サブスクリプション収入の指標となるが不具合の危険もある「スプレッドシート」の撲滅を目指すSubscript

Sidharth Kakkar(シッダールト・カクカー)氏は、巨大なスプレッドシートに頼ることの苦痛をよく知っている。同氏が前に設立したFreckle Education(フレックル・エデュケーション)では、全員が使用していたデータの詰まったマスタースプレッドシートが読み込めなくなったり、コンピュータがクラッシュしたりする事態が発生した。

同氏の会社は最終的に買収されたが、この悩ましい問題は彼の心に残った。そこでカクカー氏は会社を離れた後、他の企業が「スプレッドシートの悪夢」と呼ばれる問題にどのように対処しているかを知るために、取材を始めた。

「私が気に入っていることの1つは、ある会社を上場させたCFOの話です。説明会の際に、人々はすべてのコーホートを要求し、彼のチームは説明会のためだけにコーホートを作ることに熱中したものの、文字通り2度とそれらを使うことはありませんでした」と、カクカー氏は振り返った。

そしてカクカー氏は、最初のBizOpsで採用したMichelle Lee(ミシェル・リー)氏とともに、2020年12月にサブスクリプション・インテリジェンスのスタートアップ企業であるSubscript(サブスクリプト)を起ち上げることにした。

Subscriptは、サブスクリプションでサービスを提供しているSaaS企業をターゲットに、CRMや総勘定元帳、課金製品からデータを取得して整理するAPIを開発し、データが見つけやすいように整理するだけでなく、最新のサブスクリプション収益指標を提供する。

カクカー氏によると、サブスクリプションビジネスは最近「馬鹿げたブーム」になっているという。しかし、顧客の再利用や継続利用という考え方は好んでも、誰もがビジネス上の意思決定にサブスクリプションという言葉を使いたがっているわけではない。

Subscriptはまだベータ版ではあるものの、First Round(ファースト・ラウンド)が主導する375万ドル(約4億3000万円)のシード資金を調達した。このラウンドには、Plaid(プレイド)のCTOであるJean-Denis Greze(ジャン=ドゥニ・グレーゼ)氏、Pilot(パイロット)の創業者であるWaseem Daher(ワスィーム・ダヘーア)氏、CircleCI(サークルCI)とDark(ダーク)の創業者であるPaul Biggar(ポール・ビッガー)氏、Postman(ポストマン)の成長部門責任者であるJesse Miller(ジェシー・ミラー)氏、Gusto(グスト)の成長部門責任者であるAllen Wo(アレン・ウォー)氏など、40人のエンジェル投資家が参加した。

Subscript製品のダッシュボード(画像クレジット:Subscript)

Subscriptでは、カスタムデータパイプラインを作成し、そのパイプラインによって、カクカー氏が「Revenue Source of Truth(真実の収益源)」と呼ぶものを作成する。例えば、誰かがSalesforce(セールスフォース)で100万ドル(約1億1500万円)の予約案件を成立させた場合、このシステムは一時的な収益と経常的な収益を分けて表示する。財務担当者はそれを見て最終的な判断を下す。

そこから、ユーザーは投資家や取締役会、リーダーシップチームがデータに基づいた意思決定を行うために必要なデータを切り分けることができる。

「リーダーシップチームが注目している大きな意思決定ポイントを把握し、それを軌道修正にも使用することができます」と、カクカー氏はいう。「四半期の途中で、数字を達成できるかどうか、どこに向かっているのか、状況はどうなっているのかが、わからなくなる時があるものです」。

Subscriptは現在、Circle(サークル)やFlipcause(フリップコーズ)など21社の顧客と提携しており、1億ドル(約115億円)を超える顧客の収益を追跡している。カクカー氏によると、社内ではこの数字をビジネスの規模を示すものとして見ているという。

Subscriptは現在、ベータ版を公開しているところで、新たな資金はチームと製品の構築に充てる予定だという。同社はまだ初期段階であり、複雑な製品を構築しているため、エンジニアリングや市場サポートを積み上げていくためには、人手を増やすことが重要だとカクカー氏は述べている。

