近年さまざまなWebサービスの登場によって、これまで手間のかかっていたアナログな作業の効率化、自動化が進みはじめている。「クラウド会計ソフト」の知名度が増してきている会計の領域は、まさにこの代表的な例といえるだろう。
クラウド会計ソフトといえば、銀行口座と連携することで入力や仕分けを自動化したり、領収書などのデータをスキャンすることで電子化したりなど、「入力業務」の負担を大きく削減してきた。それだけでも大きな効果があるが、会計業務にはテクノロジーによってさらに効率よくできる部分がまだまだ残されている。
「クラウド会計ソフト freee」を提供するfreeeが5月28日にリリースしたのは、会計上のエラーを自動でチェックする「AI月次監査」機能だ。同機能は試算表の作成に必要な月次監査業務を効率化するもので、まずは会計事務所向けに提供する。
会計上のエラーを自動でチェック
月次監査とは、会計士や税理士が毎月顧問先の企業に対して行っている業務のひとつだ。残高試算表や仕訳帳をチェックし、請求書や領収書、立替経費などと照合を行った上で、月次試算表を確定。それをもとに経営や経理処理上のアドバイスを行い、月次報告書としてまとめて顧問先に送付する。これらの一連のプロセスを指す。
税務においてはもちろん、経営状況を把握するという意味でも重要な業務である一方で、freeeの担当者によると「これまではアナログかつ属人的な側面が強く、効率化のニーズがあった」という。具体的には資料のチェックがひとつひとつ目視で行われ、スタッフによって知識のレベルやチェックの質がバラバラであることも珍しくないそうだ。
「たとえばあまり知見のないスタッフが担当すると、同じような間違いを複数繰り返してしまっていることもあるが、それをアナログで見つけるのはかなり難しい。あらかじめルールを設定することで、ある程度機械的にチェックをすれば負担は軽減できる」(freee担当者)
AI月次監査機能では、貸借対照表や損益計算書の各勘定科目について「税務上のルールとの相違」「freeeを利用する際に発生しやすい作業漏れや誤り」「過去との変動率が大きいなどの異変」に基づいて、修正の必要がありそうな仕訳を自動で探し、ハイライトする。
また該当する仕訳を修正すると「類似の仕訳」も自動で判定。これによって知識のスタッフが誤った仕訳をまとめて登録してしまっていたとしても、漏れなく修正点を探しやすくなる。
「入力業務」だけでなく「チェック業務」も自動化
今後は会計事務所がチェック項目を柔軟にカスタマイズできるようにするほか、エラーをチェックするだけでなく「どのように修正すべきか」を提案するところまで対応する予定。従来力を入れていた「入力業務」の自動化に加え、「チェック業務」の自動化をさらに進めていくという。
「ユーザーからも『データの電子化や自動仕訳など入力業務は自動化されていて楽だけど、それ以降のフローはまだまだ効率化できそう』といった声はあるし、会社としても強化していきたいという思いは強い」(freee担当者)
今回のAI月次監査機能については会計事務所向けとなっているものの、今後は一般ユーザー向けに機能を調整して提供していくを検討している。また、たとえば資金繰り計画の自動化など、経営の意思決定をサポートする機能にもAIを活用していく計画もあるという。
今後はこれまで以上にAIが会計業務をサポートする時代へと突入していきそうだ。