システム障害に対応するエンジニアのための共同作業ノートブック「Fiberplane」

アムステルダムを拠点とするFiberplane(ファイバープレーン)は、Googleドキュメントのグループ編集に似た方法で、SRE(サイト・リライアビリティ・エンジニア)がインシデントに取り組むための共同作業ノートブックを構築している。このアーリーステージのスタートアップ企業は現地時間9月16日、シードラウンドにおける750万ユーロ(約9億7000万円)の資金調達を発表した。

この投資ラウンドは、Crane Venture Partners(クレーン・ベンチャー・パートナーズ)とNotion Capital(ノーション・キャピタル)が共同で主導し、Northzone(ノースゾーン)、System.One(システムワン)、Basecase Capital(ベースケース・キャピタル)が参加した。

通称Mies(ミース)と呼ばれているMicha Hernandez van Leuffen(ミシャ・ヘルナンデス・ファン・ロイフェン)氏は、Fiberplaneの創業者でCEOだ。以前起ち上げたスタートアップのWerker(ワーカー)が2017年にOracle(オラクル)に買収されたことをきっかけに、ヘルナンデス・ファン・ロイフェン氏はより大きな会社の一員となり、そこで(どこの会社でも起こる)障害への対応に苦労している人々を目にした。

関連記事:WerckerをOracleが買収、コンテナベースのデベロッパープラットホームに既存大手も着目

「私たちは常にメトリクス、ログ、トレースの間を行ったり来たりして、私はいつもこれを宝探しと呼んでいるのですが、機能停止やダウンタイムの根本的な原因を突き止めていました」と、ヘルナンデス・ファン・ロイフェン氏は筆者に語ってくれた。

同氏はこの経験から、インシデント対応に関するいくつかの重要な洞察が得られたという。1つ目は、すべてのインシデントデータを集めておく集中的な場所が必要だということ。2つ目は、分散したシステムを管理する分散したチームが、しばしば異なるタイムゾーンを越えて、リアルタイムに協力する必要があるということだ。

2020年8月にOracleを退職した同氏は、DevOps(デブオプス)チームやSREに、組織内の他のチームがGoogleドキュメントやNotion(ノーション)などのツールで行っているのと同じようなグループ編集機能を与えることができないかと考え始め、新会社のアイデアを具体化させていった。

同氏がFiberplaneで作り上げたものは、SREがさまざまな種類のデータを取り込み、インシデントを解決するために共同作業を始めるためのコラボレーションノートブックだ。同時にこのノートブックには、何が起き、どのように問題を解決したかという自然な監査証跡を残すことができる。Googleドキュメントを複数の人が編集できるように、このノートブックにもさまざまな人が参加できるようにすることで、当初の構想を実現している。

複数の人が関わっているFiberplaneのコラボレーションノートの例(画像クレジット:Fiberplane)

しかし、彼はそこで止まるつもりはない。長期的なビジョンとしては、SREやDevOpsチームが障害のあらゆる側面に対応できる運用プラットフォームを目指している。「これは私たちの出発点です。しかし、ここからさらに拡大して、いわばSREのワークベンチとして、インフラを指揮・管理できるものにしたいと考えています」と、同氏は述べている。

現在、Fiberplaneでは13名の従業員が働いており、今も成長を続けている。彼らは、今の彼らがそうであるように、多様性のある会社を作るための方法を模索しており、より多様な候補者を見つけるための具体的な戦略を検討している。

「私たちは多様な人材を雇用するために、当社のトップ・オブ・ザ・ファネルのプロセスを再検討しているところです。当社の取り組みとしては、社会的弱者のコミュニティに求人情報を掲載したり、求人情報の記述をジェンダーデコーダにかけたり、求人情報の公開期間を長くしたりしています」と、Fiberplaneのマーケティングマネージャーを務めるElena Boroda(エレナ・ボロダ)氏は述べている。

ヘルナンデス・ファン・ロイフェン氏はアムステルダムを拠点としているが、同社は英国、ベルリン、コペンハーゲン、そして米国でも人材を雇用しているという。従業員の大半がアムステルダムに住んでいるため、オフィスが再開される際にはアムステルダムを中心拠点とする計画だ。