「このモデルは非常に一般的になってきています」と、カクカー氏付け加えた。「この種のビジネスは非常に複雑なので、私たちは真っ先に取り組んでいますが、ソフトウェアなしでは不可能です」。

画像クレジット:jayk7 / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

スタートアップが表計算ソフトを使わない財務モデルの構築を支援するFinmark

Finmark(フィンマーク)の創業者であるRami Essaid(ラミ・エサイード)氏は、以前のスタートアップを設立した際に、正確な財務モデルを構築することがいかに難しいかを身をもって体験した。2019年にそのスタートアップであるDistil Networks(ディスティル・ネットワークス)をImperva(インパーバ)に売却したとき、彼はその助けとなる新会社を作ることに決めた。

2020年7月に創業したFinmarkは、企業がExcel(エクセル)を使わずに高度な財務モデルを構築するための手助けを行う。「私たちには、収益化前からIPO前までのスタートアップ企業が財務モデルを構築し、Excelから脱却することを支援するという命題がありました」と、エサイード氏は説明する。

エサイード氏によれば、彼らは当初、まだ資金調達をしていない、あるいはシードラウンド資金を獲得したばかりの、本当にアーリーステージの企業に集中していたという。このような企業を標的市場にしていたことには理由があった。財務モデルがそれほど高度でないため、Finmarkが最初の製品をより早く構築することができたからだ。

このアプローチはうまくいった。エサイード氏によると、1000社以上の企業がこの製品を使用しており、そのうち約3分の1が有料顧客だという。この初期の成功を受けて、彼らはより複雑なモデリングを必要とする収益が500万ドル(約5億8000万円)から7500万ドル(約87億円)の中規模企業へと市場を拡大していった。

「このようにして、我々はいくつかの取引を成立させることができ、より大規模な企業も何社か引き入れることができました。より高度な機能を製品に組み込む作業も続けています。企業の創業者が、誰の助けも借りずに、社内に優秀な財務担当者がいなくても、財務管理を簡単に行えるようにすることに、引き続き取り組んでいます」と、エサイード氏は語る。

Finmarkは2021年、Y Combinator(ワイコンビネーター)を卒業し、同社のサービスを必要とする多くのスタートアップ企業にアクセスできるようになったため、彼らの意見を取り入れて製品を改良することが可能になった。

現在、同社は他のインキュベーターやベンチャーキャピタルと協力して、3カ月から12カ月の間、プログラムを無料または割引価格で提供している。これが利用者の増加と製品の認知度向上に貢献している。

同社はまた、初期段階の企業が資金不足に陥らないように、より正確な財務モデルを構築する方法を理解するために役立つコンテンツの作成にも多くの資金を投入した。エサイード氏は、スタートアップ企業が失敗する主な理由を次のように指摘する。

「スタートアップ企業が失敗する一番の理由は、資金が尽きてしまうことです。しかし、実際に活動を停止するスタートアップはほとんどありませんよね?残された時間がわかれば、より多くの選択肢を得ることができます。このようなことを理解し、資金不足に陥らないように戦略的に計画することが、スタートアップを成功させるための重要な要素だと、私は思います」。

Finmarkはすでに35人ほどの従業員を擁しており、エサイード氏は急速にチームを強化している。同氏には他のスタートアップ企業での経験があったため、そのネットワークを活用して、知り合いや信頼できる人を見つけることができたが、さらに多様性を持たせたいとも考えている。

「前回お話した後、(多様性について)よく考えてみました。現在この会社にとってすばらしいことの1つは、リモートで会社を設立していることです。そのため、以前サンフランシスコに本社を置いていたときよりも、全国の多様な人材にアクセスすることができます」と、エサイード氏は語った。

同社は今回、シード資金の一部として650万ドル(約7億5000万円)を調達した。このラウンドは、American Express(アメリカン・エキスプレス)が主導し、既存投資家のDraper and Associates(ドレイパー・アンド・アソシエイツ)、Bessemer Venture Partners(ベッセマー・ベンチャー・パートナーズ)、IDEAfund(アイデアファンド)が参加した。以前、同社は最初のシード投資ラウンドで、500万ドル(約5億8000万円)を調達している。

