注文から30分以内に食品・お酒・日用品を届けるデジタルコンビニ「QuickGet」運営のレキピオが1.7億円を調達

注文・決済から30分以内に食品・お酒・日用品を届けるデジタルコンビニ「QuickGet」運営のレキピオが1.7億円を調達

注文・決済から30分以内に商品を届けるデジタルコンビニ「QuickGet」(クイックゲット)運営のレキピオは9月16日、第三者割当増資および日本政策金融公庫より総額1.7億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、UB Ventures、マネックスベンチャーズ、サイバーエージェント・キャピタル、FGN ABBALab、F Ventures LLP、個人投資家の赤坂優氏、中川綾太郎氏、吉田浩一郎氏。また同日、「QuickGet」サービスの正式リリースを明らかにした。

同社は、Android版またはiOS版アプリ上で商品を注文・決済すると、30分以内に自宅まで届けるというデリバリーサービスQuickGetを展開(PCからの利用は不可)。調達した資金は、QuickGet正式リリースに伴う事業拡大に向けた採用活動に利用。今後は、六本木エリアでさらなる成長を目指し、随時サービス提供エリアを拡大する。

またデジタルコンビニだけでなく、フードデリバリーや買い物代行など周辺領域にも参入し、顧客が欲しいと思った時に欲しいものが何でもすぐに届く世界を実現させ、デリバリー市場の覇者を目指す。

注文・決済から30分以内に食品・お酒・日用品を届けるデジタルコンビニ「QuickGet」運営のレキピオが1.7億円を調達

QuickGetは、食品・お酒・日用品などを届けるデジタルコンビニとして、現在東京都港区と渋谷区の一部エリアで展開。営業時間は9:00~24:00(年中無休)。料金は、商品代+配送料250円、アプリ利用料は無料となっている。六本木エリアのみでアプリ内累計流通額が数千万円以上、なかには1ヵ月間に数十万円使うユーザーや、コンビニに行かなくなったというヘビーユーザーもいるという。

サービス提供エリアとして、9月7日から恵比寿・神宮前・代官山・白金エリア、9月14日からは霞ヶ関・虎ノ門・西新橋エリアを追加。今後も段階的にエリアを拡大し、9月下旬には品川区や新宿区の一部エリアでも利用可能となる。

対象エリア

  • 港区: 六本木、西麻布、南麻布、東麻布、麻布十番、元麻布、麻布台、赤坂、南青山、北青山、麻布狸穴町、麻布永坂町、白金、三田、虎ノ門、西新橋、愛宕、芝公園2丁目、芝公園3丁目、芝公園4丁目、芝3丁目
  • 渋谷区: 広尾、東、渋谷、恵比寿、恵比寿西、神宮前、桜丘町、鶯谷町、代官山町、猿楽町、千駄ヶ谷2丁目、恵比寿1~4丁目
  • 目黒区: 三田1丁目
  • 千代田区: 霞ヶ関

9月21日以降追加予定

  • 千代田区: 永田町1~2丁目、紀尾井町
  • 品川区: 上大崎2丁目
  • 新宿区: 信濃町、南元町
  • 渋谷区: 南平台、宇田川町、恵比寿南1~3丁目、神南1丁目、鉢山町
  • 港区: 元赤坂1丁目、浜松町2丁目、白金台4丁目、芝2丁目、芝4~5丁目、芝公園1丁目、芝大門2丁目、高輪1丁目

9月28日以降追加予定

  • 千代田区: 内幸町2丁目、平河町2丁目
  • 新宿区: 大京町、左門町、若葉 1.3丁目、須賀町
  • 渋谷区: 千駄ヶ谷1丁目、3丁目
  • 港区: 元赤坂2丁目、新橋1丁目、新橋3~6丁目、浜松町1丁目、芝大門1丁目

同社は、六本木に自社倉庫を構え、商品在庫を抱えることで実店舗を持つ小売店と同等価格での販売を実現。取扱商品は、高級スーパーやコンビニで売られているような商品や日用雑貨品まで1000点以上を常時ラインナップしている。

また、実店舗のPOSシステムでは「何が」「いつ」「何個」売れたのかという購入データと、店員の主観的判断による性別・年代などの属性データしか取れないが、「QuickGet」では「誰が」にあたる個人情報と購入データを紐づけ可能で、より詳細な顧客属性や購買サイクルなどのデータに基づいた、最適なマーチャンダイジングが可能としている。

