地上のRF信号を衛星で受信して地球を分析するHawkEye 360

Solafuneと日本マイクロソフトが衛星画像データを超解像度化する技術コンテスト実施、英語版リリースしグローバル展開も開始

地球観測業界の大手企業各社は、画像処理衛星を使って情報や分析を提供しているが、スタートアップ企業のHawkEye 360(ホークアイ360)はそれとは異なる方針を採っている。目に見えない電磁スペクトルは、目に見える世界と同じように情報に満ちているという前提のもと、同社は船舶用無線機や緊急用ビーコンが発するような無線周波数(RF)信号を監視・分析している。

投資家もこれに同意する。HawkEyeのシリーズDラウンドでは、1億4500万ドル(約164億円)もの新たな資金が集まった。このラウンドは、Insight Partners(インサイト・パートナーズ)とSeraphim Space Investment Trust(セラフィム・スペース・インベストメント・トラスト)が主導し、アラブ首長国連邦を拠点とするStrategic Development Fund(ストラテジック・デベロップメント・ファンド)が追加資金を提供。また、新規の投資家としてJacobs(ジェイコブズ)、Gula Tech Adventures(グラ・テック・アドベンチャーズ)、116 Street Ventures(116ストリート・ベンチャーズ)、New North Ventures(ニュー・ノース・ベンチャーズ)が加わった他、既存投資家のAdvance(アドバンス)、Razor’s Edge(レーザーズ・エッジ)、NightDragon(ナイトドラゴン)、SVB Capital(SVBキャピタル)、Shield Capital(シールド・キャピタル)、Adage Capital(アデッジ。キャピタル)も参加した。

2015年の設立以来、HawkEyeはすでにパートナーとの大きなネットワークを築き、9機の衛星を軌道上に打ち上げてきた。同社のコンステレーションの特徴は、衛星が3機1組のクラスターに分かれて飛んでいることで、これはJohn Serafini(ジョン・セラフィーニ)CEOによると、RF信号の地理的な位置情報を取得するためのアーキテクチャだという。現在はさらに7つのクラスター(計21機)の衛星を開発中で、2023年中頃までに軌道に乗せることを目指している。

画像クレジット:HawkEye 360

地理空間情報産業の多くは、衛星を所有してデータを収集する企業と、そのデータを購入して情報に変換する企業に二分されていると、セラフィーニ氏は説明する。しかし、HawkEyeは当初から完全な垂直統合型の企業として自らを位置づけており、自社で装置を構築し、衛星を運用し、データを処理して独自の分析を行い、その情報をSoftware-as-a-Service(サービスとしてのソフトウェア)モデルとして顧客に販売している。

また、HawkEyeは政府機関のアプリケーションに特に力を入れており、米国政府や国際的な防衛・情報機関を顧客としている。

「私たちは、防衛、セキュリティ、インテリジェンス、および一部の民間アプリケーションに適している商用RFの価値提案を、非常に明確にしたいと考えました。そして、政府関係の顧客を成功に導くために、当社のDNAを独自に構築したかったのです」と、セラフィーニ氏は語る。「私が言いたいのは、米国政府を相手にセールスするなら、片手間では無理だということです。全力で取り組まなければなりません」。

HawkEyeは、衛星メーカーであるトロントのUTIAS Space Flight Laboratory(トロント大学航空宇宙研究所スペース・フライト・ラボラトリー)と協力して、衛星に自社の装置を搭載している。直近では、6月末に3機の衛星をSpaceX(スペースX)のFalcon 9(ファルコン9)相乗りミッションで打ち上げ、Space Flight(スペースフライト)の軌道輸送機「Sherpa-FX(シェルパFX)」を使って軌道に到達させた。

2021年に入ってから、HawkEyeは合計5000万ドル(約56億4000万円)分の契約を獲得している。将来的には、今回調達した資金を利用して、計画中のコンステレーションの規模を10クラスタから20クラスタに倍増させ、地球上のほぼすべての場所を約12分で再訪できるようにしたいと、セラフィーニ氏は述べている。さらにHawkEyeは、コンステレーションの規模をより早く拡大するために、Space Flight Labとの提携と並行して、衛星の組み立てに乗り出すことも計画している。

画像クレジット:HawkEye 360

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

気球を使って地理空間インテリジェンスのデータを取得するNear Space Labs

打ち上げコスト低減などの技術革新から、地理空間インテリジェンスのルネッサンスが起こり、複数のスタートアップ企業が、これまでよりも高品質で頻繁な地球の画像の撮影を目指している。