画像クレジット:lemono / Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

システム障害に対応するエンジニアのための共同作業ノートブック「Fiberplane」

アムステルダムを拠点とするFiberplane(ファイバープレーン)は、Googleドキュメントのグループ編集に似た方法で、SRE(サイト・リライアビリティ・エンジニア)がインシデントに取り組むための共同作業ノートブックを構築している。このアーリーステージのスタートアップ企業は現地時間9月16日、シードラウンドにおける750万ユーロ(約9億7000万円)の資金調達を発表した。

この投資ラウンドは、Crane Venture Partners(クレーン・ベンチャー・パートナーズ)とNotion Capital(ノーション・キャピタル)が共同で主導し、Northzone(ノースゾーン)、System.One(システムワン)、Basecase Capital(ベースケース・キャピタル)が参加した。

通称Mies(ミース)と呼ばれているMicha Hernandez van Leuffen(ミシャ・ヘルナンデス・ファン・ロイフェン)氏は、Fiberplaneの創業者でCEOだ。以前起ち上げたスタートアップのWerker(ワーカー)が2017年にOracle(オラクル)に買収されたことをきっかけに、ヘルナンデス・ファン・ロイフェン氏はより大きな会社の一員となり、そこで(どこの会社でも起こる)障害への対応に苦労している人々を目にした。

関連記事:WerckerをOracleが買収、コンテナベースのデベロッパープラットホームに既存大手も着目

「私たちは常にメトリクス、ログ、トレースの間を行ったり来たりして、私はいつもこれを宝探しと呼んでいるのですが、機能停止やダウンタイムの根本的な原因を突き止めていました」と、ヘルナンデス・ファン・ロイフェン氏は筆者に語ってくれた。

同氏はこの経験から、インシデント対応に関するいくつかの重要な洞察が得られたという。1つ目は、すべてのインシデントデータを集めておく集中的な場所が必要だということ。2つ目は、分散したシステムを管理する分散したチームが、しばしば異なるタイムゾーンを越えて、リアルタイムに協力する必要があるということだ。

2020年8月にOracleを退職した同氏は、DevOps(デブオプス)チームやSREに、組織内の他のチームがGoogleドキュメントやNotion(ノーション)などのツールで行っているのと同じようなグループ編集機能を与えることができないかと考え始め、新会社のアイデアを具体化させていった。

同氏がFiberplaneで作り上げたものは、SREがさまざまな種類のデータを取り込み、インシデントを解決するために共同作業を始めるためのコラボレーションノートブックだ。同時にこのノートブックには、何が起き、どのように問題を解決したかという自然な監査証跡を残すことができる。Googleドキュメントを複数の人が編集できるように、このノートブックにもさまざまな人が参加できるようにすることで、当初の構想を実現している。

複数の人が関わっているFiberplaneのコラボレーションノートの例(画像クレジット:Fiberplane)

しかし、彼はそこで止まるつもりはない。長期的なビジョンとしては、SREやDevOpsチームが障害のあらゆる側面に対応できる運用プラットフォームを目指している。「これは私たちの出発点です。しかし、ここからさらに拡大して、いわばSREのワークベンチとして、インフラを指揮・管理できるものにしたいと考えています」と、同氏は述べている。

現在、Fiberplaneでは13名の従業員が働いており、今も成長を続けている。彼らは、今の彼らがそうであるように、多様性のある会社を作るための方法を模索しており、より多様な候補者を見つけるための具体的な戦略を検討している。

「私たちは多様な人材を雇用するために、当社のトップ・オブ・ザ・ファネルのプロセスを再検討しているところです。当社の取り組みとしては、社会的弱者のコミュニティに求人情報を掲載したり、求人情報の記述をジェンダーデコーダにかけたり、求人情報の公開期間を長くしたりしています」と、Fiberplaneのマーケティングマネージャーを務めるElena Boroda(エレナ・ボロダ)氏は述べている。

ヘルナンデス・ファン・ロイフェン氏はアムステルダムを拠点としているが、同社は英国、ベルリン、コペンハーゲン、そして米国でも人材を雇用しているという。従業員の大半がアムステルダムに住んでいるため、オフィスが再開される際にはアムステルダムを中心拠点とする計画だ。

