OLTAが地銀とタッグで「クラウドファクタリング」拡大へ、山陰合同銀行と実証実験

オンライン完結のクラウドファクタリングサービスを展開するOLTAは3月25日、山陰合同銀行と共同事業に向けた実証実験を実施することに合意したと明らかにした。

山陰合同銀行は島根県松江市に本店を構える地方銀行で、今回の実証実験では山陰両県(島根県、鳥取県)に所在する同行の顧客に向けてOLTAのサービスを紹介し、顧客ニーズの調査・検証を行うことから始める。

まずはOLTAが西武信用金庫やりそな銀行と結んできたビジネスマッチング契約に近しい取り組みからのスタートとなるが、その先の展開も視野には入っているようだ。今後OLTAと山陰合同銀行は「中小企業や個人事業主の方々が、手軽に素早く運転資金を調達できるよう共同で事業化の検討を進め、より多くの中小事業者の資金繰り改善・経営サポートに注力してまいります」としている。

これまでOLTAではクラウドファクタリングの仕組みを浸透させるべく、2月に紹介した新生銀行との事例をはじめ、さまざまな金融機関や事業会社と積極的にタッグを組んできた。ただ地銀との取り組みについて公になったのは今回が初めてだ。

2019年6月の資金調達時にOLTA代表取締役CEOの澤岻優紀氏や同取締役CSOの武田修一氏に話を聞いた際、印象的だったのが「クラウドファクタリングは既存の金融機関をディスラプトするものではなく、補完する存在だ」と2人が語っていたこと。

その上で地銀を含めた金融機関との協業を今後のポイントの1つにあげ、地銀とタッグを組むことで「既存の融資の対象にはならなかった地方の事業者に新たな資金調達手段を提供でき、地銀にとっては新しい顧客との接点を作ることができる」という話もしていた。

そういった意味でも今回の山陰合同銀行との実証実験は同社にとって大きな一歩と言えるだろうし、地銀が地元企業の資金繰りをサポートする手段としてクラウドファクタリングに興味を示していることも興味深い。

武田氏によると1月時点でOLTAの申込総額は200億円を突破したそうで、世の中にもクラウドファクタリングがじわじわと浸透し始めている。OLTAの強みはオンライン、非対面、最短24時間以内で請求書を現金化できることだが、一方で「影響力という点ではまだまだこれから。特に地方の人たちに東京のOLTAというフィンテックベンチャーを広く知ってもらうには相応の時間やコストもかかる」(武田氏)という。

今回は山陰地域の事業者とネットワークのある山陰合同銀行の力を借りながら、同地域でクラウドファクタリングの認知度を広げていくことも狙いの1つ。本件に限らず、今年はOLTAと地銀のコラボレーション事例が増えていくかもしれない。

OLTAが新生銀行と共同でクラウドファクタリングの新会社設立、金融機関との連携加速へ

オンライン完結型のクラウドファクタリング事業を展開するOLTAは2月14日、新生銀行と共同で合同会社を立ち上げ、双方の強みを活かしたクラウドファクタリングサービスの提供を始めたことを明らかにした。

両社では1月に10億円規模の出資会社「anew」を設立していて、今月10日よりサービスを開始済みだという。

OLTAは入金待ちの請求書(売掛債権)を売却することで資金調達ができるファクタリングの仕組みを、テクノロジーの活用でアップデートするスタートアップだ。独自のAIスコアリングモデルを用いて一連の手続きを全てオンライン上で実施。従来のファクタリングと比べてスピーディーかつリーズナブルな点が特徴で(手数料2〜9%、申し込みから最短24時間以内で現金化)、昨年12月の時点で申し込み総額は150億円を超えている。

同社ではこれまで自社単体で事業を展開するのみならず、他社にスコアリングモデルを軸とした仕組みをOEM提供することで、より多くの顧客との接点を作ろうとしてきた。今回の取り組みは以前より協議を進めてきた金融機関OEMに近しいが、座組みとしてはanewに対してOLTAが審査などのオペレーションを業務受託する形で運営するという。

