スマートニュースが約251億円調達、企業価値約2200億円超えの「ダブルユニコーン」に

東京拠点のニュース集約サイトアプリのSmartNews(スマートニュース)は、Apple Newsといった標準のニュースサービスとの厳しい競争にもかかわらず成長を続けている。米国時間9月15日、同社は2億3000万ドル(約251億4000万円)のシリーズFラウンドを完了したことを発表した。この結果、スマートニュースの総調達額は4億ドル(約440億円)を超え、会社評価額は20億ドル(約2200億円)に達した。同社は誇らしげに「ダブルユニコーン」だという

出資したのは米国のPrinceville CaptalとWoodline Partnersに加え、日本からJIC Venture Growth Investments、Green Co-Invest Investment、およびYamauchi-No.10 Family Officeが参加した。既存の出資者でこのラウンドに参加したのはACA InvestmentsとSMBC Venture Capitalだ。

2012年に日本で創業したスマートニュースは、2014年に米国に上陸し、2020年初めにローカルニュースの提供範囲を拡大した。同アプリのコンテンツチームには元ジャーナリストたちがいるが、読者の体験をパーソナライズするために機械学習を用いて記事を選別している。しかし、アプリの大きな差別要因の1つは、ユーザーのフィルターバブルを割るために、ユーザーがさまざまな政治的観点のニュースを読める「あらゆる立場からのニュース(News From All Sides)」機能を提供していることだ。

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同社は他にも、ワクチンのダッシュボードや米国選挙のダッシュボードといった新サービスを通じて重要な情報をひと目で見られるようにしている。追加された資金を使って、消費者の健康と安全に焦点を当てた機能を、米国ユーザー(日本以外では最大)向けにさらに開発するつもりだと同社はいう。新機能は今後数カ月のうちに公開予定で、山火事の最新情報や犯罪・安全レポートなどがある。ハリケーン追跡も最近始めた。

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スマートニュースのビジネスモデルは主として広告に焦点を当てている、と以前同社は語っており、米国ユーザーの85~90%はサブスクリプションを購入していない。しかしスマートニュースの信条は、有料無料に関わらずニュース利用者は質の高い情報をアクセスする権利があるということだ。

現在、スマートニュースは、全世界で3000以上のパブリッシングパートナーと契約していて、ウェブおよびモバイルアプリを通じてそのコンテンツを提供している。

収益を生むために、同社はインライン広告とビデオ広告を販売しており、収益はパブリッシャーと分配する。パブリッシングパートナーの75%以上が、同社の「SmartView(スマートビュー)」を活用している。これはアプリの速読モードで、Google AMPなどに代わるものだ。ユーザーはオフラインのときでも記事を読むことができる。同社はパブリッシャーに対して、稲妻アイコンがつけられたこれらのモバイルフレンドリーな記事は、高いエンゲージメントを得られると約束している。同社のアルゴリズムはこの種のコンテンツを多くの読者にむけて表示することでパブリッシャーに報いている。SmartViewのパートナーの中にはは、USA Today(ユーエスエー・トゥデー)、ABC(エービーシー)、HiffPost(ハフィントン・ポスト)などの有名ブランドも入っている。現在、スマートニュース全体のページビューのうち70%以上がSmartViewからのものだ。

スマートニュースのアプリは非常に粘着性があり、ユーザーの注意を引き寄せて維持する力が強い。同社はApp Annieの2021年7月のデータを引用して、米国モバイルデバイスでの月・ユーザー当たりの平均利用時間がGoogleニュースとApple Newsを合わせたよりも多かったという。

App Annieのデータ(画像クレジット:スマートニュース)

会社は月間アクティブユーザー数(MAU)の公表を拒んだが、2019年に米国と日本を合わせて2000万人に成長したという。そしてこの日、米国のMAUが2020年2倍に増えたと同社は述べた。