画像クレジット:lemono / Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Slack内にSREのインシデント管理ソリューションを構築する「Rootly」

企業がその複雑なマイクロサービス方式のソフトウェアスタックの、インシデントに対応しようとすると、サイトリライアビリティエンジニア(SREs)が登場して問題を処理し、すべてがうまくいき、アプリケーションが立派に動くようにする。そして、新登場した初期段階のスタートアップRootlyは、Slackの中にインシデント対応ソリューションを作ってその処理を助ける。

米国時間7月8日、同社はステルスを脱して320万ドル(約3億5000万円)のシード投資を受け取った。そのラウンドはXYZ Venture Capitalがリードし、8VCとY Combinator、そして数名のテクノロジー企業の役員たちが個人で参加した。

Rootlyの共同創業者でCEOのQuentin Rousseau(クエンティン・ルソー)氏によると、同氏はSREを、Instacartで初めて経験した。彼が入った2015年は、同社の1日のオーダーが数百程度で、彼が去る2018年には数千になっていた。しかしそれだけスケールしてもアプリがダウンしないようにすることが、彼の仕事だった。

Instacartにいたときに、多くの人が問題に対応する際、一定のパターンがあることに気づいた。辞めてからの彼はサイドプロジェクトとして、インシデント応答処理をSlackの中でコントロールすることに取り組んだ。彼が見つけた共同創業者のJJ Tang(JJタン)氏は、ルソー氏が2018年に辞めた後のInstacartで仕事を始めていた。そして2人はSREsがインシデントへの対応をめぐって直面するユニークな問題の解決を助ける、Rootlyの創業を決心した。

「要するに私たちは、多くの人がSlackの中で直接、インシデントを管理、解決できるようにしたかったのです。その上に複雑な別のレイヤーを置きたくはなかった。既存のさまざまなツールはそれでなくても多いのですが、混乱状態になって問題が炎上したらできるだけ早く解決にフォーカスしたいものです。そこで、Slack体験にフォーカスするのが良いだろうと考えました」とルソー氏は説明する。

SREsたちはRootlyのソリューションを使って、Slackの中でいろいろなツールにすばやくコネクトする。それはJiraかもしれないし、ZendeskやDataDog、あるいはPagerDutyかもしれない。そして、インシデントの解決をめぐってSlackの中で交わされている会話に基づいて、バックグラウンドでインシデントレポートを編纂する。チームがインシデントの解決後にミーティングをするとき、それが役に立つ。

同社はまだ小さくて、10人足らずだが、シード資金を得たため2022年は技術者も営業も増やしたいと考えている。

タン氏によると、同社の企業文化の中心にあるのがダイバーシティであり、XYZ Venture CapitalのマネージングディレクターであるRoss Fubini(ロス・フビニ)氏のような投資家と仕事ができるのも、そのおかげだという。アジア系米国人であるタン氏は「ロス氏をリード投資家として選んだのも、そのためです。彼の企業はファンドとしてダイバーシティに力を入れているだけでなく、ポートフォリオ企業への影響も考えています」という。

フビニ氏によると、多様性に富む企業を作るためには、雇用のレベルでそれを目指すだけでなく、雇用後、マイノリティーの人たちが自分が歓迎されていると感じられるような環境を作ることが重要だという。「Rootlyとの初期の会話からわかったのは、多様な人材から成るグループを作るだけでなく、企業は多様な人材がいることを有利に生かせるという観点も必要だということです。だから、彼らにとって魅力的な企業であるだけでなく、彼らが、ここが自分の場所だと感じられるような企業環境を作っていかなければなりません」とフビニ氏は語る。

同社は現在、完全にリモートで、ルソー氏はサンフランシスコ、タン氏はトロントだ。計画ではオフィスを完全に再開できるまではリモートで行う。なおルソー氏とタン氏は今、Y Combinatorの育成事業に参加している。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:RootlySlackインシデントサイトリライアビリティエンジニアリング資金調達

画像クレジット:Alina Naumova/Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)