SpaceXが60基のStarlinkミニ通信衛星打ち上げは成功、ブースター回収は失敗

 

SpaceXはミニ通信衛星60基を軌道に投入した。SpacXのStarlinkは大量の小型衛星で世界をカバーしインターネット接続を提供しようとするシステムだ。60基ずつの打ち上げは今回で5回目の成功となり、これで300基の衛星を軌道に投入したことになる。Starlink衛星は今年だけで3回の打ち上げとなる。SpaceXは世界最大の商用衛星通信運用会社となった。

Starlinkプロジェクトは低軌道にある大量の小型衛星を利用するもので、次々に飛来する衛星がインターネット接続を引き継ぐことにより遠隔地を含めて全世界のユーザーに低コストで高速な接続を提供しようとしている。当面の目標は、2020年中にアメリカとカナダのユーザーをカバーすることだという。その後、衛星群の数の増加とともにサービスを世界各地に拡大する予定だ。

SpaceXがSarlinkで用いた打ち上げ方法は多少変わっている。ロケットの2段目は1回噴射して楕円軌道に入った後、同種の衛星打ち上げミッションよりずっと早く衛星を放出する。衛星はそれぞれのスラスターを噴射して所定の軌道に移る。これは複雑な運動となるがSpaceXによると燃料その他の打ち上げコストを大きく節約できるという。

2月18日の打ち上げはStarlinkシステムを稼働に向けて前進させただけでなく、SapceXにとって今後大きな意味を持つ再利用テクノロジーの改善も目的だった。1段目のFalcon 9ブースターは2019年すでに3回飛行しており、利用回数だけでなく、再利用に要する期間も前回の飛行からわずか62日とSpaceXとして最短だった。

SpaceXは今回もブースターを地上回収しようとしたが(成功していれば50回目の回収となった)、残念ながら失敗した。ブースターは着地のための減速噴射までは予定どおりだったものの、中継ビデオを見ると、ブースターは着地点を大きく外れて海に落下したようだ。SpaceXの前回の回収失敗はFalcon Heavyの中央ブースターが計画どおりに作動しなかったためだった。それ以外のケースでは回収は成功している。「ブースターは海に落下したものの、十分に減速されており破壊されていなかったため再利用の可能性はある」とSpaceXは述べている。

またSpaceXはカーゴベイを覆うフェアリングの回収も試みており、前回は二分割のフェアリングの片方を専用回収船のネットでキャッチすることに成功した。今回、SpaceXは大西洋上に専用船を2隻航行させフェアリングを2個とも回収する試みを行っているのでSpaceXから発表がありしだいその模様をアップデートしたい。

Starlink衛星の打ち上げはこの後も引き続き行われる予定だ。3月にも次の発射が計画されているという。

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滑川海彦@Facebook

100万時間の滞空を達成したインターネット接続気球、1カ所に留まれる巧妙な仕組み

Googleの親会社であるAlphabet傘下のLoonは、全世界の空から高速インターネット接続を提供することを目指しており、数週間前にケニヤで商用トライアルをスタートさせることが発表されている。このLoonのインターネット気球が総計で滞空100万時間の大台に乗ったという。

気球の高度は成層圏の最上部で、1万5000mから2万mあたりをジェット気流に乗って飛ぶ。Loonのエンジニアは地域ごとの上層気流に関する詳細なデータを収集し、人工知能によって気球の高度を調節することによって同一地域の上空に留まれる航法システムを開発した。

Loonの気球群はこれまでに延べ4000万kmを飛行した。これは月まで50回往復できる距離だ。この間気球を操縦したソフトウェアは狙いどおりの位置をキープするためにユニークな方法を用いている。

気球は上から見てジグザグのコースを飛ぶ。これはヨットがタッキングしてセールの開きを変えながら進むのに似ている。ただし、そのナビゲーションは直観に反しており、いかに熟練したヨットマンでも思いつかないようなものだ。気球は成層圏の気流に沿って吹き送られていくが、それでも目指す場所に行く方法を編み出せるのだ。

figure8 Loon

気球が長時間同一区域に留まるためには上下に高度を変えて8の字型の飛行が必要な場合がある。逆方向に吹く気流が高度によって何層にもなっている場合があるからだ。8の字パターンによる飛行は単純な円運動の飛行に比べて、安定した長時間のLTE接続を実現するうえで有効であることが確認された。

こうした複雑な運動パターンは人間が操縦するのであれば普通選択されない。ナビゲーションを自動操縦システムにまかせて、気球が置かれた状況下で最適なパラメータをシステム自身に発見させる方法の有効性がここでも証明された。

LoonのCTO(最高技術責任者)であるSalvatore Candido(サルバトーレ・キャンディド)氏はブログ記事で「この自動操縦システムがAIと呼べるかどうかはよく分からない」と説明している。最近、テクノロジー企業はAIの定義を思い切り拡張し、多少でも複雑な動作をするソフトウェアはすべてAIだと主張する傾向があるだけに、Cキャンディド氏の慎重さは称賛すべき公正な態度といっていいだろう。しかし呼び名はどうであれ、このソフトウェアが気球を一箇所に滞留させ、安定したインターネット接続を提供するという目的を果たしたことはすばらしい。

Loonはすでに台風に襲われたプエルトリコ、地震が起きたペルーで壊滅した通信網を代替するために役立っている。これまで地上に中継設備を建設することが主として経済的な理由によって阻まれてきた遠隔地に、手頃な価格のインターネットをもたらすためにLoonが果たす役割は今後大きくなっていくだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook