建設現場ではたらく職人を手配するアプリ「助太刀くん」を開発する東京ロケットは8月21日、リード投資家であるジェネシア・ベンチャーズとKLab Venture Partnersから総額5000万円を調達したと発表した。
同社は調達した資金を利用して、エンジニアの採用を積極的に行い開発・運営体制の強化を図る。
助太刀くんは2017年9月にWeb版が先行リリースされる予定だ。
写真左より、COOの謝宣真氏、CEOの我妻陽一氏、CTOの金田悠一氏。
旧態依然とした建設業に注目
「2020年といえば?」と聞かれたら、東京オリンピックと答えるか、ドラマ「Doctor Who」でサイルリアンが覚醒する年だと答える人がほとんどだろう。
その東京オリンピックを控えた日本では今、建設需要が活発だ。
しかし同時によく聞くのが、建設業界の人手不足という問題。つい先日の7月14日には、建設業の「人手不足倒産」が高水準に達しているというニュースもあった。
東京ロケット代表の我妻陽一氏は、「建設業界で働く人の絶対数は足りていない。でも、今あるリソースを100%有効活用できていないのもたしか。助太刀くんは、そのためのアプリだ」と語る。
現状のリソースを100%有効活用できていないのは、この業界に古くから存在する「囲い込み」という慣習が原因だ。
我妻氏によれば、建設業界のいわゆる「元請け」は、繁忙期に必要な職人を確実に確保するために職人を囲い込み、他の元請けからの仕事の情報が職人に届きにくいような構造ができてしまっている。
これは、職人が契約上そのように縛られているということではない。職人は社員ではないが、社員集会のようなものを開いて「仲間意識」を高めるというような方法で囲い込みが行なわれているそうだ。
そんななか、職人が幅広い案件の情報にリーチできるようにすることを目的に生まれたのが助太刀くんだ。
2つの情報入力で簡単登録、案件がプッシュ通知で届く
助太刀くんの機能は大きく分けて2つある。建設現場の監督が職人を募集する機能と、職人が募集中の案件に応募する機能だ。
職人がアプリをダウンロードして自分の「職種」と「居住地」を入力するだけで、仕事の案件がプッシュ通知で届く仕組みだ。
また、助太刀くんには現場監督と職人がおたがいを評価するシステムや、請求書代行サービスなどの機能も備えている。
「建設業界では、基幹システムや現場管理のICT化は進んでいるが、最大のリソースである『人』に関わるシステムは昔から変わっていない。人や仕事を探すのは仲間からの紹介が頼りで、仕事の依頼は電話で連絡するのが通常だ」(我妻氏)
東京ロケット提供資料より
でも、そもそも高齢化が進む建設業界でスマホアプリなんかウケるのかと疑問に思うTechCrunch Japan読者もいることだろう。
それについて我妻氏は、「メインターゲットとなる20代から40代の職人は、建設業従事者全体の約55%ほどを占める。その年代のスマホ普及率は高い。また、最近では50代のスマホ普及率も約49%ほどにまで上がっている」と答えた。
また、アプリの離脱率を限りなく減らすために、「居住地」と「職種」の2つの情報を入力するだけで登録が完了するようにしたのだそう。
助太刀くんのマネタイズ方法は3つ。仕事の発注に対する課金、広告収入、そしてペイメントだ。
「当初は助太刀くんが請求書を送付し、発注者が職人に直接支払うというかたちだが、将来的にはエスクローやファクタリング機能を取り入れて、そこでもマネタイズしていく」と我妻氏は説明する。
我妻氏は東京ロケットを創業する以前、大手電気工事会社で現場監督として働いたあと、電気工事会社を11年経営した経験をもつ。
これは僕も取材して分かったことなのだけれど、建設業界は古くからの慣習や“しきたり”に溢れていて、複雑だ。その点、この業界に長年関わってきた我妻氏の知見は、東京ロケットがもつ強みの1つになるだろう。
日本の建設業は生産額が29.4兆円、就業者数が500万人の巨大マーケット。そして、このマーケットに狙いを定めたスタートアップも近年増えてきている。これまでにTechCrunch Japanで紹介したものだけでも、写真管理アプリの「Photoruction」、チャットアプリの「stacc」、施工管理アプリの「ANDPAD」などがある。