イマクリエイトと東京大学が医学生用VRシステム共同開発、実際に体を動かしながらの実習をバーチャルトレーニングで支援

皮下注射の様子。手本となる医師の動きに重なるように手を動かして手技を習得できる

皮下注射の様子。手本となる医師の動きに重なるように手を動かして手技を習得できる

XRシステムの研究・開発を行うイマクリエイトは2月1日、東京大学医学部附属病院クリニカルシミュレーションセンターと共同で、「現実のように実際に自らの身体を使いながら行う実習」を目指した医学生向けのバーチャルトレーニング・システムを開発した。

これは、皮下注射、静脈採血、末梢静脈カテーテル挿入の3つの穿刺(針を刺すこと)手技をトレーニングできるというもの。消毒、患者への声かけ、穿刺、片付けなどを、実際に自分の体を動かして学習する。正しい位置での消毒や穿刺、正しい注射針の角度など、適切な手段を踏まなければ先に進めない仕組みだ。手本となる医師の動きに重なるように手を動かして手技を習得できる。また手技だけでなく、どのタイミングで患者に声をかけるかなどのコミュニケーションも学べる。

患者の体に針を刺す穿刺手技など患者への侵襲性が高い学習には、当然のことながら十分な訓練が必要となる。だが模擬腕を使ったトレーニングでは、同時に学習できる学生の数が限られ、機器の消耗品の補充が必要になるなどの手間がかかる。それをXRにすることで、いつでも何度でもトレーニングできる環境を整えようというのが、このシステムの目的だ。

静脈採血の様子。手本を非表示にして手技を習得できたかを確認

末梢静脈カテーテル挿入の様子。手本の手が見えている

イマクリエイトは、2021年4月にも、新型コロナワクチン接種のためのトレーニングシステム「VR注射シミュレーター」を開発している。「見る」ではなく「する」XR、いわゆる「Doable XR」の研究を重ね、「世界唯一のXR物理トレーニング技術」を有しているという。

注射に慣れていない医療従事者も対応の「VR注射シミュレーター」が高知県室戸市の新型コロナ・ワクチン接種研修で採用

注射に慣れていない医療従事者向け「VR注射シミュレーター」が高知県室戸市の新型コロナ・ワクチン接種研修で採用バーチャル技術でカラダの動きをデータ化し、社会実装を進めるイマクリエイトは8月20日、EpiNurse高知県室戸市で8月18日に実施したVR活用ワクチン接種研修において、医療従事者向け「VR注射シミュレーター」を提供したと発表した。今後イマクリエイトは、ワクチン接種研修にとどまらず、地域におけるVR活用の検討を進めるとしている。

VR注射シミュレーターは、注射に慣れていない医療関係者でも筋肉注射の研修を効率的に行えるようにするためのVRコンテンツ。体の動きをデータ化するイマクリエイト独自技術「ナップ」を活用し、京都大学大学院医学研究科監修のもと開発した。教育のための人材を派遣することが難しい地域やコロナ禍において多人数の集まることができない状況においても、効率的にワクチン接種のトレーニングを行える。

同シミュレーターでは、新型コロナワクチンに代表される筋肉注射の手順について、VR内に表示されるお手本に沿って行うだけで感覚的に覚え、身に着けられるという。手順の間違いや漏れを防止できるなど高い学習効果が期待されるとしている。

また今回の取り組みでは、VRを用いたワクチン接種研修の他、Psychic VR LabのXRクリエイティブプラットフォーム「STYLY」を用いて、室戸市と東京・イマクリエイトをオンラインで接続し、VR空間内におけるディスカッションも実施した。

注射に慣れていない医療従事者向け「VR注射シミュレーター」が高知県室戸市の新型コロナ・ワクチン接種研修で採用

VR空間内でのディスカッションの様子

EpiNurseは疫学(Epidemiology)と看護学(Nursing)を組み合わせた方法論を防災・減災に実践する一般社団法人。代表理事を務める高知県立大学看護学部教授の神原咲子氏は、「今回VRを導入することによって、視覚的に確認しながら、動作の練習できるのはまた新しいステップに一気に拡張したと思いました。看護研究で、筋肉注射練習用の筋肉を3Dプリンタで作る試みもしていたところで、そういうものと一緒にすることでさらにいろいろな可能性が広がる」とコメントしている。