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配送料一律250円で注文から30分で自宅に届くデジタルコンビニ「QuickGet」、運営元のレキピオが総額1.7億円を調達

デジタルコンビニ「QuickGet」(クイックゲット)を運営するレキピオは9月16日、同サービスを正式リリースした。なお、昨年12月ごろから一部ユーザーに向けてベータリリース済みで、すでにサービスは稼働している。

オレンジが9月21日から、紫は9月28日からの拡大エリア

サービス提供エリアは、東京の港区と渋谷区の一部エリア。営業時間は9時~24時。配送料は一律250円。具体的な対象地域は以下のとおり。iOS版Android版のアプリ、もしくはウェブサイトから注文できる。

港区
六本木、⻄麻布、南麻布、東麻布、麻布十番、元麻布、麻布台、赤坂、南⻘山、北⻘山、麻布狸穴町、麻布永坂町、三田1〜5丁目、⻁ノ門1〜5丁目、白金1〜6丁目、芝公園1〜4丁目、愛宕1〜2丁目、芝3丁目、西新橋1〜3丁目

渋谷区
広尾、東1〜4丁目、渋谷1〜4丁目、恵比寿1〜4丁目、恵比寿西1〜2丁目、神宮前1〜4丁目、6丁目、千駄ヶ谷2丁目、桜丘町、鶯谷町、代官山町、猿楽町

千代田区
霞ヶ関1〜3丁目

9月21日以降には、港区、渋谷区、千代田区のエリア拡大のほか、品川区、新宿区の一部もエリアに加わる予定だ。

QuickGetは、配送料一律250円で注文から30分で自宅に届けるサービスで、現在は東京都の港区、渋谷区を中心にサービスを展開している。取り扱い製品は、コンビニなどで販売されている食品やアルコール類、日用品などで、価格は商品によっては安かったり、高かったりするが、おおむねコンビニなど同レベルとのこと。ベータリリース時は、港区の六本木エリアのみでアプリ内累計流通額が数千万円を超えたほか、中には1カ月に数十万円使うユーザーもいたそうだ。

コンビニなどからの自宅配達は、ローソンとUber Eatsの提携で一部地域で実施されているが、QuickGetは六本木に自社倉庫を構え、そこから専属の配送ドライバーが配送するという仕組み。専用倉庫では、高級スーパーで販売されているワインや、近隣の飲食店から仕入れたおにぎりや弁当などを含め、常時1000点以上をラインアップしているという。同社代表取締役の平塚登馬氏は「六本木の拠点倉庫だけで、15軒ほどのコンビニの営業エリアをカバーできます」とのこと。

一般的なコンビニの実店舗では、POSシステムで「何が」「いつ」「何個」売れたのかという購入データと、店員の主観的判断による性別・年代などの属性データが紐付けられるのみだが、QuickGetでは事前にユーザー登録が必要なため、誰がいつ何を買ったかを完全に紐付けることが可能だ。つまり、詳細な顧客属性や購買サイクルなどのデータに基づいた最適なマーチャンダイジングが可能とのこと。「在庫している商品の多くは長期保存できるもの多いですが、牛乳や食パン、弁当、おにぎりなど賞味期限の短い商品についてもユーザーの購買データなどを分析しながら毎日仕入れています」との平塚氏。また、六本木エリアでは夜に働く人も多いため、出勤前の夕方の時間帯に甘い菓子のオーダーが多く入る傾向もあるという。そのほか、健康に配慮した食品や飲料、グッズなどが売れ筋だという。

宅配サービスとしては配送料一律250円は低価格な部類に入るが「Uber Eatsなどの店頭価格+配送料という料金形態ではなく、商品はすべて卸価格で自社で仕入れるビジネスモデルのため、配送料を高く設定しなくてもマネタイズが可能」とのこと。配達ドライバーも自社でアルバイトを雇用しており、すべて原付バイクで配送を担当する。平塚氏は「フードデリバリーサービスと根本的に異なるのは、QuickGetでは複数のユーザーが注文した商品を混載してルート配送できる点で、配送時間と配達スタッフの効率的化が可能です」と語る。今後、注文数が増えれば、トラックなどでのルート配送も考えてるいるという。

