メガバンク3行など参加のデジタル通貨フォーラムが「プログラムを書き込める」円建てデジタル通貨DCJPY(仮称)概要公開

メガバンク3行など参加のデジタル通貨フォーラムが「プログラムを書き込める」円建てデジタル通貨「DCJPY」(仮称)概要公開

Matteo Colombo via Getty Images

メガバンク3行やNTT・KDDIら通信企業、JR東日本、関西電力、ヤマトホールディングスなど国内74の企業および団体が参加する「デジタル通貨フォーラム」が、ブロックチェーン技術を使った日本円連動型デジタル通貨「DCJPY」(ディーシージェイピーワイ。仮称)の概要(ホワイトペーパー)を公開しました。

デジタル通貨フォーラムは「民間預金との競合といった問題を回避することができ、また、これにより民間主導のイノベーションを促し、コスト削減や効率化に貢献できる」とそのメリットを説明しています。一方でBitcoinやEthereumなどのいわゆる暗号通貨が銀行との関連を持たない独立した「暗号資産」であるのに対し、DCJPYは民間銀行が発行する「デジタルな通貨」だという点には注意が必要です。

具体的には、DCJPYは「預金(つまり銀行の債務)という形をとることで円建てでの価値を安定化し、共通領域を通じた相互運用性の確保、付加価値領域を通じたさまざまなニーズへの対応」を実現することを想定しているとのこと。共通領域とは、デジタル通貨DCJPYの発行や償却といったやりとりが行われる領域のこと。各銀行は現実の預金口座にひも付けられた共通領域口座を用意し、預金口座から処理に必要な金額を引き落として、共通領域の口座に入金します。そして共通領域内にある他の顧客の口座へと送金処理を行うことで決済処理を完了します。

一方、付加価値領域とは「決済と物流・商流等とのリンクや、モノやサービスと資金との同時受け渡しなど」といったニーズに対応するためにカスタマイズした「プログラムの書き込みを可能とする」領域と説明されます。たとえば企業が特定のサービスのために専用の送金プラットフォームを用意でき、ユーザーは付加価値領域上の口座で取り引きを行います。付加価値領域口座は共通領域の口座と対応しており、実際には付加価値領域で送金の指図が発行されると、それに同期して共通領域でDCJPYによる送金が処理される格好になるとのことです。そのため「付加領域における移転の記録は、共通領域内に存在する付加領域用口座のDCJPYの移転を行うための指図の記録」を意味することになります。

と、ここまで力を振り絞って難解な説明を読んでいただいた読者の方々には感謝しかありませんが、とりあえず、このデジタル通貨がすぐにもわれわれの日常生活での買い物などに関わってくるかといえば、そうでもなさそうです。

DCJPYはどちらかといえば企業間、銀行間の決済をよりスムーズかつ円滑化、低コスト化するためのシステムと言えます。年度内に概念実証実験を開始し、早ければ2022年度のうちにも実用化と伝えられているものの、その実証実験は、まずは電力取引などを対象に行うとされています。

ただ将来のDCJPYの利用シーンとしては、産業流通における決済から、電子マネー連携、地域通貨への活用、サプライチェーンでの活用、エンタメ領域との連携などといったアイデアが出ているとのことなので、いずれはわれわれ一般市民にも関わりが増えてくるかもしれません。

ちなみにDCJPYは民間銀行が発行するデジタル通貨ではあるものの、フォーラムのオブザーバーには金融庁、総務省、財務省、経済産業省、そして日本銀行が参加しています。

また日本銀行は2020年10月9日付の中央銀行デジタル通貨(CDBC)の取り組みに関する公表資料において「CDBC発行の計画はないが、今後のさまざまな環境変化に的確に対応できるようしっかり準備しておくことが重要」とし、その上で「一般利用型CBDCを発行する場合、中央銀行と民間部門による決済システムの二層構造(「間接型」発行形態)を維持することが適当」と述べていました。さらに「システム的な実験環境を構築しCBDCの基本機能を検証する」概念実証実験についても「2021年度の早い時期の開始を目指す」としています。メガバンク3行など参加のデジタル通貨フォーラムが「プログラムを書き込める」円建てデジタル通貨「DCJPY」(仮称)概要公開

(Source:DCJPY(仮称)ホワイトペーパーデジタル通貨フォーラムプログレスレポート。Coverage:日本銀行Engadget日本版より転載)

オープンソースの分散型台帳「Hyperledger Fabric」がリリース2.0に

Hyperledger Foundationは米国時間1月30日、オープンソースの分散型台帳技術(Distributed Ledger Technology)であるHyperledger Fabric 2.0の公開したことを発表した。初のオープンソースによる試みが2.0リリースに到達した。

これは記念すべき出来事だ。ビジネスツールとしてのブロックチェーンは過去数年苦難の道を歩んできたが、コンプライアンスの自動チェック機構を内包するスマートコントラクトには大きな期待が寄せられている。Hyperledger Fabric 2.0にはそうした点を考慮した新機能が数多く盛り込まれている。

最大の変更点は、台帳に新たなデータを追加する前に関係者全員の合意を必須とする、スマートコントラクトの分散ガバナンスと呼ばれるしくみを導入したことだ。具体的には、トランザクションに関わる全員の合意がなければ、システムが誰にも台帳に書き込みを許さないというもので、ブロックチェーンの基本的信条の一つだ。

これが必要なのは、分散型台帳の特徴は良くも悪くも記録の変更ができないことにあるためだ。ひとたび何かが台帳に書き込まれると、その取引きに関与した全員の合意がなければ変更することが極めて困難になる。台帳に何かを記録するときは間違いがないことを確実にする必要がある。

その目的で、デベロッパーは自動的にチェックするしくみをつくることができる。そうすることで、関係者は「トランザクション申請を承認する前に、別の情報を検証する」ことが可能になる、と開発者は言う。

Hyperledgerのエグゼクティブディレクターでオープンソース分散型台帳技術の熱烈な支持者であるBrian Behlendorf(ブライアン・ベーレンドルフ)氏は、これはプロジェクトにとっても分散型台帳技術の普及を担う同組織にとって大きな節目であると語った。

「Fabric 2.0は新しい世代のフレームワークであり、分散型台帳の能力を事業の中心に据えようという各企業が自分たちのために開発したものだ。この新しいリリースは、Fabricコミュニティーの開発、展開いずれの体験にも反映され、エンタープライズ向けブロックチェーンの普及期到来を告げるものだ」とBehlendorf氏が声明で語った。

それはこれからわかるだろう。ビジネス界でのブロックチェーン普及はスローペースで動いてきたが、このリリースは、オープンソースコミュニティーがエンタープライズ水準の分散型台帳技術の開発に意欲を持ち続けていることを示している。本日の発表はその新たな一歩といえる。

画像:Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook