スマホアプリ分析支援事業などを展開するフラーは8月26日、米国展開の加速に向けてソニーのグループ会社であるTakeoff Pointと業務提携を締結したことを明らかにした。
フラーは2011年に茨城県つくば市にて設立されたスタートアップ(現在の本拠地は千葉県柏市)。主力サービスの「App Ape」は、“どのアプリがいつ、誰に、どのくらい使われているか”といったスマホアプリに関する実利用データを分析できるツールとして国内外で5000社以上に使われている。
大企業での活用事例も多く、直近では野村総合研究所やマッキャンエリクソンなどが導入を決定。また同サービスで蓄積されたデータを活用してクライアントとアプリを共同で開発する「スマホビジネス共創事業」が好調で、3年前のスタート時から毎年2倍のペースで成長しているそう。この事業を通じてこれまでスノーピークの公式アプリやNHKの「NHK キッズ」などの制作に携わってきた。
フラー代表取締役の渋谷修太氏によると、国内での事業拡大と並行して近年はApp Apeの海外展開にも取り組んでいるとのこと。2016年より力を入れてきた韓国ではすでに数十社の利用実績があるほか、昨夏からはグローバル展開強化に向けて全世界の法人・個人がクレジットカード決済で1アカウントから利用できる新プランをスタート。現在は「月1000件以上の登録をいただいている」という。
今回タッグを組むTakeoff PointはSony Startup Acceletation Programの米国拠点として2015年10月に設立されたソニーのグループ会社。グループ内で生まれた新規事業や社外のスタートアップに対して米国展開のサポートを含むビジネス支援を行なっている。
フラーでは同社との提携を通じてApp Apeの米国における顧客獲得を目指す計画で、すでに現地のアプリ関連企業から数件の受注を獲得しているそう。米国にはすでに「App Annie」など複数のプレイヤーが存在するが、アジア市場のデータやアプリのシンプルさなどを強みに事業を広げていきたいという。
「まさに米国は強い競合が多く容易ではありません。一方で我々はBtoBのプロダクトなので、しっかりと差別化をすれば部分的にシェアを獲得していけることが分かってきました。直近では、アジアのデータに強いのはApp Apeというブランディングをすることで、アジア展開を検討している企業をターゲットにしています。最近グローバルで成功しているアプリのクリエイティブ・エージェンシーに導入いただきましたが、日韓のデータは特にApp Apeが優れていると好評をいただけました」(渋谷氏)
渋谷氏の話では現地スタートアップの最先端の手法を取り込んだり、ネットワークを地道に築いたりするほか、現地のアクセラレーターに参加するなど「国内での成功体験を持ち込むのではなく、新たなスタートアップをゼロからやる気持ち」で挑んでいるとのこと。進出する場所についても、競争の激しいシリコンバレー以外のエリアで積極的なセールスを実施するなどしているそうだ。
フラーによると、Takeoff Pointがソニーの関係会社以外の国内スタートアップの米国展開を支援するのは初めての事例になるそう。現地顧客に合わせたローカライゼーションやマーケット戦略の立案など、同社の力も借りながら米国でのチャレンジを加速させていく。
「正直なところ、日本のスタートアップにとって米国で成功するというのは、恐ろしいほどハードルが高いことだと思っています。言語の壁、文化の壁、商習慣の壁・・・失敗する理由を挙げたらキリがないほど思い当たります。そんな中で、日本企業にとって米国開拓の先駆者であるソニーさんから支援を受けられることになり、心強い気持ちでいっぱいです。強力なパートナーと共に、米国展開という高いハードルに挑戦することができ、とてもワクワクしています」(渋谷氏)