また、運営元のレキピオは1億7000万円の資金調達も発表した。増資と融資による調達で、第三者割り当て増資の引受先はUB Ventures、マネックスベンチャーズ、サイバーエージェント・キャピタル、FGN ABBALab、F Ventures LLPのほか、個人投資家の赤坂 優氏、中川綾太郎氏、吉田浩一郎氏。融資元は日本政策金融公庫。

レキピオでは今回調達した資金を、QuickGetの正式リリースに伴う事業拡大に向けた採用活動に投下するという。拠点倉庫のある六本木から30分で配送できるエリアはまだまだ開拓の余地があり、エリアを拡大していくという。また今後は、フードデリバリーや買い物代行など周辺領域へも参入するとのこと。

スタートアップのチーム作りを創業者・VC・人材会社が語る:TC School #14レポート2

TechCrunch Japanが主催するテーマ特化型イベント「TechCrunch School」の新シーズンが4月10日、スタートした。新シーズンは、スタートアップのチームビルディングをテーマに、全4回のイベント開催が予定されている。

今シーズン初回、そしてTechCrunch School通算では14回目となった今回のイベントは「チームを集める」が題材。起業時の創業メンバー、設立後の初期メンバーに続く中核メンバーの採用に焦点を当て、講演とパネルディスカッションが行われた(キーノート講演の模様はこちら)。

本稿では「TechCrunch School #14 Sponsored by engage」のパネルディスカッションの模様をお伝えする。登壇者はMeily代表取締役CEO 川井優恵乃氏、レキピオCEO 平塚登馬氏、インキュベイトファンド ジェネラルパートナー 村田祐介氏、エン・ジャパン執行役員 寺田輝之氏の各氏。モデレーターはTechCrunch Japan 編集統括の吉田博英が務めた。

スタートアップ、VC、人材会社に聞くチーム組成

Meilyの川井氏とレキピオの平塚氏には、アーリーステージのスタートアップ経営者として、今まさに行っているメンバー集めの状況や課題について、赤裸々に語ってもらった。また、キーノート講演にも登壇した村田氏とエン・ジャパンの寺田氏からは、これまで数多くのチームビルディングや採用の事例を見てきた経験から、アドバイスをうかがった。

まずは各氏から自己紹介があった(村田氏とインキュベイトファンドの紹介はキーノート講演レポートを参照してほしい)。

トップバッターはエン・ジャパンの寺田氏だ。寺田氏は2002年、当時スタートアップだった人材サービスのエン・ジャパンに入社し、現在は執行役員を務めている。また2018年に設立されたLINEとのジョイントベンチャーで「LINEキャリア」を運営するLENSAの代表取締役にも就いている。

エン・ジャパンでこれまでに「エン転職」「キャリアハック」「カイシャの評判」といったウェブサービスを立ち上げてきた寺田氏が、現在力を入れているサービスは「engage(エンゲージ)」だ。

2016年に「3人でプロダクトを立ち上げた」というengageは、企業が無料で独自の採用ページが持てる採用支援ツール。「求人情報が広く届けられるように、企業にもっと情報発信してもらいたい」という思いから生まれたそうだ。

「立場上、採用側、求職者の両方から話を聞くが、採用する側からは『なかなか採用ができない』、求職者からは『人材サービスに登録されている求人しか、選択肢がない』という声が多い。それならば、求人したい企業が自社の採用情報をもっと発信できるようにすれば、求職者にとっても良いのではないか、と考えたサービスがengageだ」(寺田氏)

engageは現在19万社が利用中で、今では、毎月1万社ベースで増加しているという。

engageでは、自社独自の採用ページ作成ツールのほかにも、遠隔地や時間が合わない求職者とのビデオ面談ツール「Video Interview(ビデオインタビュー)」や、自社とのカルチャーフィットを数値で可視化できる適性検査「Talent Analytics(タレントアナリティクス)」、入社後の早期離職を防止する「HR OnBoard(エイチアールオンボード)」といった採用支援ツールも提供する。また、Googleの検索結果やIndeedなどのサイトにも、求人情報が自動掲載されるようになっている。

寺田氏は「engageは人材を集めるだけでなく、定着までの採用支援ツールをワンパッケージで提供している。ずっと無料で使えるので、これからチームづくりを行うスタートアップにはぜひ、お勧めしたい」と話す。