OLTA代表取締役CEOの澤岻優紀氏によると、anewでは数百万~1千万円程度と「OLTAよりも少し大きめの売掛金を積極的に買い取っていきたい」とのこと。資金力のある既存の金融機関と組むことで、OLTA単独でやるよりも多くの資金を提供できるチャンスがあるのは1つのポイントだ。金融機関側としても、従来の融資などでは対応できていなかった資金調達ニーズに応えられる。

今後は顧客基盤やデータを有する外部のプラットフォーマーとの提携を通じて、審査モデルの強化や事業基盤の拡大を進めていく計画。第一弾としてオービックビジネスコンサルタントが提供する「奉行クラウド」との連携が決まっているという。

昨年6月に25億円の資金調達を発表して以降、他社との連携を急速に進めてきたOLTA。これまで明らかになっていたものはfreeeやチャットワークなどIT企業が多かったが、遂に大手金融機関との本格的な連携がスタートした。

「今回の取り組みはOLTAとして金融機関様との初の取り組みというだけでなく、国内金融機関がSMB向けにクラウドファクタリングを提供するという点でも歴史的な取り組みだと考えています」(OLTA取締役CSOの武田修一氏)

最初の事例は株主でもある新生銀行との合弁会社になったが、OLTAとしては今回の取り組みを金融機関向けOEMを加速させる大きな布石としたい考え。他の金融機関とも引き続き協議を進めながらネットワークを広げていく計画だ。

クラウドファクタリングのOLTAがChatworkと共同で中小企業の資金繰り支援へ、2億円の調達も実施

オンライン完結型のクラウドファクタリング事業を展開するOLTAは12月5日、ビジネスチャットツールを手がけるChatworkと共同で中小企業の資金繰りをサポートするサービスを開始した。

今回リリースされた「Chatwork 早期入金 powered by OLTA」は「Chatwork」上にて展開されるサービスだ。請求書の入金待ちによって足元の資金繰りに苦しむ中小企業がChatwork上で早期入金の相談をすれば、その後OLTAのクラウドファクタリングと接続。OLTAを通じて入金待ちの請求書(売掛金)を売却することで、運転資金を調達できる。

前回も紹介した通りOLTAの特徴は請求書を売却するまでのフローが簡単かつスピーディーで、手数料もリーズナブルな点だ。本人確認書類や売却する請求書などの必要書類をオンライン上で提出すると、24時間以内に審査を実施。条件に同意して契約すれば即日ないし翌営業日には買取金額を受け取れる。

契約に至るまでの一連の手続きがすべてオンライン上で完結するため、対面での面談や紙の書類の記入なども不要。約20万社のデータに基づくAIスコアリングモデルを軸にした審査などによって従来よりも人的コストを削減することで、手数料も業界最安水準の2〜9%に抑えた。

国内では現在も商取引において掛売の形態を取られていることが多く、その商慣習が中小企業の経営者が資金繰りに頭を悩ませる原因の1つにもなっている。短期・少額の運転資金を調達したいというニーズはあるものの、それを満たせる選択肢が少ないのが現状だ。

ファクタリングサービス自体は以前からあるものの、そこにテクノロジーを絡めることでユーザーにとってさらに便利で使いやすい資金調達手段を確立していこうというのがOLTAの取り組み。同社としては中小企業の利用も活発なChatworkと連携することで、より多くの企業にクラウドファクタリングを広めていくことを目指す。

一方のChatworkとしてもOLTAと組むことでユーザーの経営課題を解決する仕組みを取り入れ、自社サービスの付加価値を高められる可能性があるだろう。

約2年で申し込み総額は150億円を突破、今後は他社との連携強化へ

OLTAではChatworkとの事業連携の発表に先駆け、11月27日に日本郵政キャピタルから2億円の資金調達を実施したことを公表している。この調達は5月に実施したシリーズAラウンドの追加調達という位置付けで、同ラウンドの調達額は約27億円(第三者割当増資が約20億円)、2017年4月の創業以降の累計調達額は約32億円となった。

5月には第三者割当増資と融資を合わせて25億円の資金調達を発表。今回新たに投資家として日本郵政キャピタルが加わり、シリーズA全体では27億円の調達となった。

2017年末からクローズドβ版の運用を始め約2年で申し込み総額は150億円を突破。5月の時点では100億円を突破したということだったから、だいたい半年で新たに50億円ほどの申し込みがあった計算になる。

取締役CSOの武田修一氏によると「マーケットのポテンシャル自体が膨大なので、何千億、何兆円という規模まで拡大していきたい」という思いが強いそう。山を登るスピードをさらに上げていくべく、5月の調達以降は人材採用の強化とともにマーケット拡大に向けて他社との連携を強化してきた。

特に現在進めているのが地銀を始めとした既存金融機関との連携と、SaaSを展開するスタートアップとのサービス連携だ。

今回のChatworkとの連携はまさに後者の取り組みの1つ。OLTAでは6月にもクラウド会計ソフトのfreeeと「freee」上で請求書を早期に資金化するプロダクトをローンチしているが、同社がメインターゲットとする中小企業のユーザーが多いSaaSと組んで事業の拡大を目指す動きは今後も続けていく方針だ。

一方でSaaSが徐々にさまざまな企業に導入され始めているとはいえ、日本全体で見るとまだまだ広く浸透しているとは言えないだろう。クラウドファクタリングの認知度を上げていくためには、オフライン・オンライン双方で既存金融機関と密に連携を取っていくことも重要になる。

この座組みについてはケースバイケースで企業ごとに柔軟に決めていくとのこと。たとえば西武信用金庫とはビジネスマッチング契約(西武信用金庫の顧客にOLTAを紹介してもらう形式)という形で協業を発表した。OLTAとしてはスコアリングモデルやプロダクト開発の仕組みなどをまるっとOEMとして提供し、金融機関のブランド・資金でファクタリングを普及させていきたいという構想もある。

OEM提供先の拡大はクラウドファクタリングのマーケットを拡大していく上ではもちろん、データを通じてスコアリングモデルの精度を高めていく上でも重要だ

以前取材した際も武田氏や代表取締役CEOの澤岻優紀氏は銀行の融資とクラウドファクタリングは用途が異なるため、競合するのではなく上手く棲み分けられるのではないかと話していた。前回はまだ仮説ベースだったというが、実際に金融機関と話を進める中で今はその手応えがつかめているそう。来年にはいくつかのタイアップ事例を発表できる予定だという。

「各金融機関の店舗で融資を受け付ける場合、1件あたりの金額があまりに少額だと採算が合わずに難しいことも多い。そういった際に小口であればクラウドファクタリングを1つの選択肢として紹介してもらい、まとまった金額が必要になったら融資で対応という形で上手く連携・棲み分けができる。既存の金融企業が応援してくれることは事業を広げていく上でも大きい」(武田氏)

まずは上述した他社との連携も進めながら、引き続き中小企業を中心にクラウドファクタリングの仕組みを展開していく計画。ゆくゆくは以前もちらっと触れたようにデータやスコアリングモデルを活用して、ファクタリング以外のプロダクトも手がけていく方針だ。

「戦い方としては一般的なSaaSビジネスとは逆になるかもしれない。スタートはSMB向けでも徐々にエンタープライズにシフトしていくSaaSも多いが、自分たちの領域の場合エンタープライズ向けには洗練された金融ソリューションがいくつもあって、そこにはあまりペインがないと考えている。中小規模の企業にこそ大きなペインやニーズがあって、マーケットも大きい。(ファクタリングに限らず)ロングテールのSMBのペインをいかに解決し、ビジネスとしても確立していくかが今後のチャレンジだ」(澤岻氏)