セコイアの支援を受けている児童教育のスタートアップであるDuck Duck Mooseは、非営利にデジタルで教育を提供するカーンアカデミーと協力して、就学前の子供を対象とした教育プログラムを開始する。今回の件により、同スタートアップの21もの2歳以上の子供を対象としたモバイルアプリが無料で利用可能となる。今回の件はその資金供給の性質上、厳密には買収ではない。
代わりに、この9人よりなるDuck Duck Mooseのチームはカーンアカデミー内の新しいイニシアチブを任され、幼児教育プログラムの開発を行うことになる。他の非営利のイニシアチブ同様に、このプロジェクトも慈善的支援とコミュニティの寄付が財源となる。慈善投資会社であるOmidyar Networkはこの新しいイニシアチブへのサポートを最初に表明し、300万ドルの助成を約束した。
Duck Duck Mooseはもともと2008年に、IDEOという社名でCaroline Hu Flexerが創業した。夫のMichael Flexerは豊富なスタートアップの経験があり、Nicci Gabrielがデザインを担当している。Duck Duck Mooseはこれまでにも良質の子供向けアプリを何本もApp Storeで発表している。
同スタートアップは一連のアプリを開発するために、セコイアキャピタル、Lightspeed Venture Partnersとスタンフォード大学から外部資金として700万ドルを調達した。
選択肢で溢れているApp Storeにおいても、Duck Duck Mooseによるソフトはその品質の高さと子供を惹きつける魅力で抜きん出ていることが多かった。そのソフトは独自のIPと内容、図版、アニメーションや音楽で一からから作り込まれていた。そのアプリの多くで、人気の童謡、例えば「Wheels on the Bus」、「Itsy Bitsy Spider」、「Baa Baa Black Sheep」などが取り上げられており、また算数、単語のつづりや文章の読み方を扱ったものもあった。
今日までに、その21のアプリは1000万回以上ダウンロードされた。
今回カーンアカデミーの一部になったことで、これまでの有料アプリは今後無料で入手でき、より多くの人に利用されるだろう。
「私たちがカーンアカデミーに参加するのは、それが私たちが幼児教育と子供達に与える影響を最大にするための最良の方法だからです」とCaroline Hu Flexerは声明中で述べた。「今回、私たちの全ての商品が無料になることで、経済状況によらず世界中の子供達に対して私たちのソフトを使ってもらえるということに対しとても興奮しています」。今回の寄付が実現する際には当初からの投資元であるセコイアとLightspeedの協力を仰いだ、と彼女は付け加えた。
今回の一件は「買収」ではなく「寄付」と分類されるものである。また、この一件はカーンアカデミーにとっても利用者の裾野を広げるものとなるだろう。
今日、そのプラットフォームは毎年1億人に利用されており、その内容は幼児教育から大学初等教育まで、数学、生物、化学、物理、経済学、金融、歴史、文法など多岐にわたる。しかし、Duck Duck Mooseが一緒になることで、その対象は就学前の子供に加えて幼稚園に行く前の子供が加わることになる。
これらの学習アプリが生き延び、より多くの人に利用の裾野が広がったことは結果的には良かった。しかし同時に、今回の一件は、今日のApp Storeにおいて、教育用アプリのビジネスを消費者ベースで収益をあげつつ上手に運営することがいかに難しいかを物語っている。現在10億ドルと評価されているAge of Learningのような企業はむしろ例外だ。また、同社はその教室内での牽引力を利用して子供の親をターゲットにし、家庭での契約増加につなげている。
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(翻訳:Tsubouchi)