続いて紹介があったのは、レシピアプリを提供するレキピオの平塚氏。アプリ「レキピオ」は、いま家にある食材を選ぶと、AIがメニューを提案してくれるというものだ。

和食、洋食などの好みや食事の相手、人数といった条件を選べば、登録した食材とあわせて推測を行い、メニューが提案される。料理を選択すると、詳しいレシピとともに足りない食材が表示されるので、買い物にも便利。選んだメニューを実際に作るときには、食材を使い切ったかどうかをチェックすることで、次のメニューを考えるときに生かすことができる。

平塚氏は京都出身で先月大学を卒業したばかり。在学中にレキピオを設立して、現在約1年半が経過したところだ。2018年の秋にシードラウンドで合計約5000万円を資金調達し、現在は東京で事業を展開している。

最後にMeilyの川井氏が自己紹介。Meilyは美容医療のリアルな情報を得られるサービス「Meily」を提供している。川井氏は自身が美容整形を行っていて「合計500万円ぐらい、(自動車の)LEXUSが買えるぐらい費やした」という。

「美容医療の利用者は日本では少ないのではないかと思われているが、実は整形大国と言われる韓国よりも日本の方が施術件数は多く、しかも年々成長している」と川井氏。「美容医療の市場規模が年間7200億円、そのうち約20%が広告に投下されると考えると、およそ1400億円〜2000億円のマーケットがある」と同氏は分析している。

容姿について「コンプレックスをなくして生きたい」と美容整形を決意した川井氏は、情報収集を始めたのだが、検索サイトではクリニックのホームページや広告ばかりが表示され、「二次情報に対する不信感が否めなかった」と語る。またクリニックへカウンセリングに通っても「医師や看護師の言うことも信じられない」状況。実際に顎の施術後に2カ月間、顎が長い状態が続き、医院から「大丈夫」と説明されても、ずっと不安を感じたまま過ごしたこともあるそうだ。

「美容整形をするユーザーは、実際に施術を受けた人の意見が知りたいんです」と語る川井氏。情報収集を行うため、TwitterやInstagramで自身も情報発信を行っていたそうだが、まず「検索に情報が引っかからない」、そして「SNSでは質問しづらいし、したとしてもフォロワー数が少ない人では回答が得にくい」、さらに「症例は、知っている病院のホームページで見るしかなく、探しづらい」という3つの課題があることが分かったという。

この3つの課題を一度に解決できる、「美容医療情報の検索」「ユーザー同士のQ&A」「クリニックの症例紹介」機能を備えたアプリとして、Meilyは2018年4月に作られた。

欲しい人材、機能を手に入れるためには

パネルディスカッションは、まずレキピオ平塚氏、Meily川井氏にチームビルディングに関する質問に答えてもらい、採用の専門家である村田氏、寺田氏からは、それに対して経験談やアドバイスをもらうという形で進められた。

最初の質問は「会社をどれぐらいの規模、人員にしたいと考えているか」というもの。平塚氏は「世界のリーディングカンパニーを目指すというビジョンを掲げているので、規模には際限はない。できる限り高みを目指したい」と回答した。

レキピオCEO 平塚登馬氏

とはいえ「直近の話で言えば、少数精鋭にしておきたい」という平塚氏。「現在、副業なども含め、全部で10人ぐらいの従業員がいるが、今はちょっと会社規模に対して大きいのでは、という状況。人員を増やしすぎると意思決定がふらつくし、マネジメントコストもかかる。人数が少ないときの方がスピードが出るな、ということは感じている」として、「会社の規模自体は今後大きくしていくが、比較的、少数精鋭になるようにしていきたい」と述べている。

初期メンバーの人員について、村田氏は「理想は社長がコードを書けること。1人フルスタックの人がいれば、意思決定に迷わずに、すごく簡単にプロダクトが作れる。最低限のコードが書ける人が何人もいるよりも、スカッとプロダクトが作れる人が1人いれば、少数精鋭も実現できる」と話す。

「最近ではクラウドソーシングも便利になってきている。ルーティンワークについては『顔が見えなくてもいい』と割り切って、そういう人へ振るのもよいのではないか」(村田氏)

川井氏は「会社規模、人員についてはそれほど深くは考えていない」と言う。現在Meilyには、フルタイムで川井氏を含めて7名がいる。

大学在学中だった創業時、理系学部の友人にもエンジニアの紹介を頼んだそうだが「(学業など)タスクが多すぎて無理」と断られ続けた川井氏。創業メンバーは、イケメン探しに使っていた「Tinder」で見つけたという。そのチームの作り方も独特だ。

