フードデリバリーのDeliverooが客によるピックアップも選択肢として提供

今度は配達ではない。英国拠点のオンデマンドフードデリバリーサービスのDeliverooは、注文のフード配達以外のサービスに乗り出す。「Pickup」というピックアップオプションを顧客に提供するのだ。これは、配達料金を払ったり、昼ごはんが届くのを待ったりしなくてもいいというものだ。

この新たな「クリック&ピックアップ」サービスは、開始にあたって英国内13の都市にある700軒超のレストランで展開される。アバディーン、バーミンガム、カーディフ、グラスゴー、リーズ、リバプール、ロンドン、マンチェスター、ミルトン・ケインズ、ニューキャッスル、ノリッジ、ノッティンガム、エジンバラ(旧市街)だ。このサービスを導入するレストラン第1陣には、Byron、Pizza Express、Pizza Hut、TGI Friday’s、Frankie & Benny’s、Chiquito、Coast to Coast、Giraffeが含まれる。

今後12カ月で、Deliverooが現在サービスを展開している英国200の市町村のレストラン1万店以上がこのピックアップサービスを導入し、急速に拡大するとDeliverooは見込んでいる。現段階では予想に過ぎないが。

英国以外のマーケットでもこの「ピックアップ」オプションを提供するかどうかは不明だ。フード回収オプションを香港、オーストラリア、オランダ、ベルギー、スペインで今年開始するとDeliverooは話している。

ピックアップオプションは、自ら食事を取りに来るのをいとわない顧客向けにより安いオプションを設けて顧客の選択肢を拡充するのが狙いだとDeliverooは語る。客はこれによりランチ代を少し浮かせるることができる。

と同時にDeliverooにとってこれは同社のサービスを利用しているレストランのオーダーパイプラインを太くする策にもなる。この場合、Deliverooはオーダーを受けるだけの役割となる(それでもコミッションは取る)。

顧客による自分の食事のピックアップは、Deliverooのプラットフォームにとって新たな収入源となる。これは、同プラットフォームで働いている配達人の雇用ステータス(そして/または労働条件)の法的あるいは倫理的なリスクとは無縁だ。

ピックアップオプションの立ち上げは、登録したレストラン向けにDeliverooが提供する最新のB2Bサービスだ。これまでのB2Bサービスには、食材調達サービス、電気代など日々の事業コストの節約、レストラン拡大のためのデータサービス、ヴァーチャル・ブランドが含まれる。

Deliverooは、今後6カ月で英国内でさらにレストラン1万店の登録を想定していて、急激に事業は拡大すると予想している、と語る。実現すれば利用店は全部で3万店となる。

Deliverooは現在、全13のマーケットの500市町村でサービスを展開している。ホームマーケットの英国のほかはオーストラリア、ベルギー、フランス、香港、イタリア、アイルランド、オランダ、シンガポール、スペイン、台湾、アラブ首長国連邦、クウェートだ。

英国での事業拡大についてDeliverooの強気発言にもかかわらず、フードデリバリー業界は多くのグローバルマーケットでかなり厳しい競争が続いている。この夏、Deliverooは欧州やAPACの他マーケットでの成長と拡大の加速にリソースをさいて投資を行うとして、ドイツからの撤退を発表した。

欧州では、このところの競争でサービスが強化されている。主要プラットフォームは、鍵を握るマーケットで生き残るために提供する選択肢やサービスを増やすというプレッシャーにさらされている。1つのマーケットで急速拡大することは、他のビジネスを犠牲にすることになるかもしれない。

近隣のデリバリーマーケットへの拡大は、ローカルのオンデマンドデリバリースタートアップで見られる別の戦略だ。たとえば、南欧と東欧にフォーカスしているスペインのGlovoは、ローカルのグローサリー即配を実現するため「ダーク・スーパーマーケット」モデルに取り組んでいる(編集部注:売り場はないドライブスルー専用の倉庫)。その一方でフードデリバリーでも地方を開拓し、ポーランドへ(買収を通じて)積極的に展開している。

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(翻訳:Mizoguchi)

