「INFLUENCER ONE」はインスタの人気者に商品PRを依頼できるクラウドソースサービス

Influencer One

Instagramで数万人のフォロワーがいるなら、もうちょっとした有名人と言っても良さそうだ。その影響力に乗せて商品のプロモーションをしたいと考える企業も多いだろう。本日ローンチした「INFLUENCER ONE」はインフルエンサーとそういったインフルエンサーにマーケティングの仕事を依頼したい企業や広告代理店をつなぐクラウドソースサービスだ。INFLUENCER ONEは、登録モデルに具体的なポーズやシーンの写真素材を依頼できるクラウドソースサービス「INSTAMODEL」を展開するレモネードが手がけている。

INFLUENCER ONEの仕組みは一般的なクラウドソースサービスとそう変わらない。インフルエンサー・マーケティングを依頼したい企業は対象ブランドの説明、案件内容、投稿日、報酬、入札単価といった情報をINFLUENCER ONEに掲載し、インフルエンサーを募集する。条件と依頼内容見て応募したインフルエンサーの中から企業は適任者を選定して依頼するという流れだ。インフルエンサーなら誰でもインフルエンサー側のサイトページからINFLUENCER ONEに登録できるが、案件に応募するには、各企業の承認が必要となる。インフルエンサーは依頼通りの写真や動画をInstagramに投稿した後、その証拠となるスクリーンショット画像とURLをINFLUENCER ONEにアップロードし、企業側がそれを確認して案件が完了する。INFLUENCER ONEは、依頼が完了した時点でマージンを得るビジネスモデルだ。

マーケティング事業者、インフルエンサーどちらのの手間も削減

レモネード代表取締役の石橋尚也氏は、2016年2月にローンチした最初のサービス、INSTAMODELを運営する中で、インフルエンサー・マーケティングへの需要と企業の抱える課題が見えてきたと言う。INSTAMODELでは、企業は登録モデルに具体的なポーズなどの写真の撮影を依頼することが可能だ。だが、企業からは写真に留まらず、商品のPRキャンペーンのためにインフルエンサー・マーケティングを依頼したいという要望が多く寄せられたと石橋氏は話す。石橋氏はこういった依頼にも応えようとしたが、「手動で行うのはしんどい」ことが分かったと話す。写真素材であれば適任のモデルに依頼をするだけで良かったが、インフルエンサー・マーケティングを実現するには、インフルエンサーのSNSアカウントのフォロワー数やどういう投稿が多いかを確認した上で適任者を探し、さらには案件の進行管理や報酬の支払いといった作業が発生する。INFLUENCER ONEでは、そういった作業を効率化するために開発したサービスと石橋氏は説明する。

これはインフルエンサー側にとっても仕事の効率化につながることが期待できるという。石橋氏がインフルエンサー・マーケティングを行ったことがあるモデルに聞いたところ、インフルエンサー・マーケティングの事業者や代理店とは案件の詳細をLINEや電話で何回も確認したり、共通して使用するプラットフォームがないために手帳にメモしたりと依頼の管理に時間がかかるのが課題という声があったという。また、管理がずさんな事業者や代理店も多いが、INFLUENCER ONEではプラットフォーム上で報酬や支払い期日を確認でき、やりとりも残るので安心して仕事ができるというレビューもあったと話す。

Influencer

INFLUENCER ONEのもう1つの特徴は、フォロワー数による課金と平均エンゲージメントによる課金の2つの入札形式を採用していることと石橋氏は言う。SNSでは一般的にフォロワー数が多くなるほどエンゲージメント率が下がる傾向にある。エンゲージメントを重視する企業のために、フォロワー数による従量課金のほかにエンゲージメントに応じた課金ができる選択肢を用意したそうだ。石橋氏は、広告代理業に10年携わってきてきた経験があり、リスティング、アフィリエイト、ソーシャル広告など色々な運用型広告で得た知見を活かしてサービスを提供していきたいと話す。

INFLUENCER ONEでは、まずはINSTAMODELの登録モデルに依頼ができるようになる。登録しているモデルの数はおよそ3000人だそうだ。3、4万人のフォロワーを持つモデルが多く、中には15万人以上のフォロワーを持つ人もいるという。INSTAMODELはINFLUENCER ONEと並行して、引き続き提供していくという。INFLUENCER ONEの方では、モデルの他に写真や動画のクリエイターを集めることに注力していく予定と石橋氏は話す。

Facebook譲り、それなりに使える機能の実装で競合を追い詰めるInstagramの戦略

facebook-instagram-twitter-snapchat

それなりに使える機能であれば、ネットワーク効果と組み合わせることで長期的に大きな影響がある。競合に勝つのに、相手より優れた機能を用意する必要はない。競合相手の魅力を奪えば良い。品質が良くなくても便利であれば、ユーザーが離れる心配はないだろう。

それがInstagram Storiesの背後にある戦略だ。

Snapchatは、日々の生活の1コマを共有する素晴らしいフォーマットを発明した。写真と動画のスライドーショーにコメントがつき、それらは24時間で消えるので、コンテンツの質は荒削りでもよく、ユーザーには自分の見ている世界を共有できる窓となった。Snapchatが提供する10秒のプライベートメッセージは爆発的に人気を博し、アプリのデイリーユーザーは1億5000万人となった。