「Tinderで肩書きに“UX/UIデザイナー”と書かれた人を見つけて、スーパーライク(超いいね)を送った。返信が来たので『アプリを作りたいので、会って話を聞いてください』と言って会い、企画書を見せたところ、興味を持ってくれた。何度もディスカッションを重ねていくと、その人が『実はチームを持っている』と言うので、最後はチームごと引き抜いた」(川井氏)

川井氏が今後募集したい人材は、マーケティング担当者だという。

「どのスタートアップに聞いても、マーケティング担当はみんな探している。ゼロイチのフェイズに参加してくれる人で、数字を見て改善ができ、どのチャネルを使えばいいか選定できる人は、本当にいない」(川井氏)

村田氏は、ネットを使ったプロダクトのマーケティング手法に関しては「Googleでアカウントエグゼクティブをやっているような人に、一度方法を聞ければ、ずっと使える知識が身につく」として、採用するというよりも、知識のある人にレクチャーを受けることを勧めている。

Googleのリスティングにせよ、FacebookのAdネットワークにせよ、やり方が分かれば、後はひたすら運用するだけだという村田氏。「効率的なCPAへ落とし込むためのゴールは確実にある。フレームワークを一度作れば、誰でも回せるようになる」と話す。

またクリエイティブの選定に関しても、広告配信のパターンと同様にいくつかのパターンを用意してテストを行い、効率の良いものだけを残すということを繰り返していけば、パフォーマンスの良いものだけが残っていく、と村田氏。「それを実施するだけでも、とてもいいマーケティングになる」という。

今後募集したい人材へ話を戻そう。レキピオでは「僕がビジネス面やマーケティングを1人で担当しているので、エンジニアをひたすら集めている」と平塚氏は言う。

「特定の技術スタックにはこだわらない。初期のスタートアップにエンジニアとしてジョインしようと思ってくれる人なら、熱量は間違いなくある。開発環境も悪い状況で入ろうと思ってくれている時点で、スキルはあると考えている。例えばJSしか業務で使っていなかったとしても、そういう人はバックエンドも書けるようになる」(平塚氏)

寺田氏は、エンジニア採用のコツについて、このように説明している。

「1カ所に掲載された採用情報を見ただけでは、エンジニアも企業を判断できないはず。だから、いろいろなところで、いろいろな角度から情報を出しておくことが大事だ。今いるエンジニアたちが、どういう人が良くて、どういう人はちょっと違うと思っているのかをブレストして出してみると、何となく自分たちが評価する/評価しないエンジニア像が分かってくる。そこで分かった『求めるエンジニア像』や、用意している環境、やっていきたいことを、場を持って発信していくといい」(寺田氏)

みんなが利用するサービスでのスカウト合戦よりは、そこで興味を持ってくれた人に、より深く理解してもらえる場へ誘導して、説得することが大切、という寺田氏。「これはエンジニアに限ったことではなく、採用の悩みを抱えている企業が取るべき、基本的なスタイルだ」と述べている。

カルチャーフィットは“間”で見極める

平塚氏は「どんなエンジニアでも採用したいというわけではなく、今のメンバーと仲良くできなさそうであれば、どれだけ技術スタックが高くても採用しない。チームブレーカーではない、“いい奴”を探している」という。

ではスタートアップの人材採用では必ずというほど課題に挙がる、採用候補者とのカルチャーフィットの見極め方はどのようにしているのだろうか。

「スタートアップの人たちには、エンジニア出身の人も多いし、真面目な人が多いけれども、僕はその正反対。プライベートでも攻撃的な人間だ」という平塚氏は、「自分の意見をはっきり言わない人や、ぼそぼそとしゃべる人、挨拶に勢いがない人だと、面接が10分ぐらいで終わってしまうこともある」という。

「『言い方が怖い』と言われることもあるので、4〜5人で向かい合って毎日仕事をしている現状では、それに耐えられる人でなければフィットしないかなと思う」(平塚氏)

Meily代表取締役CEO 川井優恵乃氏

一方、川井氏は、今、採用で一番重視していることとして「絶対に辞めないかどうか」を挙げる。

「途中で辞められたら本当に困る。市場は絶対にあるので、後はやりきるかどうかだと思っている。できない理由を探す人ではなくて、どうにかする。その覚悟があるかどうかというのを一番見ている」(川井氏)