これらのスタートアップ企業の多くは、衛星を使ってデータを収集することに注力しているが、創業4年目のNear Space Labs(ニア・スペース・ラブズ)は、気象観測用の気球に取り付けられた風力発電で駆動する自動制御の小型ロボットを使って、成層圏から地理空間インテリジェンスを収集することを目指している。「Swifty(スウィフティ)」と名付けられた同社のプラットフォームは、1回のフライトで高度6万〜8万5千フィート(18.3〜25.9キロメートル)に達し、400〜1000平方キロメートルの画像を撮影することができる。

この会社は2017年に、Rema Matevosyan(レマ・マテヴォシャン)氏、Ignasi Lluch(イグナシ・ルッチ)氏、Albert Caubet(アルバート・クベ)氏によって設立された。マテヴォシャン氏は応用数学者としての教育を受け、以前はプログラマーとして働いていたが、モスクワで修士号を取得。そこで彼女は航空宇宙システムにおけるシステムエンジニアリングの研究を開始し、航空宇宙機器のテストのために気象観測用の気球を飛ばした。そして「気球を商業的に飛ばすことによって、他のどんな方法よりもはるかに優れた体験を顧客に提供できるのではないかとひらめきました」と、彼女はTechCrunchによる最近のインタビューで語っている。

創設から4年が経過したNear Space Labsは、シリーズAの資金調達を1300万ドル(約14億2500万円)で完了した。このラウンドはCrosslink Capital(クロスリンク・キャピタル)が主導し、Toyota Ventures(トヨタ・ベンチャーズ)の他、既存投資家のLeadout Capital(リードアウト・キャピタル)とWireframe Ventures(ワイヤーフレーム・ベンチャーズ)も参加した。また、Near Space LabsはCrosslinkのパートナーであるPhil Boyer(フィル・ボワイエ)氏を同社の取締役に迎えたことも発表した。

ブルックリンとスペインのバルセロナに本社を置くNear Spaceは、主に変化の激しい都市部に焦点を合わせている。気球に取り付けるロボット式装置は、ブルックリンにある同社の工房で製造され、全国の発射場に送られる。同社のCTO(最高技術責任者)とチーフエンジニアがバルセロナを拠点としているため、ハードウェアの研究開発はバルセロナで行っていると、マテヴォシャン氏は説明する。

同社は現在、8基のSwiftyを運用しており、収集したデータを販売すると同時に、APIを開発して、顧客がサブスクリプション方式でデータにアクセスできるようにもしている。マテヴォシャン氏によると、Swiftyは「いつでもどこでも」発射できるため、特定の発射場所を確保する必要はないが、同社は米連邦航空局や航空管制と連携しているという。

マテヴォシャン氏によると、人工衛星と比較したSwiftyの主な価値提案は、解像度の高さであるという。同社は成層圏から「衛星から得られるものの50倍以上の解像度」を取得することができるため「大都市圏を含め、変化の激しい関心のある地域を、継続的かつほぼリアルタイムでカバーすることができます」と、同氏はいう。それに加え、すでに軌道上にある衛星に新たなセンサーを追加することは容易ではないが、Near SpaceのSwiftyは、いわゆる「プラグ&プレイ」方式を採用しているため、技術の更新を迅速に行うことができるという。

Near Space Labsの創立者たち。左からイグナシ・ルッチ氏、レマ・マテヴォシャン氏、アルバート・クベ氏(画像クレジット:Near Space Labs

Near Spaceは、2022年までに540回を超えるフライトの予約を受けている。顧客はフライト料を支払うが、各フライトから生成されるデータは非独占的なものなので、データを何度でも販売することができる。今回調達した資金を使って、同社は今後、事業展開の地理的な範囲を拡大するとともに、新たに多くの従業員を雇用する予定だ。マテヴォシャン氏によると、同社の目標は、地理空間インテリジェンスへのアクセスを民主化することだという。それは顧客だけでなく、開発者側に向けても、という意味だ。「私たちの信念は、航空宇宙と地球画像観測の分野において、多様で、平等で、開かれた機会が得られるようにすることです」と、同氏は語っている。

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画像クレジット:Near Space Labs

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Solafuneと日本マイクロソフトが衛星画像データを超解像度化する技術コンテスト実施、英語版公開しグローバル展開も開始