Apptopia(アップトピア)から提供されたデータによると、スマートニュースアプリは2014年10月の公開以来約8500万回ダウンロードされていて、うち1400万回は過去365日間に行われている。インストールが一番多いのは日本で、生涯ダウンロード数の59%を占めていると同社はいう。

「この最新の調達ラウンドを活かし、私たちのミッションの強さを一層確実にするとともに、とりわけ米国におけるプレゼンスを高め、米国のユーザーとパブリッシャーにアピールする機能を提供していきます」とSmarNewsの共同ファウンダーでCEOの鈴木健氏は語る。「私たちの米国や海外の投資家は、情報へのアクセスを民主化し、消費者、パブリッシャー、広告主全員の役に立つエコシステムを作るスマートニュースの取り組みの膨大な成長の可能性と価値を認めています」と付け加えた。

新たな資金は米国での成長を拡大し、会社のチームを強化するために投資すると同社はいう。2019年にユニコーンになった前回の資金調達以来、同社は従業員数を2倍以上に増やして全世界で約500名になった。現在米国内の人員100名を2倍にする計画で、エンジニアリング、プロダクト、および管理職を追加する。

The Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)は、スマートニュースがIPOを計画していると報じたが、同社はこれについてのコメントを拒んだ。

スマートニュースアプリはiOSとAndroidで世界150か国以上で利用できる。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

SmartNewsの新型コロナ「ワクチンアラーム」日本で提供開始から1週間でユーザー数100万人を突破

SmartNewsのアプリのワクチン警告とマップ機能(画像クレジット:SmartNews)

SmartNews(スマートニュース)は、日本のユーザーが近くの新型コロナワクチンの予約先を探すためのツールが、提供開始からわずか1週間で100万人以上のユーザーを獲得したと発表した。ニュースアプリのユニコーンであるSmartNewsが日本のアプリに「ワクチンアラーム」と「ワクチンマップ」機能を設けることを決めたのは、多くの人々がワクチンの展開スピードに不満を抱いているからだ。ワクチン接種が格段に進んでいる米国では、SmartNewsは米国時間4月22日に郵便番号で予約を検索できる機能をリリースしたばかりだ。

SmartNewsは、日米合わせて2000万人以上の月間アクティブユーザー(MAU)を抱えている。

日本テレビの世論調査によると、日本人の7割以上がワクチンの普及が遅れていることに不満を持っている。SmartNewsが2021年4月上旬に65歳から79歳までの900人を対象に行った調査によると、9割以上の人が「いつどこで、どのようにしてワクチンを接種できるのか」という情報が不十分だと感じていることが明らかになった。課題としては、ワクチン予約情報の一元化されたポータルがないため、地方自治体や医療機関に問い合わせが殺到したことが挙げられた。

SmartNewsの米国版アプリのワクチン発見機能のスクリーンショット

そこでSmartNewsは、全国1741の市区町村が発表した情報を集約して「ワクチンアラーム」と「ワクチンマップ」を作成した。「ワクチンアラーム」では、ユーザーの居住地、年齢、職業、健康状態などから、予防接種の対象となる時期の目安を知ることができる。「ワクチンマップ」では、約3万7000施設のデータを組み合わせ、自分の近くの予約可能な場所を確認したり、かかりつけの医療機関が予約を開始した際に通知を受けることができる。

これらの機能は日本で高齢者の予防接種が始まった4月12日の翌日、日本時間4月13日にリリースされ、1週間後には利用者数が100万人以上に達した。SmartNewsが同国内で最も人気のあるニュースアグリゲーターアプリの1つであることに加え、新機能が大手テレビ局のテレビ朝日で取り上げられたことも助けになった。

同社の担当者がTechCrunchに語ったところによると、ワクチン機能に登録した人々の多くはすでにSmartNewsのユーザーだったが、それらのユーザーがワクチン接種の予約情報を友人や家族と共有することで新たなダウンロードが発生したという。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:SmartNews日本新型コロナウイルスワクチンニュースアプリ

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(文:Catherine Shu、翻訳:Aya Nakazato)