Meilyの創業メンバーは現在、川井氏以外に6人いるが、「2回資金ショートしても、受託業務でも、アルバイトしてでも何でもやって、絶対にやり遂げる」と言ってくれているそうだ。性格が合わないときもあるが「本当に信頼している」という川井氏。「同じような人を探すとなると、やはり、そこの部分が重要」と話す。

村田氏は、スタートアップの創業初期に加わる人の見極め方について「社員数が少ない時点では、相手と自分の“間”、話すテンポや、自分の理解のスピードと近いかどうかという点が大事だと思う」と語る。

「優秀かどうかというよりも、一緒に仕事をしてうまくいくことが大切。優秀さは会社がある一定のところへ到達するまでは、あまり関係ないのではないかと感じる。だから最低限、絶対にこの人は裏切らない、嘘をつかない、コミットメントが高い、というところ以外を見るとすれば、コミュニケーションが楽だ、うまく合いそうだと思ったら、すぐに採用した方がいい。逆にすごく優秀だと言われている人であっても、そこが合わないとムチャクチャになってしまう可能性が高い。だからスキル重視ではなく、人物重視というのはすごく大事だ」(村田氏)

寺田氏も「僕も“間”は重要だなと思っている」と発言。「飛行機が飛ばなかったとして、そいつと一緒に一晩過ごせるかというテスト(Googleの採用面接で面接官の判断基準となっている『エアポートテスト』のこと)と同じで、それくらいの関係性になれるかどうかということは重要。空気感は平塚さんが言うように、会ってみなければ分からないし、話してみないと分からないということはあるな、と感じている」と話している。

さらに寺田氏は「『こいつは合うな』と思った後、適性検査を互いに受けている」という。検査結果では「仕事上の何に対してやる気を出すか、その傾向が近いかどうか。それと何にストレスを感じるかを見ている」という寺田氏。

「まず面接でフィーリングが合うかどうかを判断した上で、科学的に数値でも見る。必ずしも全てが一致していなくてもいいんだけれども、採用する側としては、そこはマネジメントしていかなければならない部分。『カルチャーは合うけれども、こういうところにストレスを感じやすいなら、こう接していこう』といった入社後のオンボーディングにも役立つ」(寺田氏)

スタートアップの“ゴールデンタイム”は1年半

「現在の事業をいつごろまでに軌道に乗せ、新規事業などの次のフェーズへ移るつもりか」という質問には、平塚氏は「この1年が勝負」と回答。「今のアプリではマネタイズは想定されていないので、これをどうお金に換えていくか、新規事業の立ち上げなども検討しているところ。あと1年で軌道に乗せたい」ということだ。

川井氏は「半年で軌道に乗せる」と答える。「現在、Meilyと同じ領域の会社が3社いる状態。プロダクトも似ているので、スピード感と規模感が必要だ。いずれも大型調達へ向かって動いていて、半年以内には結果が見えてきてしまうので、この半年が勝負だと思っている」(川井氏)

左:インキュベイトファンド ジェネラルパートナー 村田祐介氏、右:エン・ジャパン執行役員 寺田輝之氏

スタートアップの“ゴールデンタイム”について、村田氏はこう話している。

「会社を作ってから1年半は、創業者にとってはエンペラータイムのようなもの。『起業すると思っていた』『お前ならきっとやれる』と周りからも言ってもらえるし、自分自身も寝ないで仕事ができるほど、すごいエネルギーが出ている。それが1年半ぐらい経つと、周りも何も言わなくなるし、自分も自信を失う瞬間が少しずつ増えていく。だからこのタイミングまでに、強いチームを作れるかどうかがすごく大事だ」(村田氏)

村田氏は、プロダクト・製品も大事だが、チームこそがスタートアップでは重要だと説く。「先ほどの川井さんの話にもあったが、お金がなくても会社は続くと僕は思っている。強いチームが作れていれば、受託でもやろうとか、絶対にエンジェルが現れるはずだとか、必ずサバイブできていくという面がある。創業1年半で、いかに強いチームが作れているかが大事だ」(村田氏)

寺田氏は「創業初期では、エンジニアとPRをいかに集められるかが重要。engageは、アーリースタートアップでは、思いにコミットしてもらえて、一緒に学びながら運営してやっていけるような若いメンバーを探す、という使い方をされている企業も多い」と初期のチームづくりに関して語っていた。

初期チーム採用について質疑応答

最後に会場からの質問に対する登壇者からの回答をいくつか紹介しよう。

Q:CXOを入れるタイミングは?

