SaaS企業のマーケ・営業一環支援を目指す「ボクシル」運営がKDDIと資本業務提携

法人向けクラウドサービスの比較サイト「ボクシルSaaS」やインサイドセールス支援サービス「BALES(ベイルズ)」を運営するスマートキャンプは5月20日、KDDI Open Innovation Fundから資金調達を実施し、KDDIと業務提携を行うと発表した。両社は業務提携により、SaaS企業のマーケティング・営業をワンストップで支援するプラットフォームの実現を目指す。調達金額は非公開。

写真中央:スマートキャンプ代表取締役 古橋智史氏

スマートキャンプが提供するボクシルは、SaaSユーザーとSaaS企業のマッチングプラットフォームだ。ユーザーは、経費精算システムや営業支援システム、採用管理システムなど、さまざまなSaaS製品を比較したり、口コミを確認したりすることができる。2015年5月の運営開始以来、2019年4月末時点で月間1200万PV以上、10万人以上の会員に利用され、SaaS企業のマーケティングをサポート。月間3万件以上のSaaS企業のリード獲得に至っているという。

また、インサイドセールス支援サービスのBALESは、BtoB営業をコンサルティングとアウトソーシングでサポートするサービスだ。見込み客獲得後のインサイドセールスのターゲット選定やKPI設計、スクリプト作成、電話代行などによる営業活動の効率化や、オンラインセールスのアウトソーシング、フィールドセールスのコンサルティングなどによる支援を実施。2017年9月に提供を開始し、100サービスを超えるSaaS企業の営業支援を行ってきた。

今回、KDDIとの資本業務提携によりスマートキャンプでは、SaaS企業の認知度向上からリード獲得、商談、受注、請求まで一気通貫でサポート可能なSaaSプラットフォームの実現を目指す。

スマートキャンプはボクシルやBALESによる、オンラインでの認知度向上から受注までの支援を担当。KDDIが保有する法人向け通信サービスやクラウドサービスの販売チャネル、あるいは契約・請求管理の仕組みと連携することで、オンライン・オフライン両面でSaaS企業のマーケティング・営業活動を一環して支援できるプラットフォームの実現を狙う。

サブスクリプション型のSaaSビジネスでは、ユーザー顧客の成功体験を向上させ、契約継続やアクティブな利用を促すことが成長には不可欠で、むしろ成約してからの“カスタマーサクセス”実現が勝負とも言える。

スマートキャンプ代表取締役の古橋智史氏は「現在はインサイドセールス支援を行うBALESで、主にオンラインでカスタマーサクセスの支援をしている。その後どうしても対面でのサポートが必要になったときに、KDDIに協力していただく、という連携も強化していきたい」と述べ、顧客企業の支援をさらに強めていく考えを明らかにした。

古橋氏は「提携に先駆けて、既にかなり時間をかけて事業開発に取り組んでおり、早い段階で結果を出せるようにしたい」と意欲を見せる。「スマートキャンプとしては、大手企業と資本も絡んだ業務提携は初となる。国内でのSaaS普及を、KDDIと共に推進できればと思います」(古橋氏)

SaaSは年平均10%で成長、API連携によるエコシステム構築が進む――スマートキャンプがレポート公開

クラウド会計のfreee、家計簿アプリのマネーフォワード、名刺管理のSansan、ビジネスSNSのWantedly、コミュニケーションツールのChatWorkなどに代表されるクラウドサービス。もはや、これらのサービス名を一度も聞いたことがない人など皆無だろう。TechCrunch Japan読者には、これらのサービスのヘビーユーザーだという人も多くいるはずだ。

また、2016年1月にChatWorkが15億円、2016年10月にマネーフォワードが11億円、2016年12月にはfreeeが33.5億円を調達するなど、近年クラウドサービスを提供するスタートアップの大型資金調達ニュースをよく耳にするようになり、業界内での存在感も年々増している。

