睡眠課題を解決するSleepTech企業のニューロスペースが3.4億円を調達

ニューロスペースの経営陣と投資家陣。写真中央が代表取締役社長の小林孝徳氏、その右隣が取締役COOの北畠勝太氏

テクノロジーを用いて睡眠課題を解決するSleepTech(スリープテック)。近年注目を集めるこの領域で複数の事業を展開するニューロスペースは4月8日、第三者割当増資と融資を合わせて総額3.4億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回同社に出資したのはMTG Ventures、東京電力フロンティアパートナーズ、日本ベンチャーキャピタル、東急不動産ホールディングスの「TFHD OpenInnovation program」、およびユーグレナSMBC 日興リバネスキャピタル(リアルテックファンド)の5社。第三者割当増資の総額が2.5億円で、ここに0.9億円の融資を含めトータル3.4億円となる。

ニューロスペースでは調達した資金を活用して、SleepTech事業の拡大へビジネスサイドや開発サイドの人事採用を強化する計画。調達先のMTG、東京電力グループ、東急不動産ホールディングスグループとは協業も進める。

同社は2013年の創業。2017年11月にもリアルテックファンドや個人投資家らから約1億円を調達している。

1万人以上のデータを活用した睡眠解析プラットフォームへ

創業から一貫して睡眠×テクノロジー領域で事業を展開してきたニューロスペース。現在同社では大きく2つのアプローチから睡眠課題の解決に取り組んでいる。

1つ目が企業向けの睡眠改善プログラム。正確には企業に対して従業員の睡眠を改善するプログラムを提供する、B2B2Eモデルのサービスだ。

背景には近年働き方改革や健康経営、生産性向上などの文脈で、企業内でも今まで以上に従業員の体や心をケアしようという動きが高まっていることがある。

中でも従業員の睡眠不足は重要なポイントのひとつ。企業が日々の生産性の損失として課題視するプレゼンティズム(出勤しているが体調不良やメンタル面の不調などが原因で従業員のパフォーマンスが低下している状態)において睡眠不足が2番目に大きな損失とされるなど、睡眠課題は早急に手を打つべき存在となっている。

ニューロスペースではこれまで睡眠実態のモニタリングや集合形式のラーニングプログラムなどを通じて、従業員の睡眠課題や生活習慣の把握から、浮かび上がった課題の解決までをサポートしてきた。累計の支援企業数は70社、プログラムを提供した従業員は1万人を突破。大手企業を中心に業界や業種も多岐にわたる。

合わせて同社では睡眠データを計測するデバイスや、個々に合わせた睡眠改善アドバイスを提供するアプリを含めた「睡眠解析プラットフォーム」を開発し、吉野家やKDDIらと実証実験を実施。同サービスを6月にも正式ローンチする計画だ。

デバイスはイスラエルのIoTスタートアップ「EarlySense」が手がける非接触型睡眠計測デバイスを導入。マットレスの下に挿入することで、ユーザーの負担を増やさずに、就寝までの時間や中途覚醒時間・回数など個人の細かい睡眠傾向を測定する。

そこから取得したデータやこれまで蓄積してきたナレッジなどを用いて、睡眠改善助言アプリ上でユーザーごとにパーソナライズしたケアを行う。たとえば前日の睡眠データから眠気が強くなる時間帯や集中しやすい時間を予測したり、日々の傾向から具体的な改善アドバイスをしたりすることができるという。

事業会社とタッグでSleepTech事業を推進

この睡眠改善プログラムや睡眠解析プラットフォームの開発だけでなく、ニューロスペースでは事業会社と協業して一般の生活者向けにもサービスを展開してきた。これが2つ目のアプローチだ。

2018年9月にはANAと共同で「時差ボケ調整アプリ」を発表。2019年3月にはKDDI・フランスベッドと共同で睡眠×ホームIoTサービスを開発している。

ANAと共同開発した「時差ボケ調整アプリ」

KDDIと共同開発した「睡眠×ホームIoT」

「前回調達した資金を通じて睡眠解析プラットフォームの開発を進めてきた。これはニューロスペースが様々な企業と協業してSleepTechビジネスを創出していく際に共通して使うシステム基盤となるもの。このプラットフォームを活用し、KDDIやANA、東京電力などとの協業にも取り組んでいる。今後はプラットフォームの更なる技術力強化とパートナー企業との協業事業をより加速していく」(ニューロスペース代表取締役社長の小林孝徳氏)

冒頭でも触れた通り今回の調達先であるMTG、東京電力グループ、東急不動産ホールディングスグループとは共同で新サービスや新規事業を立ち上げる方針だという。

「そもそも眠りとは食事と同じく人間が生きていくために根源的にある欲求だ。現在はまだ『睡眠を改善する、つまりimproveする』というフェーズにあるが、今後は様々な食事が選べるように『睡眠も楽しめて更にはデザイン出来る』、そんな世界をSleepTechのコアテクノロジーで実現していく。最終的には人間が地球を出てどんな環境に行こうと、パラメーターをコントロールすることでいつでも最高の眠りと休息がとれる世界を目指したい」(小林氏)

ニューロスペース取締役COOの北畠勝太氏によるとSleepTech市場は海外で先行して盛り上がっていて、CES(世界各国から最新の家電製品が集まる見本市)では2017年から専用のコーナーが開設されているそう。スタートアップ界隈でもマットレスのD2C事業を展開するCasperが先日実施したシリーズDラウンドでユニコーン企業に仲間入りするなど、大きなニュースが増えてきた。

日本では昨年7.2億円を調達したサスメドや今年1月に2.2億円を調達したO:(オー)らがこの領域でプロダクトを手がける。ニューロスペースも含め、2019年が日本における本格的なSleepTech元年となるのか、引き続きその動向に注目だ。

睡眠解析ベンチャーのニューロスペースが約1億円を資金調達、吉野家とシフト勤務者の睡眠改善を実証実験

睡眠解析ベンチャーのニューロスペースは10月11日、ユーグレナSMBC日興リバネスキャピタルが運営するリアルテックファンドおよび個人投資家らを引受先とする、第三者割当増資による資金調達の実施を発表。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の平成29年度研究開発型ベンチャー支援事業への採択により交付された資金と合わせて、約1億円を調達したことを明らかにした。

ニューロスペースは2013年12月の創業。代表取締役社長の小林孝徳氏が、自身の睡眠障害の経験をきっかけに設立した。企業向けに睡眠改善プログラムを提供するほか、独自の睡眠計測デバイスと解析アルゴリズムに基づく共同研究開発なども行うベンチャーだ。

ニューロスペースでは、今回の資金調達と同時に、AIやIoT技術を活用した「睡眠解析プラットフォーム」ベータ版の提供も発表。調達資金により“スリープテック”事業を加速し、この睡眠解析プラットフォームの実用化に向けた開発を進める考えだ。また、このプラットフォームの実証実験に吉野家が参加することも決定している。

睡眠解析プラットフォームは、個人ごとの睡眠データを高精度で計測し、AIを使った独自の解析技術により個人別の解析結果、最適ソリューション、改善データを提供するための基盤となる。健康経営を推進する企業や睡眠ビジネス参入を検討する企業に開放し、API経由でデータやソリューションを自社サービスや製品に組み込むことが可能になるという。

プラットフォームの実証実験では、吉野家のシフト勤務者を対象に、睡眠計測デバイスと、計測データから睡眠改善策を提案するモバイルアプリが配布され、1カ月間の計測とレコメンデーションの実施、シフト調整などを通じて、検証が行われる。