「いい人がいたらすぐに入れたいところ。出会った日が吉日だ。まとまったトラクションができていて、資金調達ができたら即入れるべき」(村田氏)

Q:採用に関連して企業が発信すべきことは?

「いいところも悪いところも含めて、すべての情報を発信すべき。エン・ジャパンでは、採用された人が入社した後にどれだけ活躍できるかということを重視しているが、1年以内の早期退職の理由は3つ。1つ目は、入社前と後でのギャップ。入る前と後とで『違う。聞いていなかった』となると辞めることになるので、これを防ぐには全ての情報を出すしかない。2つ目は直上の上司のパーソナリティが合わないこと。3つ目は仕事量だ。仕事量に関しては、多すぎても少なすぎても辞める原因になる。スタートアップだと『張り切って入社したが思ったより仕事がない』とか『想像はしていたけれど、それ以上に忙しかった』とか、いろいろなパターンがあり得る」(寺田氏)

Q:創業後のエンジニア採用で大事なことは?

「ノンエンジニアが会社を作った場合は、リファラルが大切。知り合いの知り合いの技術者などに、リファレンスが取れるかどうかが全て。信じられるエンジニアかどうか、聞ける人を1人以上は確保して、声をかけまくるというのがポイント」(村田氏)

Q:チームブレーカーの出現を未然に防ぐための価値観の共有方法は?

「ミッション・ビジョン・バリューが早期に決められるスタートアップならよいが、なかなか決められないものだ。そこで、KPTというフレームワークを利用する方法がある。週1回ぐらい、メンバー全員が今自分が取り組んでいることについて、Keep(継続すべきこと)・Probrem(解決すべき課題)・Try(新たに取り組みたいこと)の3つに分けて付箋紙に書き出して、並べてその場で共有するというもの。うまくファシリテートできる人がいるなら、間違いなくこれはやった方がいい。メンバーが、自分の手がけていることをやるべきか、止めるべきかを共有することができる」(村田氏)

「僕たちは、engageのTalent Analyticsを年1度、メンバー全員で受けている。性格や価値観は変わるもの。定期的に診断すると、家庭の事情などで変化が大きい人が出てきて、重視する項目が変わるのが可視化できる。また、Talent Analyticsでは、例えば『主体性』といった項目を偏差値で表すことができるが、数値で把握できることは大切だ。直属の上司・部下がどういった価値観を持っているのかを、データで把握できるとよいと思う」(寺田氏)

Q:創業者間の持ち株比率は何%が理想?

「代表が100%保有するのが分かりやすく、おすすめ。メンバーには後でストックオプションではなく、生株で渡すのもよい。投資家の立場からすると、上場前にメンバーの持分が5%だと『めっちゃ渡している』という感覚。ガバナンスを明らかにする意味でも、代表ができるだけ持っておくのがベスト」(村田氏)

「僕も100%を勧める。腹を決め、決断できる人が持っているというのが分かりやすい構造だ」(寺田氏)

 

次回もチームビルディングをテーマに「TechCrunch School #15 Sponsored by engage」を開催予定だ。イベント開催時期が近づいたら、TechCrunch Japanでもお伝えするので、ぜひ楽しみにお待ちいただきたい。

TC School 「チームビルディング(1)〜チームを集める〜」は南青山で4月10日で開催、参加費無料

TechCrunchでは、例年11月に開催する一大イベント「TechCrunch Tokyo」のほか、テーマを絞り込んだ80〜100人規模のイベント「TechCrunch School」を開催してきた。昨年3月開催の第13回に続き、今年も4月から新たな「TechCrunch School」がスタートする。

すでに80名超の参加登録をいただいているが、このたび立ち見席を含む座席を若干数増やして受付を続行することが決定した。参加費は無料なので、興味のある読者はぜひ参加してほしい。参加チケットはイベントレジストのTCページから入手できる。

昨年3月に開催したTechCrunch Schoolの様子

4月10日のTechCrunch Schoolは、スタートアップのチームビルディングに焦点を当てた全4回のイベントの1回目。テーマは「チームを集める」で、起業時の創業メンバー、会社設立後に早期に入社した初期メンバーのあとに必要となる中核メンバーの採用に焦点を当てる。

イベントは、キーノート、パネルディスカッション、Q&Aの3部構成。キーノートではインキュベイトファンドでジェネラルパートナーを務める村田祐介氏を招き、これまで手がけてきた投資先スタートアップのチーム組成について語ってもらう予定だ。

