を使うか、最初に海外のiOS App Storeで公開しその後中国に切り替えることでルールを回避できると報道していた。

この疑わしいやり口は看過されなかった。2018年8月には、中国の国営メディアが、App Store承認に対するAppleのお粗末な見過ごしを激しく非難した。

ゲームに対する審査を強化したとしても、必要とされる許可を得るための資金と運営資源が豊富な中国の大手ゲーム会社には、ほとんど影響がないだろう。むしろ、彼らの挑戦は、北京政府のイデオロギーガイドラインに沿ったコンテンツを工夫することであり、その例はTencentによるPUBGの愛国的修正に見ることができる。

だが最悪の打撃は、App Storeの抜け穴を利用して、名前やロゴ、キャラクターを変えて偽装しながら大量にリリースされるいわゆる「ソックパペット(马甲包、靴下人形)ゲーム」を制作しているような、小規模の独立したスタジオや会社が受けることになるだろう。彼らはそうした工夫をすることで、より多くの流通を実現し収益を得ることができていたのだが、そうしたソックパペットたちが当局の厳しい審査を通過できる可能性はほとんどない。ある中国のゲームブログが予想しているように、この動きは不正行為を終わらせる可能性がある。

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(翻訳:sako)