中国のスマート電気自動車メーカーであるXPeng(小鵬汽車、シャオペン)は、未来のモビリティエコシステムの構築を見据えた一連のイノベーションを発表した。
XPengの会長でCEOのHe Xiaopeng(小鵬何、シャオペン・フー)氏は、中国時間10月24日(日曜日)に北京で開催された2021 Tech Dayにおいて「より効率的で安全、かつカーボンニュートラルなモビリティソリューションの探求は、スマートEVをはるかに越えて、当社の長期的な競争優位性の礎となります」と述べた。「お客さまのために、最先端のモビリティ技術を量産モデルに搭載することを目指しています」。
シャオペン氏は、同社の先進運転支援システム(ADAS)の最新バージョン 、スーパーチャージャー・ネットワーク 、HT Aero(HTエアロ)との共同開発による次世代飛行自動車、そして 子ども用ロボットポニーについて詳しく説明した。
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街乗り用にデザインされるXpilot 3.5
XPengは、2022年前半に一部の都市で次世代ADASをドライバーに提供する予定だ。Xpilot 3.5は「シティ・ナビゲーション・ガイデッド・パイロット(NGP)」を搭載するが、XpengのP5ファミリーセダンのみで利用できる予定だ。P5ファミリーセダンには、都市レベルのNGPには必須の、LiDAR(ライダー)、ミリ波レーダー、複数のターゲットを認識・分類・位置付けできる3D視覚認識ネットワークが搭載される。
これに対して、XpengのP7セダンのドライバーに提供されたXpilotの現行バージョンである3.0は、高速道路レベルのNGPに対応し、Xpengは距離にして約1200万キロメートル分のデータを収集している。
Xpilot 3.5には、高度な予測機能を備えた戦略的プランニングモジュールが搭載され、ルール駆動型とデータ駆動型のAIを組み合わせて、静止物や路上の弱者の回避、任意の速度での車線変更などの、都市型シナリオに対応できるという。
XPengの完全自動運転へのアプローチは、Tesla(テスラ)と同様にレベル2の自動運転(ADASシステム)を経て、レベル5に到達することを目指している(SAE International[米国自動車技術者協会]は、レベル2の自動運転を、アダプティブ・クルーズ・コントロールやブレーキ・サポートなどのサポート機能を中心としたものとしている。そしてレベル5の自動運転とは、あらゆる状況下でどこでも運転ができるシステムと説明されている)。テスラは2021年9月、顧客がFSDベータ(Full Self-Driving Beta)ソフトウェアの利用を要求できるソフトウェアアップデートをリリースした。FSDには、自動車線変更、駐車場への進入・退出、オートステアリングなどの機能が含まれているものの、現在のところ街中ではまだ利用できない。テスラは、この機能をいつ都市で使えるようにするかについては明らかにしていない。同機能は視覚とニューラルネットワーク処理のみを利用する。
XPengの自動運転担当副社長であるXinzhou Wu(吳新宙、ウー・シンジョウ)氏は、イベントの中で「人間と機械の共同運転機能は、当面の間、重要なものであり続けるでしょう」と述べた。「私たちの 使命は、高度な運転支援から完全な自動運転へと段階的に移行することであり、まずすべての運転シナリオを完全に洗い出すという明確なロードマップを持っています。クローズドループでのデータ操作、ソフトウェアの反復開発、量産性など、すべてを自社で開発していることで、私たちは安全性を大幅に向上し、業界のロングテール問題を解決するための最先端を走ることができているのです」。
テスラがFSDソフトウェアを有料化したように、XPengもXpilotを有料化した。XPengはバージョン3.5の価格を明らかにしなかったが、XPengの広報担当者は、バージョン3.0は現在2万人民元(約35万5400円)で買い切るか、または年間サブスクリプションで支払うことができるとTechCrunchに語った。
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Xpilot 4.0でフルシナリオのポイントツーポイントADASを実現
XPengが2023年前半に展開を予定しているXpilot 4.0は、完全な自律性を目指すレースでの優位をもたらすことになるだろう。この計画でXPengは、クルマを起動してから駐車するまで、ならびにその間のすべての場面のフルシナリオの、アシスト付きスマートドライビング体験を提供する最初の企業となることを目指していいる。
このバージョンのXpilotは多大な計算能力を必要とするため、XPengはバージョン4.0のためのハードウェア・アップグレードを開発している。同社はその声明の中で「508 TOPS ECUの計算能力を、2つのOrin-X自動運転システム・オン・ザ・チップ(SOC)ユニットでサポートしています。800万画素のフロントビュー双眼カメラと290万画素のサイドビューカメラ(これらで前後左右をカバー)、そして高度に統合された拡張可能なドメインコントローラーを搭載しています」と述べている。
XPengは、Xpilot 4.0の市場投入準備を行う中で来年末までに、高速道路でのNGP走行距離7500万マイル分、市街地でのNGP走行距離2200万マイル分のデータ収集、さらに自動駐車機能であるValet Parking Assist(VPA)の普及率90%を目指している。
XPengはまた、これらのADASを量産する際の安全性の重要性を強調し、スマートドライビングはその1つの側面に過ぎないとした。スタートアップは、ユーザーインターフェイスとオペレーティングシステムのアップグレードを発表した。Xmart OS 4.0は、車の周囲の環境を3Dで表現し、詳細な表示を行うことを約束した。XPengは、ドライバーがよりスムーズに運転できるように、独自の音声アシスタントのバージョン2.0も提供しようとしている。