画像クレジット:Rudzhan Nagiev / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

技術者ではないチームに専門知識不要のデータ探索機能を提供するCanvas

Canvasの創業者たち。左からプライド氏、ザパート氏、ビュイック氏(画像クレジット:Canvas)

世の人たちにスプレッドシートを捨てさせようとするスタートアップがある一方で、協調データ探索ツールを開発しているCanvas(キャンバス)は、技術者ではないチームがデータチームの手を煩わせることなしに必要な情報にアクセスできるように、スプレッドシートに似たインターフェースを全面的に採用している。

Luke Zapart(ルーク・ザパート)氏は、Flexport(フレックスポート)の元同僚であるRyan Buick(ライアン・ビュイック)氏ならびにWill Pride(ウィル・プライド)氏とともに2020年末にCanvasを立ち上げた。ザパート氏はFlexportで働いていた際にデータ検索で苦労を重ねた経験から、Canvasで「Looker(ルッカー)を取り込んだFigma(フィグマ)」を開発しているのだと語る(Lookerは著名なBIツール、Figmaも著名なウェブデザインツールの名前)。

「多くのデータチームは、処理能力を溢れる量の平凡で退屈なデータ要求に忙殺され、ビジネスチームは何日も答を待つのを諦めて、結局ビジネスインテリジェンス(BI)ツールの前に座って『CSVにエクスポート』ボタンを押して、Googleスプレッドシート上でピボットしているのです」とザパート氏は説明する。「根本的に、企業内のビジネス側とデータ側の信頼関係が崩れてしまったのです。それがきっかけで、私たちはFlexportを離れ、本当にその問題を理解して解決しようと努力したのです」。

さらに、データ業界は現在「ルネッサンスを経験」しており、伝統的なビジネスインテリジェンスツールが、焦点を絞ったクラス最高のツールによって解体されている、と彼は付け加えた。しかし、ビジネスユーザーは、SQL(Structured Query Language)に精通していたり、充実したデータチームを抱えていない限り、最新のデータスタックがもたらす多くのメリットを享受することができない。

Canvasはスプレッドシートベースのワークスペースとして開発されたもので、ビジネスチームはSQLクラスを受講することなく独立した意思決定を行うことが可能となり、データチームは戦略的な作業に集中する時間を得ることができるようになる。

その仕組みは以下のようなものだ。まずユーザーは、自分の「白いキャンバス」からスタートし、データチームが提供する定義の表から探しているデータを選ぶことができる。データを見つけたら、表をキャンバスにドラッグ&ドロップして、Googleスプレッドシートと同じように操作する。例えば「ピボット」ボタンを使って、ある指標を抜き出し、グラフやチャートを作成することができる。

ビュイック氏は「チャートを対話的に操作し、キャンバスの好きな場所にドラッグすることができます」という。「ここからがFigmaのようなルック&フィールになるのですが、これはデータを扱うための新しい方法であることがわかりました。なぜなら、解決するために考えようとしている問題がどのようなものであろうとも、反復したりプロトタイプを作成したり、メンタルモデルに合わせたりすることがずっと簡単になるからです」すばらしい特徴は、ビジネスチームが行き詰まることを知っているからこそ、コラボレーションを活かせるようにしている点です。他の人をチームにタグつけしてチェックを依頼することができます」。

ビュイック氏によると、データチームへの質問の数を減らせるだけでなく、Canvasが、すでにdata build tool(DBT)でモデル化されているビジネスロジックを簡単に再利用できる手段であることを理解したスタートアップたちも、このツールを採用しているという。

