NASAがハッブル宇宙望遠鏡を約1カ月ぶりに復旧・再稼働、科学観測を再開

NASAがハッブル宇宙望遠鏡を約1カ月ぶりに復旧・再稼働、科学観測を再開

NASA

NASAはコンピューターの不具合によってアイドル状態に保たれていたハッブル宇宙望遠鏡を約1か月ぶりに再稼働しました。どうやら、心配された宇宙望遠鏡の寿命が来たわけではなかったようです。

ハッブルのコンピューターが突然シャットダウンし、セーフモードに陥りました。原因はコンピューターのメモリーモジュールの劣化が原因と考えられ、当時NASAのハッブル運用チームは何度か再起動を試みたものの失敗。今度はバックアップモジュールに切り替えようとしたものの、バックアップの起動コマンドもエラーで停止しました。

NASAはその後数週を費やして問題を診断解析し、PCU(Power Control Unit)の電圧レベルを監視する制御回路が不調となり、電圧の監視値が規定範囲を逸脱したと判定したか、電圧レギュレーターが劣化して安全のために電力供給を遮断したと判断。その状態でバックアップモジュールに切り替える方法を検討しました。

そしてハッブルのチームは7月15日、バックアップPCUと、コマンドやデータを送信・フォーマットするCU/SDF(Command Unit/Science Data Formatter)のバックアップ電源を入れることに成功、代替インターフェースを用いてその他のコンポーネントもバックアップ側に切り替えたとのこと。こうしてバックアップ用ペイロードコンピューターを起動し、新しいソフトウェアの導入、動作試験を経てようやく科学観測運用を再開しました。

もはやこれまでかと思われたハッブルの復旧は、1990年の打上げ以来幾多の成果をあげてきた宇宙望遠鏡が、まだしばらくは稼働できることを意味します。何度も遅延し、さらに新型コロナのパンデミックや機体の打上げ場所までの輸送の問題から、10月末の打上げ予定がさらに延期する可能性が伝えられたジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡とも連携した運用が期待されるところです。

(Source:NASAEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:宇宙
タグ:天文学(用語)NASA(組織)

超新星爆発の可能性が調査されていたオリオン座ベテルギウスの減光現象は「一時的な温度低下と塵の雲」との研究報告

超新星爆発の可能性が調査されていたオリオン座ベテルギウスの減光現象は「一時的な温度低下と塵の雲」との研究報告

ESO/M. Montargès et al

2019年末、天空で最も明るい星の1つであるベテルギウスが数か月間にわたって暗くなったとき、一部の天文学者はそれが超新星爆発の徴候ではないかと述べました。しかし、その後この赤く光る星は元の明るさに戻っています。

ではなぜ、当時この”The Great Dimming”と呼ばれる減光現象が発生したのか。その理由についての研究結果が報告されています。

ベルギーのルーベン・カトリック大学の宇宙物理学者エミリー・キャノン氏は、チリにあるVery Large Telescope(VLT)を使った観測結果から、原因はほぼ確実に地球とベテルギウスの間に巨大な塵の雲がかかったからだったと結論づけています。

研究チームは偶然にも減光が発生する数か月前の2019年1月にこの星の画像を撮影しており、その画像と減光が始まってからの2019年12月、2020年1月の3月に撮影した画像を比較することができました。

研究者らは、減光はベテルギウスの表面で一様ではなく、その南半球に暗い斑点が集中していたと報告しています。これは一時的また局所的にベテルギウスの表面温度が低下したために起こった減光現象だと推測されました。

一方で別の研究者らは、我々の住む星とベテルギウスの間に塵の雲が入ったため、夜空の月に雲がかかるようにその光が遮られた可能性を考えました。

そして天体物理学者のMiguel Montargès氏は「最も自然な結論は、両方の事象が起こったということです」と述べました。

現在のチームの仮説では、2019年後半にベテルギウスの南半球表面に一時的なコールドパッチが形成され、その冷却効果で一帯が暗くなったと考えられています。さらに、このコールドパッチによって星の表面から放出されたガスが冷えたことで塵の粒子が形成され、星の光がさらに遮られることになったと考えられます。