最後に、テスラがFSDベータ版ソフトウェアをテストしたいドライバーのために安全性スコアを公開すると同時に、新しい保険のために大量のデータを取得したように、XPengはXpilotを起動する前にドライバーがXpilotの限界を理解できるようにするための安全性テストを公開している。ドライバーにはスマートドライビングスコアが表示されるが、XPengはその正確な提供時期を明らかにしていない。
5分で最大200kmの走行が可能になるスーパーチャージャー
もしXPengが未来のスマートモビリティーのエコシステムを作りたいのであれば、そのための電力が必要だ。XPengは、すでに中国全土で1648カ所の無料充電ステーションと439カ所のブランド充電ステーションを展開しているが、今回のTech Dayでは、800Vの高電圧を持つシリコンカーバイド製の量産型充電プラットフォームをベースにした次世代の「X-Power」スーパーチャージャーを生産する計画を明らかにした。
X-Powerチャージャーは、わずか5分でEVが200kmまで走行できるだけの電力を供給することができ、1台のスーパーチャージャーで平均30台の車両を同時に充電することができるとXPengはいう。またXPengは、軽量の480kWの高電圧スーパーチャージャーバッテリーを導入する予定だ。このバッテリーは車両と一緒に納品されるためオーナーは初回の充電にそれを使うことができる。このスーパーチャージングネットワークをサポートするために、XPengは電池と移動式車両の形の充電設備を立ち上げるという。
XPengは、この新しい充電技術がいつ市場に出るかについては明言していない。
地上走行もできるフライングカー
XPengはこのイベントで、世界トップの、低高度有人フライングカーメーカーになるという新たな目標を明らかにした。そして、第6世代のフライングカーの計画を発表した。しかし、これはただのフライングカーではない。路上も走行できるようになるのだ。
イベント中に上映されたビデオでは、Xpeng P7よりもさらにセクシーなクルマが、折り畳み式のローター機構によって普通の車からフライングカーに変身するという映像が示されていた。XPengによれば、この低高度フライングカーの重量はP7の50%になり、道路走行用のステアリングホイールと飛行モード用のシングルレバーを備えているという。
また、この新型フライングカーには、周囲の環境や天候を十分に評価し、離陸前に安全性の評価を行うことができる高度な環境認識システムが搭載されるという。システムは収集したデータを運行目的に照らし合わせて評価し、安全な離着陸を確保し、飛行中は高度な知覚と飛行制御アルゴリズムを用いて障害物を回避する。
XPengの関連会社であるアーバンエアモビリティ(UAM、都市型飛行移動)企業のHT Aeroが開発しているこの新しい装置は、早ければ2024年には量産が開始される予定だ。最終的なデザインは来年中に決定される予定だが、シャオペン氏によれば100万人民元(約1780万円)以下のコストを目指しているという。
先週XPengは、HT Aeroの5億ドル(約567億8000万円)のシリーズA資金調達を主導した。HT AeroはXPengのために他のUAM機も製造しており、直近ではXPengの第5世代のフライングカーである2人乗りのXPeng X2を製造している。XPengの広報担当者がTechCrunchに語ったところによれば、第6世代のフライングカーはX2同様の、たとえばオフィスから空港への移動などの、飛行時間が30分以内の都市部での利用が想定されているという。XPengの狙いは消費者に直接販売することで、低高度飛行規制がどのように変化して、そのかなり早い市場投入戦略に対応するのかが注目される。同社は、2024年までに民間用のフライングカーを量産するために、規制当局とどのように協力していくかについては、詳しく述べていない。
ロボットポニーに乗ってスマートモビリティへの道へ
XPengは2021年9月、子どもが乗って遊ぶことのできるポニー(子馬)型ロボットを発表した。人間の感情を察知することができる明敏な四足動物となることが理想だ。XPengはTech Dayにおいて、このポニーのようなスマートロボットが、自動車よりもはるかに複雑な自律性の課題に対応できる、統合スマートモビリティシステムのインテリジェントなプラットフォームになると考えていることを詳しく説明した。
そして、それは子どもだけのものではない。XPengはプレゼンテーションの中で、このかわいいポニーのロボットが、オフィスでスナックやその他の小包を配達するのに使えることを示すビデオを上映した(そして同じビデオの中で、XPengは同じ仮想オフィスの中をうろうろしている別のロボットをからかい気味に描いていた。それはXiaomの不気味なロボット犬にどことなく似ていた)。
このロボットは、多様な環境と複数のターゲットを認識するように訓練され、3Dでルートプランニングを行い、顔、体、声紋によってユーザーを認識することができるようになるとXPengはいう。また、動的音響マッピング、バイオニック聴覚、バイオニック嗅覚、さらには足裏や指紋によるタッチや皮膚のセンシングによるバイオニック触覚体験などの技術を実験している、XPengのロボットは、360度カメラモジュールとLiDARセンシングシステムに加えて、物体認識と音場認識技術を備えており、やり取りする環境の最も正確なモデルを得ることができる。
XPengの広報担当者がTechCrunchに語ったところによると、このロボットポニーの市場投入までのスケジュールはまだ決まっていないものの、開発段階のプロトタイプはあるという。
声明の中で同社は「より高度なターゲット認識と環境との正確なインタラクション、より複雑な地形での移動を可能にする3Dルートプランニング、そして強化されたバイオニックな感覚を利用することで、XPengはスマートモビリティの未来のために、より広いモビリティ、より高度な自律的プランニング、そしてより強力なマンマシンインタラクションをサポートする、より大きなアプリケーションシナリオを実現します」という。
画像クレジット:Xpeng
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(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)