Snapchat StoriesはInstagramのフィードに投稿するには完成度の低い投稿の全ての行き場所になった。この刹那的な仕組みは、恒久的なFacebookやInstagramとSnapchatを差別化する要因となった。人々がシェアする量は増え、Storiesは、Instagramからコンテンツと人々の関心を奪い、次の大規模なソーシャル媒体となるように見えた。

そこでInstagamはFacebookが2011年に使った戦略を取ることにした。

Instagram Stories New

当時、有名人によるリアルタイムのアップデートが大規模なソーシャル媒体の波になることが予想されていた。そういったコンテンツはTwitterに居場所があった。フィルターのかかっていない他人の投稿は、友人の投稿をアルゴリズムでフィルタリングするFacebookからTwitterを差別化するものだった。

そこでFacebookは、有名人をフォローするための Subscribeをローンチした。

「Twitter殺し」の機能ではなかった。そうである必要はなかったのだ。

それはTwitterより良いものではなかった。更新はリアルタイムで表示されるものではなかった。最高のコンテンツ・クリエーターがこの機能を活用し、フォロワーを受け付けるような状態でもなかった。ハッシュタグも急上昇中の話題を示す機能もなかった。Twitterにあるような何の準備なく、多くの人と議論ができる雰囲気もそこにはなかった。

Facebook Subscribe

しかし、Subscribe機能はTwitterのユーザーを奪い返そうとするものではなかったのだ。「Twitter殺し」のための機能ではなかった。Twitterのユーザー1億人に対し、Facebookは8億人のユーザーがいた。まだ早い段階だったので、そうする必要がなかったのだ。

それなりに使える機能を実装する戦略の目標は、競合他社の将来的な成長を遅らせることで、すでに競合が得たものを奪うことではない。

Facebook SubscribeはTwitterに参加しなくても事足りる、それなりに使える機能と思うユーザーもいただろう。Subscribeは、ユーザーが見ているニュースフィード内にあった。別の新しいアカウントにサインアップしたり、新しい用語やインターフェースを覚える必要もなかった。さらに、新しいオーディエンスやフィードを埋めるための作業をゼロから行う必要もなかった。

Twitterに致命傷は与えることにはならなかったが、すでにFacebookを使っている人にとってTwitterを使う理由を少し減らすことができた。5年後、Twitterのユーザー数は3億1300万人にまでしか成長していないが、Facebookには17億1000万人のユーザーがいる。Facebookは今でもリアルタイム、有名人のコンテンツに関して改良を加える一方、Twitterの課題は誰もが彼らのサービスを使用すべき魅力的なユースケースにたどり着けていないことだ。

今、Instagramは同じ方法でSnapchatと対抗しようとしている。

Instagram StoriesはSnapchat Storiesの品質には及ばない。ジオフィルター、アニメーション付きセルフィーレンズ、3Dスタンプ、スピードを変える演出、スクリーンショットのアラートもない。アプリを立ち上げてすぐに撮影を開始できるよう、カメラがホーム画面に設定されてもいない。アップロードもスムーズさに欠ける。

Snapchat Stories Instagram Stories

しかし、Instagram StoreisはSnapchatの成長を遅らせるのに十分かもしれない。特に既存のInstagramユーザーにとってそれはあてはまるだろう。Instagram Storiesはフィードの最上部に登場し、見逃したりはしない。中核となる、お絵描きとテキストの上乗せツールもそこにある。そして最も大事なことに、別のアプリで新しいオーディエンスを獲得する必要がないのだ。

過去にFacebookがSnapchatを真似ようとして失敗したのは、彼らは「さらに良い」バージョンのSnapchatを作ろうとしたからだ。

繰り返しになるが、多くのSnapchat愛好ユーザーは、Snapchatを離れたりしないだろう。けれど私の友達の間でも、もう数十人がInstgram Storiesで遊び始めていて、何人かはSnapchatを使うのをやめてしまった。ただ、Instagram Storiesの本当のターゲットは、Snapchatの楽しげなツールや形式に関心があるけれど、過去に使ってみたが定着しなかった、あるいは10代向けのツールだと割り切った、はたまた使い方を覚えるのに時間がかかりすぎると思った人たちだ。

これがうまくいかなくても、InstagramはStories機能を廃止すればいい。開発した時間とSnapcahatを真似たと批判されるコストがかかるくらいだ。InstagramのCEO、Kevin Systromは「 彼らが賞賛を受けるべき」と私とのインタビューで完全に認めている。FacebookがSubscribeがなくても重大なライフイベントや意見を共有する場であったのと同じように、Storiesがあろうとなかろうと、Instagramの洗練されたソーシャルメディアとしての立ち位置は変わらない。

Instagram Stories Onboarding

もしInstagram Storiesが成功すれば、最も危険な競合相手の牙を抜くことができるかもしれない。Facebookが過去にPoke、Slingshot、BoltといったSnapchatの機能のクローンを作ることに失敗している。それは、スタンドアローンのアプリとしてSnapchatと真っ向から対立するような「さらに良い」機能を作ろうとしたからと言えるだろう。ここでFacebookは学び、すでに人気のあるアプリに、それなりに使える機能を埋め込むことにした。

Storiesのフォーマットでユーザーを争うのではなく、Snapchatは他の付随機能、信頼性、初期の強力なコミュニティーの力で競争すべきだろう。Instagramのそれなりに使える機能ではSnapchatに致命傷を与えることはできないが、Snapchatが今後拡大する力を奪うことにはなるかもしれない。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website