デザインや動画のレビューツール「Brushup」ーーフェンリルから分社化で本格展開を開始

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イラストレーターなどにイラストやパンフレット、プレゼン資料を依頼する場合、途中で何回かフィードバックやレビューを繰り返して、作品をイメージ通りに仕上げていくだろう。アプリ開発を手がけるフェンリルのサービスの提供するレビューツール「Brushup」では、このフィードバックのプロセスを一元管理することができる。同社は2月1日、Brushupを株式会社Brushupとして分社化し、事業の本格展開を始めると発表した。

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Brushupでユーザーはグループを作成し、アイテムごとにフィードバックやコメントをタイムライン上で管理できる。例えば、ゲームや制作物用のイラストを作成する場合、ディレクターとイラストレーターのグループを作成する。イラストレーターがイラストをアップロードすると、それに対してメンバーがコメントを加えることができるようになる。ディレクターはイラストの特定の箇所を選択してコメントを残したり、直接イラストにメモを書き込んだりすることができる。イラストレーターはコメントを確認してイラストを修正する。この工程を繰り返して、作品を仕上げるという流れだ。

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このようなやりとりをメールや電話で行うのには、不便な点がいくつかあったとBrushupの担当者は説明する。メールだとあまり重いイラストデータは添付できないし、過去のやりとりを検索しづらい。文字だけだと細かいニュアンスを伝えるのが難しい場合もある。電話や対面であれば、ニュアンスを正確に伝えられるが、記録には残らないので議事録を取らなければならないだろう。Brushupでは、レビューのプロセスが全てクラウド上にまとまっているため、過去に議論したことや変更点をさかのぼって確認することが簡単で、グループの誰もが最新の状況を理解できる。

Brushupは社内利用ためだけではない。他の企業とも連携できる「企業間コラボレーション」機能もある。これで複数の会社から受注した場合でも作品制作を一括で管理したり、他のクリエイターと連携して作品を制作したりできるという。

ディレクターの仕事を軽減

2005年に創業したフェンリルはソフトウェアやアプリ開発を手がける会社で、自社プロダクトにはウェブブラウザ「Sleipnir(スレイプニール)」などがある。Brushupは、もともとフェンリルがGREEと共同開発したソフトウェアが原型になっているという。GREEはゲームアプリを開発する企業で、ゲームディレクターは多くのイラストレーターと仕事をしている。GREEはディレクターとイラストレーターとの作業ややりとりを効率化できるソリューションを探していて、フェンリルとそのためのシステムを開発した。システムは好評で、GREEの承認もあり、フェンリルは新たにこれをBrushupとして2015年3月に立ち上げることになったという。

Brushupはデザインデータ以外にも動画やドキュメントファイルにも対応可能だ。当初は、イラストや動画制作、ウェブ開発といった分野での用途を想定していたが、最近ではそれ以外でも活用が広がっていると担当者は説明する。例えば、建築現場では工事の様子を撮影してフィードバックしたり、教育機関では学生の面接やプレゼンを指導するのに役立てていたりする。

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動画では、時間と位置を指定してコメントが残せる

2017年1月の時点で導入社数が1000社を突破した。Brushupは分社化を契機に事業を加速させていきたい考えだ。ユーザー数が10名以内なら無料で使用することができ、それ以上の場合は有料プランを月額3000円から用意している。Brushupはイラスト制作に限らず、多くのユーザーや企業でサービスが広まることを目指している。

イラストの描き方を動画で学ぶ「パルミー」が朝日やDeNAなどから数千万円規模の資金調達

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イラストやマンガの描き方の動画学習サイト「Palmie(パルミー)」を運営するパルミーがDeNA朝日新聞社Viling Venture Partnersから資金調達を行ったことを発表した。調達金額は非公開だが、関係者らの話によれば数千万円規模の模様。また、2016年6月1に社名をスーパーフラットからパルミーに変更している。

2014年12月にローンチしたパルミーはイラストレーター、漫画家、アニメーターを目指す人向けに絵の描き方が学べる動画を提供している。例えば、下記の動画ではキャラクターの髪の描き方を説明している。

パルミーではPhotoshopやCLIP STUDIO PAINTといったツール別や身体、衣装、背景といった描く対象別に、学習目的に合わせて動画を見つけることができる。また、パルミーの「カリキュラム」からは、数本の学習動画を順序立てたコースを受講することができる。例えば、顔や体の描き方を基本から学べる4つの動画授業をまとめた「初級コース」や盾、鎧といった金属の質感表現が学べる「上級コース」などがある。これらの動画にはユーザーが動画を視聴するだけでなく、手を動かして実際にイラストを作成し、それを提出する「イラレポ」機能がある。動画視聴とイラストの提出の両方を行うことで、コースの完了率が上がっていく仕組みだ。また、提出した「イラレポ」はユーザー同士で「いいね」やコメントを付けたり、あるいはTwitter上でパルミーのハッシュダグを付けて進捗具合を発信したりと、ユーザー間のコミュニケーションが生まれているとパルミーのファウンダーで代表取締役の伊藤貴広氏は言う。これらは全て無料で利用でき、現在掲載している動画本数は170本以上あるそうだ。

講座画面

パルミーの講座画面

2015年12月からは、有料の「プレミアム講座」を提供しているという。これは第一線で活躍するイラストレーターやアニメーターによる生放送の授業だ。受講生は生放送中に先生に質問をしたり、授業によっては添削を依頼することも可能だ。放送は録画されているので、受講日から半年間は授業を繰り返し見ることもできる。90分1コマの授業が4回というのが基本的な講座内容で、見たところ価格は1万円台のものが多い。

DeNAから資金調達を行った理由について、DeNAはゲームやエンタメ事業においてクリエイターとの深い関わりがあるためと伊藤氏は説明する。伊藤氏の前職がDeNAだったというつながりもある。すでにDeNAが提供するアプリ「マンガボックス」にマンガを投稿するインディーズ作家向けにパルミーの動画を提供する取り組みを始めているそうだ。今後もクリエイターの育成面での連携を行っていくと伊藤氏は話す。一方、朝日新聞社とは同社の広いネットワークを介して様々な企業とのアライアンスができることに期待しているという。パルミーは朝日新聞社メディアラボが主催する「朝日新聞アクセラレータープログラム」に採択されていたスタートアップの中の一社なので、朝日新聞社からの出資は順当な話のようだ。

伊藤氏はもともと漫画家を目指していたと話す。だが、伊藤氏の出身の福岡には絵の学校が少なく、東京の美大に進学したという。当時、本の教材などもあったが、地方では本が届くのに何日もかかったり、そもそも本だと絵を学びにくいと感じたという。そういった問題を解決するため、伊藤氏は2014年10月にパルミーを創業し、同年12月からサービスの提供を開始した。これまでに累計で50万人の利用があったと言う。今回の資金調達では主に「プレミアム講座」の販売を軸に事業を成長させていくと話す。また、海外、特にヨーロッパから講座を購入している人も多く、来年後半移行から海外での売上も伸ばしていく計画だと話している。