Eco-Porkは「いい肉の日」である11月29日、豚肉の生産性や資源の効率性を改善する「養豚自働化プロジェクト」を推進するために、田中衡機工業所とリバネスの2社と業務提携することを発表した。両社とも7月にEco-Porkの株主となって同社を支援してきたが、今回のその支援内容がより具体的なかたちとして明らかになった。
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養豚自働化プロジェクトは、各種IoT機器を利用して養豚場で収集した豚育成データを基に、育成の条件や環境などをAIが自動で最適な状態に管理・制御し、豚肉の生産性や資源の効率性を改善するというもの。すでに国際特許に出願しており、今後実証実験を進めていくという。Eco-Porkでは、このプロジェクトを推進することで、豚肉の生産量を日本平均比からの50%向上を目指す。
このプロジェクトでは、Eco-Porkが自社保有する80万頭ぶんの豚の生育データと田中衡機工業所が持つ日量約2万頭ぶんの豚の体重・肉量データを使い、リバネスの持つ知見を生かして養豚に最適化したAIを開発していく。また、Eco-Porkでは、同社開発の養豚経営支援サービス「Porker」を通じて、田中衡機工業所の畜産用の体重計を使っているユーザに体重や肉量の把握を容易にするソリューションを提供する。さらに、田中衡機工業所が開発を進めているAI画像認識技術を用いたデジタル体重計の開発にも協力する。
Eco-Porkは、世界人口の増加と新興国の経済成長、それによる中間所得層の拡大により、2025年~2030年に到来すとといわれているタンパク質危機を回避するため、養豚事業の効率化を目指して2017年11月29日(いい肉の日)に設立されたスタートアップ。一人あたりの肉や魚の消費量が増加し続ける一方で、飼料の高騰によって年を追うごとに養豚事業のコストも上昇しており、その上昇ぶんは段階的に価格にも転嫁されていく。
同社によると、養豚事業で作られた豚肉は年間15億頭ぶんが消費されており、現在では米や小麦を超えて農業分野では最も規模が大きい事業だそうだ。養豚事業では、2年後の2021年には需要と供給のバランスが崩れて一人当たり分配量が減少に転じ、末端価格は約40%も高まってしまうという予想もあるとのこと。
そこで同社は2018年9月に養豚事業の生産性を高めるため、モバイル養豚経営支援システムとしてPorkerをリリース。Porkerでは、養豚場で発生するさまざまなデータをスマートフォンなどのモバイル端末を使って現場で入力することで、繁殖や肥育の状況把握から経営分析までを可能にする。2019年3月現在で全国20農家、母豚規模では3万5000頭ぶんの農場で稼働している。
養豚は数十頭をまとめて飼育する群管理が基本だが、その中の1頭が飼育中に病気になったり、体調が悪くなったりすると群全体に悪影響を及ぼして、結果的に出荷基準を満たす体重に生育するまでに時間がかかったり、出荷頭数が減少するという問題が発生する。Porkerでは、豚の飼育状況を可視化・蓄積することでこれらの問題を早期発見して、個体の隔離や治療などを行えるのだ。
Eco-Porkは今回のプロジェクトを統括し、新たな養豚モデルを開発・提供していくことで、世界の養豚業の生産性・資源効率性の改善も目指していく。