Mapboxとソフトバンクの合弁で日本のデベロッパーにマッピングのAPIやデータサービスを提供

SoftBank Corp.(ソフトバンク株式会社)と、GoogleやHereと競合する地図データの企業Mapboxが、合弁事業Mapbox Japanを立ち上げたと発表した。

このジョイントベンチャーは、MapboxのAPIやデータサービスを日本のデベロッパーに提供していく。6月1日から9月30日までMapboxは、感染者の分布や統計データなどCOVID-19関連の地図サービスを、感染の拡大を抑えるためにウイルスのクラスターの追跡に依存しているこの国のデベロッパーのために構築している企業や団体に、最大3か月の無料サポートを提供する。

Mapboxはデータを、政府や商用のデータベースなどのソースから集め、それらをカスタマイズ可能なAIベースのAPIやSDKなどのプロダクトに使用する。クライアントにはFacebookやSnap、The New York Times、連邦通信委員会(FCC)、そしてRoverやRimacなどの自動車企業もいる。

2010にEric Gunderson氏が創業したMapboxは現在、同社によると毎月のユーザーが6億を超えている。SoftBankのVision Fundは2017年に、Mapboxの1億6400万ドルのシリーズCをリードした。当時Gunderson氏はTechCrunchに、その資金の一部を利用してアジアに進出する、東南アジアや中国も含め当地域におけるSoftBankのプレゼンスに乗っかる形になる、と語った。

Mapboxは日本で、2019年の7月に営業を開始したが、それは、Yahoo! Japanと日本最大の地図ソフトウェア企業Zenrin(株式会社ゼンリン)とのパートナーシップによるものだった。ZenrinはGoogleともパートナーしているが、昨年の初めからGoogleはZenrinの地図データの使用量を減らし始め、日本では自前の地図データを構築していくつもりのようだ。

Zenrinとの密接な関係はMapbox in Japanに新たな商機を提供するだろう。昨年Gunderson氏はNikkei Asian Reviewに対し、「われわれは日本全体で第一位のマッピングデータプロバイダーになる。それは、Zenrinとのパートナーシップにより日本全体の最良のデータを得られるからだ」、と語っている。同社には、産業の自動化のためのマッピングサービスなど、日本市場向けのプロダクトを開発する計画もある。

SoftBank Corp.の事業開発のトップEric Gan氏は、声明でこう述べている: 「Mapboxの技術を日本に導入して企業の既存のマッピングサービスを高度化し、新たなカスタマイズ可能な位置ベースのサービスや経営のツールを創造して行けることは、きわめて喜ばしい。すでにMapboxのプロダクトには、リテールやライドシェア、ホテル、共有オフィス、決済、モビリティ、製造業などからの需要が大きく増え始めている」。

画像クレジット: Mapbox

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

きっかけは漁師である祖父の死、ITで海難事故から大事な家族を守るnanoFreaksが資金調達

IoTデバイスなどを活用して海難事故から漁師を守る「Yobimori」を開発中のnanoFreaksは12月10日、複数の投資家より資金調達を実施したことを明らかにした。具体的な金額は非公開だが関係者の話によると数千万円規模の調達とみられる。

今回nanoFreaksに出資した主な投資家は以下の通り。同社では調達した資金を活用してプロダクトの開発を進め、まずは2020年内を目処にベータ版ローンチを目指していく。

  • Sapporo Founders Fund
  • D2 Garage
  • Yosemite LLC
  • 岩佐琢磨氏(Cerevo創業者 / 現Shiftall代表取締役CEO)
  • 松岡 剛志氏(元ミクシィ取締役CTO / 現レクター代表取締役)

nanoFreaksが解決しようとしているのは、漁師が海中へ転落してしまった際の救助に関する課題だ。漁師はその性質上、常に海難事故の危険と隣り合わせであり、実際に海上での事故による死亡者が後を絶たない。特に沿岸漁業の漁師には危険が伴い、漁船からの海中転落者死亡率は60%を超えるという。

背景にあるのは事故認知の難しさだ。沿岸漁業の漁師は一人で漁を行うことが多く、いざ事故に遭ってしまった際に当事者からSOSを発信する手段も乏しい。その結果周囲がすばやく事故に気づくことが困難で、約40%が事故認知までに2時間以上も要しているのが現状なのだそう。

nanoFreaks代表取締役の千葉佳祐氏の話では、実際に関係者へのヒアリングを重ねると認知までに数時間かかるのは珍しいことではなく、時間がかかると12時間経過してしまうケースもあるという。