Canvasの例画像クレジット:Canvas

米国時間1月28日には、Sequoiaが主導し、Abstract Ventures、SV Angel、および20数名の個人投資家グループが参加したラウンドで420万ドル(約4億8000万円)を調達し、プラットフォームを一般公開した。この投資家のリストには、データのエキスパートであるSegmentのCalvin French-Owen(カルバン・フレンチ・オーウェン)氏、FivetranのTaylor Brown(テイラーブラウン)氏、CensusのBoris Jabes(ボリス・ジャベス)氏、DataDogのOlivier Pomel(オリヴィエ・ポメル)氏、事業家であるLatticeのJack Altman(ジャック・オルトマン)氏、DoordashのTony Xu(トニー・シュー)氏、FlexportのRyan Petersen(ライアン・ピーターセン)氏、WebflowのBryant Chou(ブライアント・チョウ)氏、InstacartのMax Mullen(マックス・マレン)氏、そしてエンジェル投資家らが名を連ねている。

ビジネスチームのためのデータワークスペースを構築するのは大変な作業であることを認識した、Canvasの創設者たちは、資金調達を行う決定を下した。ザパート氏は、世界的なデータ専門家やデータ分野の企業の創業者などの、一緒に仕事をしたいと思えるような投資家を慎重に検討したと述べている。

現在、従業員は6名で、数少ない有料顧客と協力しているデザインパートナーがいる。新たな資金は、エンジニアの増員に充てられ、セルフサービスモデルを含む同社のロードマップを構築するとともに、一連の製品発売に利用され、同社はさらなる市場開拓と製品開発戦略を展開して行く予定だ。最初の10~20件の顧客を獲得した時点で、次の資金調達ラウンドを検討するとザパート氏は述べている。

SequoiaのパートナーKonstantine Buhler(コンスタンティン・ビューラー)氏によると、同社には「結束力が高く技術的に強いチーム」があり、その最新のデータスタックは、優れた企業の構築に使われ、企業顧客にサービスを提供する機会を生み出しているという。彼はCanvasの中で、そのようなスタック全体に対する協調的なフロントエンドを開発している企業を目にした。

「データをExcel(エクセル)にダウンロードしてピボットテーブルを作成するのではなく、すべてのデータを1つの場所に保存できるという利点があります」とビューラー氏は付け加えた。「ここでは、システムに接続するだけで、目の前で結果を見ることができるのです。彼のチームはFlexportでもすばらしい仕事を一緒にしてきましたが、今回は非常に重要で誰にでも関連している問題に取り組んでいます。大きなビジョンは、セルフサービスを作ることができるかどうかにかかっています。それは、データへのアクセスを民主化して、完全なアクセス権を持つ少数の人たちだけではなく、社内のすべての人たちにデータを開放することによって力を与えることのできる、非常に大きなきっかけなのです」。

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(文:Christine Hall、翻訳:sako)

Spreadsheet.comはスプレッドシートにアプリを組み込もうとしている

スタートアップを始める際のこれまでの経験則といえば、スプレッドシートで仕事をしている人たちを見つけて、そのスプレッドシートを置き換えるアプリを作るというものだった。そういうふうにしてあなたはスタートアップを始め、ソフトウェアの新しいカテゴリーを作ったかもしれない。

しかしSpreadsheet.comは逆のことをやっている。スプレッドシートをアプリにするのではなく、スプレッドシートにアプリを入れようとしているのだ。

同社が2020年6月に550万ドル(約6億700万円)を調達したと公表したことから、TechCrunchは同社に連絡を取った。このラウンドで支援をしたのはSpark Capital、First Round Capital、Firebolt Venturesで、けっこう前の話だ(PitchBookには、この資金調達の際の評価額は調達後で約2200万ドル(約24億2800万円)と記載されている)。しかしSpreadsheet.comはここまできちんとやってきている。ご紹介しよう。

みんなスプレッドシートが大好きだ

スプレッドシートはデータベース(構造化されたデータのストレージ)と計算機能(平均や合計、その他いろいろ)、そしてプログラミングインターフェイス(関数など)が1つになっているものだ。このようにハイブリッドな機能セットであることから、アプリケーションがどんどん増える状況にあっても由緒あるMicrosoft Excelのような従来のスプレッドシートのツールは価値を持ち続けてきた。