ただ、この報告に対して懐疑的な研究者もいます。

独マックス・プランク天体物理学研究所のThavisha Dharmawardena氏は、減光の際に塵の痕跡を探したものの、見つけることはできなかったとして「塵の証拠が得られるまで議論は続くだろう」と述べています。この意見に対してMontargès氏は「塵が見えなかったという人はおそらく誤りで、彼らが手にしているデータでは塵を見ることができないだけだ」と反論しました。

超新星爆発現象を見たいと思った人には残念かもしれませんが、今回の現象はベテルギウスが寿命を迎えようとしていることを示すものではなさそうです。

ではそれはいつ起こるのか?との問にMontargès氏は「それは今日ではないでしょう」と述べつつ「毎日、その日に近づいていることは間違いありません。しかしそれは今日でも明日でもなく、われわれが生きている間でもないでしょう」と付け加えました。

天文学的な時間でいえば”もうすぐ”でも、われわれ人間の尺度ではそれが数万年、数十万年だったりする可能性は大いにあります。

(Source:Nature。Via ScienceNewsEngadget日本版より転載)

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豪大学ジョイントベンチャーICRARがはくちょう座X-1は予測より大質量と報告、ブラックホール形成の常識覆す可能性も

豪大学ジョイントベンチャーICRARがはくちょう座X-1は予測より大質量と報告、ブラックホール形成の常識覆す可能性も

NASA / CXC /M.Weiss

1964年に人類が初めてに発見したブラックホール、はくちょう座X-1が、実はこれまで信じられていたよりもはるかに巨大であるとの研究結果が発表されました。これにより天文学者たちはブラックホールの形成と成長のしかたを再考しなければならないかもしれません。

連星系を成しているとされるX-1は、これまで15太陽質量、つまり太陽15個分の質量とされていましたが、ハワイ~プエルトリコ間の米国各地に設置されたアンテナで構成された超長基線電波干渉計(VLBA)を用いた6日間の観測結果は、ブラックホールは21太陽質量を持つことを示しています。そして、われわれの星からX-1までの距離もこれまでの6000光年ではなく、7200光年を少し超えるぐらいに遠いことがわかりました。

銀河の中心にあるとされる超大質量ブラックホールが数百万から数十億太陽質量とされていることを考えると、恒星質量ブラックホールであるX-1の大きさなど宇宙のなかでは大したものでないように思えます。しかし、X-1が15でなく21太陽質量となると、ブラックホール形成のときに失われた恒星の質量の推定値も考え直さなければならなくなります。

ブラックホールの質量は、主にブラックホールになったもとの恒星の大きさと、恒星風(太陽風)の形で失われる質量の量に依存します。より高温で明るく輝く星はより重く、より多くの恒星風を生成する傾向があるとされます。そのため、星の質量が大きいほど、崩壊前および崩壊中に恒星風によって質量が失われやすくなり、ブラックホールが発する電波が強くなります。

しかし一般に、天の川銀河における恒星風の強さは、元々の星の大きさに関係なく、生成されるブラックホールの質量を15太陽質量以下にとどめる程度だと考えられていました。新しい調査結果はそうした認識をくつがえすものです。

「ブラックホールをこれほど重くするには、明るい星が一生の間に失う質量の量を減らす必要があります」と研究者は述べています。

新しいブラックホールの質量と地球からの距離の数値を使って計算した結果、はくちょう座X-1が信じられないほど速く、高速に近いほどの速さで回転していることが確認できたとのこと。これは、これまでに見つかった他のブラックホールよりも高速とのことです。

研究者らは、今後もX-1の観測を続けることを計画しています。オーストラリアと南アフリカで建設が進められているスクエア・キロメートル・アレイ(Square Kilometer Array:SKA)が稼働すれば、それを使った観測でX-1やその他のブラックホールの観測でより詳しいことがわかることが期待されます。天の川には1000万から10億のブラックホールが存在する可能性があり 、それらの少なくともいくつかを研究することで、この謎を解き明かすことができるかもしれません。
(Source:Science、via:MIT Technology ReviewsEngadget日本版より転載)

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