歯科手術ロボ開発のNeocisが約76億円調達、すでに2700人超の患者が利用

2019年、歯科手術アシスタントYomi(ヨミ)が市場に登場してから、2700人を超える患者がそのプラスティックで覆われた金属の腕を見上げてきたそのロボットを開発した企業のNeocis(ネオシス)は、さらに多くの歯科医院にこのロボットを普及させようと7200万ドル(約76億円)を調達した。

この資金は、今回新たに参加した投資会社のDFJ GrowthとVivo Capital、以前からの投資会社Mithril Capital Management、Norwest Venture Partners、Section 32、そしてロボット外科手術のゴッドファーザーFred Mollからなる新規投資ラウンドによってもたらされた。

今回の投資により、Neocisは2009年の創設から1億2000万ドル(約127億円)を集めたことになる。

ロボットは米国中の手術室で急激に数を増しており、ロボットが支援する手術は、いくつもの専門科で600万件以上も実施されている。これらのロボットは、何年間にもわたり、人の脳や心臓や骨をスキャンし、切除し、穴を開けてきたが、口の中をいじくり回せるだけの器用さを身につけたのは、ここ数年のことに過ぎない。

事実、米国食品医薬品局(FDA)から歯科インプラント手術の認証を受けたロボットは、まだYomiだけだ。これは現在、ボストン大学とウエストバージニア大学の2つの歯学科に導入され、歯科医を目指す学生たちの訓練が実施されている。

このNeocisのロボットは、歯科インプラント手術の計画と仕上げのためのナビゲーションツールだ。従来のインプラント手術の技法では、歯茎を切開して顎骨を露出させる必要があった。しかしYomiを使えば、そこまで侵襲的な方法を取る必要はなく、より短時間にインプラント処理できる。大手術とはならないため、合併症の心配も少ないと同社は話している。

だが、ロボットこそ外科手術の未来だと認めるのは時期尚早だと訴える人たちもいる。ヒューストンの外科医、Mike Liang(マイク・リアン)氏、Naila Dhanani(ナイラ・ダナニ)氏、Oscar Olavarria(オスカー・オラバリア)氏の3名は、イギリスの医学雑誌であるThe BMJに寄稿し、医療ロボット使用の際のリスクとメリットを示した。

ロボット外科手術には賛否両論がある。ロボットを支持する外科医には、その事例体験に基づく強い感情から相対的有利性を認める者、または業界のマーケティングに影響されたと思われる者が多い。一方、批判的な人たちは、利用者がこの技術の有利性を誇張しており、制約を認めたがらないと主張する。ロボットの使用を支持する公開研究論文のほとんどは、ロボット業界から資金援助を受けた著者が実施した観察研究に基づくものだ。業界と著者との経済的なつながりは、業界に好意的な同様の研究報告が大量に増えていることと関係している。いかなる新技術も、患者のアウトカムにおける真の利点を評価しようとするなら、そうした偏向を考慮しなければならない。

技術革新やテクノロジーが医療や治療方法を向上させた場合もあるが、その一方で、効果がない、さらには害があるとさえ証明されたものもある。我々の最新の研究に加え、無作為化した試験のほとんどにおいて、現在のロボット技術には臨床または患者本位のアウトカムへの測定可能な恩恵がないにも関わらず、費用と手術時間を増大させることが証明されている。これは、新興テクノロジーおよび治療法の価値を厳格に審査できる高度な調査に限定して得られた結果である。ほとんどの医療関係者がこれと同じ意見を共有しているが、驚くべきことに、そうでない者もいる。「技術革新」と見なされる新式の手術器具には、最高品質の研究を通じた慎重な評価が必要であろうことは明らかだ。

「ロボット整形外科技術の黎明期からの先駆者である私たちは、歯科手術の世界へのロボット技術の導入に胸を踊らせています」とNeosicの共同創設者で最高責任者のAlon Mozes(アーロン・モーゼス)氏は話す。「今回の最新ラウンドにより私たちは、このロボットによる手術支援システムの普及を進め、この国のすべての歯科医院に付加価値を提供するYomiの技術基盤をさらに発展させることが可能になります」

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Neocis、Yomi、歯科、資金調達

画像クレジット:Neocis

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(翻訳:金井哲夫)

拡張現実を歯科で活用する

大掛かりな歯科治療や再建手術を受ける人が、その後どのように見えるようになるかを視覚化することは難しいかもしれない。プラスティックスやロウで型をつくることもできるが、それはいささか…19世紀的だ。ということでスイスのスタートアップが、言われてみればもっともな、拡張現実ソリューションを生み出した。患者に結果の仮想的なスマイルを提示するのだ。

その会社Kapanuは、スイス連邦工科大学チューリッヒ校のスピンオフで、CEOのRoland MörzingerはDisney Researchと協力して医療目的の拡張現実エンジンを作り出した。そして歯科が最初の適用対象として選ばれたのだ。

これは人間の口腔の3Dスキャン(既に多くの歯科医が行っている)を、用意された良い歯のセットのスキャンに対してマッチさせることで動作する。ソフトウェアがユーザーの口や歯の位置を決定すると、その上に改善後の歯が重ねられる。そこからがお楽しみの始まりだ。そこから利用者は様々調整をすることが可能だ。例えばお互いの歯の近さや、様々な形状、歯間距離などなど。全ての変更がその場で表示される。

患者がカスタマイズされた歯を完成させて、AR「仮想ミラー」でプレビューを行い、最終決定を行ったあとで、結果のモデルが義歯製造のために送られる。

このシステムは昨年の冬ドイツのケルンで開催された国際歯科展示会でお披露目され、大きな注目を集めたようだ。これは健康業界におけるこの領域の大企業たちに非常な感銘を与えた。この6月にKapanuはIvoclar Vivadentに買収された。条件については公表されていないが、会社は独立して運営されている。

これは、しばしばおもちゃ程度の扱いしかされないアプリケーションへと追いやられている、拡張現実の素晴らしい成功事例の1つだ。人びとに、目に見える便益をもたらす日常的なアプリケーンを使った本当のビジネス —— 想像して欲しい!

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(翻訳:Sako)