スプレッドシートがどれほど世界を支えているかに関するジョークはたくさんある。例えばこんなミームが筆者の頭に残っている。

スプレッドシートを置き換える動きはあるが、一般的な利用状況に決定的なダメージを与えるほどにはなっていない。この現実が、Spreadsheet.comの命題となっている。CEOのMatt Robinson(マット・ロビンソン)氏はTechCrunchに対し、ワークフローの一部をスプレッドシートから専用アプリに切り替えた企業は、単に両方のソフトウェアを併用する羽目に陥っていると述べた。そこでロビンソン氏と共同創業者のMurali Mohan(ムラリ・モハン)氏は、企業が必要以上に多くのアプリを併用しなくて済むスプレッドシートを作ろうと考えた。

同社の製品はどのように動作するのか。ロビンソン氏はこの質問に対し、質問で返してきた。「我々は現在、スプレッドシートで何をしているでしょうか?」。同氏は例としてデータの管理、タスクの割り当て、書類とのリンクなどを挙げた。そして、Spreadsheet.comのサービスを利用すれば、これらは別のアプリを使わなくてもスプレッドシートの「中で」できると述べた。

同氏は「我々はSpreadsheet.comを両方の世界で最高のものになるように設計しました。すでにご存じのスプレッドシートと同様に動作し、まったく新しい機能も備えています」と説明した。

同社のソフトウェアでは、Airtableのファンにはおなじみのタイムラインスタイルなどさまざまな形式でスプレッドシートを表示することができる。さらにロビンソン氏は、Spreadsheet.comではよく使われている数式も扱えることを強調し、ifとthenの関数でデータを他のアプリに送ったりメールを送信したりすることもできると付け加えた。同氏によれば、サードパーティのプラグインではなく自社で機能を開発しているという。

補足しておくと、Spreadsheet.comはまだ一般に公開されていないので、聞いたことがないとしてもあなたが遅れているわけではない。同社はTechCrunchに対し、現在ウェイトリストに1万6000人が登録していて、これ以外の人たちにはスプレッドシートの日である10月17日に公開する予定だと説明した。

ステルスモードのような状態でこれほどの人数のウェイトリストをどのようにして獲得したのかを尋ねると、ロビンソン氏はFast Companyのサイトで2019年に取り上げられたことを指摘した。上々の結果だ。

今後の見通しは?

スタートアップが過去の資金調達ラウンドを発表したときに我々が真っ先に聞きたいのは、もう一度資金調達をしようとしているかどうかということだ。TechCrunchは企業の次の資金調達サイクルに口出しをしたいわけではない。ロビンソン氏は、Spreadsheet.comにはシリーズAに対する関心が寄せられており1年以内に資金調達をするかもしれないと述べた。明日にでもというわけではないので、筆者は当面、同社について語ってもいいだろう。

ロビンソン氏によれば、Spreadsheet.comにはおよそ2年半分の資金があり現金に困ってはいないという。同社が2021年中に資金調達をするとしたら、高い評価額で調達できるだろう。必要のないときに資金調達をせよ、というのも経験則だ。

同社が現金を必要としていないのに1年以内に資金調達をするとしたら、その理由は何か。ロビンソン氏は、エンジニア以外の人材を増やすために最高の人材を雇おうとするとお金がかかると述べた。現在、同社の人員の約92%はエンジニアだ。さらに同氏は、多額の資金を調達している競合他社もあるとも述べた。これから闘っていくにもお金がかかるだろう。

Spreadsheet.comが参入する世界には、競合がたくさんある。目立つのはユニコーンであるAirtableで、Crunchbaseのデータによればこれまでに6億ドル(約660億円)以上を調達した。スプレッドシートでの共同作業をしやすくしようとしているLayerや、ノーコード開発者がスプレッドシートからアプリを作れるようにするStackerなどが、Spreadsheet.comに対抗する存在だ。元はdashdashという名前だったRowsもそうだし、スプレッドシートからブランドのライセンス業務ができるようにするFlowhavenはSpreadsheet.comが闘いを挑むマーケットトレンドの1つだ。Fivetranは自社のレポートに「スプレッドシートを現代にふさわしいものにし、ユーザーがもっと簡単にやっかいなデータを扱い大量の情報を分析できるようにしたい」と書いている。