パネルディスカッションでは、村田氏のほか、現在アーリーステージのスタートアップ経営者として、Meily代表取締役CEOの川井優恵乃氏とレキピオCEOの平塚登馬氏、そしてエン・ジャパン執行役員の寺田輝之氏の4名で、中核スタッフの採用についての悩みを解消していく。そのあと、来場者を交えたQ&Aセッションとミートアップを開催する予定だ。もちろんQ&Aセッションでは、おなじみの質問ツール「Sli.do」を利用して会場からの質問にも回答する。

イベント会場は、TechCrunch Japan編集部のある東京・外苑前のVerizon Media/Oath Japanのイベントスペース。セッション後はドリンクと軽食を提供するミートアップ(懇親会)も予定している。

起業間もないスタートアップ経営者はもちろん。スタートアップへの転職を考えているビジネスパーソン、数十人の組織運営に課題を抱えているリーダーなど幅広い参加をお待ちしている。

TechCrunch School #14概要

チームビルディング(1) 〜チームを集める〜
開催日時:4月10日(水) 18時半開場、19時開始
会場:Verizon Media/Oath Japanオフィス
(東京都港区南青山2-27-25 ヒューリック南青山ビル4階)
定員:100人程度
参加費:無料
主催:Verizon Media/Oath Japan
協賛:エン・ジャパン株式会社

イベントスケジュール
18:30 開場・受付
19:00〜19:05 TechCrunch Japan挨拶
19:10〜19:30 キーノート(20分)
19:35〜20:15 パネルディスカッション(40分) Sponsored by engage
20:15〜20:35  Q&A(20分)
20:35〜21:30 ミートアップ(アルコール、軽食)
※スケジュールは変更の可能性があります。

スピーカー
・キーノート
インキュベイトファンド ジェネラルパートナー 村田祐介氏

・パネルディスカッション、Q&A
Meily代表取締役CEO 川井優恵乃氏
レキピオCEO 平塚登馬氏
インキュベイトファンド ジェネラルパートナー 村田祐介氏
エン・ジャパン 執行役員 寺田輝之氏
TechCrunch Japan 編集統括 吉田博英(モデレーター)

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いま冷蔵庫にある食材で作れるレシピを提案、AI料理アプリ「レキピオ」が資金調達

AIレシピアプリ「レキピオ」を運営するレキピオは1月30日、CyberAgent Capital、UB Ventures、およびカブク取締役会長の稲田雅彦氏、ReBoost代表取締役の河合総一朗氏、芝山貴史氏、バリューマネジメント代表取締役の他力野淳氏、ほか一名の個人投資家から4200万円を調達したと発表した。これにより、同社の累計調達金額は5200万円となる。

レキピオは冷蔵庫の中に今ある食材を選択するだけでレシピをレコメンドしてくれるアプリだ。食材、料理の種類(和食など)、何人と食べるのか、誰と食べるのかなどの情報を入力すれば、最適なレシピを提案してくれる。

前回TechCrunch Japanがレキピオを紹介したのは2018年4月のこと。そこから同社はアプリにいくつかの修正を加えた。まず、当時はチャットボットをベースにしたアプリだったが、それを廃止。ユーザーからの声をもとに、食材といくつかの質問に答えるだけですぐにレシピが提案されるようにした。また、これまではチャットボットを開く前にレシピ一覧が表示されていたが、アプリを開くとすぐに食材選択画面が表示されるように変更されている。

「これまで自分の思い込みでアプリを作ってきたが、昨年はユーザーからの声を聞き、彼らがレキピオに何を求めているのか、それをどうやって実現するかに注力してきた」と代表取締役の平塚登馬氏は話す。

レキピオは今のところユーザー数やダウンロード数などの指標を公開していないが、現在5000〜7000レシピが搭載されているという。そして、ユーザーのほとんどが料理初心者〜中級者の20代および30代の主婦層だ。

レキピオは今回調達した資金をマーケティングおよび人材採用の強化に充てる。また、同社は将来的にスーパーや地元の食品店などリアル店舗と連携する形のEコマース事業に参入する意向を示しており、そのための準備を進めていくという。これが実現すれば、冷蔵庫にある食材を選択し、選んだレシピに必要な食材で手元にないものをEコマースで調達するというようなユーザー体験が可能になるという。