Solafuneと日本マイクロソフトが衛星画像データを超解像度化する技術コンテスト実施、英語版リリースしグローバル展開も開始

衛星データ解析コンテストプラットフォームを運営するSolafune(ソラフネ)は9月14日、日本マイクロソフトと共同で衛星データの実用化に向けた「超解像技術」を開発するデータ解析コンテストの開催を発表した。

これは、「市街地の高解像度画像を活用した超解像度画像の生成」を競うもの。衛星などから撮影された地理空間データは解像度が低いために実用化が遅れている。また、高解像度の衛星写真は高額で、なかなか利用が難しい。そこで、Solafuneと日本マイクロソフトは今回のコンテストを実施して超解像技術を募り、そうした課題に取り組むという。

参加者は、Solafuneから提供される1m程度の評価用データを25cm解像度の超解像度画像に向上させ、所定のサイトから投稿する。すると画像評価指標SSIMによって評価され、スコアが比較される。コンテスト開催中は、その暫定スコアがリーダーボードで公開される。上位入賞者は、後に超解像度化に使われたソースコードを提出することになっている(実装の環境や言語に制限はない)。

解像度化の例。左が解像度1m、右が25cm

このコンテストを通して、「衛星データや航空写真などの地理空間データの社会実装が加速することを期待しています」とSolafuneは話している。

コンテスト概要

  • 開催期間:2021年9月14日午前9時〜12月23日午前9時(日本時間)
  • データの提出期限:2021年12月23日午前8時59分(日本時間)
  • 賞金:1位は3000米ドル(約33万円。総額は5000米ドル以上)と日本マイクロソフトからの特典
  • 開催場所および詳細https://solafune.com/competitions/3c7a473f-61f4-472f-a812-92eb07cc4541
  • ハッシュタグ:#MScup

Solafuneは、2020年10月のサービスリリース以降、衛星データや地理空間データの活用をテーマにしたデータ解析コンテストの運営を通して、アルゴリズムライセンス事業を展開。2021年8月には日本マイクロソフトと衛星データのビジネス利用の促進を目的とした協業を発表した。また同社は、今回のコンテスト開催に合わせて英語版をリリース。早期のグローバル展開を見据え、世界中のエンジニアが利用する体制を整えるとしている。

元Uberチームの地理空間スタートアップUnfolded.aiをシード後すかさずFoursquareが買収

いやはや、これは早かった。

シードラウンドを調達してからわずか数カ月後のUnfolded.aiは米国時間5月20日、Foursquare(フォースクエア)に買収されることを発表した。買収の条件は明らかにされていない。このスタートアップは前回TechCrunchが確認したときには、合計で約600万ドル(約6億5000万円)を調達していた。

元Uberの地理空間エンジニアたちによって設立されたUnfolded.aiは、地理空間データセットを取得して視覚化できるウェブアプリケーション「Kepler.gl」や、地理空間データセットを処理して可視化する準備をするための拡張可能なアプリケーションフレームワークを提供する「Deck.gl」などを含む、同社の創業者たちが作成した人気のオープンソースライブラリの上に製品を構築していた。

2021年初めの記事で書いたように、

このスタートアップの主要製品は「Unfolded Studio」と呼ばれるもので、データ管理やサーバー通信などのコンポーネントを扱うKepler.gl(それ自体はフロントエンドライブラリに過ぎない)の上に構築されたアプリケーションのBaaSとして機能する。具体的には、異なる地理空間データセットを1つにまとめ、それらすべてが1つの統一されたビューで相互作用できるように設計されている。

今回のFoursquareによる買収は、Unfoldedの地理空間技術をFoursquare Everywhereに導入することを目的としている。Foursquare Everywhereは、あらゆる種類の顧客にスケーラブルな位置情報サービスを提供することを目的とした、Foursquareの新しいブランド・製品だ。

Foursquareは近年、位置情報に特化した広告・マーケティングプラットフォームへと大きく進化している。2020年4月にはFactualとの合併を発表し、同年11月にはDavid Shim(デビッド・シム)CEOからCEO兼社長のGary Little(ゲイリー・リトル)氏にトップが交代した。今回の買収は、リトル氏が指揮を執ってから初めてのものとなるようだ。

FoursquareのCEO兼社長のゲイリー・リトル氏(画像クレジット:Foursquare)

プレスリリースの中で、同社は次のように述べている。「今回の買収によりFoursquareは、高品質で使いやすい位置情報データとそれを活用するために必要な技術に関して、企業が信頼する唯一のソースへと進化することができました」。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Unfolded.aiFoursquare地理空間買収

画像クレジット:Prasit photo / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Aya Nakazato)