これは事故開始から転落した漁師を発見するまでに要した時間ではなく、あくまで事故に気づいて救助がスタートするまでの時間だ。要は「事故が起きてしまっても救助がすぐに始まらない」のが課題であり、千葉氏らは開発中のYobimoriを通じて救助開始までにかかる時間を「数分」に短縮しようとチャレンジしている。

Yobimoriはすぐに救助が呼べるおまもり型のIoTデバイスと、救助を効率化するアプリによって構成されるサービスだ。漁師が海に転落した際にIoTデバイスを起動すると、アプリをインストールしている関係者に通知が届く仕組みになっている。

漁師は出港する際にIoTデバイスを体に装着。デバイスは緊急時でも簡単に起動できる設計になっていて、起動後は即座に近くの船や家族、海上保安庁などへSOS信号が送信され事故当事者の位置情報が共有される。さらにアプリを通じて救助従事者に事故当事者の漂流予測や救助状況などを可視化した情報を提供されることで、救助活動をサポートする機能も計画しているという。

「緊急時にすぐ助けを呼べる手段が普及していないので、これまでは帰りが遅いことを家族が心配して初めて事故に気づくようなことも多かった。また事故時のデータも正確なものが取得しづらく、遅れて通報があっても救助従事者がいつ、どこで事故が起きたのかを把握するのが難しい。Yobimoriにはそういった課題を解決できる機能を取り入れていく」(千葉氏)

ビジネスモデルとしてはデバイスの販売費で売上を作るのではなく、アプリをセットにして毎月、固定の利用料を得る構造。現時点では漁業協同組合に一括で導入してもらい、人数に応じて具体的な料金が決まる仕組みを考えているそうだ。

開発中のYobimoriのプロトタイプ

きっかけは漁師である祖父の死

nanoFreaksは2019年8月に設立した福岡発のスタートアップ。代表の千葉氏は現在九州大学の大学院を休学してプロダクト開発に取り組んでいる。

大学院で九大に進学したが、漁業が盛んな北海道紋別市の出身。実は千葉氏には漁師だった祖父を海難事故で亡くした経験がある。事故自体は自身が生まれる前の出来事だったそうだが、その事実を家族から聞いたり、事故後に祖母や母が生活に苦労したこともあって、海難事故の救助を効率化する事業を立ち上げた。

nanoFreaks CTOの成田浩規氏(写真左)、代表取締役の千葉佳祐氏(写真右)

ビジネスとして見た場合にどれくらいのマーケット規模があるかはさておき、命に関わる重要な課題であることは明らかであり、海難事故に対する何かしらの解決策がすでに出てきていてもおかしくないが、千葉氏の話では今のところこれといって普及しているものはないそうだ。

「個人的には業界の文化的な側面も関係しているのではないかと思う。もともと漁師は危険を伴う職業で、何かあったら死んでしまってもおかしくないと考えられている。IT化が進んでいない領域ということもあり、この現状をどうにかしようと具体的に動き出せる人があまりいなかったのではないか」(千葉氏)

当然ながらYobimoriはプロダクト完成後、実際に漁師に日々装着してもらって初めてその効果が出るものだ。使いやすい設計にすることはもちろん、普及させていくためには導入時のハードルを超えるものにしなければならない。千葉氏はそのためのポイントとして「家族など周りの人を巻き込んだサービス設計にすること」を挙げる。

「漁師本人もそうだが、実はそれと同じくらい家族や周囲の人の課題感も強い。いつ死んでしまってもおかしくない場所に毎日送り出すわけで、心配や不安もある。(漁師だけでなく)周囲の人の不安も解消できるサービスを目指したい。ゆくゆくは家族の人からプレゼントされるような存在になれるのが理想だ」(千葉氏)

現在はYobimoriの課題感や構想に対して共感してくれる組合も出てきているそうで、まずはその人たちにヒアリングをしつつ課題解決に繋がるプロダクトを作っていく方針。エリアを絞ってベータ版をリリースした後、ユーザーの動向なども見ながらアップデートを加えた全国版を提供する予定だという。

実際に漁師の方にプロトタイプを試してもらっている様子

スマホで手軽にできるAR対戦アプリ「ペチャバト」はガチで身体を動かすシューティングゲーム

AR技術を使ったゲーム、といえば「ポケモンGO」を思い浮かべる人が多いだろうか。最近さまざまなARゲームが登場しているが、今日登場したのは身体を「ガチで」動かすゲーム。12月12日に正式リリースされた「ペチャバト」(iOS版)は、スマホで手軽にできるAR対戦シューティングアプリだ。