フードデリバリーのDoorDashが「チップ未払金問題は存在しない」と主張

オンデマンドフードデリバリーのDoorDash(ドアダッシュ)が先月、チップの配分方法を変更すると発表したのは間違いなく正しい一歩だった。しかし、一部の労働者はそれだけでは不十分だと主張している。公正な賃金に加えて、彼らは過去のチップの未払金返還も求めている。

DoorDashの発表を受けて、労働団体のWorking Washingtonは重要な質問が残っていると述べた。「2017年以降に会社が不当に受け取った顧客からのチップを、会社は労働者に返還するのか?」。

「過去のチップの未払金問題というものは存在しない。すべてのチップが配達員に支払われてきたし、これからもそうするからだ」。TechCrunchが、DoorDashは過去の未払金を配達員に返還するのかと質問すると、DoorDashの広報担当者は電子メールでそのように答えた。

今年初め、Instacartは従来のチップ配分方法を変更した。Instacartがショッパー(スーパーなどで買い物を代行して対価を得る人)に支払う最低額にチップが含まれていた場合、過去に遡ってショッパーに補償した。一方、DoorDashは、過去のチップの未払金について返還の必要性を認めていない。

「当社がウェブサイトおよびアプリで説明したとおり、配達員が支払いを受けたことを独立した第三者調査機関が確認した。配達員はDoorDashから最低基本賃金と顧客が払うチップの100%を受け取り、それでもなおDoorDashが保証する最低金額に届かない場合は追加の支払いを受け取っている」と広報担当者は答えた。「従来、顧客がチップをほとんどまたはまったく払わない場合、DoorDashが賃金を通じて補填していた。補填は配達員を支援する意図だったが、意図しない結果を招いた。顧客によっては、チップを払おうが払うまいが配達員の収入が変わらないなら、チップを払っても意味がないと感じたようだ。新しい方法では、顧客が払うチップはすべて追加の収入として配達員のポケットに入る」。

さらにDoorDashは、平均すれば、基本賃金と賞与によって配達員が受け取る金額は増えると言う。理想的には、配達員の収入はチップを含めた金額でも増える。

「新しい方法を必ず実行することが極めて重要だと考えている。そのため、同じ独立第三者機関と再び協力して、新しい方法の下で配達員の収入が間違いなく増えるようにする」と広報担当者は述べた。

DoorDashが以前発表したように、新しい支払方針は現在試行中で、フィードバックを受けた後、今月発効する。しかし、DoorDashは新方針発表以来、2020年の住民投票に向けて3000万ドル(約32億円)をロビー活動に投入した。住民投票の内容として想定されるのは、企業が労働者(配達員)に福利厚生を提供し、賃金を保証し、柔軟性を提供するものの、正社員の地位は与えない、というものだ。LyftとUberもそれぞれ3000万ドルを同じロビー活動に投入した。これは、カリフォルニア州でギグワーカー(独立契約者)保護法案AB-5が可決されたことを受けた動きだ。

法案は雇用主にABCテストの適用を義務付け、ギグエコノミーの労働者が最低賃金、労災保険その他の給付を受ける権利を確保する内容だ。この法案は2018年12月に最初に導入され、Dynamex Operations Westとカリフォルニア州最高裁が争った裁判における判決を成文化したものだ。この判例で裁判所はABCテストを適用し、Dynamexが労働者を独立契約者に分類したのは誤りだった判断した。

ABCテストによれば、雇用主が労働者を独立契約者として合法的に分類するには、A. 労働者が雇用主の管理と指示から自由であること、B. 労働者が雇用主の事業の範囲外の仕事を行っていること、C. 雇用主に対して提供した労務と同じ性質の仕事(貿易、職業、ビジネス)に定期的に従事していること、の3点すべてを雇用主が証明しなければならない。

法案はまだ署名・施行されていないが、Gavin Newsom(ガビン・ニューサム)知事は署名するとみられている。今後、DoorDashは独立契約者モデルを強く擁護し続けるはずだ。一方、労働団体のWorking Washingtonはより良い賃金と労働者の保護を主張し続けることが予想される。

画像クレジット:Photo by Tibrina Hobson/Getty Images for Los Angeles Times Food Bowl / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)