新型コロナウイルス感染流行時には、コレクター向け収集品がブームとなった。NBA Top Shot(NBAトップショット)のようなNFT(非代替性トークン)デジタルカードゲームが、新たな消費者の物欲を掻き立て爆発的に売れた一方で、スニーカーの世界はさらに成熟し、愛好家たちは趣味、情熱、こだわり、代替資産に特化したコミュニティに深く入り込んでいった。
バンクーバーに拠点を置くSoleSavy(ソールサヴィ)は、靴の世界をナビゲートするためにキュレーションされた場所をファンに提供することを目的としたスニーカーコミュニティだ。同社は200万ドル(約2億2000万円)の資金を調達したシードラウンドからわずか数カ月後、シリーズAラウンドで1250万ドル(約13億8000万円)を調達し、垂直特化型のプレミアムなソーシャル体験に、投資家が熱い視線を注いでいることを示した。今回のラウンドは、Bedrock Capital(ベッドロック・キャピタル)が主導し、Dapper Labs(ダッパーラボ)のCEOであるRoham Gharegozlou(ロハム・ガーレゴズルー)氏や、Diplo(ディプロ)、Bessemer Ventures(ベッセマー・ベンチャーズ)、Turner Novak(ターナー・ノバック)氏のBanana Capital(バナナ・キャピタル)などが参加した。
SoleSavyのDejan Pralica(デヤン・プラリカ)CEOによると、2020年末にシード資金を調達して以来、同社のユーザー数は3倍に増加し、同時に従業員も10人から37人に増えたという。
現在、SoleSavyのコミュニティは、ユーザーがあらゆることを話し合えるSlack(スラック)のグループによるネットワークを中心に構成されている。今のところ、SoleSavyのチャットコミュニティはSlack上で運営されているものの、将来的にはメンバーのための独自のチャットハブを構築し、アプリやウェブサイトそしてオンライン上の会話を、さらに結びつけることができると、同社では考えている。より近い将来の目標は、このコミュニティを信頼できる買い手と売り手のハブに成長させ、ピア・ツー・ピアの会員制マーケットプレイスとして成功させることだ。SoleSavyは、特定の分野に特化したコミュニティが、包括的なプラットフォームに集まって成長していくという、新世代のソーシャルインターネットマーケットプレイスの最前線にいる企業と言えるだろう。
「私が構想しているのは、非常に統合されたエンド・ツー・エンドのプラットフォームです」と、プラリカ氏はTechCrunchに語った。「私はもう一度スニーカーの楽しさを盛り上げ、スニーカーに情熱を持っている人たちに楽しんでもらえるようにしたいのです」。
自由参加型のチャットグループでは、その楽しさの一部が損なわれてしまう恐れがある。不快な発言が急速に蔓延したり、司会進行役が私利私欲のためにネットワークを利用するようになることがあるからだ。SoleSavyは、よりキュレートされたアプローチを取ることで、そうなることを回避できると期待している。
筆者の上司であり、TC編集部のスニーカーヘッズであるMatthew(マシュー)は、2021年初めに行われたSoleSavyのシード資金調達を報じる記事の中で次のように述べている。
このポジティブなコミュニティの雰囲気こそが、SoleSavyの長期的な焦点であり、米国とカナダに住む4000人のメンバーに、毎日のようにグループと交流したいと思わせるSoleSavyの差別化要因であると、プラリカ氏は語っている。【略】私はこれまで、製品が発売されると大量に購入して転売することを目的とした十数種類のグループに参加してきたが、その多くは婉曲的に言えば騒々しく、率直にいうと不快だ。SoleSavyでは、そのような環境になることを避けたかったとプラリカ氏はいう。そうではなく、靴を買って履きたい人、交換したい人、そして最終的には個人的な所蔵品を転売して別の貴重な品を手に入れたいと思う人も、集まる場所になることを、SoleSavyは目指しているのだ。
同社の大規模なシリーズA資金調達は、多くの投資家がソーシャルコミュニティを中心に構築された垂直型マーケットプレイスのアイデアに興味を持っていることを示している。プラリカ氏は今回の資金調達について、今後しばらくの間は資金のことを考えずに、スニーカー市場における新たな機会を見極めながら「未来に向けた構築」に集中できるチャンスだと考えている。
SoleSavyは、これまで北米のスニーカーユーザーを中心に事業を展開してきたが、今回の多額なシリーズA資金を活用し、オーストラリア、ニュージーランド、英国、シンガポール、日本、欧州全域など、新たな市場への参入も視野に入れている。また、この資金によってポッドキャストや特集記事、オリジナルビデオ、メンバーイベントによる独自ネットワークを構築することも計画している。
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画像クレジット:Kwangmoozaa / Getty Images
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(文:Lucas Matney、翻訳:Hirokazu Kusakabe)