ペチャバトは、4人まで参加できる対戦型。スマートフォンを使って、雪合戦やドッジボールのように、タップして「弾」を投げ合い、相手のスマホの位置に表示される「的」に弾が当たってインクがはじけたら得点になる。必殺技を当てることができれば、より多く得点できる。

攻撃を当てながら相手の攻撃を避け、相手のHPを削りきるか、制限時間終了時によりHPが残っていたユーザーが勝利となる。

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ペチャバトを開発したのは、2017年8月創業のGraffity。空間を複数人のスマホで共有して“見る”ことができる、独自のAR技術が実装されていることが、ゲームのカギとなっている。

冒頭にも挙げたポケモンGOは、スマホで手軽に遊べる点はペチャバトと同じ。ただ、今年中に予定されている対戦モードの実装は、もうちょっとだけ待たなければならないようだ。

また先日、プロリーグ立ち上げが発表された対戦型ARスポーツ「HADO」では、リアルタイムに試合が楽しめるが、ヘッドマウントディスプレイとアームセンサーを装着してプレイするスタイルは「スマホで手軽に」というのとは、ちょっと違う。

Graffity代表取締役の森本俊亨氏は「スマホ同士でAR空間を、1秒以内という瞬時で共有できる体験を提供するのは、世界中でも初めてのことではないか」と話している。そして、ポケモンGOの対戦対応も相まって「AR共有の形が変わり、これから多くのアプリが出るのでは」と推測する。

「AR空間共有の一つの事例として、雪合戦や鬼ごっこのようなオフラインにデジタル化を持ち込んだ、世界初の事例がペチャバト。とてもイノベーティブなプロダクトだと考えている」(森本氏)

12月初めごろから一部ユーザーにテスト公開されてきたペチャバトは、ユーザー同士の招待により広まり、1週間で1万バトルの対戦が繰り広げられたという。ユーザーは、男子高校生・大学生を中心に想定しているそうだ。

利益化については「順調に推移したところで、ソーシャルゲームとしての課金と広告によるマネタイズを検討している」とのこと。広告については「当初は動画広告を想定しているが、AR独自の価値を使ったものも開発していきたい」と森本氏は話している。またAndroid版についても、iOS版での検証後に開発を予定。来年中には海外への展開も考えているという。

すべての現実空間を3次元データ化するARCloud構想

Graffityでは、これまでにも空間上に落書きを保存してほかのユーザーと共有できる「Graffity」を2017年11月にリリース。AR体験を共有できるビデオチャットアプリなども打ち出し、グローバルでの検証を行ってきた。

森本氏は「ARで人と人とのつながりにイノベーションを起こしたい」と話す。これまでコンシューマー向けのARプロダクトにフォーカスして開発してきているが、森本氏はそのこだわりについて「B2CのARは大きな領域。2019年、2020年に向けて本格的に立ち上がる分野だと考えている。その大きなところを取りに行きたい」と述べている。

Graffityはペチャバト正式リリースと同時に、総額8000万円の資金調達を実施したことも明らかにしている。第三者割当増資の引受先は國光宏尚氏、佐藤裕介氏、古川健介氏、中川綾太郎氏、伊藤将雄氏、大冨智弘氏、ほかエンジェル投資家2名とベンチャーキャピタル1社(企業名は現段階では非公開)。GraffityにとってはプレシリーズA調達に当たる。

調達資金は「人材獲得とマーケティングに投資する。またもちろん、プロダクトを育てることにも使っていく」と森本氏は話す。さらに「すべての現実空間を3次元データとしてクラウドに保存する」という「ARCloudプラットフォーム」構想についても説明。そこにも投資していく、と語っている。

これは実に壮大な構想で、2次元でそれを実現してGoogle マップに落とし込んだ、Googleがやっていそうな計画だ。森本氏は、ARCloudプラットフォームの実現には「データ、それもリアルタイムでのデータ取得が大事になる」という。

「Googleは屋外データは着々と取得していると思うが、我々は屋内・室内の3次元データをゲーミフィケーションで取っていこうと考えている。それがGraffityの中長期的なビジョンだ」(森本氏)

またB2Cプロダクトへのこだわりを見せた森本氏だが、「B2Bについてもいろいろと技術提供を始める準備をしている」とのこと。「これから他社とのコラボレーションで研究開発を本格化させる」と述べていた。