我々は、Spreadsheet.comがドアを開いてみんながその技術を知ることになるのを待っているところだ。スプレッドシートがアプリになるのか、アプリがスプレッドシートに入ってくるのか。その答えは今後わかるだろう。

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画像クレジット: Matejmo / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Kaori Koyama)

Excelを誰でもアクセスできる水平的なプロダクトにするCausalが4.5億円調達

Causalの創業者たち

ExcelやGoogleスプレッドシートにできるのは、限られた方法で行う純粋な数値演算だけだ。英国の新進スタートアップCausalはこの制約を取り除きたいと一念発起し、ついに高名なVCであるAccelからの420万ドル(約4億5000万円)のシードラウンドを調達した。これまでの投資家であるCoatueとPassion Capital、Verissimo Ventures、Naval Ravikant、そしてVaradh Jain(バラド・ジャイン)氏らも参加した。これでCausalの資金調達総額は550万ドル(約5億9000万円)になり、同社はその資金で技術者を増員し、2021年5月にProduct Huntでローンチしたいと考えている。

スプレッドシートは企業の日常に欠かせないものになっているが、その使われ方は営業、財務など部署によって大きく違う。Causalは基本的な使い方を統一することによって、データドリブンでコラボレーションも可能な使い方を導入しようとしている。

2019年にTaimur Abdaal(タイムール・アブダール)氏とLukas Köbis(ルーカス・ケービス)氏が創業したCausalは、Excelを超えるものを志向し、手始めにスプレッドシートの基本である「式」に手をつけた。Causalによると、同社の式は「Profit = Revenue – Costs(利益=売り上げー原価)」のように「やさしい英文」のように読むことができる。さらに同社は、Excelと同じモデルを作るために必要な式の数が、CausalではExcelの100分の1で済むと主張している。

CEOで共同創業者のタイムール・アブダール氏は声明で次のように述べている。「事業計画や予測は企業のすべてのチームが関与すべきですが、スプレッドシートが複雑すぎるため財務だけの仕事になっていることが多い。私たちはそのプロセスを、すべてのナレッジワーカーが使える真に水平的な全員参加型のプロダクトでできるようにしたいと考えています。私たちの旅路の次の段階にAccelが参加してくれたことは、とてもうれしい」。

さらにアブダール氏は電話インタビューで次のように語っている。「Causalを始めたのは、スプレッドシートで数を扱うことが非常に難しいことを、いろんなところで見てきたからです。理解困難な難解な式がたくさんあるため、スプレッドシートの80%にエラーがあります。また実のところ、スプレッドシートは企業が使っている他のツールとまったく接続していません。多くの場合、財務チームは社内のあちこちで数日手作業してからやっと会計システムからデータを取り出せるようになります。これが、私たちが解決しようとしている問題の一部です。現在はわずか5名の、技術者ばかりの小さなチームですが、注力しているのは、企業のすべてのチームが数値演算に利用できる極めて水平的なプロダクトです。シード資金はとてもありがたいものであり、これまでやってきたことにさらに傾注できるようになります」。

一方、AccelのパートナーであるSeth Pierrepont(セス・ピエールポン)氏は次のような見解だ。「複数のチームと複数の一次データソースにまたがるような巨大なスプレッドシートは、作るのも管理するのも大変です。タイムール(・アブダール)とルーカス(・ケービス)には才能があり、プロダクトにフォーカスした創業者で、彼らは誰もがよく知っているExcelのような直感的なインタフェイスをデータの統合とコラボレーションの機能および高品質な視覚化でパワーアップしました。さらに、彼らはデータサイエンスと数学の能力を生かして、ユーザーがさまざまな高度なモデルを最初から利用できるようにしています。そのため、すべてのユーザーが、強力な予測能力を装備し利用することができるのです」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Causal資金調達スプレッドシート

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hiroshi Iwatani)