NASAとJAXAがアルテミス有人月面探査における協力で正式合意

NASAと日本は新しい協定に調印した(NASAリリース)。両国はISS(国際宇宙ステーション)における現在の協力を継続すると同時に、NASAのアルテミス計画に日本の宇宙開発機関であるJAXAが協力していく。

日本時間7月11日にNASAのJim Bridenstine(ジム・ブライデンスタイン)長官と日本の萩生田光一文科相がリモート会議でそれぞれ協定文書に署名した。 この文書は共同声明(JEDI)の形式で、 ロボットおよび有人の月面探査を含むアルテミスプロジェクトにおける両国の役割を具体的に定めるプラットフォームとなるものだ。

日本はNASAのルナゲートウェイ構想に参加した国際パートナーの最初の国の1つで、その発表は2019年10月にさかのぼる。 これ以降、カナダをはじめとする多くの国と機関が同様の意向を表明している。カナダはISSで使用されているロボットマニュピュレーターであるカナダアームの3番目のバージョンを開発する。また欧州宇宙機関(European Space Agency)も参加する。

今回の協定は、これまでの合意を文書の形で正式なものとした。今後、両国はプロジェクトにおける役割分担などさらに具体的な部分を検討していくことになる。

日本は火星の衛星の探査を計画しており、最大の衛星であるフォボスのサンプルをロボットで採取し、地球に持ち帰ろうとしている。打ち上げは2024年の予定だ。日本のJAXAはすでに探査衛星であるSELENE(かぐや)を月周回軌道に乗せて各種の調査を行うと同時に高度な姿勢制御技術をテストしている。JAXAではSLIM(Smart Lander for Investigating Moon)と呼ばれる小型月着陸実証機の打ち上げを2022年に計画している。 これはJAXAとして初の月着陸ミッションとなる。

画像クレジット:NASA

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滑川海彦@Facebook

NASAの月ロケット打ち上げは計画から2年遅れで予算オーバーとの内部報告

2024年に人類を月に立たせるというNASAの意欲的な計画は間近に迫ってきた。と同時に、同局の監察総監室が報告した現在の予算超過と遅延から察するに実現性が遠のいている。

「SLS(Space Launch System、大型打ち上げロケットシステム)計画のコストとスケジュールの管理に苦戦を続けるNASAの状況は、同局の(有人月飛行計画である)アルテミス計画の意欲的な目標に影響する恐れがある」と米国時間3月10日に公開された報告書には書かれている。「アルテミス1号のSLS(ロケット本体、ICPS、ブースター、RS-25アダプテーション、RS-25リスタート)の開発建造における主要な契約のそれぞれが、数々の技術的困難、性能の問題、仕様変更に直面し、20億ドル(約2070億円)の予算超過と少なくとも2年のスケジュールの先送りという結果を招いた」とのことだ。

とはいえ、もちろん、2024年の予定が2026年にずれ込むわけではない。遅れているのは、NASAがアルテミスの有人ミッションに使おうと計画している次世代型の重量級ロケットSLSの最初の試験機だ。最初の打ち上げは、今のところ2021年の春の予定になっている。当初の予定からは2年以上が経過している。

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こうした遅延を考慮して、SLS計画は2010年にスタートし、2014年には設計段階を終え、その後にテストと建造のための契約が交わされた。SLSの完成時期は早ければ2016年というスケジュールが浮上したが、実際にNASAが公式に発表したのは2018年後半という日程だった。だがそれも何度か後ろにずれ込み、直近では、今年の11月の打ち上げはもはや約束できないと1月にNASAが発表している。

しかもこうした、NASA、契約業者、孫請け業者のそれぞれに存在する遅延と難しい問題は財政を複雑化し、当初の予算はとっくに突破してしまった。報告の手法にもよるだろうが、これまで達成されたものの経費は当初の予測を超えていたとも言える。

報告書には「全体で、2020会計年度末までに、NASAはSLS計画に170億ドル(約1兆8000億円)以上を費やすことになる。その中には、60億ドル(6300億円)近い使途不明金やABCの一部だと説明されるものがあった」と記載されている。ABCとはAgency Baseline Commitment(局の最低基準契約)のことで、基本的に予算を確保するために用いるとNASAが米国議会に伝えていたものだ。

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月着陸計画を進めるといった大きな冒険は、最初に考えていたよりも難しく費用もかかるなどということは、意外でもなんでもない。アルテミス計画の最終目標は、米国が再び安全に適切な時期に月に立って、James Bridenstine(ジム・ブライデンスタイン)局長が好んで言うように「そこに居住する」ことにある。2024年の目標はあくまで希望であって、エンジニアも宇宙飛行士も、政治的な日程を満足させるために急ぐべきではない。なにより命が大切だ。

監察総監室は、NASAと契約業者が時間と経費に責任が持てるよう、出費をより正確に記録する方法について新しい提案をしている。だが遅延が再三にわたり警告されるということは、言葉には出さないまでも、2024年に月に着陸するという目標がほんの数カ月遅れるだけであって、計画が破綻したわけでもなんでもないことを示しているように思える。

像クレジット:NASA

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(翻訳:金井哲夫)