自動車用シミュレーションプラットフォームのMoraiがグローバル展開のために24億円のシリーズBをクローズ

自動運転システムの安全性と信頼性を検証するための自動車用シミュレーションツールを自動運転車の開発者に提供するMorai(モライ)が、米国、ドイツ、日本、シンガポールを中心としたグローバルな展開を強化するために、シリーズB資金調達ラウンドで250億ウォン(約24億円)を調達したことを発表した。

この新たな調達は、Korea Investment Partnersが主導し、KB InvestmentとKorea Development Bankも加わっている。このラウンドには、既存の投資家であるNaver D2 Startup Factory、Hyundai Motor Group、Kakao Ventures、Atinum Investmentも参加した。これによりこれまでの資金調達額は300億ウォン(約28億9000万円)となった。

MoraiのCEOであるJiwon Jung(ジワン・ジョン)氏はTechCrunchに対して、韓国に本社を置き84名の従業員を抱える彼のスタートアップが、2022年末までに世界中の人員を倍増させるためにこの資金を使用すると語った。

共同創業者のジョン氏、Jun Hong(ジュン・ホン)氏、Sugwan Lee(スガン・イー)氏の3人は、2018年に同社を設立し、自動運転車メーカーが実際のテスト走行をシミュレートできる自動運転シミュレーションプラットフォームを構築した。

多くの自動運転車メーカーが、自身の自動運転車の検証のために、安全性と信頼性を証明するためのシミュレーションテストを繰り返し行っている。

Morai SIM(モライSIM)と呼ばれるMoraiのシミュレーターソリューションは、高精細(HD)マップベースの3Dシミュレーション環境により、ユーザーにさまざまな仮想テストシナリオを提供する。Moraiの共同創業者であるホン氏はTechCrunchに対して、Moraiの最もユニークな特徴の1つは、現実世界の物体のデジタルレプリカであるデジタルツイン技術によって実現された、大規模なシミュレーションプラットフォームだと語った。Morai SIMは、すでに世界の20都市以上で展開されている。

1月に開催されたCES 2022では「Morai SIM」のSaaSモデル、通称「Morai SIM Cloud」が発表された。このサービスを使えば、ユーザーがローカルコンピュータにソフトウェアをインストールすることなく、クラウド上でシミュレーションテストを行うことが可能になる。その結果、ユーザーは運用するハードウェアに関係なく、無数のシミュレーション環境で自動運転(AV)ドライバーをテストすることができる。

Morai SIMが開発したデジタルツイン環境、ラスベガス(画像クレジット:Morai)

Moraiは、Hyundai Mobis(現代モービス)、Hyundai AutoEver(現代オートエバー)、Naver Labs(ネイバーラボ)、42dot(42ドッツ)などの100社以上の企業顧客や、韓国科学技術院(KAIST)、韓国自動車技術研究所(KATECH)、韓国交通安全公団(KTSA)などの研究機関を顧客としている。またNVIDIA(エヌビディア)、Ansys(アンシス)、dSPACE(ディースペース)などのグローバル企業ともパートナーシップを結んでいる。

ジョン氏は、同社のシミュレーション・プラットフォームは、自動運転をはじめ、UAM(アーバン・エア・モビリティ)、物流、スマートシティなどの分野に応用できるため、大きな成長が期待できると述べている。

同スタートアップは、2021年に170万ドル(約2億円)の収益を計上し、2018年から2021年にかけては226%の年平均成長率(CAGR)を達成した。2021年には、Moraiはサンフランシスコに米国オフィスを開設している。

ジョン氏は「自動運転シミュレーションプラットフォームにおけるグローバルな競争力をさらに高めるために、技術的な優位性を高めることに全力を注ぎます」と述べていいる。

Korea Investment PartnersのエグゼクティブディレクターであるKunHo Kim(クンホ・キム)氏は「Moraiのシミュレーター技術は、自動運転車の安全性と機能性の向上に重要な役割を果たすことが期待されています」と述べている。続けて「韓国だけでなく、世界の自動運転市場をリードする可能性を秘めているので、今後も成長を期待しています」としている。

画像クレジット:Morai

原文へ

(文:Kate Park、翻訳:sako)

自動運転技術シミュレーターの効果を高めるために、Auroraが元ピクサーのベトラン技術者たちを招聘

来週Nasdaq(ナスダック)に上場を予定している、自動運転車技術のスタートアップ企業であるAurora(オーロラ)は、自動運転システムのテストやトレーニングに使用するコンピューター・シミュレーション・ツールをより現実世界に近いものにするために、Pixar(ピクサー)のベテラン・チームを起用することになった。

これまでステルスで活動してきた3人組のコンピュータ・グラフィック映像スタートアップ、Colrspace(カラースペース)がAuroraの知覚技術チームに参加する。Auroraは、ColrspaceのIP(知的財産)、具体的にはCGIと機械学習を組み合わせた技術も得ることになる。Colrspaceの3人、Michael Fu(マイケル・フー)氏、Allen Hemberger(アレン・ヘンベルガー)氏、Alex Harvill(アレックス・ハーヴィル)氏は、写真や画像から3Dのオブジェクトやマテリアルを再構築する技術を開発した。この技術はシミュレーションをより「現実的」にすることができるため、Auroraをはじめとする自動運転走行車の開発者たちは、テストの効果が高まると主張している(下の動画はColrspaceの作品のサンプル。TechCrunchがMP4をGIFに変換した)。