そんな中、クラウドサービスの比較サイト「ボクシル」を運営するスマートキャンプは、SaaS業界の全体像やトレンドをまとめた「SaaS業界レポート 2016-2017」を公開した。

SaaS市場は年平均成長率10%のスピードで成長

本レポートによれば、クラウドサービスの普及率は毎年増加しており、2015年末には40%を超える企業がクラウドサービスを利用しているという。なかでも、SaaS市場は年平均成長率10%を超える勢いで成長。2015年はおよそ1兆円だった市場規模が、2020年には1.3兆円になる見通しだ。

特に、デジタルマーケティング、ビッグデータ、人工知能、働き方をテーマとしたサービスは今後大きく成長すると見られている。

導入の決め手はイニシャルコストの低さと運用の容易さ

企業がクラウドサービスを利用する理由を聞いたアンケート結果を見てみると、「保守体制を社内に持つ必要がない」、「どこでもサービスを利用できる」、「初期導入コストが安価」などの意見が多いことが分かる。クラウドサービスならではの、低いイニシャルコストや運用の容易さが導入の決め手となっているようだ。

ただ、逆にクラウドサービスを利用していない理由を見てみると、セキュリティへの不安の声をおさえて「必要がない」という意見が42.9%で一番多い。企業はすでに導入しているオンプレミス型のシステムで十分だと思っているか、もしくはクラウドサービスの魅力や必要性が伝わっていない可能性がある。

クラウドサービスの普及率は、業務の種類や領域によっても異なるようだ。ファイル保管や給与計算などの汎用業務ではクラウドサービスの普及が進んでいる。その一方で、生産管理や決済システムなど、カスタマイズ性が求められる業務では普及が進んでいない。このような領域では、高度なカスタマイズが可能なオンプレミス型に軍配が上がる。

SaaS業界を取り巻くトレンド

本レポートを公開したスマートキャンプは、いまのSaaS業界には6つのトレンドがあると主張する:

  1. エコシステムの構築
  2. プラットフォーム化
  3. Vertical SaaSの台頭
  4. UI/UXの最適化
  5. 人工知能の活用
  6. 新たな脅威・無駄対策(セキュリティなど)

本レポートではSaaSを2つの種類に分けて説明している。業界を問わず特定の部門や機能に特化した”Horizontal SaaS”と、特定の業界に特化した”Vertical SaaS”だ。

マネーフォワードやSansanなどのサービスはHorizontal SaaSに当てはまる。現在はこちらのタイプが業界の主流となっていて、数も多い。もう一方のVertical SaaSの例としては、飲食分野のユビレジや教育のCAMPUS4などがある。スマートキャンプが作成した以下のカオスマップを参考にしてほしい。

Vertical SaaSのカオスマップ

Horizontal SaaS業界はベンダー同士が連携してエコシステムを構築することで付加価値を高める”SaaS 3.0”の時代に突入したとスマートキャンプは主張する。その一方で、スマートキャンプが「台頭し始めている」と表現するVeritical SaaSは、ベンダーが1つのサービスをポイントソリューションとして提供する”SaaS 1.0”から、ベンダーが自社のサービス同士を連携させることで付加価値を高める”SaaS 2.0”へ移行する途中の段階だとしている。

実際、Horizontal SaaSに属するマネーフォワードは、他のHRサービスと連携できるようにAPIを公開しているし、メガバンクが公開する「更新系API」を活用した機能を実装している。

これが本レポートが言うところの「エコシステムの構築」と呼ばれるトレンドだ。つい先日の5月26日、更新APIの利用を促す内容が盛り込まれた改正銀行法(概要PDF)が成立したばかりということもあり、このトレンドが現在進行中でかつ一番大きなトレンドではないだろうか。

他の5つのトレンドの説明を含む本レポートの全文は、こちらのWebページからダウンロードできる(レポートの購読には無料の会員登録が必要だ)。