フー氏、ヘンベルガー氏、ハーヴィル氏は、Auroraの知覚技術チームに加わるが、このチームには元Pixarのソフトウェア・エンジニアだったMagnus Wrenninge(マグナス・レニンゲ)氏が設立したシミュレーション・スタートアップ、7D Labs(7Dラブズ)の人々が既に参加している。Auroraは2019年に7D Labsを買収した。

Auroraをはじめ、Argo AI(アルゴAI)、Cruise(クルーズ)、Waymo(ウェイモ)といったその競合他社は、閉鎖されたコースや公道で現実世界におけるテストを定期的に行っているものの、コンピューター・シミュレーションは、彼らの自動運転車技術をテスト、トレーニング、検証するための不可欠なツールであると考えられている。シミュレーションは、自動運転システムが様々なシナリオをテストしたり、現実世界で起こったことを再現するために役立つ。そして最終的にはソフトウェアを訓練し、評価することで、現実世界での安全性を確保することにつながる。

大手の自動運転車開発企業では、毎日数千回から何百万回ものシミュレーションを行うことも珍しくない。例えば、Auroraのシミュレーターは、5万台以上のトラックを連続して走らせるのに相当すると推定されている。この「Virtual Testing Suite(バーチャル・テスティング・スイート)」と呼ばれるAuroraのコンピューター・シミュレーターは、公道を走る車両に搭載される前にエラーを早期発見するために、多様な走行条件に加えて、一般的なシナリオと異常なシナリオ(エッジケース)を実行する。公道を走行中に取得したデータもこのシミュレーターにフィードバックされる。

今年、Auroraはシミュレーション・プログラムの規模拡大に向けて、より多くの努力と資源を投入している。今月の発表によると、同社は今年末までに90億マイル(約145億キロメートル)以上の走行距離に相当するシミュレーションを完了する見込みだが、そのうち60億マイル(約97億キロメートル)は2021年に入ってから現在までに記録したものだという。

関連記事:

カテゴリー:
タグ:

画像クレジット:Aurora
原文へ
(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

エンジンシ・ミュレーター・アプリ「Trans4motor」の航空機版「Trans4motor S」が発売開始

エンジンシ・ミュレーター・アプリ「Trans4motor」の航空機版「Trans4motor S」が発売開始

キットピークは9月22日、レシプロ航空機エンジンの動作や燃焼の再現の他、カスタマイズも可能なエンジン・シミュレーター・アプリ「Trans4motor S」(トランスフォーモーターエス)の発売を開始した(iOS版)。すでに発売済みの自動車・自動二輪のエンジン・シミュレーター「Trans4motor」(iOS版)の航空機版にあたる。R-4360 Wasp Major/ワスプ・メジャー(空冷星型28気筒)を近日追加予定。

iPhone(iOS14以降)、iPad(iPad OS14以降)に対応。価格は980円(税込)。Android版のリリースは、現在「検討中」とのことだ。

同アプリでは、ライト兄弟のライトフライヤー号に搭載されていた直列4気筒エンジンから、航空機特有の星型、倒立V型、W型、H型まで様々なエンジンを動かすことができる。ピストン、コンロッド、カム、バルブなど、エンジンのメカニズムとその動きが再現され、各パーツの分解や合体も行える。リアルな美しい画像とサウンドで「栄光のレシプロ航空機エンジンの発達を追体験」ができ、内燃機関の勉強にもなる。

カットモデル・モード

空冷フィンやクランクケースを任意の場所でカットし、動いている状態のエンジンの内部を観察できる「カットモデル・モード」

エンジン始動モード

「エンジン始動モード」では、スターターハンドルを回す、手動でのエンジン始動を仮想体験できる

「Trans4motor」の特徴は以下のとおり。

  • シームレスなエンジン形式の変形:エンジンが駆動している状態で、アニメーションを中断することなく、エンジンの形式を切り替えられる
  • エンジンサウンドとスロットル操作:エンジン音アプリ「RealEngineSim」を開発したサウンドデザインラボの協力により、新たに航空機のエンジン音合成を新造。気筒数、空冷、水冷の違いや、プロペラの干渉音などのサウンドがリアルに再現される。本格的な航空エンジン物理モデル(エンジン発生トルクや、プロペラの直径や枚数による空気抵抗によるエンジン回転抵抗などを毎時計算)も実装
  • カットモデル・モード:空冷フィンやクランクケースを任意の場所でカットし、動いている状態のエンジンの内部を観察できる
  • エンジン始動モード:スターターハンドルを回す手動でのエンジン始動を仮想体験できる
  • 機銃モード:零戦搭載の栄エンジンの九七式七粍七固定機銃や、bf 109搭載のDB601エンジンのMG 151/20機関砲を試射できる。スーパースローでプロペラと機銃の同調の仕組みを見ることもできる
  • エンジンの追加拡張:プリセットされているエンジンは、直列4気筒に、7気筒・14気筒・18気筒の星型、H型、W型、V型、倒立V型の8種類。ボア、ストローク、気筒数、星型の配列などを自由に編集して登録することも可能
  • インタラクティブ動画:「4ストロークエンジンの原理」、「カムと歯車」、「航空機銃と機関砲」、「スリーブバルブ」の4本のインタラクティブ動画を収録
  • 各種設定機能:プロペラ、カム、バルブ、スパークプラグなどの部品の表示・非表示を切り替えられる。金属質感、HDR(360度背景)切替機能